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第5話、1階
建物の中はやたら広いという印象がある。その中で行員たちが忙しそうに働いていた。もう店が開いてしばらく経っているようで、なかなか人が入っている。入出金や振り込み、何かの確認もしているよいだ。
「ここは本店よ。全国にあるすべての帝国銀行のうち、本店を名乗れるのは、ただここだけ。お客様がお入りになられるのは、1階と2階部分ね。ここは察しているとは思うけど、1階部分よ。あらかじめ口座がある方や、お振り込み、お引き出しがここでできるわ。通帳記入も、できるようになっているの」
窓口はざっと見ても20はある。そのすべてに誰かが待機している。そして9割方にはお客様が来られており、何か手続きをしているようだ。ここは外の方から見ているから、何をしているのかは全くわからない。話している言葉は、内部で反響し続け、泡となって消えている。
「私が働くことになるのは、2階の方ですか」
「そうですよ。これから案内しましょう」
こちらへ、とワズが案内をしてくれる。今度は階段を上っていくようだ。2階の床が迫ってくるが、階段自身の幅があるので、怖くはない。