はじめてのお出かけ。準備編
食事が終わり、まったりと寛いでいると、背後から声をかけられた。
「α138号?聞かないナンバーだね。新入りかい?」
そこには背の高いグラマラスな黒タイツ女様が立っておられました。ちなみにナンバーはα59号と表示されてます。
「そうなんですよ、今日目覚めたばっかりのほやほやですよ。」
研究員20号は得意げにわたしを彼女に紹介した。
「ほやほやかい。いいねぇ、あたいはα59号っていうんだ、よろしくな!」
バンと背中をたたかれ、せき込んだわたしは改めて彼女の顔を見直した。そこには表情は分からないはずなのに何故かにやりと笑っているα59号の顔が見えた気がした。
「ところで20号ちゃんよ、この娘のチュートリアルはおわったのかい?」
α59号は研究員20号に尋ねた。
「まだまだこれからですよ。実戦投入はだいぶ先のことですね。」
「何ちんたらやってるんだい、ヒーローのおかげでαナンバーも歯抜けになってきているんだからちゃっちゃとおやりな。」
α59号は研究員20号に発破をかけ、その場を去ろうと2,3歩進むがそこでこちらを振り向き何かを思いついたらしく、手招きした。わたしは自分を指さすと、α59号はうんうんとうなずいていた。ビクビクしながら席を立ち、近づくとガシッと肩をつかまれた。
「チュートリアルとかちんたらやってるより、1回実戦に出ればあれやこれやの感覚なんてものは身につくはずだ。ちょうど今から手頃な作戦があるから連れっててやるよ。」
わたしはα59号にドナドナされて食堂を後にした。
わたしがまず連れてこられた場所は、戦闘装備装着場である。そこにあるカプセルに放り込まれると、身体が拘束され、サイズぴったりの胸部、腕部、脛部にアーマーが装着される。さらに前後に分かれたマスクが被せられボルトで固定し、解放された。同時にα59号も同じ戦闘装備で解放されていた。α59号の姿を見ると黒にシルバーが映えた戦闘装備はとても格好良く見え、自分も同じ恰好なんだと思うとテンションが少し上がってしまった。
α59号からチャクラムみたいな剣を持たされ、
「イ゛ー!(私についてこい!)」
と声を掛けられたのでわたしも恐る恐るか弱い声で
「イ゛ッ、イ゛ー!(はっ、はい。)
と返事を返したのだった。
あとから聞いたのだが、戦闘用マスクを被ると戦闘員同士で普通に会話していても、それが高度に暗号化されたものになり、一般人に聞かれてもイ゛ーとしか聞こえないそうだ。
そして次に来た場所はブリーフィングルームだった。わたしたちより先に来ていた下級戦闘員10名が並んで出迎えた。もちろん同じ格好である。そしてしばらく待つと今回の行動隊長であるカメ怪人ゴファーが現れた。のそのそと歩く姿は2足歩行のリクガメである。違いがあるといえば、両手が長く大きなかぎづめになっているくらいであった。ゴファーはわたしたちを見ると、
「αが一人多いようだが?」
と先任のα59号に問い。α59号はわたしを一歩前に出させた。
「この者は最近採用されたα138号と申します。此度の作戦に連れていき、実地で我々の勇姿を見せ、真の戦いとはどういうものか理解させたいと考えております。」
α59号の言葉にうなずいたゴファーは
「ならばよし。おぬしは少し離れた所から見ておれ。」
「イ゛ー!(わかりました。)
ゴファーの指示に返事をすると、ゴファーは今回の作戦内容を皆に伝えた。それは脳に直接内容を詰め込まれるようなで、全くの初心者であるわたしでもすらすらと理解できてしまった。
ちなみに今回の作戦をかいつまんで言うと、XXX市の里山をつぶしてして作られる高速道路の建築現場を襲い、建設中の高速道路と現場の機材を破壊することだ。そして現場にいるヒーローは倒してもいいが、人間は絶対殺すなとの命令だった。
解せぬ、なぜ予告状を出す?そして絶対人間を殺すなと念を押す??不可解な命令に理由を聞こうと思ったが、まわりは当然のように無反応なのでここは空気を読んで黙っておこう。あとで研究員20号にでも聞けばよい。
そして移動時間になると駐機場にあるトラックに分譲して出発した。なんでも目立たないのが良いというのだが、運転手も戦闘員姿なのだからバレバレじゃないだろうか?なんか抜けてる。