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悪役一家の奥方、死に戻りして心を入れ替える。  作者: 丘/丘野 優
第3章 二人目と学校

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第114話 不幸な再会

「……それにしても、とても広いのですね。この聖アーク学院は」


 私が聖アーク学院の廊下を歩きながらそう呟くと、私を案内してる女性神官が少しばかり不安げに、


「申し訳ないです……少しばかり歩くのが大変でしょうが、どうかお許しを」


 と言ってくる。

 私が貴族特有のあてこすりを言ったのだ、と解釈したらしい。

 確かに一般的なイストワードの貴婦人が、自分が長く歩かされている中でこんなことを言えば、それはまさに、お前はこの私をどれほど歩かせるつもりなのか?と言っているに等しいというのはある。

 ただ、私にはそんなつもりなど一切なかった。

 それどころかむしろ感心していたくらいだ。

 だから私は女性神官に言った。


「いいえ、特に文句があるわけではないのです。ただ、イストワードの魔術学院と比べると本当に広いなと思ってしまっただけで」


 これによって、女性神官は私が別に嫌味を言ったわけではなかったのだ、と理解したようだ。

 少し目を見開いて、


「そうなのですか? 無知で大変申し訳ないのですが、私は学校と言えば故郷の学問所と、ここしか知らないものですから……国が運営するようなところはこれくらいが普通なのではないかと思っていました」


「なるほど。私はいくつかの国の教育機関を訪ねたことがありますが、その中でも敷地の広さはここが群を抜いていますよ。建物の規模も……」


 具体的にいうなら、イストワードの魔術学院の三倍から四倍はある、という感じだろうか。

 イストワードはそれなりの強国であり、そんな国が運営している機関であるから、魔術学院が他の国の教育機関と比べて小さいということはない。

 むしろ大きい方だと言える。

 しかし、そんな魔術学院よりも、ここは大きいのだ。

 一体これほどの敷地が必要なのだろうか?

 そう思った私に、女性神官は、


「……おそらくですが、それは、ここが神官の教育機関も兼ねているから、なのでしょうね。他国からも受け入れておりますし……」


 と答えたので、なるほど、と私は思った。


「そういえば、そうでしたわね。つまり窓の外に見える建物の全てが、通常の教育を受ける子女たちのもの、というわけではないということかしら」


「ええ。神官になるための教育を受けるための建物も少なくありません」


「……後で地図などいただけるかしら? これから一月、一人で歩いて道筋を記憶できる気がしないわ」


 本当にくれると思ってのセリフではなかった。

 曲がりなりにも他国の人間である私に、この国の次代を担う数多くの若者が通っている聖アーク学院の敷地の地図など渡すわけがないだろうと。

 そういうものを渡してしまうと、何かよからぬ目的に使われてしまう可能性が少なくないからだ。

 しかし、意外なことに女性神官は笑顔で頷き、


「それについては、もちろんです。さ、こちらが学院長室です……」


 そう言って先に進んでいく。

 地図くらい、渡しても問題ない、ということだろうか?

 まぁ、一月、ここに通い続けるのだ。

 いくら広いと言っても、その間に馬などに乗って駆け回れば、敷地内の大まかな地図くらいは描けるだろうし、だったら変に探られるよりも地図を渡してしまっていい、くらいのことなのかもしれない。

 そう思って、私はあまり気にせずに、女性神官の後を追った。


 ◆◆◆◆◆


「どうぞこちらへ」


 そう言われて部屋に入ると、奥に執務机が、そしてその手前に応接用の対面ソファとテーブルが設られているのが見えた。

 よくある執務室の構造であり、それ自体に特段の驚きはなかった。

 けれども、私は一瞬、心が乱れた。

 というのは、執務机には当然、この学院の学院長である男性がかけていたのだが、その前に、見覚えのある女性と、そして子供が一人立っていたからだ。

 学院長の男性は、筋肉質な壮年であり、学院長というよりもどこかの傭兵か騎士と言われた方が納得がいく姿をしている。

 彼の名前はシモン・アンヘル。

 紛れもなくこの学院の長であり、今回、私が挨拶するためにやってきた相手だった。

 そしてそんなシモンの前に立っている人物。

 彼女は部屋に人が入ってきたのを理解したようで、こちらをゆっくりと振り返った。

 なぜか時間がゆっくりになったような感覚がした。

 動揺していたから、かもしれない。

 このまま時間が止まってくれたら、気楽だろうにとも思った。

 けれどもそんなことなど起こるはずもない。

 彼女の目が、私に向けられる。

 私と目があって……特に何が起こった訳でもないが、なぜか、ビリリ、という音が幻聴のように聞こえた気がした。

 彼女はそして、少し顔をこわばらせた後、嫣然とした余裕の笑みを顔に貼り付けるように作ってから、口を開いた。

 

「……あら、これは懐かしいわ。まさかこんなところで従姉妹に会えるなんてね、エレイン」


 非常に親しげな口調で、屈託もないように聞こえただろう。

 これに返答しないわけには、私も行かなかった。


「ええ、久しぶりね、シルヴィ。以前に会ったのは……いつだったかしら。ともかく、会えて嬉しいわ」


 そんなわけないのに。

長い間止まってしまってて申し訳なかったです。

更新再開します…。

しばらくは数日に一度くらいかな、と思いますが毎日更新に戻すつもりです。

よろしくお願いします。


それと、拙作は書籍化し、本日8月31日に発売しました。

書店にてすでに購入できる状態ですので、もしよろしければご購入いただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いします……!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人生二度目ということで、前の時に障害に思ったことを総会に解決していくこと。 [気になる点] 次女リリーが母親の理論を学び更に強くなりそうなこと。 [一言] 書籍版を読み、続きが気になって一…
[良い点] 面白いのに更新がないなんて。 続きがめっちゃ読みたいです。
[一言] Twitterで拝見して、一気に読みましたー! 続き楽しみにしております!
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