第一話 プロローグ
新連載!!よろしくお願いします!
主人公視点で話は進んでいきます!
できるだけ毎日投稿していきます!
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
豪華で荘厳な西洋風の宮殿内にラッパやドラムの音が鳴り響く。続いて大きな拍手と歓声が巻き起こり、部屋の中央の扉が両隣の騎士によってゆっくりと開かれる。
眩しい光に目を少し細めながら、部屋中央を横断するレッドカーペットの上へと足を踏み出す。
「……………」
俺の体格には大きすぎる赤マントを左右に揺らしながらゆっくりと入場する。歩くたびに腰の剣と銀の鎧が当たってガチャガチャと音が鳴る。マントを踏まないよう細心の注意を払いながら真っ直ぐ前へと歩みを進める。
──本当に歩きにくい格好だよな
そんなことを考えつつも、俺は一歩一歩堂々と胸を張りながら行進する。向かう先はこの国の王様とその娘の王女殿下だ。
──この光景ももう見納めか……
歩きながら俺を取り囲む異質な空間をもう一度目に焼けつける。初めて見た日は本当に驚いたものだ。突然変な部屋に移動したと思ったら、変な格好の変な髪型の奴らに囲まれていた。夢じゃないことを理解した俺はここが日本、いや地球ではないことも一瞬で理解した。
宮殿の様子を表現するならばあちらの世界で言うバロック建築様式だろうか。建築そのものだけではなく、彫刻や絵画を含めた様々な芸術活動によって空間を構成し、複雑さや多様性を示すことを特徴としている。特に内部空間は複雑な構成になっており、いつ見ても思わず息を呑んでしまうほどだ。
そして俺を取り囲むのは全員この国の貴族階級の人間達。
中央に座る王族を筆頭として最上級の地位を持つ貴族達が俺をじっくりと見つめている。そのほとんどが俺を良いように思っておらず都合の良い道具としてしか考えていない。ずっと俺を利用し続けてきた腹黒い連中しかいない。
このまま過去の回想に入ろうかと思ったのも束の間。もう目の前に王様と王女殿下がいた。
俺は跪いて、召喚された日に王から無理やり手渡された王国の秘宝ーー【天斬の剣】を腰から外して返上する。この行為は俺の役目、つまりは勇者の役目が終了したことを意味する。
数日前、俺は勇者としてこの世界を救った。全ての魔物を統べる魔界の王ーー魔王グラニュートを討伐したのだ。
召喚された日に元の世界に戻る条件として提示されたのが、この魔王討伐であった。
ただの非力な学生だった俺は元の世界に戻るために約2年間の冒険を経てついに魔王を討伐し、今では勇者とまで言われる存在になった。
「……これまでの大義。ご苦労であったな。勇者リューヤよ」
国王は直接その剣を受け取り、俺に優しく笑いかけた。
本当はリューヤじゃなくて諒夜ーーりょうやと発音するのだが、訂正するタイミングを見失って結局最後の最後までリューヤと呼び続けられた。
国王は他の貴族連中とは異なり、俺に良くしてくれたのを覚えている。彼の支援のお陰でたった二年で魔王を討伐できたと言っても過言ではない。
「……もったいなきお言葉」
俺も国王に笑い返す。
愛想笑いではなく、感謝の気持ちを伝える笑顔だ。
最初は異世界で勇者なんて最悪だなんだと愚痴っていたものだったが、今となればほとんどがいい思い出に変わっているのだから面白い。絶対に元の世界では経験できなかった貴重な経験をたくさんした。
この世界に来てから何度も何度も死にかけた。
腕が吹き飛んだ。脚が爆散した。腹に大穴が開いた。首がもげた。毒をもらい数日吐き続けた。何度も三途の川に足をつっこんだ。何度も走馬灯を見た。
本当だ。走馬灯を覚えてしまうくらい走馬灯を見たんだ。
──ちょっとまて、
──死にかけた思い出しかねぇじゃねぇか……
良い思い出を思い出せなくて、
若干グロッキーになっている俺に王女殿下が近づいてきた。
「本当に元の世界に帰ってしまわれるのですね?勇者様……」
王国の王女ーークラリス王女は俺の両手をガチッと握る。
目をうるうるとさせ、何か言いたげにしている。
「…もちろんです」
「しかし…あなたはこの世界を救った英雄でーー」
俺は今元いた世界ーー地球に帰還しようとしている。
剣と勇者の称号を返上した今、俺に残された最後の仕事は元の世界に帰ることだけだ。
この世界に来た時、胸に誓ったんだ。必ず地球に帰還すると。
「クラリス様、何度も言いましたでしょう?俺は勇者の器があるわけでもないし、この世界に根付くつもりもありません」
「そう…ですか」
ブロンドの綺麗な髪が寂しそうに揺れる。俺を掴む手が離れ、代わりに俺の頬に小さな唇が当てられる。周りからはどよめきと歓声あがっている。中にはこちらを睨む者もいた。ここにいる大半は大貴族。クラリスの父、つまり国王すら見ている中で中々大胆なことをやらかしてくれたようだ。
「……おいおい。一国の王女が何してるんだよ…。余所者の俺を良く思わない貴族も多いんだぞ?」
