第2話、FP業
「FP業とは、ファイナンシャルプランニングの業務のことを指します」
「ファイナンシャル……ああ、銀行か。となれば、銀行にいればいいな」
「そうか、なるほど。では、やはり帝国銀行への入行がいいだろう」
目の前で書類が猛スピードで作成されていく。書いているというよりも、文字がひとりでに浮き上がっていくという雰囲気だ。魔法のような……いや、もはや魔法を使っているとしか思えない。
「魔法、ですか」
「ほう、魔法を知っているのか」
「あ、いえ」
驚いて話しかけてくるファルーは、それでもまだ書くのをやめようとしない。
「そうだ、FPという業務について、より詳しく聞かせていただきたい。この世界では、銀行はあれど、FPと呼ばれる職業は存在せんのでな」
「はい、わかりました」
言われたのならば、仕方ない。ここ以外に行くこともできないし、とりあえず椅子に座ったままの状態で、話すことにした。
「FP業務は多岐にわたります。それを大きく分けると、人生設計、リスク管理、金融資産、税金、不動産、そして相続の6つのジャンルに分けられます。これらに対して、金融のプロとして、相談に応じ、お客様のそばに寄り添って、資産設計を行い、よりよい生活を行うためのアドバイスを行うことが業務です」
「ふむ、なるほど」
チーンとベルの音が聞こえる。ファルーは、面倒な顔つきで書類から顔を上げると、声を出す。
「誰か、出てやってくれ」
遠くから、はぁーいと女性の声と、パタパタとスリッパで走る音がする。秘書の人でもいるのだろう。そう私が思いながらいると、ファルーが私に話してくれた。
「さて、白銚と言ったな」
「はい」
「君には悪いが、仕事をしていただきたい。なに、君ならおそらく簡単な仕事であろう」
嫌な予感がするが、断っても、この世界で生活できないから、どうやら受け入れるしかないようだ。