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その6   服選び

ヒロインがまともに

 最初に感じたのはいつもの冷たい石の床とは違うやわらかで暖かい何か。暖かい何かは自分の下、背中部分だけじゃなくて全身を包んでいる。まるでゆりかごのように暖かな、安心させてくれる空間にいるようだった。



 暖かさに身をゆだね、このままずっとここに居ようとさらに暖かい何かをかぶる。そしてそのまま深い夢の中に旅立つために意識を手放そうと。そこへわずかに漂ってくる匂い。昨日食べたものと同じ。今まで嗅いだことのない、だけど匂いを発するものは美味しいだろうと感じさせるもの。


 一瞬目を開ける。けれど再び睡魔が襲って瞼を閉じさせる。



 このまま眠るか、においの元へ行くかの葛藤の末、結局食欲に釣られ目を開けた。



 目を開けるとそこは昨日まで自分がいた奴隷商のテントの見慣れた石の壁ではなく、初めてみる天井。

 そこで初めて自分がベッドで寝ていたことに気づく。自分が昨日買われて新たな主に仕えだしたことも。



 慌てて置きだしてみるも部屋には誰もおらず廊下からおいしそうな匂いが漂ってくるだけ。



 何で?



 最初に思ったのはそれだった。



 自分は奴隷だ。ヒトじゃないモノだ。

 奴隷をベッドで寝かせるなんて聞いたことがない。



 自分の主は変わった人なのかもしれない。自分を買った主のことを思い出す。この世界では珍しい黒みがかった茶髪で背は男としてはそんなに高くない。普通よりちょっと高いぐらいで体は鍛えられているという感じではなかった。世の中苦労して生きて行っている青年。これが自分の主の印象だった。



 例え変な人でも主は主だ。隷属紋を付けられている以上逃げることはできない。



 窓に自分の姿が映った。



 自分の服は昨日買われた時のままの汚い服。フケが大量に残っている髪に、碌に洗えてない体でこんなきれいなベッドで寝ていたことに恐怖を覚えた。



 きっとベッドを汚したことで怒らえるに違いない。



 現に枕とベッドは自分が寝ていた部分がわかるぐらいには汚れていた。

 はたいたり、服で拭いたりと汚れを消そうと少しでも頑張った。頑張ったけど元々汚れていた服で拭いたせいで汚れが伸びてさらに広がってしまった。



「あううううう……」



 一人ベッドの前で頭を抱えるが無論助けてくれる人などいない。



 こんなに自分が困っていてもおいしそうな料理の匂いはもう憎たらしいぐらいはっきりと匂ってきていた。



 ・・・・・・例え気持ちが恐怖していようと体は自分の欲求に忠実だ。



 くう・・、とお腹がなった。途端昨日食べた名前のわからない今まで食べたこともない美味しい料理の味が口の中に溢れ、もう一度食べたくなってたまらなくなってしまう。



 匂いに釣られ、部屋を出て、廊下をわたり、階段を降りていく。



 階段を降りるといっそう匂いが強くなり、お腹の自己主張がより激しくなる。ご主人様は料理を作りながら歌っているのか鼻歌も一緒に聞こえてきた。



 変なご主人様でもご飯をちゃんとくれる人ならいいな。



 ラスクは自分の新たな生活の始まりとなる扉を開けた。








 ラスクを買ってきた次の日。珍しく、というほど少ないわけじゃないけれど普段より早く目が覚めた。



 だからといって早く起きてもやることが変わるということはない。また、早く起きたからいつもしてないことを余計やるほど俺はがんばる人にはなってない。



 軽く伸びをして起き上がった。

 店の制服に着替える。余程寝起きがよかったのか頭がすっきりとしていて気持ちいい。窓から見えた澄み切った青い空がいっそう朝の気分を良くした。



 店に降りるついでにラスクを寝かした部屋に寄っていく。

 ラスクはまだぐっすりと寝ていた。そのあどけない寝顔に悪戯をしたくなる欲求をこらえるのは少々つらかった。



 ラスクを起こさないようなるべく静かに階段を降りていく。



 店内はまだ太陽が上がりきってないからかいつもの時間に起きた時よりも薄暗かった。



 窓を開け、太陽の光を店内に入れる。昼間ほどきつくはない太陽の日差しが徐々に店を明るくしていく様子はまるで店自体が眠りから仕事のために目覚めているようだった。



 店に光が十分に満ちて明るくなったことに満足し、朝食を作るために厨房に入った。



 今日の朝食は何しようか。



 朝から手間のかかる料理はめんどくさい。かといってごはんだけ、というのもかなしい。1汁3菜とはよくいうが1汁はまだしも3菜って数多いよな。なら1汁だけつくるかなぁ。



