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お嬢様の生活13

イザベルさんの独白が多くなっちゃいました。


毎回たくさんの人に読んでいただいてとても励みになります!

拙い文章ですがこれからもよろしくどうぞ!

 お茶会が始まって早速お嬢様に近づくご令嬢がおりました。

 レイブン公爵家と同じ階級である、リヴィア公爵家のご息女です。


「シャルロット・レイブン公爵令嬢。お久しぶりです。私はフェル・リヴィアと申します。こうしてお会いするのは、社交界デビューのパーティー以来ですね」


 砂金のように輝く上品な金髪。大きな瞳も同じく金。

 普段シャルロットお嬢様を見ている私でも、その美しさには一目置いているお方です。


 貴族階級の中で最も序列の高い公爵家の一人娘でありながら、第1王子の未来のお妃様です。フェル様とアルフレッド様のご婚約は、お二方が幼少の頃より決まっておりました。


 フェル様は国の皇后に相応しくあるため、1つ1つの小さな所作から物腰の構え方まで、厳しく教育されてきました。


 お嬢様を除けばこの空間で最も美しいのは間違いなくフェル様でしょう。


 後光が見えそうなお二人の会話を私は静かに拝聴します。


「お久しぶりです、フェル公爵令嬢。半年前の社交界パーティーに会ったのが、つい昨日の事のように思い出せます」


 お嬢様は今年で16歳。

 フェル様は17歳と記憶しております。ヴィーシャの一般的な結婚適齢期は18歳ですので、順調に行けば来年フェル様は正式に皇后となられます。

 ということは、シャルロットお嬢様がご結婚なさるまであと2年程しかないのです。私は静かに激しく青ざめました。


 普通ならば、貴族令嬢や貴族子息の婚約は生まれた時、または幼少の頃に家同士の合意の元決定されます。

 しかし、社交界のあれこれを嫌うアリア様の望みによって、シャルロットお嬢様は未だにご婚約相手はおりません。(というかいたら私は発狂します)


 常にお傍にいる私ですが、お嬢様に色良い相手がいるというお話は聞いたことがありません。不躾な気持ちで近づいてくる男性は私が排除してきたので、当然といえば当然です。


 シャルロットお嬢様は立派な公爵令嬢です。いずれ結婚しなければなりません。

 しかし、私はそのお相手はお嬢様の好きにしても良いと考えています。


 見つけてきた男性が何歳だろうと。平民だろうと。過去に薄暗い出来事があったとしても。

 シャルロットお嬢様が決めた相手ならばきっと素晴らしきお方でしょう。きっとアリア様も似たような想いなのではないでしょうか。


 家柄などに縛られず、心が求めるままに伴侶を見つけていただきたいのです。


 と、いうのは私の中の天使もとい常識的な部分の言葉。

 本音はもちろん、結婚なんてして欲しくありませんし、ずっとお傍に仕えさせて欲しいです。


 私の身はレイブン家に契約で縛られています。お嬢様の傍付きメイドになったのも、レイブン家当主であるリンデ様が命じられたからです。

 その理由も、私とシャルロットお嬢様の相性が良い、というものですが。


 シャルロットお嬢様が結婚し、相手方へ嫁がれたら私たちはきっと引き離されてしまいます。


 お嬢様に幸せになって欲しい。

 お嬢様に離れて欲しくない。


 どちらも嘘偽りない想いに、私は静かに自問自答しておりました。


 だから、会場でトラブルが起こったことにすぐに気づけませんでした。


 ガシャン!と大きな音が響きました。

 その音はお皿が割れる音以外の何ものでもありません。


「キャアッ……!」


 音のした方から悲鳴が上がります。

 すでにフェル様とご歓談を終えていたシャルロットお嬢様は、素早い身のこなしで現場へ向かいました。


 もしもの事があったらいけないと、お嬢様より早く私は悲鳴のした方へ走り抜けます。


 散乱した料理。割れた大皿。倒れた白亜のテーブルに汚れたテーブルクロス。そしてその端に崩れた姿勢で座り込む紫髪のご令嬢。


 繊細な素材で作られたフリルドレスがひっくり返った料理によって汚れています。

 早くシミ抜きをしなければドレスが手遅れになってしまいますが、問題はそこではありません。


 問題はシャルロットお嬢様主催のお茶会でトラブルが発生したということ。


 裏方で起こる小さなトラブルなら、公の目に触れないので厳重注意で終わります。

 しかし、今回はご令嬢の身にトラブルが降り掛かってしまいました。……ご令嬢に料理が降っているのと掛けたわけではございませんよ。


 紫髪のご令嬢の名前はセナ・ファウブル伯爵令嬢。実はシャルロットお嬢様と昔交友のあった方なのですが、何がきっかけになったのかお嬢様を目の敵にするようになったのです。


 この光景もおそらくお嬢様を貶めるために自作自演をしたのでしょう。

 方法は至極簡単。

 長いテーブルクロスだ、歩きづらい絨毯で足が縺れたと何かしら非難をします。テーブルクロスも絨毯も用意したのはシャルロットお嬢様ですから、原因はお嬢様の管理責任となります。そうすれば、貴族の間で「レイブン家の令嬢はまともに茶会も開けない」と言う醜聞が広まり、シャルロットお嬢様の名声に泥が着くのです。


 貴族令嬢にとって、主催したお茶会での大きなトラブルは必ず避けたい事柄です。

 そのため、お茶会の準備は入念に行い、万が一にも失敗がないようにするのです。


 過去に、自分を快く思っていない者を炙り出すために、わざとお茶会を開いた令嬢もいらっしゃるそうです。シャルロットお嬢様の目的はもちろんそんなことではありません。


 最初にお嬢様が仰った通り、貴族令嬢同士の親睦を深めるのが今回の目的。

 ここで波風を立てては、親睦どころか亀裂が生じかねません。


 メイドから令嬢へ話しかけるのは無礼な行為。

 私は拳を握りしめて、シャルロットお嬢様へ問題の全ての対処をお任せ致しました。


 お嬢様は一体どうやってこの状況を穏便に切り抜けるのでしょう。





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