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異世界を征く兄妹 ―異能力者は竜と対峙する―  作者: 四方
第三章:竜の滅んだ世界
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第三十話:信頼。それは、自分以外の誰かに身を委ねられることなんだと思います<祭司さんの思い>

 今話は途中で切りたくなかったので長文です。

 が、それでもだいぶ読みにくいものになってしまいました。すいません。

side:リーティス→薫

「アリスを侯爵家の者のところまで連れて行く役は紅、アリス、リーティス。お前たちに任せる」


 その事務的で、ひどく高圧的な響きで綴られた言葉が、カオルさんが告げた結論でした。

 言葉の内容もそれを告げる態度も、あまりに唐突であまりに乱暴すぎて、違和感と混乱を覚えます。

 カオルさんから初めて敬称なしで呼び捨てられたという事実にさえ、すぐに気付けず、反応できなかったほどに。


「その間、俺とユムナがアルケミの町経由で王都に直訴状を届けてくる。王都へ向かうルートとしては悪くないし、やはり侯爵に届けるより王都のほうが確実性が高いだろう」


 カオルさんは言葉を止めません。

 もうこれは確定事項だと言わんばかりの態度で、言外に私達はもういらないと告げています。

 何で、いきなりそんなことを言うんですか、カオルさん?

 言葉にしてそう問いかけたい、でも、その答えを聞くのも怖くて、私は結局口を噤んでしまいました。

 私達が邪魔だからですか? さっきのあれは、私たち全員を見限らなきゃいけないほどの事態だったんですか?

 他に理由があるんでしたら、いったいどんな……?


「は! それが貴方の本性ってことなのね! 


 そんな私を取り残して、事態は次の局面を迎えていました。

 がつん、がつん、と乱暴な音を立ててカオルさんの下に近づいていったのは、私の良く知る、金髪の小さな女の子。

 

「面倒事は全部放り投げて、自分一人は命令に逆らえない奴隷同前の立場の女一人連れて、気ままな旅にってことでしょ、それ! ふざけないでよ、あんなことがあったベニ様のこともほったらかすの!? 貴方、それでも本当にベニ様の兄!?」


 アリスが、今にもカオルさんに掴みかからんばかりの激高を見せました。

 男嫌い――いえ、もっと凶悪な、胸の奥に刷り込まれた男という生き物への恐怖感が無くなったわけではないはずなのに。

 ぶるぶる震える両の手と手を堅く握りながら涙の滲む眼で精一杯の眼光を放つ姿は、まさに私が知っているアリスのものでした。

 自分が間違っていると思ったことは、何を持ってしても絶対に許さず、屈服させようとする、私の最初のヒーローの姿。

 恐怖を熱い感情の力ででねじ伏せながら叫ぶアリスに、けれどカオルさんは容赦をするつもりはないようでした。


「効率を優先しているだけだ。この任務に何も全員であたる必要はない。そして、二分するならこの組み合わせが最善と判断した」


 アリスからぶつけられる視線を意にもも介さず、平坦な言葉で返答を返します。

 平坦な、感情の籠らない声――けれど、それを述べるカオルさん自身の顔は、明らかに別の感情の色で揺れていました。

 苦しげにまされたカオルさんの目にある感情は……焦燥? いえ、不安でしょうか?


