プロローグ
中二病まっしぐらな雰囲気の作品です
序章
五月一八日、八時一五分――。
「おはよう~」
そんな覇気のない声を常套句として使った。
教室の扉を開けるのと同じように口もそう開く。
何の変哲もない挨拶。
決まり文句のように、
「おはよう、穂希」
「おはようございます。平座さん」
「おは~まれッチ」
そう、返される。そこに感情の色は無い。平座穂希が来たから、反応した。平座穂希がそう言ったから、そう言い返した。
ルーチンワーク。
決められた通りのことを決められた通りにする。至極単純な作業。けれど、社会においてこれほど重要で精密な作業は無い。人間関係を決めるはじめ。会話のはじめ。
だから疎かにはできない。平座穂希は誰にでも愛想笑いと共に挨拶を交わした。
「ういっす。穂希~」
自分の席――窓際の最後尾へと着くと、前の席に座る天パの少年がイヤホンを耳から外し、椅子ごと振り向いた。
「おはよう~。悠真」
「おうおう相変わらず怠そうだな。夜中遅くまでエッロエロなもんでもみてたのか~」
「そうじゃない。今日もまた授業かーと思うとな」
週末の金曜日。
午前に四科目、昼休みを挟んで午後に二科目して放課後。事前連絡で何もなかったから今日の授業はいつも通り。
教科書は以前のページの続き、体育はチームメイトを変えてサッカー。さして変化のない一日の予定に穂希は辟易していた。
「めんどいよなー、俺はまだ四時限の現国で愛衣先生のおっぱいが拝めると思えば耐えられるか」
「君が羨ましい。僕は見てるだけじゃ物足りないから……」
「――てめぇ、見てるだけじゃん物足りないだと、大人か!? なんだ、もうチェリーボーイじゃないのか!? どうなんだッ!?」
血眼、涙目で制服を掴む。
身体が揺さぶられるがそれに身を任せる。
この友人はいちいち反応が面白い。穂希は軽く笑みがこぼれた。
「ってめぇ笑ったっていうことはそういうことだな。うぉおおおおッ」
「そうじゃない。面白いと思ったから」
「ハァ。なんというか、お前といると飽きないが、心がダメージを負ってる気がしてしゃーない」
「それは僕もだよ。悠真とつるんでると飽きない。潤っている」
「だっかっら……なんちゅう男だ」
チャイムが鳴り響く。
それを皮切りにぞろぞろと生徒の波が動き、自身の居るべき場所――席へと着いていく。
全員が揃った後、一分も経たないうちに担任が入ってきた。
五月一八日、一三時〇〇分――。
昼休みの食堂はごった返しになっていた。穂希は早めに到着し、友人と席を陣取っていた。
場所は窓側の四人掛けの席で、出入り口に近い椅子に穂希は腰かけている。
「そういや、この前のテストどうだった?」
天パのかかった友人に投げ掛けられた台詞に他に同席している友人二人は隠す気も無く普通に答えていく。
「穂稀はどうだったんだ?」
「僕? 僕は中の上かな」
「具体的に」
「三八三位中、一五〇位。五教科平均八二点だったよ」
野菜カレーを食べながら、穂希は正確にそして簡素に答えた。
「お、おう――ォオオオオオオッ」
若干の狼狽を含みつつも穂希の返答に満足をしたのか、天パの友人は自分の昼食に手をつけだした。かと、思えば今度は、出入り口の方を瞼がはち切れんばかりに目を開くほどに注視した。
何事かと穂希達三人もそちらに意識を寄せた。
「あ、ああ。狂留三佐さんか」
「誰?」
穂希の素の問いに友人三人はそれぞれ持っていた箸やスプーン、フォークを滑り落とし、カランと乾いた音が響いた。
「マジ!?」
友人の驚きをよそにとりあえずとばかりに穂希は彼女――狂留三佐を観察した。
間違いなく容姿は校内でもトップだろう。
