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その令嬢、称賛する

本日三話目

「おらぁ!」


 鎖からの追撃を躱し、即座に距離を詰めてきたクルツが手にしている剣を振るう。

 その剣は再び鎖によって防がれ、クルツを迎撃すべく先端をクルツへと向け射出される。


「下がりなさい! チビクルツ!」


 しかし、放たれた鎖はしゃがんだクルツの頭上へと飛び、さらにそこに飛来した光魔法によって消しとばされる。

 続けて放たれた光魔法を見たレイはようやくゆっくりと動き始め、光魔法を躱すのだが躱したはずの光魔法が分裂し、先程レイが放った鎖のように天から雨のごとくレイを狙って降り注いだ。


「以前より腕が上がりましたか? ターニャさん」


 降ってくる光魔法を自身の影から放つ鎖で撃ち落としながらレイは感心したような声をあげた。


「わたしだって努力してるのよ! ホーリーレイ!」


 ターニャが杖を振るい幾つもの光の矢を作り上げ、それをレイに向かって放つ。


 先程放った光魔法よりも速い魔法であるホーリーレイを見たレイは未だ降り注ぐ光魔法を鎖での迎撃を続けながら、濃密な闇の魔力を腕に込めて薙ぐ。それだけでレイに迫っていたホーリーレイは立ち所に消失し、その余波だけで地面にヒビを入れていき、退却途中だった生徒を吹き飛ばす。


「このぉ!」


 再び剣を突き刺さんとばかりにクルツが迫ってきているのだが目の前に迫る脅威クルツより遠くの脅威ターニャのほうがレイには問題だった。


「クルツ、邪魔ですわ」


 駆けながら魔法を構築しようとしているターニャから視線を離すことなくレイは繰り出された剣を体をわずかに逸らすことで躱し、そっと彼の体に手を触れる。レイが瞬時に作り上げた鎖をお返しと言わんばかりにクルツの体を締め付け、身動きが取れぬように拘束し、蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばした際にドレスがふわりと飜るがそこは闇魔法で真っ暗にしているので下着なんてものは全く見えない。


 蹴り飛ばされたクルツが悲鳴を上げながら地面を転がりターニャの方へと行くのだが、


「だから邪魔よ!クルツ!」


 転がってきたクルツを止めるわけでもなくただ蹴り飛ばし横へと弾く。ご丁寧に顔面を蹴り飛ばしてであった。


「わたしの修行の成果を受けなさい! ディバインチェーン!」


 ターニャの纏う魔力が大きく膨らみ、そして爆ぜる。

 ターニャの体から先端が鏃状になっている幾つもの光り輝く鎖が姿を見せる。それはレイが使っている闇魔法の色違いのように見えた。


「貫けぇぇぇ!」


 おおよそ貴族の令嬢が叫ばないであろう大声でターニャが叫ぶと。そして光の鎖はその声に呼応するように、解き放たれた猟犬のような速度でレイへと迫った。


「凄いです! ターニャさん! この前(わたくし)が一度見せた魔法を会わない間に習得するなんて!」


 そんな自分に迫る危機を見たにも関わらずレイはターニャに賞賛の言葉を送っていた。

 各属性には同じような魔法で属性が違う魔法が存在するためターニャが使ったディバインチェーンはレイが使った魔法の属性違いの魔法であった。


 レイが無造作に使っている闇魔法、ダークチェインだが実は闇魔法の中でもかなりの習得難易度を誇る。

 何せ鎖を一本作るのにも魔力を消費する上に鎖一本では使い物にならない。さらに鎖を一つ一つ自在に操るというのがまた難易度を上げているのだ。


 そんな超高難易度を誇る魔法をレイよりもふたつほど幼いターニャが行使したことにレイは素直に賞賛しているのであった。


「くぅっ! あんたのその上から目線が気にいらないのヨォォ!」

「あら?」


 素直に賞賛を受け止められないターニャは顔を赤く染めながら宙へ鎖を疾らせる。

 それを迎え撃つようにレイも「褒めたのになぜ怒られるのかしら?」という疑問を浮かべながらも迎撃をするべくダークチェインを放つ。


 光と闇の鎖が宙でぶつかり合い、互いの属性が弱点であるが故に宙でぶつかるたびに小規模な爆発が引き起こされ、二人の勝負と言っていいものかわからないものを見上げるだけであった生徒たちがその衝撃波で吹き飛ばされる。


