風の魔法 その3
待つ事、数時間だろうか?
ようやくメイドが到着した。
「オリッシュ様、ご無事で何よりです!」
「あ、あなたがレゾナ……?」
「はい、そうです、レゾナです。おいたわしや、シャーマナイト様から話は聞かせてもらいました」
そこまで知っているのか。
ならば話は早くて助かる。
「オリッシュ様の荷物は先に宿舎から回収して来ました」
おお、見事な働き!
これで宿舎を探す手間が省ける。
「ですので着替えが終わりましたら、早速シャーマナイト様の部屋まで行きましょう」
「は、はい……」
「では、早速。まずは体を拭きます」
そう言って、メイドのレゾナはオリッシュの体が来ている服を脱がせる。
何だか新鮮な気分だ。
覚えている限りでは、女に服を脱がされるなんて経験はないからな。
そして、水で湿らせた布を使ってオリッシュの体を上から拭き始める。
用意のいい事に、既に水を汲んだ桶が運ばれていた。
桶の水で体の汗が洗い落とされ、スッキリしていく。
流れに身を任せてしまったか、これは風呂替わりって事でいいんだよな?
「綺麗になりました。次は御召し物を……」
メイドのレゾナはそう言って着替えの服を用意する。
女物の下着に加え、個人的には魔法使い用のローブに目が行く。
戦場ではローブ姿だと動き難いんだよなあ。
続けて全身を確認できる程の大きな鏡を運んで来た。
どうやら、これを見ながら確認しろという事らしい。
おかげで全身を見る事ができるわけだが……。
「……ぇ!?」
「どうかなさいましたか?」
「い、いえ……何でもありません」
分かっていたのに、驚いて思わず声にならない叫びを上げそうになった。
自分の今の体を見て、改めて入れ替わってしまった現実を突き付けられる。
金髪の長髪で色白な細身の女体、しかし胸だけは大きい。
男を魅了する理想的な形だと思う。
流石貴族と言うべきなのか美しい。
その裸体に思わず見惚れてしまう程だ。
だが、悲しいのはそれが自分自身だという事。
「では、失礼します」
服の一つ一つをメイドのレゾナが着せてくれる。
他人に服を着せてもらうというのは楽だが、どこか窮屈で不快だ。
まあ、そもそも着方が分からないので、こうやって着せてもらうしかないのだが。
──今のうちに、服の着方を覚えないとな。
「これで、よろしいですか?」
鏡に映るのは、淡い緑の魔法使いのローブに身を包む姿だ。
「これが、戦う時の装備なのですか?」
「はい、貴族として戦場に立つ時の正装です」
貴族として……か。
ならば、前線で派手に戦う事もまず無いし、多少動き難いのも仕方ないのか。
「分かりました。では、着替えも終わりましたので、お兄様の部屋まで……」
「まだです! 髪のセットが残っています。これが終わりましたら、シャーマナイト様の部屋に向かいましょう」