名前とは裏腹に、陽光を思わせる銀髪のショートカット。目鼻立ちのはっきりとした顔立ちはきつめの印象を強く受ける。背丈も日本の女性の平均より高く170近くはあり、制服のスカートから伸びる白い肌の脚は周囲の女子よりもしっかりとしている。しかし女性特有の柔らかさも残っており、しなやかなつくりだ。総合的に見て軍犬のような感じだった。
「狂留三佐。名前は知らなくてもその見た目で知名度はかなり高い女子。まあ、ただ中身がかなりきついからとっつきにくくて一人で居る率が高い。というか、一人で居る所しか見たことない」
「因みに、告って玉砕した男子は数知れず、そこのアホもそれだったり」
「アホ言うなしッ」
と、天パがその下種の目で狂留三佐の脚を目でしっかりと追いながら、友人の情報にツッコミを入れてきた。
「いや、あれは失敗したわ。うん」
その時のことを思い出したのかしみじみとした物言いだ。
「しかし、あの毒舌中々良かった……また罵ら――ゴホンッ」
憂いとかではなく興奮だったことにさすがにその場にいた全員が引いた。
「ま、まあともかく。有名人なんだよ、三佐ちゃんは。それを知らないっていう穂希は稀有な部類だぜ?」
「初めて見たし聞いたけど、確かに見た目だけならヤりたいな」
「「「……」」」
「お、おま、さらっと爆弾発言すんなよ!」
「そう?」
「そら、こんな大衆の面前で」
「君に言われるのは、なぁ~」
天パの友人は心外だと言うような顔を作り一瞬こちらに意識を寄せたが、追っかけている狂留三佐が椅子に座ろうとしている瞬間だったために、何を言おうとした口を閉じて彼女のスカートの奥を覗くのに躍起になっていた。
五月一八日、一七時〇〇分――。
放課後ともなれば、校舎は閑散としている。学生の大半が部活動に勤しむためさっさと教室から去って行った。穂希の友人もそれぞれが部活や、生徒会活動などの理由で先に教室を後にしている。
しかし穂希は、帰る素振りも無く、自席でぼやっと虚ろな目で外を眺めていた。
――猟奇的殺人ねぇ……。
つい、三〇分ほど前に担任が教室で注意事項として促していたのは、市内で立て続けに殺人事件が続いているから帰宅時は気を付けろ、というものだった。そのために部活動も日が暮れないうちに切り上げるようにと顧問にも通しているようで運動部は少しでも長く練習をしたいと即荷物を持ち教室を飛び出す準備をし、女子は「きゃー怖いね」、「一人じゃ帰れない」などと、か弱い女の子を演じている。内心ではそういうことは自分に関係ないと無関心なのは目に見えている。けれど、そういう異性の方が男子受けがいいと言うことをしっかり学習しているために口にしているのだ。
それを穂希は悪いとは決して思わない。少し危ない例えだが、金がないから強盗をしようとするのと同じだと彼は同一視している。
結局欲しいものを手にするための手段の一環なのだ。
そんなことよりも穂希がずっと意識しているのは殺人事件の方だった。特に猟奇的ということに。どういった風に殺しているのか、それに強く惹かれているのだ。
そこには穂希の知らない世界が広がっているのだ。
自分はどうも異常なことや知らないことに興奮しているようだ、と窓ガラスに映る自分の嬉々とした顔から読み取ってしまった。
しかし、罪悪感や拒否感はなくむしろ自覚したことにさらに動悸は激しくなる。
――目の前で起きないかな。
眼科で練習に励むサッカー部の元にしれっと男が一人入ってきて、ロングコートの懐からショットガンを手に取って乱射する。そうして男子の身体は風穴だらけ、間近で受けた学生は原型すらないくらいにぐちゃぐちゃで……。
「おい、お前。いつまでここに居るんだ」
棘のある美声が鼓膜を叩いた。
思考の邪魔者が誰なのかと振り返れば、白い人形の皮を被った軍犬だった。