 1汁とは要するに味噌汁だ。



 俺の中で朝の汁物といったら味噌汁。これは決定事項だ。何人にも変更はできない。白ごはんと味噌汁と後1品というのが俺の国での一般的な組み合わせだった。まあ俺は朝の汁物は味噌汁と決めているだけであって必ずしも白ごはんとの組み合わせでなければいけない、なんてモットーはない。和洋折衷、和洋中折衷も大いに有りだ。例え食卓に食パンと中華粥と味噌汁とヨーグルトと牛乳とみかんが並んでいても、はた目からは考えられないメニューでもそいつがこれは朝食だ、といえばそれは朝食なのだ。



 昨日店を開いてないから今日は作り置きの物がなにもない。



 今日はあれでいこう。



 まず味噌汁を作る。ここは適当。聞くところによると家々によって作り方が微妙に違うらしい。俺の場合は元の世界で親にならったやり方で、鍋に水・ダシの素・酒・具材を入れ火にかけ、具材に火が通ったら味噌を溶かしてちょびっと隠し味的な意味で醤油を混ぜる。これで完成。

 次にこの作った味噌汁にご飯を入れて弱火で煮こむ。

 ご飯が柔らかく好みの方さになるまでじっくりと。



 気分がすっきりしているせいかテンションが上がる。それは料理を作っている間に鼻歌を歌っちゃうぐらいに。



「♪~」



 ヘラでご飯を焦がさないようかき混ぜながら一人リズムに乗る。変な人に見えようが今は一人だから関係ない。ここは俺だけの空間だ。



 誰かが階段を降りてくる音がした。



 どうやらラスクが起きたみたいだな。ご飯もちょうどいい感じの柔らかさになったことだし仕上げにするか。



 卵を一つとってきて割って鍋に放り込む。そしてよく混ざるようにかき混ぜた。



 カチャ、と小さく音を立ておずおずと少し扉が開かれた。扉の間からラスクがこちらをうかがうように覗いている。



 なにしてんだ?



「おはよう。入ってこないのか?」



 俺が声をかけるとあからさまにラスクはビクッと震えた。



 なーにを警戒してるんだか。



 ご飯と卵がよく混ざっているのを確認して火を消す。これで朝食の準備は完了だ。



 ラスクはというとまだ入ってきていない。なんか扉の向こうでおどおどしている。



 早く入ってきたらいいものを。



 仕方ないので扉を完全にあけてこちらから言ってやる。



「ほれ、朝食だから椅子に座ってろ」



 少し強く命令口調で。そう言わないとなんかラスクは動かない気がした。

 命令口調にビビったのか、はたまた他に何か理由があったのか、まあ多分前者だろうけど素直にラスクは席に着いた。



 そのオドオドビクビクするのはやめてほしい。別にとって食べやしないんだから。このままだと客にもビビって従業員として使えないかもしれない。それは困る。奴隷を買った意味がなくなってしまう。



 ずっと奴隷商の元であの待遇だったからこうなのかもな。



 ここにきて二日。いまだに緊張感が抜けていないラスクを見て推測する。

 おそらく奴隷商の元での生活が相当きつかったのだろう。肉体的にも精神的にも。それこそ俺の一挙一動にいちいち反応しびくつくようになるぐらいに。ラスクの待遇はほかの奴隷たちより良さ気だったいっても檻が大きいのとその檻の中なら自由に動き回れるぐらいだ。他の部分もよかったのかもしれないがそれも多分わずかな違いだろう。今のラスクは服から出た腕とか足とかどう見ても栄養失調だしな。



 栄養失調はそのうち治る。ただ心は体ほどすぐには治らない。もしくは変わらない。



 結局気長に行くしかないってことか。



 二人分の朝食を用意しながら俺はそう結論付けた。



 器を二つ用意し鍋の中の物を盛り付ける。風味と見た目を少し良くするためにオリーブをのせた。料理は味もそうだが見栄えも大事。自分の飯だからそこまでこだわるつもりはないがよくしようとするのは料理人としての(さが)か。



