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悪役一家の奥方、死に戻りして心を入れ替える。  作者: 丘/丘野 優
第1章 悪役夫人の死に戻り
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第4話 とりあえずの目標

 あれから子供は……ジークハルトはすくすくと育ち、主な栄養源をミルクから離乳食へとシフトしている。

 卒乳までは、まだ時間はかかるが、私の負担はかなり減っていた。


 つまり、自分の時間を確保できるようになった、と言うことだ。


 ミルクについては私自身が設計図を引いた魔導具によって鮮度を保って保存できるようにしたので余計に。

 夫にそれを提案した時は目を見開いていたが、それも当然だろう。

 この魔導具は私が今から十数年後に作り上げるものなのだから。

 今の時代では、早すぎる技術というか、発想すら誰も持たなかったものだ。

 食品関係の保存庫が発展し始めるのは今から十年後くらいからだから、いっそそれも合わせてやっておこうと思ったが、流石に時間が足りず、とりあえず必要なものを先に頼んだ感じになる。


 こういった私の行動は、傍から見ると違和感が感じられるものかもしれない。

 自らジークハルトの面倒を見る、と夫に言っておきながら、自分の時間を確保しようとするのは矛盾しているのではないか、ともしかしたら思われるかもしれないからだ。


 確かに可能な限りジークハルトの元にいたい、と言うのが正直なところだが、それとは別に私にはやらなければならないことがある。

 前の人生で起こったことを繰り返さない、ということだ。


 そもそも、私は人に任せられることは任せてしまうことは、決して母親にとっても罪ではないと思っている。

 私の作り上げたミルクの保存機だって、そういう思想の元に作ったものだった。


 ……そう言えば、あの魔導具は前の人生で私がしたことの中でも、多くの人に感謝されたものの一つだったな、と思う。

 基本的には権謀術数を駆使し、悪どいことをやっている時間が多かったが、民衆や他の貴族から人気を取るためにその行為そのものとしては善人にしか見えないことも数多くやっていた。

 あれはそのうちの一つだった。


 今回は……前者は全くやらない、とまでは言えない。

 たとえ良いことを為すためであっても、ときには必要な悪というものがあることを私はよく知っているからだ。

 それがない者は……ただ正義のみでことを為そうとする者は美しく、眩しいが、その道の途中で大半が死ぬ。

 それはそれで正義に殉じたと言えていいのかもしれないが……私はそんな死んだ後の名誉などよりも実利をとる。

 すべきことをする。

 確実にだ。そのためには、この手が悪に染まろうとも後悔はしない……。

 とまぁ、こういうところが前の人生の時の失敗を招いたこともわかっているので、その辺りの匙加減はしっかりと考えてバランスをとっていきたい。

 つまりは、何かしら汚れた手段をやむを得ず使うこともあるだろうし、グレーな行動をすることもあるだろうが、それらの行為をこの国を害そうとか、そういう意図のもとにやることはないということだ。

 だからこそ、今回の私は後者の方……世のため人のためにいいことをする、ということに力点を置くことが多くなると思う。

 何のためにか、と言えば、もちろん、リリーに殺されないために。

 いや、殺させないために、というべきか。

 私はリリーに親殺しという最もやりたくないことをさせてしまったのだ。

 それを繰り返すべきではないだろう……。


 そしてそのためにはどうあっても自分の時間は必要だった。

 やるべきことは多いから。


 まず、そもそも私がリリーに殺されないためにどうすればいいのか、というと……。

 強くなければならないだろう、と思っている。


 リリーは強くなる。

 それもそんじょそこらの強い、というレベルではない。

 おそらく、あの時のリリーはこの国イストワード王国でも最強の魔術師だったのではないだろうか。

 それでありながら宮廷魔術師長になっていなかったのは、二十歳にもなっていないという年齢的な問題と、宮廷魔術師としての仕事について十分に熟れていないという経験の問題があったからに過ぎない。

 強ければなれる、という単純な職責ではないのだ。

 一万の軍勢を軽く薙ぎ払える力を持った魔術師よりも、国内の魔力や魔術が関わる問題を適切に分析し、解決できる事務能力がある魔術師の方が上位につける。

 そんな感じである。

 その意味で言うと……リリーはまだまだ経験不足だったわけだ。

 しかしそれでも強いことは間違いなく……まともに相対したところであの時の私が勝てるビジョンは全くのゼロだった。

 自画自賛になるかもしれないが、これでも私はあの当時、それなりに高位の魔術師だった。

 それこそ、望めば宮廷魔術師として出仕する事も可能だったと思う。

 まさか国王陛下も公爵夫人を宮廷魔術師として召抱える、などと言うことはなかったが、冗談混じりにやってみないか、と言われたことは何度かあった。

 母娘で宮廷魔術師というのも面白いではないか、と。

 けれど、そんな私であってもあの当時のリリーの力には、足元にも及ばなかったのだ。

 その能力の凄まじさがこれだけでも分かると思う。

 

 ちなみに、私がそれなりの力を持つ魔術師だったのは、元々、魔法学院をそこそこの成績で卒業していたから、というのもあるが、リリーという将来に宮廷魔術師を目指す子供ができたために、改めて勉強し直したからだ。

 リリーが生まれる前の私の魔術師としての実力は、せいぜい、魔法学院卒業直後の魔術師としては、優等生かな、というくらいに過ぎなかった。

 しかし、魔術の実力というのは、年齢によって制限されないというか、修行すればするほどに上がるものだ。

 才能によってその上がり幅は異なるし、もともと魔力をほとんど持ってない、などとなれば強くなるのは中々難しいが、私の場合、そのどちらについても問題はなかった。

 流石にリリーほどの才能はなかったが、子供のためと思って死ぬ気で学べば宮廷魔術師クラスまではいけるほどに。

 

 だが、今回は……それだけでは足りないだろう。

 少なくとも、あの当時のリリーと相対して、一撃で死なないくらいの実力は身につけておく必要がある。

 幸い、時間は山ほどある。

 三十年だ。

 三十年をかければ……それくらいのところまで、なんとかいけなくはない、と思う。

 

 だからそのため私はまず、自らの魔術師としての実力上げから始めることにした。

 そのための時間確保だった。

読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 令嬢じゃなくて夫人がやり直しってのがいいですねー。 更新楽しみにしてます!
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