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壊れた僕は悪魔と契約をする  作者: 庭城優静
8/11

終わりの前触れ

 警察の方は「朝早くすいません」と軽く頭を下げた。二人組の様だ、モザイクかかって顔色は窺えないが僕の顔を見て絶句したような所作があったが、礼節は崩さず話を切り出した。内容は予想通りの中身である。

「子供が帰ってこない。遅れると連絡があった。皆ゼミに通っていて、帰りのゼミで話し合いをしているのを目撃した学生がいる。その中に東地園夢さん、あなたもいたとか。先程あなたの親御さんの話によると帰りがいつもより遅く、帰ってきたら子供の様子が可笑しいと伺いました。・・・何か心当たりはありませんか?」若い声をした刑事と思われるスーツのモザイクはそう僕に問いを投げかけた。ニュース原稿を読み上げるかの様にスラスラとした口調だった。

 僕は少し間を空けて、こう述べた。

「・・・実は昨日の記憶が無いんです。無いというか朧げなんです、いつの間にか暗くなっていて気付いたら帰路していたのです。何か強い出来事でもあったのかもしれないです。今日は学校を休んでそれでも調子が戻らない様だったら病院に行こうと思っていたところで・・・。」

 こちらもスラスラと言葉を並べる。先程考えていた文章だ。

「・・・そうですか。お母さまの申していた通り、お疲れの様ですね。何か事件に巻き込まれた可能性が十分に高いと感じられずにはいられませんね。」

「失礼ですが、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?・・・何か思い出せれるかもしれないので。」

 ええ、どうぞ。と、渋い声の刑事が手帳を開く。

「僕と話していた・・・らしい方達が行方不明に?」

「ええ、いくらなんでも帰りが遅いと心配になった親の方々から通報があったんですよ。5件もね。同じ内容で行方不明となれば事件に巻き込まれたのではないかと調べた次第なんです。」

 成程、あの時7人で向かった。内5人の親が通報した。残り二人は僕と西之江真里亜の両親だろう。僕は遅いといってもその日には家に着いた。では、西之江真里亜の親は通報しなかった?放任主義にしても限度があるだろう。

「そうだったんですか、それにしても僕と行方不明になられた方達との接点は何でしょう?ゼミの前で話していたそうですがそれだけで僕の所にはこないでしょうに。」

「ああ、そうでした。話忘れていたのですが行方がわからない方達は同じ部活動に所属していることがわかりましてね。」

 あえて言わなかったのか、渋めの声の刑事はやはり僕に狙いをつけている節がある。

「部活動・・・そういえばオカルト研究部に所属していました。僕も他の方達も。だから僕が何か知っているのではないか、ということですか。」

「その通りです。おい、あれを。」若い刑事に首で指示を出す。刑事は黒い鞄からファイルを取り出す。

「こちら行方不明者の顔写真です。親御さんから預かりました、ご確認を。」

 ご確認と言われてもモザイクがかかっているんだ、確認の仕様がない。写真に眼を通す振りだけしておこう。

「オカルト研究部と言えば、部長がいましたよ、名前は西之江真里亜さん。あまり部活動に参加していなかったので接点が少ないので彼女の事はよくわからないのですけど、彼女に聞いた方が早いかもしれないですよ。」

 情報を少しでも多く知っておきたい、あえて彼女の事を知らない様に振る舞ってみた。刑事は僕を疑っているようだから何も知らない様に話す方が動きやすいと思ったからだ。勿論、刑事から得られる情報なんてわかっている。

「・・・あー、西之江真里亜さんですか。残念ですが・・・。」

 思った通りの反応だ。でもそれでいい。ここで勘ぐられ過ぎるとこの後の行動に支障が起きる、実に面倒である。

 刑事は僕の母親の方を見る。少し離れた所で座っていた母は何か言いたげな感じだった。顔が分からないので難しい所だがどちらも伝えようか悩んでいるような素振りだ。

「・・・やはりお疲れの様ですね、申し訳ない。こちらも手を拱いていましてね、また別日にお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「ま、待ってください。僕はそんな変な事を言いましたか?よければ教えて頂けると嬉しいのですが・・・。」

 何だ?そんな変な事を言ったのか僕は?西之江真里亜は他の人達と同じで行方不明なんです。でいいじゃないか。どうしてそんな態度を取る。母親もだ。

 僕は何となく視線を写真の方に配る。そして眼をおそらく丸くしただろう。刑事が重い口を開く。

「・・・西之江真里亜さんはこの事件より前に行方不明なんですよ。申し訳ない事ですが捜索も半ば諦めていまして・・・。」


 そう、行方不明者の写真のリストは6枚。その全てがモザイクかかっていたのだ・・・つまり西之江真里亜はあの事件にいなかったという事になる。どういうことだ。じゃあ、誰なんだ、僕が西之江真里亜と思っていた女性は・・・。


 僕はゆっくりとアリアの方を見る。アリアは今までの中でもとびきりの笑顔を浮かべていた・・・恐ろしいくらいに。


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