2、呼び名
「リコ、おはよ」
改札口を通ると、後ろから声がした。
凪はその声に、振り返る。
「なんだ、安藤くんか」
凪は大袈裟に肩をすくめてみせると、安藤誠は楽しそうに笑った。
「ひでぇ、朝からその扱い」
「ていうか、私リコじゃなくて江釣子!何回言ったら分かるの?」
「でも、振り向いたじゃん」
「それは・・・っ」
誠の言葉に、凪もつられて笑ってしまった。
「なげぇんだよ、エツリコって。リコの方が呼びやすいし、俺は気に入ってるんだからいーじゃん」
気に入ってるんだから、って———と、凪は思わず呆れてしまった。
「クラスに莉子ちゃんいるでしょ?紛らわしいんだから」
「あぁ、斎藤?俺、アイツの名前とか呼ばないし」
誠といつものようにぎゃあぎゃあとやりとりしていると、凪は後ろからぽんっと肩を叩かれた。
「凪っ、おはよ!安藤くんもおはよー!」
「ナニナニ、二人とも朝から痴話喧嘩ー?」
振り返ると、仲良しの山形ニイサと末永綾子がニヤニヤして凪と誠を見ていた。
「違ーう!ただ、私はリコって呼ばれるのに抵抗があるから」
ニイサと綾子に必死に言い返す凪を置いて、誠はスタスタと先に行ってしまった。
「いい加減、素直になればいーのにねぇ」
誠の背中を見つめながらそう言ったニイサの言葉の意味が、凪には分からなかった。




