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悪役一家の奥方、死に戻りして心を入れ替える。  作者: 丘/丘野 優
第1章 悪役夫人の死に戻り
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第18話 掻き回す

 《ゴブリンの軍勢》の殲滅は比較的順調に進んでいる。

 拠点に突入した騎士たちも、しっかりとグループを組みつつ、ゴブリンたちを屠り続けている。

 ただ、ゴブリンと戦っているにしては苦戦している。

 その理由は簡単で、今、この拠点内に残っているのは最もゴブリンでも数が多く、低級な種であるノーマルゴブリン以外のものが多いためだ。

 

 私の《崩炎隕滅ゲヘノム・メテオリット》によってノーマルゴブリンの多くは倒すことができ、またそこまで至らないまでも重傷を与えていた。

 けれど、ゴブリンでも魔術などを身につけているゴブリンメイジ系の者は空から炎に包まれた隕石が降り注いだ時、しっかりと魔術盾を張り、防御していたようだ。

 もちろん、魔術が使えるとはいえ、低級のゴブリンメイジ系が使う魔術盾などで私の《崩炎隕滅》を防ぎ切ることなど出来ない。

 それどころか簡単に抜くことが出来るが、それでもある程度は減衰されるのは間違いなく、またこれだけの拠点を作るゴブリンの一部であるためか、複数で魔術盾を重ねて発動させるなどの工夫もしていた個体もあったようだ。

 本来であれば私がそういった個体もしっかり探知して、集中的に狙うべきで、そうすれば彼らの被害はこれどころではなかったのだろうが……流石に今の私にはそれが難しかった。

 

「……騎士たちもゴブリンメイジ系に対する対処はしっかり身につけてはいるでしょうけれど、数が数だからね。私たちで可能な限り潰すわよ。それと……」


「ゴブリンたちの頭目……おそらくはゴブリンジェネラルの位置の特定ですな。概ね、ゴブリンたちの動きから方向はわかりますが」


「それは向こうも分かっているでしょうから、移動している可能性も高いわ。それにここをつぶしても頭目を逃しては意味がないからね」


「ふむ、また別の場所で一旗あげられても困りますからな……」


 私とワルターの会話に、ガストが、


「探して騎士たちに教えるってことでいいか?」


 と尋ねてきたので、私は、


「それもいいけど、理想は倒してしまうことね。幸い、私たちのパーティーのバランスは悪くないし」


「……本気か? ゴブリンジェネラルつったら、危険度Bクラスの魔物だぞ。それに、周囲はナイトやメイジが固めてるんじゃ」


「メイジ系は私がどうにかするわ……こんな風に」


 走りながら姿が見えたゴブリンメイジがこちらに気づき魔力を練り始めたのを確認すると同時に、私は炎の槍(フレイムジャベリン)を放って貫く。

 倒れ落ちたゴブリンメイジはそのまま燃え上がり始め、周囲に延焼を引き起こしていく。

 石の槍(ストーンジャベリン)ではないのはもちろん、炎によるこの延焼を狙ったからに他ならない。

 ゴブリンはとてもよく燃える。

 人間であればここまでは燃えないだろう、というくらいに。

 他の魔物でも燃えるものと燃えないものがいるので、それをよく知っているとこういう場合に選べる戦い方が増える。

 問題があるとすれば拠点が炎に巻かれれば最終的に逃げることすら難しくなることだろうが、事前に騎士たちにここを燃やし尽くすことは言ってある。 

 こういった魔物の拠点をそのまま残しておけば、いずれ他の魔物が利用して強大な軍勢を素早く作り上げてしまうことがあるからだ。

 そう言った話は枚挙にいとまが無く、そんな事態を避けるためにはさっさと燃やし尽くしておくに限る。


「うぉりゃ!」


 少し遠くに見えたゴブリンの頭部に、矢が突き刺さった。

 ガストの放ったものであり、いつもの彼であれば届かない距離であろう。 


「やるじゃない」


「あんたの補助魔術のおかげだろ。視力も上がってるし、これがなきゃ、俺に魔物退治なんてせいぜい一匹二匹のゴブリンで限界だよ」


「補助魔術は確かに便利で強力な魔術だけど、普段からしっかりと鍛えていないと使いこなすことは難しいわ」


「そうなのか?」


「ええ。たとえば今回かけた身体能力強化は、元々の身体能力全体をそのまま底上げするわかりやすいものだけど、普段との違いを把握できていないと、慣れてなければ普通に動くことも難しいもの。ガストは簡単に適応しているから、センスがあるのね」


「あんた……そんなものぶっつけ本番で俺にかけたのか」


「ダメそうなら置いてきたわよ。途中でへばったら……まぁその時はその時だったかも」


「怖いこと言うなよ……おっ? あそこ、なんか変な動きしてねぇか?」


 周囲に大量にいるゴブリン、その中でも一つのグループを指差してガストがそう言った。

 ワルターが確認し、


「……あの動きはなんと言いますか、館で危険な状況に置かれた時の、使用人たちの動きに似ておりますな」


「へぇ? つーことは……?」


「おそらく、主を逃がそうとしているのでしょう。ガスト殿、お手柄ですな」


 そう言ったワルターがガストより先に気付いていなかったとは思えないが、後のことも考えてガストに手柄を持たそうとしているのだろう。

 こういう、地域の魔物討伐では地域の者が手柄を取った方が喜びが大きい。

 私にちらりと視線を向けたワルターの仕草でその考えが理解できた。

 やはり有能な使用人である。

 前の時も有能だったが……彼も私のせいで命を失った。

 今回は彼にも報いたいところだ。


「じゃあ、静かに追いかけましょうか。気配は……二人とも問題なく消せるわね」


 片や公爵家の《影》を司る組織の長であった者であり、片や森を野生動物に気付かれずに歩く腕利きの狩人だ。

 問題などあろうはずがなく、二人とも即座に気配を静かに消し、私の後に続いた。


読んでいただきありがとうございます。


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どうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これだけの規模の軍団、1回目ではどのくらいの被害が出たんだろう?
[一言] よっしゃ!頭狩りだ!(笑)
[一言] ガストもけっこうすごいんだな
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