第二話 世界
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それでは、お楽しみ下さいませ!
俺の瞳に映るのは荒廃した世界。
あちこちから火の手があがり、建造物はほぼ全てボロボロ。ビルはそのまま残っているが、近くの住宅街は全壊しているのが遠目からでも分かる。
交通インフラは全て停止している。動いている電車、自動車、飛行機は何もない。人の気配も感じ取れなかった。
考えられる状況は、たくさんある。例えば俺のいない間に自然災害が起こった可能性。
大規模な地震や竜巻などの自然災害がこの都市を襲った可能性は十分ある。街は崩壊し、人々はどこに避難していると考えるのが妥当だろう。
もしくは、考えずらいが、戦争の勃発だ。平和な日本でそんなこと起きることは想像できないが、この殺伐とした空気を直接肌で感じた俺は本能的に戦争に近い何かが起こったのではないかと考えてしまう。
異世界で感じたことのある空気感だ。
──人の死の匂いがする。
「……状況を把握しろ」
よし、とりあえず落ち着け。俺は目を閉じて大きく深呼吸した。
状況を確認して動こう。俺はもう勇者じゃない。ただの一般人だ。闇雲に動こうとしてはいけない。不測の事態の時こそ冷静に落ち着いて行動するべきだ。
訓練生時代の教訓を頭に並べて精神を落ち着かせる。感情に任せて動くのは最も危険な行為。そしてなにより大切なのは自分の命。優先順位を間違うな。自分を有利な状況に置くために、まずは情報だ。
一度深呼吸してから、ゆっくりと屋上を出る。鍵をかけていた扉を開けて、一歩右足を出す。すると、足の裏に何かが当たった。固いような柔らかいような。なにやら液体もまざっているような感じだ。
「ん?」
そしてようやく気づいた。自分の真下にあるのが、人の死体であることに。
「なっ!!??」
俺は思わず足を退ける。その死体、いや、もはや原型も留めておらず、肉片と呼べるような代物に、俺は驚愕した。
──こんな所に……死体!?
俺は悟った。俺の元いた平和な世界は崩壊してしまったのだと。俺は死体をじっくり観察する。
死体はうちの学校の制服を着ていた。ボロボロだったが、ネクタイを付けているので恐らく男子生徒だろう。
つまり生徒がぐちゃぐちゃにされてしまうほどの何かが、この世界で起きているということだ。天災でも戦争でもない。
こんな残虐な死に方……俺の心当たりは一つしかない。だが、あり得ない。俺はあえて今は考えないようにした。
さらに、扉のガラス窓を見ると、乾いた血の手形が残っていた。ドアノブにもべっとり血が付着している。
多分この生徒は屋上に逃げ込もうとしていたのだろう。しかし、扉を開く前に何かに襲われて力尽きた。
「君は一体…何から逃げてたんだ?」
返事が返ってくるはずもない死体に語りかける。
結局、死体の損傷が激しく、あまり手がかりは得られなかった。死体が腐っていて、臭いもかなりひどい。新しい死体ではなさそうだ。分かるのは人をぐちゃぐちゃにできる力を持ったナニカが敵だと言うこと。
「……嫌になるな…はぁ…まだ戦いは終わらないのか」
自分の運命に嘆かざるを得なかった。正直、地球に帰れば楽で幸福な人生が待っていると思ってた。だが、何が楽しくて次は荒廃した地球でサバイバルを始めなきゃいけないんだ。本当に、最悪としか言えん。
「……まあ覚悟を決めるか」
きっと無念な死を迎えた彼を跨いでそのまま階段を降り始めた。ゆっくり、ゆっくり、音を立てないように進む。まだ近くに敵が潜んでいるかもしれない。
勇者時代に培った忍び足で進んでいく。音を一切出さずに移動することができる。これはスキルや魔法でもなんでもなく、ただのサバイバルのための身につけた技術だ。
階段を降りた先は3年生のクラスや放送室や職員室がある4階。やはり、廊下の至る所に血の跡や人の身体の一部など生々しいものが散らかっていた。人々の悲鳴が脳内で鮮明に再生される。ここでもかなりの人数が襲われたのだろう。
俺はとりあえず自分のクラスへと向かった。血で足を滑らせないようにゆっくり慎重に歩く。
廊下を少し進み、自分のクラスへと入る。
3年6組。特に良い思い入れはない。クラスでは俺は浮いた存在でそれにクラスの男子からはしつこくいじめられていた。だからと言ってクラスメイトが死んでいるのは気が滅入る。あまり死体は見たくないなと思いながら、辺りを見渡す。
「ふぅ…」
教材や筆箱などな散乱している以外に特に変わったところは無かった。避難が早かった証拠だろう。
焦って逃げた痕迹から、ナニカは、突然現れたに違いない。そしてそれに対抗する術もない教師や生徒達は逃げるしかなかった。逃げ遅れた奴は言うまでもない。
「……キショいなあ」
沸々と湧き上がる怒りの感情。別に誰が殺されようが、大抵どうでもいい。あっちの世界で何万人死ぬのを見てきた。俺の感覚はもう麻痺しているんだ。人が、生物が死ぬことに慣れてしまっている。
俺が怒っているのは、他でもない。俺が欲しかった平穏。そう、平穏な生活が奪われたことに怒っているのだ。殺伐とした世界から平和で豊かな世界へ。そしてスローライフを。なんて考えていたのに。
「……これじゃあスローライフどころじゃねぇな」
誰もいない教室で、ただ一人、つぶやいた。
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