第八話 鬼殺
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オーガとは人の形をし、つの・きばがあり、裸体に動物の皮のふんどしを締めているモンスターである。
赤黒い分厚い皮膚を持ち、筋骨隆々で人の何倍も大きな体格を持つ。
ある程度の知性を持っているものの、その思考は獣に近いもので対話はもってのほか、意思疎通できる手段は無い。
自分より強いモンスターを狩ることもあるくらい好戦的なモンスターで、非常に残忍な性格。人の肉を好んで食べる。
もし、俺の知っているオーガと同じなら、対処の仕方も同じだ。
沸る闘志を落ち着かせながら冷静にオーガの様子を観察しながら、攻撃を捌く。
ゴブリンの肉なら豆腐のように軽く切ることができたこの鉄パイプでも、オーガの肉となるとそうはならない。丸太のように太い腕と鉄パイプがぶつかり合って火花が散る。
固くて分厚い腕の表面はまさに鉄のよう。一撃でも貰えば今のこの無防備な体は潰れてしまうだろう。
「グゴォォ!!」
「はぁっっ!!」
数秒間に数十回の攻撃と防御を交互に繰り返す。俺を殺そうと繰り出されるオーガの重たい拳を細い鉄パイプで弾き返す。
弾き返すと同時に今度は一歩踏み込んでオーガの喉仏に鉄パイプを突き刺す。今の俺でもゴブリンの頭を貫通できるくらいの威力は出せる。
しかし、分厚い皮に阻まれて鉄パイプは表面を少し傷つけるだけで中に進まない。
「グガァァッ!」
俺の横腹目がけてオーガの鋭い蹴りが入る。なんとか鉄パイプを体に沿わせてガードするが、衝撃を全て吸収することはできずに横に吹っ飛ばされる。
固いコンクリートの壁を突き破り、横の部屋に出る。細かいコンクリートの破片が舞って視界が悪くなる。
煙たくて思わずむせてしまう。
その隙を狙ってオーガは俺に突進してくる。
「見えてんだよ!バカがっ!」
俺は助走をつけて前に走り出す。頭を突き出して突進してくるオーガの足元に滑り込んで背後に回り込む。
俺を見失ったオーガの背中をすぐさまフルスイングで叩く。金属同士がぶつかり合ったような高い衝突音と同時にオーガの悲鳴のような叫び声が聞こえる。
「グゴォォォォォ!?」
オーガは足元をふらつかせて体勢を崩す。俺から距離を取って鋭い目つきで俺を睨みつける。
「……ちっ」
俺は右手に持った鉄パイプを見て思わず舌打ちをした。鉄パイプの先があらぬ方向に曲がってしまっていた。衝撃に耐え切れず潰れてしまったようだ。
これで3本目。持っている武器は全て潰れてしまった。こんなことならもっと鉄パイプをかき集めとけば良かった。
──これはもう使えないか……
「……ガァァァ」
その表情はまさに鬼の形相。顔を真っ赤にして憤然と立ち上がる。大きく息を吐き、その鋭い牙をカチカチと上下に細かく動かす。凄まじい怒りが眉の辺りに這い、全身の血管が赤黒い筋肉に浮き出てくる。
「……じゃあ、来いよ。鬼ごっこしようぜ」
俺は鉄パイプを天井高く放り投げて、背を向けて走り出した。一瞬状況が理解できずに固まったオーガは怒りの雄叫びをあげて、俺を追いかける。
対峙していた獲物が背を向けて逃げ出したことにムカついたのか。ものすごいスピードと恐ろしい表情で俺の背を追いかける。
「こっちだ!」
階段を駆け上がり、上へ上へ目指して走る。
この廃ビルは恐らく十階建てほど。とにかく、長い階段をオーガの攻撃を避けながら、走っていく。
「グゴォォォォォ!!!」
階段というものに慣れていないのだろう。オーガは足を踏み外しながら慣れない足取りで階段を駆け上がる。それでもすぐに階段を登ることができるのは、一歩一歩が人間の何倍も大きいからだろう。
ずしり、ずしりと大きな足音が近づいてくる。
気配はすぐ背後だ。だが、振り返らず一心不乱に走る。
今、捕まれば終わりだ。素手で対抗できる相手ではない。掴まればまるで片手でトマトを握り潰すかなように簡単に握りつぶされるだろう。
武器がない今はもうあの手しか残っていない。
全身から溢れ出る汗が服に張り付いて気持ち悪い。息が乱れて心臓が苦しい。
でも、今こいつを殺るしかない。勇者の意地を見せてやる。魔法?そんなのいらないね。物理的にお前を殺してみせる。
ようやく、十階に辿り着いた。真っ直ぐ部屋の奥まで走り続ける。真後ろにオーガの手が迫る。
「ぐっ……!!とどけぇぇぇ!!」
「グゴォォォォォッッ!!!」
狭い部屋の一番奥の窓。ボロボロになったその窓はもうガラスが割れており、周りのコンクリートの壁にも大きなヒビが入っている。
そこまで、全速力で走り抜ける。そして壁まで走った俺は壁を蹴って宙返りしながら斜め後ろに飛び上がる。
俺を掴もうと伸ばしたオーガの腕をひらりとかわしてオーガの頭上を、走り高跳びの選手のように背面跳びで飛び越えて、真後ろに回り込む。
俺を追い詰めたと思っていたオーガは一変、俺に壁に追い詰められた形となった。
俺はにやりと笑う。オーガが少し焦ったような表情を見せた。
「……俺の勝ちだ」
オーガが後ろを振り返る寸前。オーガの右足を持ち上げてバランスを崩す。そのまま前に思いっきり押して壁に激突させる。
ドンッと大きな音とともにひび割れたコンクリートの壁は耐え切れず崩壊する。壁が割れて外の景色が露わになる。
同時に突き飛ばされたオーガは壁の崩壊とともにバランスを崩して十階の高さから墜落する。
赤黒い腕は何も掴むことはできず、ただ無慈悲に落下する。オーガは怒りと焦りのこもった雄叫びをあげる。
「グゴォォォォォッッ!!!」
そして地面に衝突し、ぐしゃっと肉体が潰れる音だけが聞こえてきた。
俺はそーっと下を覗く。
オーガは一言も喋らず、ぐったりとしていた。どうやら息耐えたらしい。オーガの身体はぐちゃぐちゃで血溜まりもできていた。霧散しないから分からないが、流石にもう起き上がることは無いはずだ。
「……はぁ、はぁ」
俺はへたりとその場に倒れ込んだ。
オーガとの死闘。その勝者は俺となった。
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