「この組み合わせに異論があるのなら。言ってみろ、アリス」


 はっと気がつきました。

 今のカオルさんは何か明確な「目的」があって「こんな茶番」をしているのでは、と。


-----side:薫--------------------------------------------------------



『ああ、そう! いいわ。あんたみたいな奴とベニ様を一緒にしておけるもんですか! 行きましょう、リーティス。直ぐにオルニス伯爵領を目指すわよ!』


 肩を怒らせたアリスが紅の手を引っ張り、ふんとそっぽを向いた。

 そのまま大股で歩みだし、ランの家を出ていこうとする。

 引き擦られる紅が、こちらに「これで良いのか?」と問いかける視線を向けてきた。

 良くはないさ。ああ、そうだ。良くはない。

 だが、これ以上の最悪は、これで避けることができる。

 アリスからすれば今の俺は、面倒事を放置して一人逃げる最低の男と感じられることだろう。

 だが、


「俺を信じてくれ。アリスとリーティスさんを頼むぞ、紅」


 それでも俺は、この道を選び取りたい。

 自分の最も大切な人を守れる道を。

 そして俺は、その大切な人の目の前で、右手をすっと動かした。

 とある簡単なASP式のサインを示すために。 

 そのサインの意味を唯一理解できる存在――紅が、一瞬目を見開いた。予想外の指示に意表を突かれたか。

 だが、すぐに短い頷きを見せ、アリスに手を引かれて部屋を退出していった。


 ――お前の素直で直情的な性格を利用してしまったな。すまない、アリス。


 目を閉じて天井を仰ぎ、心中で謝罪する。

 しかしこれが『俺にとっての最善』なんだ。

 また会える機会があったなら、その時は罵倒でも暴力でも、お前の思うが儘に浴びせてくれ。

 俺が酷いことをしたもう一人、乱暴なことが得意じゃなさそうなそいつの分まで、俺に罰を与えてくれ。


 決して口にはできない言葉を心中のみで呟き終え、俺はゆっくりと目を開けた。

 後はリーティスさんだけか。

 この少女に紅達を追わせるだけで良い。

 それで全部終わる。

 それで、全てが俺の計画通りになる。


『リーティスさん』


 俺の呼びかけに、それまでランの母親のベッドの脇で置物のように体を固くしていたリーティスさんがようやくびくりと反応を示す気配があった。

 彼女の顔を覆っていた長い茶色の髪がはらりと零れる音がした。

 その表情がどうなっているかは分からない。

 俺自身が彼女に背を向けていたからだ。

 紅達を見送った時扉側をふりむいたせいだが、今はそれが有りがたい。

 彼女と顔を合わせて平静でいられるか、不安だったから。


『後で連絡を寄越す。今は俺を信じて、二人について行ってくれないか?』


 酷い誤魔化しの言葉もあるものだ。

 説明も何もせずいきなり「信じろ」などと、いったいどの口が言っているのか。


 己が口にした言葉ながら嫌になる。 

 先ほどの宣言。パーティ二分の提案。

 これはそもそも、俺が今回リーティスさんやアリス以外の存在の身の安全を最優先事項に据えたことによるものだ。

 それは即ち、リーティスさん達の優先順位を相対的に下げたという事。

 彼女たちの信頼を、俺が裏切ったという事だ。


 今、俺は「仮の信頼」をリーティスさんに求めていることになる。

 「深いことは考えず、俺の言う事に従ってくれ」と言っているのに等しい。

 その信頼を叶える気が自分に無いことを承知しながら。

 酷い裏切りである。


 無論、彼女たちを助けないと言っている訳では無いし、そのつもりもない。

 最優先事項を片付ける目途が立った後には、あるいは並行して大丈夫そうであれば、彼女達の依頼も叶えたい。

 それでもやはり俺にとっては、彼女達より大事なものがあった。

 この世界の誰よりも、どんな存在よりも俺は紅を大事に思っていた。

 何があっても紅だけは助けたい、と。そう思うほどに。


 非道だと、自分勝手だと、謗るなら謗れ。罵るなら罵れ。全てが終わった後でなら、甘んじて受け入れよう。

 しかしこの場においてだけはそうして貰っては困る。

 だから俺は、自分の真意を明かさない。

 もしこの場で『俺はお前達より紅を優先する』などと告げれば、俺の指示に従ってはくれなくなるかもしれないから。

 自分のことを優先しない人間を、信じてはくれないだろうから。

 「仮の信頼」で先ほどの指示に黙って従ってくれればそれで良い。その場しのぎの誤魔化しに引っかかってくれれば、それで十分だ。