「こんのぉ!」


 そんなまわりの惨状など目に入らないターニャはさらに魔力を込めたのか身体が眩く輝く。そして、それに比例するようにターニャが繰り出す鎖の量も増えてた。

 それでも微笑みを崩さないレイの繰り出す鎖の量には到底及ばない。

 レイのにとって使い慣れた魔法であり効率よく行使していることもあるのだろう。

 そしてターニャがまだ魔法に慣れていないことも大きい。

 ターニャが鎖を操り損なうのをレイは見逃さない。ジリジリと自分の方へと鎖が追いやられていくのを見てターニャは言いようのない焦りを感じていた。


(ま、まずいわ! このままではまたあの女に嘲笑われてしまうわ!)


 別にレイは嘲笑っているわけではなく妹がいたらこんな感じなのかなぁという感情から頭を撫でたりしているだけなのだが一端のレディとして見られたいターニャとしては馬鹿にされていると感じてしまうのである。


 何か起死回生の策はないかと周りを見渡し、のそのそと鎖で縛られたまま起き上がろうとしているソレを発見する。


「クルツ!」

「なんだよターニャ、まだお嬢に負けてなかったのか?」


 ご苦労な事で、とクルツは皮肉気な笑みを浮かべて肩をすくめる。

 そんなクルツの姿にターニャは額に青筋を浮かべるのだが頭に浮かんだ作戦を実行するためにはこんな奴でも必要と思い直し、怒鳴るのを我慢した。


「こっから反撃よ! アンタの力も貸しなさいよ!」

「まじかよ…… どう考えても無理だろ。こちら側は壊滅だぜ?」


 鎖で巻かれたままの状態でクルツは言う。

 なにせレイが無造作に放ったダークチェインでほぼ戦える生徒は皆無の状態である。

 探せば無傷の生徒もいるかもしれないがもう一度レイの前に立つのは絶望的であろう。


「安心なさい、囮はアンタだけよ!」

「鬼か! マビリット家の令嬢は鬼か!」


 あっさりと自分を囮扱いしてくるターニャにレイは唾を飛ばしながら抗議する。


「さっさと行きなさいよ!」


 しかし、そんなクルツの講義を聞かずにターニャはレイを指差す。そんなターニャの物言いに渋々と言った様子で鎖に縛られた状態で動き出そうとしたクルツであったが、そんな彼の足元に黒い鎖が忍び寄り、足元へと巻きつき拘束する。


「へっ?」


 間抜けな声を上げたクルツをよそに鎖は地面へと潜り始め、それは拘束しているクルツも同じように地面に引き摺り込まれる形となり、地面から首だけが生えているという奇妙な状態が出来上がった。

 そんな状態でターニャとクルツは無言で見つめ合う。


「わ、わりい」

「役立たず!」


 思わずというか本音で埋まったクルツに向かってターニャは叫んだ。

 その大声を出した際に魔法の制御が甘くなり、僅かにだが鎖の動きが止まる。そしてそんな僅かな隙すら見逃すレイではなかった。

 一瞬にして動きの止まった鎖を撃墜し、さらには新たな鎖を生み出しターニャへと放つ。


「しまっ」


 気付いた時にはターニャの守りの鎖すらほぼ破壊され、あとは頭上から迫る漆黒の鎖を見上げるしかできない状態であった。

 しかし、それでもターニャの耳には聞こえた。


「はい、わたくしの勝ち」


 少しばかり嬉しそうなレイの声が。


「ちくしょぉぉぉぉ! この文字化け令嬢ぉぉぉぉ!」


 大きな声をあげたターニャであったがその声は次いで大雨のように降り注いだ鎖の雨によって地面を破壊する音でかき消されたのであった。

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