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異世界を征く兄妹 ―異能力者は竜と対峙する―  作者: 四方
第六章:集いと別れ
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第百十四話:若者が進路を決めるきっかけや理由なんて千差万別だ 浅いものもあるし、深いものもある<旅立ちの理由(わけ)>

 遅れました。ごめんなさい。

 side:ユムナ

 聖剣の銀色の刃が鏡となって、おぼろの月明かりを反射する。

 その反射光に照らされたクズハちゃんの横顔は、気のせいか、笑みを宿していたように思う。

 齢5というこの幼い少女の胸中には、今、どんな思いが宿っているのかしら。

  

 ふと、私の腕の中に座っていた彼女がこちらに視線を向けてきた。

 その顔が、にかりと屈託のない笑みを浮かべた。

 

「拙者は、自分が神の尖兵として働かされている現状を受け入れておる。聖剣の導きに従い、拙者の仲間達――エルフ達を倒すための準備を、神の代行者として整えてきたのでござる」


 仮にも自身の『故郷』だった地に住む者達の敵側に所属することを受け入れる。

 そのために、いったいどんな覚悟を決めたのかしら。

 このは敢えて触れないようにしているみたいだけれど、もし彼女が神の代行者としての役割を果たし終え、エルフ達の命の嘆願が叶ったとして――その後、彼女がエルフ世界に受け入れられることは無いでしょう。

 里の者達には、彼女の所業を「彼女を受け入れなかった自分達への報復」と解釈するでしょうし、そう考えなかったとしても「自分たちが貶めていた者に命を救われた」という事実が生じ、クズハちゃんと彼らの隔絶を決定的なものにしてしまうはず。

 それを受け入れる覚悟を、決めているっていうの?

 さっきからの数少ない会話でも、クズハちゃんが"復讐"のために神の軍門に下ったわけじゃない、と思えるくらいには彼女の人の良さだとか、まっすぐさだとかいったものが伝わってきた。

 

「寄り道もだいぶ多かったけどな。『せっかく人の世という場に来たのだ! 悪人は拙者が片っ端から捌いてやるでござる!』とか息巻くクズハちゃんのために、訪れた街でそれっぽい奴らを俺が探してやったら――いやあ、出るわ出るわ。流石さすが異世界、完全懲悪イベントのバーゲンセールとはこのことかって変な感動すら覚えたわ。……解決するのが俺だったら、もっと言う事無かったんだけどなー。――だってよ、あれだぜ!? クズハちゃんが助けた人の中には、お忍びで街に来てたこの王国の姫様っていう超ヒロインヒロインしてる美少女とかもいたんだぞ!? 因縁の神様マジGJだよ! 姫の護衛達を蹂躙した、とあるはぐれ魔物と、そいつを一刀の下に両断した、フードで顔を隠した謎の男の噂は知ってるか!? あの正体、クズハだよ! その超切れ味の剣、俺だよ! 本当に何で俺、剣になんて転生させられたんだよ!? チートは欲しかったけど、俺自身がチート武器になりたいなんて思ったことなかったよ! "お姫様"なんて希少ヒロイン、そうそう会えるもんじゃな――」

「そういえば、クズハちゃん。まだ聞いて無いことがあったわね~。さっき、会ったばかりのあたし達にいきなり斬りかかってきたのはなんで?」


 本当におしゃべりな聖剣ね。またまた口が止まらなくなったみたい。

 同時に十人以上の人の話を聞き取れるって豪語してたカオルがたぶん聞いてあげてるでしょうから、私はクズハちゃんと話を続けさせてもらいましょうか。


「うぐっ。先ほどは本当に申し訳ないことをしたでござる。……一応、理由といえる理由はあるのでござるが、なにぶん自分勝手なもので――」

「ひょっとして、クズハちゃんの夢って『世界最強』だったりするのかしら?」


 私の言葉に、クズハちゃんの目が丸くなる。

 うふふ、当たりみたいね。

「『身分もない、生まれも大したことの無い人間が、この世全ての人間に一目置かれる存在に成り上がるための一番簡単な方法を、拙者は選んだ。それ即ち――世界最強』あの主人公のセリフで、そんな言葉があったわよね」


 かつて、死ぬべきところで死に損ね、理想の死に場所を追い求めるようになった主人公。

 しかし、世界のどこを見れど、彼が死にたいと思えるような場所は無かった。

 そして彼は、『生きるべき人間が生きられぬ世界が、拙者の死ぬべき世界であるとは思えぬのだ』という言葉を両親の墓前に残し、世界そのものを変える旅に出る。

 その旅路の途中、彼は考える。

 世界を変えるためには自分の望む方向に世界を動かせるような大きい存在にならなくてはならない。

 しかし、平民の生まれで大した縁故も持たない自分が政治に手出すことはできない。

 ならば、何を成すべきか。自分は、何ができるのか。


「あの主人公も、最初はがむしゃらに『強い』と目される人に戦いを挑んでた。クズハちゃんもそれに倣ったんじゃない~?」

「おお……あたりでござる」

「付け加えるならば、剣心――聖剣にも、『ここは戦っておくべき! 神の使徒同士の対決なら、得られるものも絶対にデカい!』と煽られたんじゃないのか?」


 カオルが口をはさむ。

 ってあらら~? ノエルちゃんがカオルの膝枕で横になってるんだけど、カオルったらいつの間にそんな状況を作ったのよ?

 なぜだか聖剣の方をチラチラと見ながらぶんぶんと横に振ったりため息を吐いたりしているカオルの膝の上では、狐耳をくたんと垂らしたノエルちゃんが目を閉じて寝息を立て始めていた。

 まあ、もう深夜だものね。ノエルちゃんが眠くなるのも無理ないけど……。 


「……なあ、ユムナ」

「ふぇっ!?」


 ――ちょ、ちょっといきなり声かけないでちょうだい。変な声が漏れちゃったじゃないの~!


 心中でカオルへの抗議文を練っている私に、カオルが声をかけてきた。

 不思議な表情を、その顔に浮かべながら。


 ――ん~? 何でしょうね、この表情は?  


 クズハの説明パートが無駄に間延びしておりますね。すいません。

 現在、7章の物語について、考えていることがあります。

 当初の予定通り、主人公達の視点で話を続けるのではなく、舞台となるその町で、急遽作った人物の視点で物語を描こうかと。

 正直、当初の予定通り話を進めると六章のように「説明回長すぎ!」状態が続きそうなのです。

 物語の流れを鑑みるに、この手法でも充分予定通りの物語進行をさせることは可能であろうと考えています。

 「大反対!」という方がいないのであれば、冒険ではありますが、7章の内容について、描写方法をそのように大きく変えようかと思います。よろしいでしょうか。

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