彷彿の廊下
そこは家だった。
明るく、愛らしく、クラシカルな洋式の屋敷
それでいて、
どこか陰鬱で、あたかも惨劇と悲劇を繰り返した面の館。
廊下の壁々に陳列する、素晴らしき絵画達を剥がしたならば
きっと悪夢の痕が聖歌を謳うのでしょう!
まァ それは佳いとして、
外はどうやら白昼のようだ。
夜でなければ、地下でなければ、
照明は穏やかに闇と共存しないだろう。
つまりは、照明が煌々とし過ぎている。
軋む眼を細め、廊下のながれる先を睨んだ。
まさに無機物、と褒めたいほど冷徹な扉は、
見覚えがあった。
1つだけ着いた、亀裂。
そこから、また 雨が溢れ て、きそうに見えるんだ。
【 n rse y 】、と掠れ錆びたルームプレートが恨めしそうに僕を視る
ああ、なんだったかな、この室は
追憶しそうになると同時に、この廊下が酷く過去のものに思えた。
壁紙は裂け、
絵画は劣化し、
花は枯れた。
果肉のように厚く、みずみずしい花弁。
いつも生気を養って、我らに酸素を与えた。
瓶が爪先にぶつかる。
空だが、想いの詰まった瓶は、泥に汚れていた。
乾いた泥の空瓶には、草原に居たままのシロツメクサが横たわる。
たおやかな緑の茎は、変に癖がついていて、
それが、花冠をつくるのに苦戦しただろう事を証明していた。
誰に贈ろうとしたのだろう。
その無垢な呪詛を。