ひとよのはなし。
夜を歩く。
大通りの喧騒を避けて、脇道に入ろう。
見上げた空に、欠けた月。
ゆるゆる昔話を思い返しては、ふるふる首振り現に帰る。
昼間の眩しさに眼を細めては、未来のヴィジョンなどを思い浮かべてみるのだ。
お先真っ暗の絵など、笑い飛ばしてしまえばいい。
散っていったクラスメイトの数をかぞえては、憂鬱さに浸る優雅さに安心するのだ。
どのみち真っ当などできやしない。
人の世を歩く。
通り過ぎたその人は、二度とない出会いだ。
故にもう会うことはなく、記憶のゴミクズのようなものだ。
満たされぬ欲望に、乾いた焦燥。
いっそのこと、頭をお花畑にできたらいいのに、世間様がそれを許さない。
全うできない人生など捨ててしまえ。
凛とした鈴の音に胸をときめかせながら、鉄砲に銃弾を詰めるのだ。
何も射殺セヨというのではない。
安心したまえ、引き金はないだろう。
もしあったら、きみ、すでに死んでいるはずだ。
天国と地獄のあいだを彷徨いながら、研いだ刃物を鞘におさめよ。
誰も刺殺しろとはいっておらん。
それならば鞘などつくりはしない。
もしそうだとしたら、きみ、この世の終わりだよ。
灰色の世界で、灰色の眼をして、灰色を感じる。
白い世界と蝉のぬけがら。
波打つ青色と、凪いだ赤色。
散っていった同胞の数だけ、星は降るのだ。