 と心の中でかっこつけたりしてみる。こんなことが思えだしてきた当たり、俺も多少は料理人として板についてきたのかもしれない。



 湯気が立ち上る器を両手に持ってラスクの元へ。



 ラスクは器の中身に目を白黒させている。食べたことないだろうから当たり前の反応かな。



 今日の朝食は卵雑炊。味噌汁と白ごはんを一緒に食べれるというなかなか画期的な料理だ。卵の部分は気分と材料によって変わるがお手軽さ故俺は卵を選択することが多い。



「いただきます」



 朝食前のいつもの癖。両手を顔の前で手を合わせる。



 ラスクは俺の行動を不思議そうに見ていた。だが俺の家に住んでいるならお前にもやってもらうぞ。



「お前もやるんだ」



 俺が言うとラスクは急いで真似をする。



 いただきます、は「私の命のために動植物の命を頂きます」の意味から来ている。人間は古くから自然の恩恵を受けてきた。自然の恩恵とは数々の動植物のこと。これらの行為は生きとしいけるものすべてに共通の行為。いのちがつながり合ってみな生きている。だからこの行為は自分を生かしてくれている偉大なる自然へ感謝の気持ちを表したものらしい。そんなこと思って食べている奴は皆無にせよそういう習慣があって今にも伝わっているのだ。



 だけどもラスクのいただきますは感謝というより神様へのお祈りみたいだった。

 まあそこまで細かく言うつもりはない。ふりにせよなんにせよやることが大事。



「じゃ、たべるか」



 スプーンを手に持ち雑炊を口に運ぶ。



 俺に釣られてラスクも食べ始めた。昨日みたいに躊躇って全然食べなかったことから考えるとラスクの警戒心も少しは薄れてくれたかな。あ、警戒心というより怯えか。

 目の前のラスクはまだこっちのことをちらちらと伺いながら雑炊を食べている。俺が顔を向けるとビクッと反応はするも雑炊を口に運ぶ一定の速さは変わらないのはおかしかった。



 俺も雑炊を食べているとラスクがさっきまでのように伺うのではなくじっと見つめてきていることに気づく。食べ終わったのかと器を見ると9割がたはなくなっているがまだ残っている。おかわりでもなければなんでこんなに見てきているんだろう?



「どうした?」



 手を止めてラスクの目を見る。



「あの……なんで私にここまで?」



 なにを?

 意図がよくわからない。



「それはどういう?」



 ラスクが言い直した。



「どうして奴隷の私にここまでよくしてくれるの?」



 ああ、そういうことか。つまりラスクは奴隷にしたら今の待遇はおかしいと、そう言いたいんだな。なぜ?と聞かれても特に理由はない。



「これが俺にとっての普通なんだけどな」



 一般的な奴隷の扱い方とやらを俺は知らない。せいぜい主の命で理不尽なことをさせられたり怒らえたりなかなかにひどい目にあっている、と知っているぐらいだ。ただこれが一般の扱い方かはわからない。



「何か変なのか?」



 これを聞いたときラスクの顔には困惑の色が見られた。



 やっぱり変らしい。



「……ふつうは奴隷にこんな上等な食事はさせない」



 自分の手元にある雑炊を見ながらラスクは言う。



 普通奴隷には与えられるはずもない上等な料理を与えるということは何か裏がある、そう読んだのかな。

 別にこんな雑炊上等な食事でも何でもないけどな。うちのメニューの中でも安いほうだし。



「と言われてもなぁ」



 それが本音である。奴隷にとっての普通と俺の普通は違うのだ。なら当然扱い方も変わる。



「ラスクを俺が買った目的はうちで従業員として働いてもらうためだ。だから倒れてもらっては困るそのために食べさせてる、ってことでどうだ?」

「そんな理由?」

「ああ。実際ラスクをこんな風に扱っているのに理由はない。俺がそういう扱いをしたいからしているだけ」

「私は……魔族なのに?」

「それが?」

「怖く……ないの?」



 魔族なんて“リュエード”じゃ腐るほどいたし、そもそも俺はこちらの世界に住み始めてまだ1年だ。幼少のころから魔族は敵だ、と教育されているこの世界の人間じゃない。“リュエード”時代の記憶も相まって俺に人種や種族程度に偏見や差別は存在しない。



「お前のどこが怖いんだ?まだかわいいって言ったほうが合ってるぞ」

「そう……なんだ」

「まあとりあえず(ほか)(ほか)、俺は俺だ。他の奴らどういう風に奴隷を扱っているかは知らないわけじゃない。けどまあ俺にそういうつもりはない。死んでもらったら困るしな。だから俺にとってラスクのこの扱いは普通だよ」





 納得したのかこれ以上ラスクは疑問を上げてこなかった。代わりに聞いてきたのは



「ご主人様のことなんて呼べばいい?」



 そーいや、まだラスクに俺の名前教えてなかった。



「なんでもいいぞ。今のままのご主人様でもいいし、俺の名前からユリル様でもアトワルツ様でも。アト様なんかでもいいな。ああ、様をつけなきゃダメってこともないぞ」



 呼ばれ方については細かく言うことは特になし。こっちが呼ばれてイラつく名前じゃないことは希望するがまあその程度だ。



 俺が言ったことでラスクが顔に浮かべた表情は困惑だった。



「ご主人様は変わってる……」

「よく言われるよ」



 1年前からこの世界に来た俺と生まれた時からこの世界にいる者との価値観の違い。元の世界で当たり前でもこっちじゃ異端。常識が違う。これはもう受け入れるしかない。世界でたった一人、自分だけで訴えても仕方ないのだから。



