第22話、出向
「頑張っておるようだな」
私が今日の分の残務処理を終わらせたとき、私のところへと、ファルーがやってきた。
「お久しぶりです。本日はどのようなご用件でしょうか」
私が立ち上がってファルーに尋ねると、封筒を一枚渡してきた。
「出向の辞令書だ。1週間後、帝国銀行徴税部へ転属となる。また、その任期は1年とし、就業場所は第1号ダンジョンの冒険税徴税部だ」
「分かりました」
つまりは配置換えということだと、私は受け取った。会社勤めしていると、ほぼ確実にやってくるものの一つだ。元いた世界の時にも数回あったから、心構えはわかっている。
「FP業は、後輩らに引き継いでいただきたい。これはかなり有用であることがわかったからな。それと、徴税部においても、継続して指導にあたってもらうことになる」
「了解しました」
私はそう言って、深々とお辞儀をする。
「よし、それではな」
ファルーが歩いている音を聞きながら、何やら不安と興奮が入り混じった感情が沸き上がる。初めての土地、初めての業務。心躍らないはずがない。これも、いつものことだ。なにも心配はない。新しい業務にも、いずれ慣れるだろうから。