 あるいは、アリスを怒らせた俺に幻滅するというのなら、そちらでも構わない。

 リーティスさんにまで嫌われることになる訳だが、結果そのものは変わらない。


 ――余計な感情を見せるな。


 渇いた唇を舌で湿らせた。ASPにいた頃の自分を思い出せ。淡々と指示を出し、部下達を動かしていた自分を。

 頭の奥がすうっと冷えていく。

 普段リーティスさんに相対している時の、普通の17歳としての自分が消えていくのを感じる。

 「力」には頼らない。

 俺が培った技術のみでリーティスさんを操って見せる。


 彼女に、俺が信頼を“裏切った”ことを悟らせず、黙って紅達を追わせるのだ。


『紅に「ギルドでの件」を告げるタイミングのことも後で伝える。お前達の身の安全を俺が直接保障できないのは心が痛むが……』

『大丈夫ですよ、カオルさん』


 思わぬタイミングでリーティスさんの声が割り込んできた。俺の口の動きが止まる。

 俺の言い訳を遮ったリーティスさんが、花のように優しい笑みを浮かべて、唐突に一歩を踏み出した。

 彼女の陰のない笑顔に、一瞬気圧される。

 灰色の石床に、彼女の靴が刻む音が響く。カツ、カツと刻まれるその靴音は、どんどん俺の方へと近づいてきた。


『ねえ、カオルさん。私、カオルさんは優しい人だと思っています。以前に、ちょっと色々なことを経験して、常識が揺らいでしまった、なんてことを言っていましたけど、きっとそれでも、カオルさん本来の人となりは変わっていません。不器用だけど、いつだって他人を助けたいと思うことができる人です』


 いきなり何を言い出すんだろうか? 

 俺の間近に迫り、訳の分からないことを言い出した彼女の意図が読めず、困惑に眉を顰める。

 戸惑いに揺らぐ俺の目を、不思議な輝きを湛えたリーティスさんの目が映しこんでいた。


『ねえ、カオルさん。なぜ私がココロ村を出ようと思ったか、知っいますか?』


 知っている。お前が自身が言っていたじゃないか。

 俺達のことが心配だからだと。


『たぶん、カオルさんが今思い出した言葉も本当です』


 ピタリ、と。眩い笑顔を咲かせたリーティスさんが、俺の目の前で停止した。


『でも、それだけじゃありません。私が村を出たのは――』


 不意に、リーティスさんが両の腕を広げた。

 そのまま、まっすぐ俺の胸へと飛び込んでくる。

 俺の視界の端で、彼女の長髪がふわりと舞った。

 後ろに回された彼女の両腕が、俺の背を通って、肩にまで届く。

 思わぬ事態に硬直する俺を宥めるかのように、俺の胸元でリーティスさんの柔らかい笑顔が咲いた。


『村の外の世界――私一人じゃやっていける保証のない、でも素敵なことが一杯見つかるかもしれない世界に、連れて行ってくれる人に出会えたからなんです』


 それは――、


『だから「信じます」ね、カオルさんのこと』


 曇りのない目で、リーティスさんはそう伝えてきた。

 それは俺が望んだ言葉……そのはずだ。

 俺の計算通り、リーティスさんが俺の指示に迷わず従ってくれる程度の信頼を示してくれた――そういうことであるはずだ。


『ベニさんのことだって信じてます。「アレ」が何であっても、ベニさんならきっと私達に手を出してこないはずです』


 ……!


 ――そんな保証はどこにもないんだぞ!

 口に出しそうになって、慌てて噛み殺す。

 俺の直感が正しいなら、「アレ」は間違いなく危険な代物だ。

 根拠は無いが、確信はある。

 他ならぬ紅の身に起こった事柄だ。

 紅についても、その他多くのことについても、様々な情報を脳に蓄えた俺の「勘」の精度は高い。

 そして今は、不確かながらその根拠となり得る存在もまた、身近にあるのだ。


『分かっています。カオルさんは私達よりもベニさんのことを優先させたんですよね?』


 見抜かれていた? 

 リーティスさんを抱えた俺の体が、ぎくりと強張るのを感じる。

 しかし、ならば何故そんな俺を「信じる」などと言えるんだ?

 お前を裏切ろうとした、この俺を。

 一方的に言われるがままになっていた俺に向け、俺の背に回す腕の力を一層強めながら、リーティスさんはさらに続けた。


『でも、その次くらいには、私たちのことも考えていてくれていますよね? そうじゃない訳が有りません。だったら大丈夫です。そんなカオルさんのことを、私は信じます』


 何故、そんなに俺にとって都合の良いことを言ってくれるんだ。

 だいたい、お前だって不安を感じているんじゃないのか? 