「てことでなんでもいいからな、呼び方は」

「わかった」



 そう言うとラスクは雑炊の残りを食べ始めた。



 器に残った米、最後の一粒まで食べようとしているラスクを見て思う。



 服、買わなきゃな。



 ラスクの服装は奴隷商から買った時のままだ。どう見ても不衛生で汚い。さすがにこの服装のまま店を手伝わさせるわけにはいかない。店にも料理にもバイ菌は敵だ。それにこの服、見た目もよくない。見るものにボロ雑巾を服の形に切ってそれを着ているイメージを与える。うちで働かせるなら見た目もよくしないとね。



 自分の分の雑炊を食べ終わったラスクは俺の手元にある雑炊をじいっと見ている。



 なんだ?欲しいのか?



 スプーンですくって口へ運ぶ。そのスプーンが動く軌跡通りにラスクの目も動く。



 ずいぶん食い意地がはってるな。そんなにあの奴隷商は飯をくれなかったのか?それとも単純食べる量が多いんだろうか。



「まだ食べたいのか?」



 ラスクの表情が変わる。なんというかまたやってしまった、みたいな顔だった。



「あの、その……」



 もじもじしてなかなか言い出さない。



「……はぁ」



 ため息をつき、ラスクの器をとって席を立つ。そしてそのまま厨房へ。鍋にまだ残っている分を器によそった。これで鍋の中はすっからかんだ。昨日の様子から多めに作っていて正解だった。



 戻ってラスクの前に置く。



「これでもうないぞ」



 途端表情が明るくなって雑炊を食べ始めた。



 これは食費が高くつきそうだ。俺の2倍近く食べてるぞ。その体のどこにそんなに栄養が必要なんだ。全く。



 でもまあ



 久しぶりの一人じゃない朝食。なんかいいな。



 雑炊をほおばっているラスクを頬杖をつきながら見ててそう思った。

















 やっぱり、ご主人様は普通じゃない。



 朝食の時のやり取りから感じていたことだ。



 奴隷である自分に優しすぎる。ダメなわけじゃない。むしろうれしい。でも



 ラスクは知っている。表の奴隷ならともかく自分のような裏の奴隷の売られる先の悲惨さを。



 奴隷商の元にいた頃、反抗する気を失くすためなのか売られた奴隷の末路を見せつけられた。



 売られた奴隷たちはまず奴隷商の元には戻ってこない。戻ってきてもそれは物言わぬ死体になった時だけ。そして死体を作った人がまた奴隷を買っていく。



 表のように人の良いご主人様に出会えて、奴隷の身分で幸せに暮らせるなんてのは夢物語。買われておもちゃのように遊ばれて動かなくなったら捨てられる。裏の奴隷の未来なんてそんなものだ。



 買われても絶望、買われなくても絶望。訪れる死が多少早いか遅いかの違い。



 そんな光景を毎日見せられてラスクは抵抗を生きることを諦めた。食事が出されたら食べる。何をされようと反応しない。ただ流されるだけ、現実にすべて諦めきったのだった。



 今まで何人もラスクを買おうとする人が現れた。その誰もがまともな世界に身を置いているとは思えない人達だった。魔族という自分の種族が珍しいのか全員がラスクを買おうとした。その度に奴隷商が何かを言う。すると皆呻(うめ)きながらも名残惜しそうにラスクを見つつ部屋を出ていった。その繰り返しだった。



 ある日、男が来た。よく奴隷商の元から奴隷を買っていく男だ。丸々と肥え太った体で周りに見せびらかすように無駄に装飾が多い派手な服を着ている。男もほかの買い手達と同様ラスクを見て、奴隷商から聞いた瞬間から欲しがった。いつものように奴隷商が男に耳打ちをする。普段はこれで終わりだ。惜しそうな眼をして帰っていく。



 しかし、今回ばかりは違った。



「よし、7日後に金をそろえて持ってくる。それまでこいつをほかの奴には売るなよ」

「当然でございます、もちろん」



 ああ、自分はこの男に買われるのだ。そう思いはしたものの心に何もわかなかった。もう自分の心は何も感じなくなってしまっているのかもしれない。例え男が何人もの奴隷を買っては捨てているような男だったとしても。