「ああ、あなたか……部活か何かでここを使うのかな?」
「そういうわけではない」
「じゃあ何で?」
うざったいとばかりに、小さく息を吐いた狂留三佐は二の腕を前へと出すとそこには『風紀』と刺繍の入った腕章があった。
「風紀の人が何か?」
「……ここまでやっても解らない、お前は馬鹿なのか?」
「この前の学力テストは平均八二点だったから、ひどく馬鹿だとは思っていないけど?」
「なるほど。お前は私を馬鹿にしていると」
茶化している事を喧嘩でも売ってると取ったのだろう。双眸はひどく冷たくなった。
「理由もなしに帰れと言われるのは、どうも嫌いでね。何かと理由をつけて、帰れと言われた方が僕は動くタイプなんだ」
「ッチ、クソメンドイな、お前。なら理由を与えてやる。最近、何かと物騒だ。部に入っていない奴はさっさと消えろ」
「なるほど。ならそうさせてもらうよ」
ナイロン生地のスクールバックに机の中身を適当に詰め込んで、ゆっくりとした足取りで扉をくぐる。
「あまり面倒をかけるな。私は忙しい。お前らとは住む世界が違うんだ」
すれ違いに毒を吐いていたが、穂希からすればそれは『羨ましい』の一言だった。
誰とも会うことのない閑散とした校舎を出て、顧問の怒声、男子の掛け声、女子の甲高い声、管弦楽部の少しずれている演奏を背に校門をくぐる。
かれこれ一か月以上往復している通学路兼帰路というのは、意識を思考に割いていたとしても体が覚えているもので、足が勝手に自宅へと向かっていた。
地方都市であるこの市はオフィス街と高級住宅街で成り立っている。穂希の通う学校はオフィス街の一角にあり、頭の低い校舎からは様々な企業の入ったビルを見上げることができる。
レンガ調の歩道はブレザーを着た学生、スーツを着たサラリーマンの大半が往来している。遠目からだとその二者に変わりは無く、市外の人間からすると一種のパフォーマンスに映ると、どこかのテレビ局の番組で流していた。
そうしたオフィス街を抜けていくと頭の高いビルがポツポツと減り高級住宅街と二分するように走る高架橋が見えてくる。
高架下の少し長めのトンネルを渡る。出た先の光景というのは目を疑いたくなるようなくらいに違う。今まで規則正しく渋滞をつくる車のマフラーから漏れ出る汚い音や携帯でペコペコと謝りながら通話する人、OLの煩い会話。そうした雑音が嘘と思えるほどに静かなのだ。
造成された街区のため整然とされているがここまで『綺麗』な街並みはそうない。
平たく言えば落書きにしか見えない現代アートの中にポツンと写実画が描かれているような市なのだ。
静寂に飲まれた住宅街の広い公道をさらに歩く。穂希の自宅は少し先に見えるペンション風の屋敷。
一人で住むには広いその家の玄関を開けて中へと入りそのまま自室へと直行した。簡素な――勉強机とベッド後は部屋で唯一主張している大きな本棚のある自室に着くも着替えることすら億劫で、ブレザーだけ脱ぎ捨てベッドに横になった。
五月一八日、一九時二七分――。
「ん、んん」
いつのまにか寝ていたようで、時計は帰宅してから一時間以上経過していたことを知らせていた。
「……退屈だ」
どうも高校に入ってからも何も面白くない。ドラマやアニメでは高校を舞台としているモノが多いが、穂希の人生はどうやら現実過ぎている。
少女漫画のような恋愛もない。誰かが誰かを好きになって、告白して簡単に付き合うか、玉砕してすぐ違う異性へと移り同じことを繰り返して当たるまでクジを引き続ける。
ただ少女漫画と違うのは、性行為に走っていることだ。そう考えれば『十八禁美少女ゲーム』の恋愛の方がいくらか現実的だろう。
穂希自身も五月頭に告白されたが、自分の人生はその方向ではない、と感じ取り断った。