 先ほどまで、あんなに心細そうにしていたじゃないか。何で、そんなことを言えるんだ。

 何で、お前達を裏切ろうとした俺を、信頼してくれるんだ。

 何で、何で……。

 思考が入り交じり、混乱する。


 ――落ち着け、俺には、五大欲求ですら自分の意思でコントロールできる力があるだろう。これしきのことで思考停止してどうする。

 そう言い聞かせるが、俺の思考は、もう元には戻ってこなかった。

 俺のちっぽけな覚悟は、3つも年下の少女の手によって、粉々に打ち砕かれていたのだ。


『前に言いましたよね? 私はアリスと同じくらいカオルさん達のことが大事ですって。私なんかのことは置いてベニさんを優先しても……、』

『すまない』


 彼女の言葉を遮る形で、謝罪の言葉が、口から漏れた。

 言ってしまってから、自分自身がそんな言葉を口にしたことに驚く。

 だが、この言葉は俺の正直な気持ちがもたらしたものだった。

 そして、きっと彼女達に言わなければならないはずの言葉のはずだった。

 だからきっと、俺は今、この言葉の続きを言いきらなきゃいけない。

 この段になってようやくしっかりと視線を合わせた俺の目を、リーティスさんが正面から受け止めてくれた。

 自分の胸の中にすっぽり納まってしまうほど小柄な彼女の姿が、何故だかとても大きなもののように感じた。

 腹の底から、言葉を絞り出す。


『俺の我儘と、紅のために、犠牲になってくれ』


 先ほどの「信じてくれ」などという、偽物の信頼を求めるような、誤魔化すためだけの言葉は、もう言わない。

 それまで宙ぶらりんだった両腕の所在をリーティスさんの肩の上に移し、言うべき言葉を伝えた。

 俺の宣言に目を細めたリーティスさんが、ほっと一息吐いて破顔する。


『はい、喜んで。何でもかんでも、カオルさん達にばかり迷惑かけてばっかりいられませんからね。元々カオルさん達がやらなきゃいけないことでも無かったんですから』


 柔らかく、けれどどこか寂しげに呟かれたその言葉に、俺の心のどこかがぶるりと震えた。

 そして、気づいた。

 俺が誤魔化しの言葉を紡いだのは、パーティーの二分をスムーズにするためだけではなかったという事実に。

 俺は、優しすぎる彼女にこんなことを言ってほしくなかった。

 彼女が自身を貶めるような、諦めるような言葉を言ってほしくなかったのだ。


 けれど、俺の目論見は彼女自身の手で打ち砕かれたばかり。

 だから今、偽物の信頼で誤魔化すことの出来なくなった俺は、言葉にしてそれを解決しなければならなかった。

 彼女の諦めの言葉を否定しなければならなかった。

 リーティスさんの肩を掴む手に、俺は力を込めた。

 この手を(つた)って、俺の想いが届けば良いと、そう願わんばかりに。


『いいや、引き受けた以上、全て俺達の仕事だ。そして、リーティスさん。俺は絶対に君たちのことも見捨てない』


 ようやく目が覚めた。

 結局のところ、俺はリーティスさんのことを信じ切れていなかったのだろう。 

 紅のことを優先したいと伝えて尚、信頼を寄せてくれるのかが不安だった。 

 だからこそ、「俺を信じろ」などという、何の意味も持たない誤魔化し言葉を用いた。

 そして、彼女達の優先順位を下げたという事実を伝えずに済むよう立ち回ろうとしたのだ。狡すっからいにもほどがある。


 リーティスさんは、俺が先ほどの決定を通じて、本当の意味で一体何をしようと目論んでいるかまでは分かっていないはず。

 けれど、自分たちが蔑ろにされたことには気づいている。

 そしてその上で尚、本気で、俺のことを信じようとしてくれている。俺が求めた仮の信頼ではなく、本物の信頼を示してくれているのだ。


 それならば、その信頼には、献身をもって応えたい。


 そして、もう一つ、これも伝えておかなければ。先ほどの言葉だけでこの会話を打ち切ってはいけない。


『だから、そんなに自分を卑下するな。君だって、俺の大切な人なんだ』


 リーティスさんの瞳が揺らぐ。

 ――お前自身は気づいていなかったのかもしれないが、お前の言葉は、お前の他人への優しさだけから来たものじゃない。

 自身の価値を低く見積もり過ぎるというお前の悪癖から生じたものでもあるはずだ。

 その思考は、駄目だ。

 彼女に、そんな言葉を言わせてしまったことが、悲しい。

 大切な人に、そんなことを言わせてしまった自分が、情けない。

 

