1、ふたり
「あ、雪だ・・・」
凪は思わずそう呟いていた。
今年の初雪は、去年よりもずっと遅かった。
手のひらには次々と白くて小さな雪が、落ちては消えていく。
「どうりで寒いはずだよな。」
隣で白い息を吐きながら、志堂が言った。
ホームに並んで電車を待つ二人は、毎朝こうして最寄駅で会う。
待ち合わせているわけでもない、ただ決まった時間にホームに来れば、そこにどちらかがいるからだ。
ちょうど電車が来て、二人は同じ車輌に乗り込んだ。
ドアが閉まると、小柄で人に押し潰されそうな凪を庇うように、すぐ目の前にはいつも志堂がいる。
凪はセーラー服のリボンをギュッと握る。
見上げたら、志堂の胸の位置に顔がぶつかりそうになるから、朝のラッシュに巻き込まれた時は、凪は俯いたままじっとしている。
「もうすぐクリスマスだね。」
「うん。そしたらすぐ冬休みだな」
「そだね」
志堂の言葉に頷いた時、凪はなぜだか自分の胸が軋んだような感覚があった。
「じゃあ、私降りるね」
ちょうど高校の最寄り駅に着いて、凪は開いたドアから弾かれたように飛びだす。
「うん。じゃあ」
志堂の言葉を笑顔で返して、凪は改札へと向かうのだった。