 時間は過ぎていった。



 奴隷商は男との約束を守る気は最初からさらさらないようで約束してからも何人もの買い手達を連れてきていたが皆やはり奴隷商の提示した額を払えないのか部屋を出ていった。



 そして7日後、自分が買われる日。



 あの男に買われたら自分はどうなるのだろうか。他の奴隷のように遊ばれて殺されるのだろうか。憂さ晴らしのサンドバッグにされるのだろうか。それとも姓奴隷にされるのだろうか。いくつも候補が頭に浮かび上がるがだからといってなんとかしようとも思わなかった。嫌悪感もなかった。もっと言ってしまえば何も感じなかった。



 そんな時だった。今のご主人様がラスクのもとに来たのは。奴隷商の元を訪れる人物には珍しくまともな人のように見えた。奴隷商はいつもと同じように説明をした。そしてふっかけた金額を言う。これでご主人様はあきらめて帰るはずだった。そう、普通なら。



「買おう」



 その言葉だけやけにはっきりとラスクの耳には聞き取れた。



 けれど、この時は自分の主はあの男じゃなくなったのか、と思う程度だった。



 そして、ご主人様に連れられて外に出た。外は雨が降っていた。



「あーあ、降ってきちゃったか」



 ご主人様は少し何かを考えているようだった。



 雨は冷たい。当たり前のことだ。ラスクが来ている服は服という体をなしているだけのものだ。服としての機能はほぼないに等しい。服が与えてくれる温かみなどない。雨を受けた体は急速に冷えていった。



 クシュン!



 寒さで思わずくしゃみをしてしまう。ご主人様がこちらを見てきているのがわかった。ご主人様は何故か少し微笑んでいた。


 笑われているのに安心してしまったのはなぜだろう。



 そこからだった。ラスクの心が徐々に戻り始めたのは。



 ご主人様には最初から驚かされた。

 何かつぶやいたかと思うと目の前に突然両開きの扉が現れていた。魔族のラスクにとっても全く見たことのない、不思議な魔術だった。



 ラスクは奴隷なのに料理をくれる。これにも驚いた。奴隷に与えるものは奴隷の買った主の残り物が多い。それはもはや料理というよりエサだ。だけどラスクのご主人様はわざわざ作ってくれる。買われて数分でラスクの奴隷の主のイメージが壊された。



 名前も付けてくれた。



 勝手に寝ちゃったのに怒らずベッドに寝かしてくれた。

 自分は魔族なのにかわいいと言ってくれた。

 朝ごはんもくれておかわりも用意してくれた。

 ラスクの服のせいでベッドが汚れたのに許してくれた。



 わずか買われて1日半、なのにラスクは自分の心がご主人様に変えられているのを感じた。



 そして、このご主人様が普通とは違う不思議な人であることも。








 朝ごはんを食べ終わり、片づけを終わらせて簡単に店を開く準備をするといよいよラスクの服を買いに行くことにした。



「さて、じゃあラスクの服を買いに行きますかね」



 俺の発言にまたまたびっくりしたようなラスク。



「服も買ってくれるの?」

「そりゃそうだろ。そんな服のまま居らすわけにはいかない。店としても俺個人としても」



 横になったぐらいでベッドを汚すほどだ。さすがに不潔すぎる。



 俺が女性用の服を持ってたらよかったが“リュエード”での俺のアバターの性別は男だ。女物の服は持ってないわけじゃないがあれは普段から着るような代物じゃない。それにラスクに着せるならやっぱかわいい服のほうがいいしな。



 ラスクを連れて外に出る。店はいつも通り昼から開ければ問題ないだろう。行くのは馴染みの服屋。ただの服だけでなく魔法服――魔法がかけられた服――まで扱っている。魔法服まで扱っている店は商業都市と呼ばれるこの町にだってそんなに数はないらしいby店主談。



 ということで店を出て隣の店に入った。そう服屋とは〈喫茶&カフェ アステリア〉の隣にあるのだ。そして俺は自分の服が必要になったらだいたいここで買っている。店の制服だって最初は“リュエード”から持ってきた服だったが今じゃこの店で何着か作ってもらっていた。“リュエード”の服を着てたら傷んだり破けたりしたときにもうどうしようもないからね。“リュエード”の服よりグレードは落ちるがそもそも制服にそんな機能をもとめてなんかいない。機能より使いやすさだ。



 店が隣に立っていて何回も利用してたら馴染みにもなるってもんである。うちの制服のようにオーダーメイドも可能だし、この店の主人には色々と世話になったのだった。



 カランコロン



 扉を開けて店に入る。扉につるされていた鐘が乾いた音色をあげた。



「おばちゃん!いるかー?」



 店内には所狭しとさまざまな衣服が並べられている。店の外にも客寄せとしてか派手な服が何着も飾られていた。



「あーはいはい、またきたのかい」

「服を作ってくれ」

「……あんたオーダーメイドを何着私に作らせる気だい?」



 うーむ、今のところ5種類ぐらいは作ってもらってるかな。この服屋のおばちゃん腕は確かでどんな要求でも大抵は材料さえ用意すればつくってくれるというすごいおばちゃんなのだ。



