第七話 殺意
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ゴブリンの死体を漁って魔石が入っていないか確認する。流石に手で触るのには抵抗があるので、鉄パイプを使う。
「……おかしいな。どこにも無い」
全てのモンスターには魔石がある。それが腹の中にあるのか頭部に埋め込まれているのかはモンスターによってさまざまであるが、どこかしらに魔石を有している。
しかし、このゴブリン。どこにも魔石がない。確かに霧散していないことを考えれば、俺の知っているモンスターではないのだろう。俺の常識が通じないことにも頷ける。
だが、魔石はモンスターの原動力だ。ならばこのモンスター達は何を活動の源にしているのだろうか。
まさか、こいつらが人を襲うのは……。
「……考えたくねぇな」
考察はただの考察。考えすぎるのもかえって良くない。俺は鉄パイプをしまって、学校に帰還しようと踵をかえす。
──その時、
「グギャァァッッッ!!!」
すぐ近くからモンスターの雄叫び。大きな気配。ゴブリンなんかよりずっとでかい。禍々しくてずしりと重たいオーラを感じる。
「……お前もいるのか。まぁそうだよな」
ビルの瓦礫の隙間からからのそり、のそりと大きな足音を立てて巨大が現れる。赤い目を大きく見開き、獲物をギロリと睨みつける。ゆらりと大きな影が揺れるとドラのような雄叫びをあげる。
「グゴォォォォォッッッ!!!!!」
その叫びは本能か感情か。まるで数百年ぶりの目覚めから解き放たれたかのような魂の雄叫び。建物全体が揺れている。地面に反響してどこまでもその声を轟く。
そのモンスターは自らの視界に入った、獲物を逃すまいと走り出す。
筋骨隆々たるその肉体。全長は3メートルをゆうに越している。赤黒い肌はとても硬そうで皮膚を何十にも重ね合わせてさらにその上から鎧を着ているようだ。
額には2本のツノ。そして大きな口からはみ出る鋭い牙。
その表情はまさに鬼の形相。
──現れたのはオーガだ。
奴らは本来森の深奥や山の洞窟を住処とする異世界のモンスターだ。身長は3メートルを優に超え、岩のようにごつごつした肌は剣や矢を軽々と弾き返す。巨大な一本の角を持つ者もいれば、二本の牙が突き出した者もいる。オーガの姿は個体によって多少異なるが、共通しているのはその圧倒的な力だ。
筋骨隆々とした腕は木を引き抜き、棍棒や石斧として振り回す。それだけでなく、彼らは驚くべき俊敏さを持ち、重々しい見た目に反して急襲を得意とする。彼らの眼は赤く光り、獲物を見つけた瞬間に獣じみた咆哮を上げる。その声だけで、熟練の兵士すら足をすくませるほどだ。
異世界では、オーガは討伐隊を組んで挑まなければならないほどの凶暴なモンスター。ゴブリンが初心者向けのモンスターだとしたら、オーガは間違いなく、熟練冒険者向け。オーガの群れとなれば、熟練の冒険者がパーティを組むのは必須となる。
特筆すべきは、彼らの魔法耐性。簡単な呪文や魔術ではその分厚い皮膚を傷つけることすら難しい。そのため、オーガを倒すには知略と強力な武器が必要になってくる。
「グギャァァッ!!」
走るたびにその太い脚が地面にめり込み、地面が揺れる。ボロボロのビルはその衝撃にギリギリ耐えている。
「来いよ。デカブツ」
「グゴォォォ!!」
俺を握り潰そうと太い腕が伸びてくる。
俺は鉄パイプを握りしめる。そして、
── 一閃。
俺にオーガの手が届く寸前、素早く手首を切り落とす。大きな手首がボトリと地面に落ちる。
ほんの少し、俺の鉄パイプの方が届くのが早かったようだ。俺はにやりと笑ってオーガを挑発する。
「ゴガァァァ!?!?」
オーガは数秒遅れで悲痛の叫びをあげた。自分の手首が切り落とされていることに困惑したのか、それとも怒りを感じたのか。俺を睨みつけて唾を撒き散らしながら咆哮をあげ続ける。
ドロドロと赤黒い血が流れ続ける。地面に流れ出して辺りに広がって水溜りのようになっている。
「……勝負だ」
俺の倍以上の背丈を相手に鉄パイプを構える。
オーガは全身に力を込める。盛り上がった筋肉がさらに刺激されて盛り上がる。血管が浮き出て皮がはち切れそうだ。傷口がきゅっと締まり、流れ出す血が止まった。
──こいつ、強制的に止血しやがった……
「グゴォォォォッッ」
姿勢を低くして、突撃する体勢を見せる。こちらを赤の瞳で睨みつける。その瞳には絶対に殺すという明確な殺意が込められていた。
殺気を肌でひしひしと感じる。ビリビリと震える空気を鼻から吸い込んで口から吐く。
──絶対にお前を殺す!
怯む事なくオーガを睨み返す。姿勢を整えて体の力を抜いておく。
数秒間の沈黙。微かな駆け引きの後、
首筋から俺の冷や汗がぽたりと地面に落ちる。
──その瞬間、
両者の殺意が交差した。
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