第4話、門柱
ワズがその案内の始まりとしたのは、正門玄関だ。
「築250年は過ぎているのは確実ね。帝国ができてから、ざっと見て600年だから、その時からあってもおかしくはないわ」
9つある門柱は、先ほど見ていただけではわからないような、見事な彫りが入っていた。1本ずつモチーフが違うらしく、それぞれ異なる動物が彫られている。しかし、左右から見て5本目、中央に太くそびえている柱だけは、人が彫られていた。
「これはどなたなのですか」
「ああ稀人は知らないわよね。この中央の柱は、金銭を司るとされる神様、ミコールという方よ。その左右にいるのはミコールが遣わす聖的な存在。神話によれば、ミコールは古の時代、神々の金庫番であり、その鋳造を担当してらしたの。あるとき、最高神へその鋳造した金貨の一つがこぼれ落ちてしまった。人間界へ落ちてきた金貨は、人にとってはあまりにも巨大だった。そのため金貨は丹念に清められ、わずかなかけらとなり散らばった。最高神はそのことにお気づきになられたが、ミコールを罰することはなかった。まあ代わりに人間界に存在する貨幣を調製し、その技術を教えることになったわけなんだけど」
柱と柱の間は天井まで届く大きなドアと、高さ3分の1ぐらいの小さなドアが重ねられている。どちらでも開けることができるようになっていた。普段開いているのは小さな方で、何か事があれば、大きい方を開けるのだろう。
「じゃあいいね。次は中を案内してあげるから」
「はい」
ワズの言葉で私は我に返り、彼女の後ろをついて再び建物の中へと入った。