「今日は俺の服じゃない。こいつの服を作ってくれ」



 そういってラスクの背中を押して前に出す。



「あらまあ、かわいい子だね。あんたどうしたのこの娘」

「買った」



 そういうと訝し気な顔をしていたが俺を見て、ラスクを見てもう一度を俺を見て納得したように手をポン!と叩いた。



「あんたもついに男になったんだねえ」

「何を想像しているかは予想つくけど違う。うちの従業員として買ったんだ」

「あらなんだい違うのかい。あたしゃてっきり……」

「違うっていってるだろ!人の話を聞け!」



 まったくこのババアは。



「それで、この娘に合う服を用意したらいいのかい?」

「そうだ」

「服に何か要望は?」

「前に言ってただろ。あれだ」

「あれかい。確かにこの嬢ちゃんには合いそうだけど……材料はあるのかい?」

「ああ」



 インベントリから実体化させておばちゃんに材料を渡す。



「相変わらずすごいものを材料として持ってくるねえ」



 渡した材料の種類に感心される。

 この世界で獲ったものもあるがほとんどが“リュエード”から持ってきていたものだしな。まあそりゃなかなかなものになる。



「あ、あと服は魔法服で頼む」

「注文が多いねえ。追加料金だよ?」

「わかってる」

「他にはないかい?」



 今のところこんだけかな。あ、もうひとつ。



「ラスクを綺麗にしてやってくれ。確かここ風呂もあっただろう?」



 今のラスクは全体的に不潔感が出てて印象に悪い。ここのおばちゃんは美容師的なこともできるのできれいにしてもらえばラスクは見た目もかなりよくなるはずだ。



「あんたあたしにどれだけ仕事をさせる気だい!?」



 おばちゃんがぶつくさ言うが気にしない。この人のすごいところはなんだって朝頼めばその日のうちにすべて仕上げてしまうところだ。はっきり言ってなぜ終わるのかが摩訶不思議である。



「じゃあ、俺は店に戻るから。頼むよ」

「まったくもう、わかったよ。夕方くらいに来な。そのころには多分できてるよ」

「さすが!」



 こういうなんだかんだ言って融通をきかしてくれるのがおばちゃんのいいところである。



 話についていけてないラスクに向かって言う。



「そんじゃあとはこのおばちゃんがやってくれるから。いいか、言うことを聞くんだぞ。悪いことにはされないから。されそうになったら全力でぶっとばしてうちに逃げてこい」

「なんだい!とって食いやしないよ!」



 おばちゃんの剣幕に若干ビビってるラスクだったが俺の言うことに従ってくれた。



「ラスク。またあとで迎えに来るよ。おばちゃんよろしくな!」

「ああ、はいはい」



 はやくいけ、とでもいわんばかりに手を振るおばちゃん。



 俺は今のラスクの姿を目に収めてから店を出た。「なかなかに汚れてるねえ。まずは風呂だね」というぶつくさ言いながらも依頼を受けてくれるおばちゃんと「は、はい」とすこし不安が抜けてないラスクをまるで初めて祖母に会いに来た娘だみたいなだなと思いながら。



 店は昼の鐘が鳴る前に開けた。帰ってきてすぐ開けなかったのはやってなかったことをやる時間が必要だったからだ。主に店の掃除やベッドのシーツの洗濯とか。



 この世界では電化製品なんて便利なものはない。ないにはないがしかし、その代わりになるものが存在する。



 それが魔石である。



 魔石とは魔力を流すとその魔石に込められている力が発動するものである。例えば〈アステリア〉の厨房のコンロには火の魔石が使われている。これは魔力を通すと火を発する。さらに流す魔力の量を調節することによって火の大きさを変えれるという優れものだ。俺が初めてであった魔石も火の魔石だった。その時は魔力をこめすぎて火の魔石が爆発。あたり一帯が火事になるという現象が発生したりしたがこれはまあ余談。



 とにかくこの世界には魔石というものが一般に流通している。風の魔石によって空を飛ぶ飛行機みたいな建造物もあるし光の魔石によってこの町は夜もそれなりに明るい。長所短所それぞれあるものの俺の元の世界では生活に電気が必要不可欠なようにこの世界では魔石が必要不可欠になっている。

 だからといって魔石は電化製品のように万能ではない。一回水と風の魔石を同時に使ったら洗濯機の代わりになるんじゃね?とやってみたら洗濯物がどこかへ飛んで行ってしまった。その日商業都市に謎の衣服飛来!という噂が立った黒歴史が存在する。と、このように魔石は使いにくいのだ。火や風、水単体で使うならそれなりの効果を発するが組み合わせて使うとなるとダメ。洗濯機代わりにするなら自分で魔法を使った方が気が楽で早い。



 要するに何を言いたいかというと俺の元の世界では簡単なことも非常に時間がかかる。つまりだ。やることやること時間がかかりなおかつ店を開いているとだ



「やばい、もう暗くなってる……」



 約束の時間をとおに過ぎてしまったりしちゃうのだ。



 仕方がない。仕方がないんだ!こればっかりは!