 俺のために、我が身を犠牲にしても良いと言ってくれるのは嬉しい。

 だが、その言葉に甘えきってしまうのは、俺にとっても、お前にとっても間違ったことだと思う。


『約束するよ。俺は紅を助ける。そして、お前達のことも、今から全力で助けて見せる』


 精一杯作った笑顔で、今の俺にできる精一杯の、心からの言葉を投げかける。

 先ほどの決定が、リーティスさん達を蔑ろにするものであった事実は、変えられない。

 今からそれを取り消すつもりもない。

 だが、今この手の中にいる少女のことを守りたいと思っていることだって決して嘘じゃない。


『俺の大事な人を放っておいたりはしない』


 ――「紅の次くらいには」といったな、リーティスさん。


 彼女の肩にかけていた手を、その腰に回す。

 「ひゃっ……」俺の耳朶を、彼女が漏らした吐息がくすぐった。

 

 ――そうだ、その言葉は変わらない。俺はまず、何よりも優先して紅を守るだろう。

 だが、俺は優先順位が高いものだけしか解決できないような男じゃない。そう思われては困る。

 紅もココロ村もアリスも、リーティスさんの身の安全も、必ず全部守って見せよう。

 そう決意をする。

 今目の前にいるこの少女を失ってなるものか。

 俺を本気で信頼してくれる女性を、失ってなるものか。

 絶対に、その願いを叶えてやる。

 抱く腕に力を込めながら、そう、強く思う。


『……ふふっ。その言葉、信じていいんですよね?』

『ああ、俺の持てる全てにかけて誓おう』


 ふと、リーティスさんの笑顔に、ほんの少し朱が差していることに気付く。

 そしてそれは恐らく、俺のほうも……。


『あらあら~。お二人さん盛り上がっちゃって~。お熱いわね~。そう決めたんなら、一緒に行けばど~お?』


 唐突なお邪魔虫の出現に、リーティスさんが凄い勢いで俺の方から顔を俯けた。

 下を向いてしまった彼女だが、その頬の紅潮はここからでも確認できる。

 その様をどこか余裕なさげに眺めているのは、後ろ手に縛られながらソファーに腰を下ろした、先ほどの言葉の主、ユムナだった。

 いつものようにマイペースな言動で茶化してきた、という訳じゃなさそうだ。


『リーティスさん。また後でな。馬車の時間まで紅の傍で、町にとどまっていてくれ。後で連絡事項を伝えに行く。それと、さっきアリスを怒らせたのは、気づいているようだが、俺の確信犯だ。今日は無理だろうが、謝る機会を作るのに協力してくれると、嬉しい』


 肩に載ったリーティスさんの手をのかして身体を離す。

 肩から失われた彼女の体温が名残惜しいが、今はそれにかまけている場合ではない。

 俺は、先ほどからずっと部屋の隅に佇んでいた、蒼髪の女性の方に向き直った。

 ついでに、位置がずれかけていた眼鏡をかけ直す。

 窓から差し込む光は俺や、先ほどの成り行きをぽけっと見守っていたリュウ、ランたちを明るく照らしていた。

 しかし部屋の奥に居るユムナの顔にはちょうど影がかかっており、その表情の機微を読み取らせない。


『俺は今から少し、やらなきゃならないことがある』


 そして俺は対峙する。

 現状一番の不確定要素、紅を救う上で最も注意しなければならないと判断した、この相手と。

「仮の信頼」を求めたら「本物の信頼」が返ってきましたというお話……なのですが、凄く読みにくくなってしまった感があります。初稿を叩き台にしてその内書き直したいと思っているお話ですので、「この辺が分かりにくい」「ここ、直して」等の意見を頂ければありがたいです。



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