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第12話、抵当権付きの相続:前編

 副課長就任から3か月がたった。副課長といっても、まだまだ窓口対応は続けている。部下の方々の教育目的ということもあるが、私自身の力量が低下しないようにと言う取り組みの目的もある。

 さて、今日やってきたお客様は、かなり深刻な顔をしている。どうぞお座りくださいといって、私が座らせたものの、気持ちがかなり落ち込んでいるらしく、一言も発しようとしない。顔が青ざめているようにも見え、体調がかなりすぐれないのが分かった。

「本日はどのようなご用件でしょうか」

 私が尋ねるが、なにやら言葉をもごもごと話すだけである。だが、なにやら書類を懐から取り出して見せた。

「土地、家に関する登記書ですね」

 よく見たかったので少しいいですかと伺ってから、私は彼から登記書を預かり、一読する。特に甲区と乙区についてだ。そして、乙区には、抵当権設定登記がなされたことが記されていた。

 内容としては、4500円の借金をしたために、所有している土地と家に対して別々の抵当権が設定されたとある。家には1000円分、土地には3500円分の抵当権だ。そもそも抵当権というのは、借金して返せなくなった時の担保として差し出すものである。今回の理由は金銭消費賃借のようで、さらに利息は5%となっている。

「それで、本日の御相談については……」

「この家を、相続したんです」

「相続なされたのですか」

 私がそのままオウム返しのように返すと、彼はコクリとうなづいた。

「それで所有権の変更登記をした際に、この抵当権が設定されていることを知り、どうしようかと……」

「なるほど」

 横の税理士に相談をしようかと思ったが、この問題なら、私一人でも大丈夫そうだと思った。

「この債務について、弁済したかどうかについては、お分かりになられるでしょうか」

 私が尋ねたが、どうやらわからないらしい。首を力なく左右に振った。

「そうですか、この抵当権の弁済期はいまだ到来しておりませんし。相続の場合でしたら共同相続人はおられますか」

「ええ、妹が2人いますが……」

「では、妹様方と話し合われてはどうでしょうか。共同相続人の方々と共同で支払うことになるので」

 この国の法律では、そうなっているらしい。前に弁護士や税理士と話し合ったときに教えてもらった。

「そうしてみます……」

 この日はそういって、彼は帰っていった。

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