 こんなときばっかりお客さんが間断なくきちゃってやらないといけないことが終わらない。昼過ぎの通り雨によって洗濯物はびしゃびしゃになってしまう。ようやくお客さんが切れた時に急いでやってどうにかこうにかやっと終わらしたと思ったらお外は真っ暗。



「絶対なんかいわれるだろうな」



 おばちゃんの小言を予期して少しげんなりする。服屋のおばちゃん、いい人なのだが少々小うるさい。気分的には孫に世話を焼きすぎるおばあちゃんだ。おばちゃんの場合は世話を焼いてではなく単純な愚痴だが。



 おばちゃんの小言は萎えるが腕は確か。ラスクがどんなふうになってるか楽しみだ。



「ごめん、遅くなった」

「おそすぎだよ!あたしは夕方って言ったはずだけど!」



 おばちゃんの責めの言葉が飛んでくる。



「悪かった」



 約束を破ったのは事実。責めの言葉は甘んじて受け入れよう。



「全くあんたってやつはいつもいつも……。まあいいよ。遅れるってことは何か事情があったんだろ。あの子は裏にいるから行ってやりな」



 きっちり夕方までに仕事はやり遂げてくれていたみたいだ。さすがプロ。



「わかった」



 おばちゃんの言うとおり店の裏に行こうとするとおばちゃんにまた声をかけられた。



「あんた」

「ん?」

「あんたがあの娘をどこから連れて来たか知らないけど、必ず大事にしてやりなよ」



 ???

 おばちゃんがこっちのことに口出ししてくるなんて。ラスクと何かあったのか?



「ああ」



 よくわからないまま相槌を打って裏に行く。



 店の裏の部屋はおばちゃんがオーダーメイドで作るときにするサイズの採寸時に使う部屋で特に用がない時は待合室みたいな感じで使われている。



 コンコン、と扉をノックする。部屋に入るときは必ずノックをして了承してから入る。これ常識。



「はい」

「俺だ。ラスク、入ってもいいか?」

「ふえっ、ご、ご主人様!?」



 何を驚いているんだそんなに。ちょっと傷つくぞ。



「ど、どうぞ……」



 ラスクの了承を得たところで中に入る。そこで






「ど、どうでしょうか?」







 俺は言葉を失った。







 汚れてくすんだ灰色の髪は洗われて生まれ変わったように腰までなびく(あで)やかな銀糸の髪になり、光を反射して煌めいている。土気色だった肌は生気を取り戻したかのように乳白色になり艶々(つやつや)としていた。絶望を映していた金と琥珀のオッドアイにはわずかながらも明るさが戻ったように感じる。奴隷商に売られた時に着せられていたあのボロ服はどうやらかなりゆったりとした物だったようだ。つまり



 デカい……



 ラスクの胸についている、男に取ったら至宝の存在。恐らくI、いやもしかしたらHまで手を伸ばしているかもしれない。とにかくそれは男をひきつけてやまないほど大きかった。



 そして、服だ。ラスクが着ているのは濃紺のワンピースに純白のエプロンドレス、頭に同じく白いフリルのついたカチューシャを付けていた。卸したてであるせいか糊付けがまだ残っているのか服にパリッとした感じがあるが逆にそれが着る者の初々しさを引き立てていた。

 これがおばちゃんに前から依頼していた服。もうお分かりかもしれないがメイド服である。俺は従業員を雇おうとした時点から女性の従業員はメイド服だ、と決めていたのだ。なぜメイド服なのか。特に意味はない。完全に俺の趣味である。



 服の大きさはそれほど余裕があるようには作っていない。要するに体にぴったりとフィットしている。これが意味することは一つ。体型がモロわかりなのだ。ボロ服が隠していたのは胸の大きさだけじゃない。ラスクの体型は女性が理想としそうなものだった。 



