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第141話 心の形

お久しぶりです。

来る12月28日に、本作の第三巻が発売されます!

そのため、続きは書籍で、にならないために更新をしっかりしていきます……。

本来はちゃんと更新してなければならなかったのですが、申し訳ないです。

来年は三が日明けたくらいからちゃんとやっていこうと思っていますので、よろしくお願いします。

今日から三日間くらいは割と怒涛の更新になると思うので、そちらもどうぞお許しください……。

あと、後がきでも宣伝すると思いますが、そちらもどうぞお許しいただきたく……。

では言い訳はこんなところにして、本編をどうぞ。

 そこから、私はサーゴに説明する。


「まず、ここが何処かなのだけど、さっきも言った通り、アンナの精神の中よ。私たちは、あの魔導具を使って、ここに入ってきている」


「それは理解しました。しかし、ここからどうするのですか?」


「それもさっき言った通りなのよ。ここは、迷宮とほぼ同じ……というか、装置によって、人の心を迷宮と同じものとして捉えて、構築しているところなの。だから、迷宮探索そのものと言っていいことを、これから私たちはするのよ」


「……なるほど。迷宮探索なら、慣れていますが……」


「ファーレンス公爵騎士団は、定期的に迷宮探索してるものね」


「ええ。しかし、お話で気になったのですが、ここには魔物はいるのですか? 人の心の中になど、発生しようもないように思いますが……」


「確かにそれは気になるわよね。まぁ、一般的な魔物はいないわよ」


「あっ、それでしたら、ただの迷路を進むだけと……?」


「いいえ。あくまでも、いないのは一般的な魔物。つまり、魔力が凝って出来たり、迷宮外で繁殖している生物としての魔物がいない、というだけね」


「……ええと、つまり?」


「普通に魔物は出るの」


「話がおかしくないですか?」


「おかしくないわ。その魔物というのは、あくまでも、アンナの想像上のものだから。アンナが必要なところに、必要な魔物を配置しているの。それを、私たちは倒していく必要がある」


「必要なところ……?」


「ええ、ここはアンナの心の中。アンナは、思い出や記憶を守るために、守護者を置いているの。それが魔物の形になって現れる……」


「ふむ……して、それはどのような……?」


「それはなんとも言えないわね。以前、クラリスの心に潜ったとき、その心の最奥に出現したのは、ワイバーンだったけれど……」


 これにクラリスは言う。


「確か、それは私がワイバーンが強いと思ってるからなんですよね? 一番近くで見て、恐ろしいと思った魔物がワイバーンだったのは事実ですが……」


「そうね、おおむねその理解で正しいわ。他にも、無意識が形になったものとかもいたりするから、気をつけて進まなければならないの」


「魔物の出現頻度は……?」


 これはサーゴの質問だ。


「本当に普通の迷宮と変わらないくらい出るわね。だから、気を引き締めて進みましょう」


「……分かりました。そういえば、もしもここでその魔物に敗北してしまった場合、自分達はどうなるのでしょう? 心から弾き出されて、元の体で目覚める?」


「その推測が正しい、と言いたいところだけどね。弾かれる前に、心を破壊されるので廃人になってから目覚めるわ」


「……恐ろしいですね。死にたくないのですが」


「死にはしないわよ、一応」


「死んだも同然の状態にはなる、と……分かりました。本当に気を引き締めて挑みます」


「まぁ、基本的に私が前に出るから、それについてはあんまり心配しなくていいわ」


「はい」


 そして、私たちは《夢の迷宮》を進んでいく。


◆◆◆◆◆


「……しかし、人の心の中なのに道があるってのは変な感じですね……」


 サーゴがキョロキョロと辺りを見ながらそう言う。


「それは魔術でそのように構築しているだけで、心に形なんて本当はないんだけどね……」


 私が答えると、サーゴは首を傾げる。


「それがよくわからないんですが……でも、説明されても分からないし、いいか……」


 結局彼は途中で諦めた。

 ただ、細かい説明を求められても、短時間では説明しようがないので今はそれでいいだろう。

 何せ、講義をしている暇はなさそうだからだ。


「あっ、魔物がいます!」


 クラリスがそう言った。


「そのようね……あれは、ゴブリンのようだわ」


 通路にいたのは、誰もが知っている基本的な魔物、ゴブリンだった。

 それがこちらを見ながら歯を剥いている。

 しかし近づいては来ない。


「なんであそこから動かない……あぁ、後ろの扉を守っているのですかね?」


 サーゴがそう言った。

 ゴブリンの後ろには、扉があった。

 その前からゴブリンは動かないのだ。

 私はサーゴの言葉に頷いて、


「そういうことね。あれは《心の扉》。そして、あの向こうには《記憶の小部屋》があるのよ」


「それはどういう……」


 これにはクラリスが答える。


「《心の扉》は、人が自らの記憶や心を守るために作り上げた障壁ですね。それで《記憶の小部屋》は、守りたい記憶、思い出そのもの。そこに入れば、心を覗けるのです」


「つまり、あの扉の向こうに行けば、アンナ殿の心が覗けてしまう……?」


「そういうことですね。でも、人の心は階層構造になっていて、表層領域と、深層領域、そして、根源領域に分かれているんです。あの扉は表層領域のものなので……せいぜい、目の前のものについて思ったこととか、最近の記憶とか、そんなものしか見られません」


「じゃあ、あそこのゴブリンを倒して、向こうに行くだけでは……?」


「足りませんね。特殊属性を見るためには、根源領域まで辿り着かなければ……ゴブリンくらいは、前哨戦くらいに思っておかないと。そうですよね、エレイン様」


 クラリスがそう確認してきたので、頷く。


「ええ、それでいいわ。で、あそこのゴブリンなんだけど、私が倒してしまうわね……」


 そう言って、私は手をかかげた。

 詠唱を唱えずとも、そこから火の玉が発射され、そのままゴブリンに命中する。


「グゲッ……」


 と、ゴブリンは間抜けな声をあげて、崩れ落ちる。

 そしてその姿をすぐに消してしまった。


「……一瞬で消えてしまうんですね」


 サーゴがそう言った。


「ここはあくまでも、人の心の中。あのゴブリンも、アンナが作り上げたものに過ぎないの。心を守るための守護者として。だから倒されればすぐに消滅する」


「守護者ですか……やっぱり、深いところに向かうにつれ、強くなりますか?」


「もちろんよ。クラリスの時はワイバーン程度で済んだけれど……アンナの根源領域を守る守護者がどの程度かは想像がつかないわね……」


 守護者の強さは、心の強さというか、自らの心をどの程度守りたいと思っているか、に比例する。

 クラリスは当時、ある程度、《塔》の一員として認められつつあったので、だいぶ雰囲気も柔らかくなっていた。

 そのために、さほど強い守護者は心の中に飼っていなかったわけだが、アンナの場合はどうか。

 聖国を出て、外界と触れることによって色々と解放された部分はあるだろうから、それによって心も外に向かって開かれていたら楽ができる。

 だが、そうではないのなら……。

 いや、仮にそうであったとしても、未だに解放され難い部分があったとしたら。

 強力な守護者が出現する可能性が高いだろう。

 その時は、楽はできなさそうだなと思う。


「……ま、それはともかくとして、先に進みましょう。まずは表層意識を見ないと。《心の扉》一つ目、開くわよ」

 そして、私はその扉に手を掛けた。

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