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異世界を征く兄妹 ―異能力者は竜と対峙する―  作者: 四方
第四章:未だ遠き再会の日
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第五十六話:「いのちをだいじに」しなさいな<決死の抵抗>

 本当に最近は遅刻だらけですいません……。

 side:ユムナ

「カオルの馬鹿―――――――!! 一体何やったらあんなに魔物を怒らせられるのよ~~!?」

「なあ!? 君たちはいったい何をしに来たんだ!? てっきり私達の支援目的かと思っていたが、何を思ってあの化け物にちょっかいを出した! 怒らせるのは私の計画通りだが、あのレベルはさすがに想定外だ!!」

「あのっ! 隊長のことですから、何かちゃんとした目的があってやったんだと……たぶん……」

「あにょっ! にゃにがどうなって……あっ! うぇ~、舌噛んじゃいました~」


 ああ、もう! 本当に何やったのよ、あのシスコン眼鏡!

 せめてもの対処に、召喚した“タイタン”に指示を出して向かわせることにする。 


(“タイタン”、お願い! その駄々っ子みたいに盛大に暴れてる魔物、取り押さえ――じゃなかった、何があっても町には行かないよう抑えてて!)

(承知致シタ。運命神アリアンロッドノ巫女ヨ)

(あたしは“巫女”じゃないわよ! ああ~、もういいから! とにかくお願い!)


 先ほどから大地震でも起きていうのかと疑うほどの揺れが、駆け続ける私達を襲っている。

 たぶん、ノエルちゃんに背負って貰ってなかったら、今頃転んだきり立ち上がれなかったでしょうね、私だと。

 まあ、元々カオルの無茶な要請に応えて、せっかく回復した魔力を髄の髄まで搾り取って精霊なんて呼び出したこの身では、そもそも自力では碌に動くこともままならないのだけれど、ね。

 ……「今必死に戦って町を防衛している冒険者達、そして巨大怪物の脅威に怯えている町の者達皆の命を救うためには、お前の力が必要なんだ!」なんて説得されたら、応えずにいられるかって思っちゃうじゃない。

 本当……、人使いの荒い子。

 

 「怪物の攻撃範囲ギリギリのラインから、20メルトル以上は離れるなよ! 場合によっては直ぐにこちらから、再度打って出るぞ!」


 先行する冒険者たちを呼び止めた女指揮官さん――アシュリーさんだったかしら? が、急停止して竜と精霊との大怪獣決戦の方を振り向く。その腕の中にいた少女も同様に視線をそちらに向けた。

 並走していたノエルちゃんもそれを見て立ち止まる。

 急な制動がかかり、私の頭がシェイクされた。

うっ、気持ち悪い……。


 ――正直に言うと、もっと離れて貰えるとあたしの心の平安が保たれるんだけど~。言い出せそうな雰囲気じゃないみたいだし、自重した方が良さそうね。


 カオルには何か勘違いされてるみたいだけど、私にだって空気を読む力は有る。――読んだ上で敢えて壊しに行きたくなるような性格であることは否定できないけどね~。


「いや、待ってくれ。一応俺に案がある」


 私達の背後で、がさりと、茂みから何かが出てくるような音がした。

 ああ、その声はカオルね。ちょっと自分勝手に突っ走ったことに文句を言ってやりましょ――!?


 「た、隊長ッ! どうしたんですかっ!? その大怪我!?」


 ノエルちゃんが口を抑えて驚きの声を上げた。

 無理もないわ――目の前に血まみれになった見知った顔があれば、当然の反応。

 血の赤色に染まった顔だけでなく、胴体を守る頑丈なコートを除く、ありとあらゆる箇所がボロボロだった。

 “古都”に向かうにあたってしつらえた森迷彩のマントも、あちこちが破れ、布の端を風に舞わせている。そのマントも当然のように真っ赤に染まっていた。


「ああ、気にするな。傷は塞がっているし、四肢や重要な臓器は無事だ。回復魔法で失血による体力低下もある程度抑えられている。戦闘能力に支障は――」

「そういう問題じゃないでしょ、馬鹿カオル!! 貴方! 一歩間違えば命を落としてもおかしくない怪我よ!」

「いや、あの魔物の不完全な体勢からの一撃程度で、俺が致命傷を負うことは無い。今回吹き飛ばされた際も、風魔石を開放して落下位置としてクッションになり得る木々の枝を見繕って……」

「口答えするな! もっと自分の身を大事にしなさい!」


 この少年のことだもの。ノエルちゃんを逃がしたことから考えても危険性は前もって認識していたに違いない。

 カオルの胸元に掴みかかり、噛みつくように言葉を重ねた。

 

「わ、分かった……。しかし、これからの“作戦”では、俺が危険を冒さなければ……」

「この連中に手伝って貰えばいいでしょうが! 一から十まで貴方がやる必要なんて無いの!」

「りょ、了解だ。確かにこの人たちに手伝って貰えれば、俺の負担は大きく減るな」

「口約束じゃ不安ね~……、神に誓いなさい」

「いや、俺は……」


 ああ、確かにカオルが仮想敵アリアンロッド様の名の下に誓いたいとは思わないわよね。なら……。


「なら、あたしに――あなたの相棒たるあたしに誓いなさい。自分の身も、全力で守り抜くと」

「――分かった、ユムナに誓おう」

「ええと、お取込み中済まないが……さっきの“案”とやらを教えてはもらえないかい? こちらとしても、早いところ方針を固めたいものでね」


 アシュリーさんが、私の背後から遠慮がちに声をかけてきた。

 ……なんだか、カオルとはまた違った類の苦労人オーラを感じるわね、この人。


 私の手をそっとのかしたカオルが私の横を抜け、アシュリーさんとその背後――先ほどからの私達のやり取りを困惑や好奇心、期待のこもった視線で見ていた冒険者達の眼前に立った。

 咳払いを一つしたカオルが、両腕を広げ、声を張り上げる。

 冒険者たちの耳に届いた言葉は、私達の願いであると同時に、先ほどのアシュリーさんの問いかけに対する回答でもあった。


「お前達の力を貸してほしい! そうすれば俺達は――あの“竜”を『倒す』ことができる!」


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