それにコメディーとも違う。ならば、猟奇的殺人も起きた事だ、サスペンスかミステリー? それも自分には合わない。結局求めているのは劇的な何か。起爆剤。その一端がみえたのは、『猟奇的』――異常性だった。
「――傍観者で良いからバトルモノか……」
普通に視聴しているアニメなどは二次元、空想だからこそ片付くが、それこそ現実で起きてしまえば、異質の以外何物でも無い。剣で滅多切りにされ殺された戦士。火で焼き殺される魔法使い、特殊な力で殺される能力者。それよりも、異常で異質なのはそれを受け入れている物語の主役達の精神だ。剣で肉を割いた時の感触。目の前で焼け死ぬ時の焦げる肉の臭い。それらを感じて普通で居られるそれに穂希はいつも驚いていた。
そんな世界に行けば自分は間違いなく一人殺せば吐く。二人、三人殺していけば、ましになっていき、一〇人も殺せば慣れてくる。一〇〇殺せばそれを普通だと思えてくるのだろう。
世間一般でこの思考は逸脱している、言葉を選ばなければ狂っている。
だが普通の高校生よりも早くに色々と経験している穂希はそれが解っていながら、綺麗なケースに入れられた美しい世界よりも壊れたごちゃごちゃとした、人が人として成り立ってないような世界に憧れてしまっている。
「っと宿題があった気が――」
穂希はベッドから立ち上がり、スクールバックを漁った。
このまま沈思黙考にふけるもいいが、身分は高校生だ。宿題はきちんとやり遂げなくてはいけない。
「ん?」
しかし、どこを探しても宿題のプリントが見つからない。そもそもとして提出用プリントを挟んでいるクリアファイルがどこにも無い。
「あ」
机の中を確認せずにカバンに仕舞った時に取り忘れていたと推測した穂希は、嘆息しつつ重い足取りで自室から出て、玄関で自転車の鍵を持って出る。
夏が少し先で待っているとは言ってもこの時間帯は肌寒い。山肌を撫でるように降りてくる風が拍車をかける。しかし、今さら、部屋に戻ってブレザーを回収するのも面倒。
「走ってる間に温まるか……」
結論付けて、穂希は庭先に待っている愛車――というにはそんなに乗っていないロードバイクのロックを外す。
フレームがカーボン素材な分、すごく軽く、タイヤも華奢で繊細なイメージだが、搭乗者の体重などものともしない安定感を与えてくれる。
漕ぎ出しも軽やかでぐんぐんとスピードは上がり、地面の小さな凹凸から来る振動はフレーム、ハンドル、サドル、……あらゆる部分、部品で軽減、吸収し穂希へと流れる振動は全くないとも言える。
飛ぶように走り、風と一体になっている爽快感を味わいながら刹那の内に変わる景色の中を突き進む。
高架橋と上下で交わるトンネルを抜けると帰路に着いた学生、サラリーマンが市内から消え、彩るのは街灯と月光。住宅街の静寂が侵食したようにオフィス街は音を失っている。
時間にして一〇分と少し。学校前へと到着した穂希の視線の先――校舎の壁に取り付けられた時計は、長針が一〇を指したばかりだった。
北門と呼ばれる校門からではなく西門の方へと回り、そこから敷地内へと入り西門と平行に並ぶ自転車置き場に自転車を止めた。
校舎の規則的に並ぶ窓ガラスの奥は闇が支配していた。
「先生はもう帰ったのかな?」
テストを終えて採点や諸々の仕事を終えての金曜日だ。部活の顧問をしている先生たちも含めて飲み会でも行っているのだろうか。
ひどく静かで、自分の足音すらはっきりと聞こえてくる。
裏口から侵入し自分の教室を目指す。最上階の一番奥、一年五組の教室札を確認して扉をくぐる。自席の前まで着くと、窓から差す情景に目を奪われたと同時に鳥肌がたった。
運動場に人が二人、対峙している。片方は学校の制服を着た月光に照らされ銀の髪が輝いていた。