恥ずかしさを隠すように目を逸らして、頬を指先で掻く。
「そんなの関係ないです。私の気持ちはニ年前から良く知っているでしょう?」
小悪魔のような笑みを浮かべてクラリスはそう言った。
クラリスはいつも俺を揶揄ってはあの手この手で誘惑してきた。一国の王女がすることではないが、良くその誘惑に耐えてきたと思う。自制心の強さも勇者並に成長したと言うことだろう。まぁ、実際は王女に手を出すリスクが怖かったただのチキンなのだが。
クラリスはいつになく目と頬を赤らめながら、
小さく、そして温かく微笑む。
そのまま何も言わずに俺の瞳をじっと見つめた。
「……クラリス。達者でな。本当に楽しかったよ。今まで支えてくれて本当にありがとう」
「こちらこそ本当にありがとうございました。魔王を討伐し、この国を救ってくれたリュウヤ様にもう一度感謝を申し上げます。そして向かうの世界での幸せを心から…願っています」
クラリスの瞳から大粒の涙が溢れる。クラリスは王様と一緒に後ろへと下がり、代わりに魔道士達が出てきて俺の周りを取り囲んだ。
──ああ、遂に、遂に帰れる。
「……さよならだ」
「待って!リュウヤ!私は本当に心から貴方をーー」
クラリスが俺の足元の魔法陣に近づかないように周りの近衛兵に抑えられる。俺の方へと手を伸ばし、必死に叫んでいる。
俺の足元の魔法陣が赤く発光し始めた。
あぁ、クラリスは数ヶ月は落ち込んだままだろうな。
あぁ、そう言えば宿屋のおばちゃんに挨拶し忘れたな。
あぁ、ドラゴンの世話はどうなるんだろう。
あぁ、あのクソギルド長の顔面一発くらい殴っとくんだった。
やがて光は俺の全身を暖かく包み込み、そして俺の身体はふわふわと宙に浮いた。その所で俺の意識は完全に途切れたのだった。
****
「戻ってきたのか…」
俺の地球帰還後の第一声はそれだった。なんたる平凡なコメント。事前にもっと良い言葉を考えておくべきだったと少し後悔するが、そんな事よりもやはりやっと地球に帰ってこれたという感動で胸がいっぱいになっていた。
異世界では常に死と隣り合わせ。そんな中、よく死なずにここまで来れたものだ。記憶は曖昧だが、異世界では多分…ニ年ともう少しくらいは過ごしたか?時間の進み方が地球と同じとは考え難いのだが、クラリスの話によればあまりズレは生じないように帰還させてくれているらしい。
俺は足元に落ちていたスマホを拾って日付を確認する。スマホの電源はちゃんとついており、きちんと日付が表示された。
2023年7月10日。
俺が召喚かれてから一ヶ月ほど経過していた。
確かにあまりズレは生じていないが、こちらの世界で俺は一ヶ月行方不明だった訳なのか。
──ということは、
今は俺はまだ高校生というわけだ。着用している制服と見慣れた屋上の景色を見て確信した。俺が召喚されたのは、ここ。屋上だ。
授業をサボるために屋上で昼寝をしていた所、急に魔法陣が出現して、俺は異世界召喚された。あの、赤い変な魔法陣のことだ。当時は18歳。異世界の時間の進み方ががこっちと同じだと仮定して、プラスニ歳。つまり、俺は本来は20歳というわけだ。お酒だって飲める年齢だ。まあ、あちらの世界で既に飲んでいるので、あまり関係は無いのだが。
「見た目は子供!頭脳は大人!……か」
そんな冗談を言いつつも、俺は久しぶりに地球の景色を堪能しようと、鉄柵に近づいた。
いつも、ここから街の景色を眺めていたものだ。
街の景色を眺めている間は何も考えないでいられた。
ここで授業をサボっていた理由は単純。いじめられていたからだ。
俺は着用している高校の制服を見る。偏差値50ほどの可もなく不可も無い普通の高校ーー神沼高校に俺は通っていた。桜をモチーフにしたありきたりな校章を見て懐かしさを感じる。
制服はボロボロで薄汚れている。たくさん落書きされていて、ライターで炙られたような跡もある。この制服を見ただけで、二年前の自分の境遇が思い出された。どれほどひどいいじめに遭っていたかは一目瞭然だ。良く耐えていたと思う。この時からかなりメンタルは強い方だったのかもしれない。
しかし、今はそんなことどうだって良い。もはや、今の俺にとっては過去のことだ。
俺は深呼吸して身体を柵の外へと乗り出す。今は久しぶりの街の景色を堪能しよう。
「……え?」
しかし、景色を見た瞬間、俺の思考は一旦停止した。
「なんだよ…これ…」
俺の目に映し出されたのは、荒廃した世界。あちこちから火の手があがり、建造物はほぼ全てボロボロ。道路にはクルマが乱雑に乗り捨てられており、何も動いていない。クルマ、信号、人、動物、何もかもが停止していた。何も動いていなかったのだ。そう言えば、静かだ。いや、静かすぎる。
「…え、なにこれ?」
ーーおかしい。ふざけるな。どういうことだ。
ここは俺の知っている地球ではなかった。
暖かく見守ってください!
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