 今、この場にいるのは汚れた卑しい少女ではない。すごく、なんてものじゃなく超絶にかわいくグラマラスな美少女だった。



 これは……いい買い物をしたな。今のラスクを見てしまうと金貨100枚じゃ下らないくらいの価値がある。奴隷だからと言って誰が交渉してきてももう絶対売らない。



「ご主人様?」



 俺が何もしゃべらないことを何か勘違いしたのか若干恐れながらラスクが首を傾げた。



 上目づかいで。



 ……

 なんという……破壊力…



 いやもうねえ。ダメだろ。昨日までみすぼらしかった少女が超絶美女に変身してそんなかわいい仕草をしたら。



 男なんか一瞬でイチコロだ。



 溶けて消えてしまいそうな理性を必死に保とうと脳内努力をしつつ、ラスク返答した。



「あ、いや。綺麗だな。それにかわいい」



 いかん、理性と本能が世界大戦を勃発していたせいかなんも考えず答えてしまった。



 俺がほめ言葉を言ったことにラスクは驚いた様子だったがすぐにうれしかったのか陽だまりの笑顔を咲かせた。



「ありがとうございます!」



 あ、もうこれ無理だわ。

 ここがおばちゃんの店だとかそんなことなんかどうでもいい。



 理性の堤防がぶっ壊されて本能が俺を支配し、おもむくままに行動を開始しようとした、その時。



「あんたら対面が済んだのならさっさと帰りな。いつまでも居座られちゃ店も閉められないし迷惑なんだよ」



 タイミングがいいのか悪いのか。おばちゃんが扉から顔を出した。



 おばちゃんの声で俺の頭に理性が戻る。



「ああ、ごめん。すぐ出るよ。ラスク帰るぞ」

「はい」



 まだ笑顔のラスク。ほめたことがそんなにうれしかったのか?というかそんな笑顔のままだと鎖でがんじがらめにした本能が引きちぎってまた復活してきそうで非常に怖い。



 店から出ようとしてふと思った。



 俺は“リュエード”からのアイテム持越しや家に服のストックがあるがラスクには今着ているメイド服しかない。女性なのに服が一着しかないのは色々と問題があるのではないだろうか。元の世界でも俺がファッションとやらに無頓着だったせいでよくわからないがそれでも妹は俺の倍近く服を持っていたはずだ。なら、後日また買いに行くよりここであと何着か買ってしまった方がいいかもしれない。ここの店の品質はかなり良いし。



「ラスク。あと何着か服を買ってもいいぞ」



 本日もう何度目かの驚き顔。



「いいのですか?」

「ああ。ラスクもそれ一着じゃいろいろ不便だろ。好きな服買っていいぞ」

「ありがとうございます」



 そういってお気に入りの服を模索しだすラスク。



 おばちゃんが早く帰れよ、みたいな目をしているような気がするが気のせいだろう。店主が客を追い出すはずがない。



 そーいや、ラスクの言葉が敬語になってるな。表情も昨日よりずっと豊かに出している。預けている間におばちゃんに指導でもされたか?おどおどした雰囲気もだいぶ薄れてるし。落ち着いてきている。何を言われたのかしらないがとりあえずは良いことだ。後は、うちの店に慣れてくれたら普通に従業員として使えるはずだ。けどまあ使えなくても別にいいかな、かわいいし、と思ったりしちゃったり時点で俺はもうだめかもしれない。



 嬉々として店の服を物色していくラスク。その様子を見てやっぱ女の子だなぁと思う。女性はやっぱファッションが大事なのかな。服を集めるのもその一環とか。



「これにします」



 ラスクが何点か服を選んできた。ラスクなら何をきても似合うと思うけどな。



 おばちゃんにオーダーメイドと服の料金を支払って店を出た。金を払った客に対して「ありがとうございます」の一言も言わず逆ににらみつけるのは店主としてどうかと。腕はいいのになぁ、あのおばちゃん。良い人でもあるけれど色々と残念な人だ。



「そんなことありませんよ?私にとってとても勉強となる方でした」



 おっと、心のつぶやきが声に出てたみたいだ。



「勉強となる方ねえ。ラスクも何か教わったみたいだし、間違いじゃないんだろうけど」

「服を作る合間に私に心構えと作法を教えてくれました。おかげでご主人様がどういう方かわかりましたし」



 そういうラスクに朝のようなおびえている感じはない。恐れ多いという雰囲気は若干まだあるが朝に比べてかなりましになっている。心境の変化があったのだろう。ただ、それを起こしたのがあのおばちゃんというのはどうも納得できないものがあった。



 まあ、ラスクの表情が増えたことと服を作ってくれたことには感謝かな。



「さて、そんじゃ服もできたし明日から働いてもらうからな」

「はい。よろしくお願いします」



 そうして夜は更けていく。


女性視点ってむずかしい

他の方はどうやって書いてるんだろ

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