「狂留三佐――か」
もう一人は露出度の高い、血塗られたようなワインレッドのドレスに身を包んだ、濡れ羽色の長髪の女だった。顔立ちは妖艶で男を魅了するに十分過ぎるほど整っている。
それだけならばまだ現実的。
「でも、なんだ、あれ?」
おぼろげだが、狂留三佐の背中に『何か』が浮いている。それはどこか『先の尖った鋼の翼』を連想させる。
「巷で噂の殺人鬼はお前か、女?」
「あら、こんなところに呼び出したかと思えばそんなことを訊くためになの? わたくしはもっと熱~いナニカを求めてかな、と思ってたのに……」
機械の様な平坦なセリフ回し、対して感情を隠す素振りもない一音一音にその時の気持ちを乗せたような言い方。
「ほう? ならこのままお前の血をお前自身に浴びさせてもいいんだぞ?」
「あら。自分の血に浸かりながら果てる……最高の自慰になるわね」
「クソ売女……世の毒だ。このまま――死ねッ」
「それは言い得て妙ね」
駆け出しと共にトップスピードに乗った三佐が薄ら笑いを浮かべる女へと右手を振るう。そのままならば、絶対に届かない距離だ。しかし、その手には背中に浮いているモノと同じ『何か』が強く握られている。それならば確実に相手に届く。そして本能的にそれが相手を殺すものだと伝わってくる。
女は穂希よりもしっかりと理解し、知覚しているのだろう。正確無比な命を刈り取る攻撃をさも踊るように躱している。
「あら? お国の番犬ちゃんはその程度なのかしら?」
「――舐めるな」
狂留三佐が空いている手でさらに背中から追加で一本引き抜くと刺すように鋭く宙に走らせた。女が難なく避けたかと思うと、狂留三佐がさっきまで居た地点から瞬きの間に消え失せ、次に視界に入った時は敵の背後に現れている。そのまま握りしめた武器で相手の背中に赤い軌跡を描く。
「あぁ……」
女が大きく飛び退いた後、恍惚とした表情を浮かべたかと思うと、
「痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイたいいタいいタイイタいイタイイタイイタイタイイタイイタイイタイタイタイタイッ――――――――――」
自分の身体を抱きしめるように見えるが、自分の身体を締め上げ掻き毟っているようにも映る。目は血走り、三日月のような口から涎が糸を引いて地面に垂れている。
「キヒヒヒヒヒヒ」
その美貌がひどく歪み切っている。
「壊れた人形みたいだな――今、楽にしてやる」
狩人が無慈悲に幕を下ろそうとした瞬間。
「――な」
身体がグラッと来たかと思うと身体から突如熱が奪われ、その熱を凝縮したモノが脳みそを直接炙るような、熱さを越えた痛みに襲われた。
さらには呼吸をすればするほど痛みが骨身に染みる。
「な、にをし……た」
「キヒ。問題ですわ――わたくしの〝権限対象〟は何でしょう?」
「し、るか……そ、んな、こと」
「キヒヒヒヒ。だからですわ。きちんと調べ上げないからこうなるのです。本当は〝あなたたち〟をわたくしの手で真っ赤に染め上げたかったのですが、さすがにそんな時間がわたくし自身に無いので引かせてもらいますわ。では良い夢を――」
一瞬だけその濃密な殺意と情欲で濡れた瞳で穂希を捉えたかと思うと、怪我を負っているのが嘘のような足取りで闇へと消え去った。
恐怖に足がすくむ。
総毛立つ。
そんなことは無かった
むしろ自分の生きている世界で普通とはかけ離れた世界が広がっていることに武者震いした。
「まだ捨てたもんじゃないな――」
まずは壊れた世界の住人を助けなければいけない。なにせ死なれたら門が閉じてしまう。そんな気がしたからだった――。
感想など頂けると励みになります