戦闘員の食事事情
今日の更新はこれで最後。
「じゃぁ、食事に行こうか、α138号。」
映像を見終わると、ドアを開き、研究員20号はわたしを連れて、食堂へ向かった。通路は先ほどとうってかわって明るく、余裕をもって作られており、様々な黒いタイツ人間が行き交っていた。タイツ人間とすれ違うたびに恥ずかしがっていたわたしは、途中で自分だけが羞恥心を持っていることを恥ずかしく思いだして、開き直ってしまった。
「そうそう、堂々としてればいいんだよ、みんな同じ格好なんだから、気にする奴はだれもいないよ。」
気楽に言う研究員20号に対して、いや、確かにみんな同じ姿ですけど、男女差はあるでしょ。ムラムラしないの?と心の中でつぶやくと
「あと、このスーツの特性上、発情することはあっても稀なうえに、同衾もできないよ。」
と答えてきた。こやつ、心の中が読めるのか??
さて、そうこうするうちに食堂についた。
「好きなものを頼んでいいよ、ここは食べ放題の上にタダだから。」
食べ放題でしかもタダという言葉に反応し、あれやこれやと注文するわたし。研究員20号はちょっと引いていたが気にしない。腹が減っては戦もできぬ、という言葉もあるし、今ならいくらでも食べられる気がするもん。
研究員20号はわたしが食べている最中もお構いなしでいろいろ解説してくれる。食堂はわたしを含むαナンバーと研究員しか利用しないらしい。上には首領と作戦行動指揮官たる怪人衆が存在するが、彼らは味覚が変わってしまったため個別に調整された食事を個室で食べてるそうだ。下には下級戦闘員がいるのだが、こちらは遺伝子組み換え促成育成のクローン体なので、一まとめにして流動食で済ませている。なんか味気ない話だなぁと思いつつ、今は自分の食事を楽しもう。
最後のデザートを堪能するわたしに対して、
「いやぁ、よく食べたねぇ。ハンバーグに親子丼、スパゲティとオムライス、最後にステーキ&うな丼からのデザートにケーキ1ホールってどんだけはいるの??」
あきれる研究員20号の手にフォークを突き刺してみる。
「乙女の食事にとやかく言うなんて無粋ですわよ。ホーッホッホ。」
「こわいねぇ、今度からは気を付けるよ」
研究員20号はおどけたふりをしつつ、平気な顔をしていた。
おかしい??フォークを刺したはずなのにまったく気にしてない。なぜかと彼の手を見てみるとフォークのほうがひしゃげていた。
「ああっ、気にしない気にしない。このスーツはフォークを突き刺したぐらいじゃ傷つかないから。」
なるほど、スバラシイ防刃性能。
「このスーツは一生ものだよ。防刃防弾対毒ガス性能はもちろんのこと水中も呼吸を気にせず活動できる上、防臭効果もばっちり、汗や垢などの老廃物はもちろんのこと、排泄物も勝手に処理してくれて体はずっときれいなまま。すごいでしょ。」
自信満々に脇の匂いをかがそうとする研究員20号.。
「ちょっとやめてよ!」
それを押しのけようと頑張りつつ、疑問が頭をよぎる。これがスーツだとして勝手に老廃物や排泄物を処理してくれるってどうゆう仕組み??
するとスーツ全体が波打ったような感じがして、嫌な汗が流れた気がする。