続いてみた
「サワちゃん、恋愛相談の時間ですっ!」
「サワちゃん呼びは止めろ。ってか、慰謝料請求するべきか?」
「がめつい勘違いしてないで、最後まで聞く! あたしじゃなくてあたしの最愛の幼馴染の話なのだ!」
「最愛っつーことは………嘉納さん?」
「そう、あたしと違って極限まで可愛らしくいじらしいさっちゃん」
「自分で言うかよ」
「あたしが言わなかったらサワちゃんがこう形容してたでしょ」
「虚しくならないのか?」
「似た者同士、愛だねっ!」
「噛み合わねえ」
「全くだ!」
「同意するぐらいなら話戻せよ………嘉納さんがどうかしたのか?」
「その前にサワちゃん、あたしのもう一人の幼馴染を覚えてる?」
「サワちゃん呼びは却下済みのはずだが………まあいいや、何だっけ、サッカー部の元気な奴」
「その単純馬鹿りっちーだよ」
「……………単純馬鹿………」
「わらわも今回ばかりは腹が立って、あやつとの縁をいっそ斬り捨ててしまおうかと考えているぐらいなのじゃ」
「お前はいつの人間だ?」
「んー、縄文時代?」
「雅だな、縄文時代」
「粗野な時代だとも言いきれないぞ!」
「全くどうでも良い話にずれ込んだが………ん、まあ大体分かったような」
「さすがサワちゃん、あたしとさっちゃんの間にある愛を理解してくれているんだね!」
「ほいほい、嘉納さんはお前のもう一人の幼馴染が好きなんだな」
「ザッツライト。だけどりっちーはこの間告られて、うっかりOKしてしまったのさ」
「泥沼だな」
「いやいや、さっちゃんは良い子だからそのまま身を引いちゃうんだろうよ。でもあたしはね、りっちーは鈍いから気づいてないだけで本当はさっちゃんが好きなんじゃないかと睨んでいるの」
「漫画が現実に侵食してるよな」
「まあ漫画っぽい見方だとは承知してるさ。でも、だってさー、りっちー、さっちゃんにはいっつも自分が出る試合見に来るように言うんだよ。彼女が出来てからも。あたしには言ってくれないのにだよー?」
「それはお前が苦手なだけでは」
「ん、まあそれでも良いや。とりあえずさっちゃんの生殺し状態が可哀想で。だってさ、そんなこと言われたら期待しちゃうじゃない? 期待しちゃうから、断われもしないじゃない?」
「じゃあお前が“りっちー”とやらを張っ倒して来い」
「サワちゃん、君ならそう言ってくれると思ったさ。延髄斬りとエルボーのコンボがいけるね!」
「いくな。さすがにそこまでやったらまずいっつの。平手で殴るぐらいにしとけ」
「ぐーじゃだめ?」
「延髄斬りを試そうとする奴に拳で殴るチャンスを与えてたまるか」
「うん、そういうわけでモノは相談なんだがねサワちゃん」
「最初からそれ言えよ………」
「さっちゃんと仲良くなってみない?」
「…………………………………は?」
「あ、もちろんさっちゃんは渡さなくってよ!」
「一応言っとくが、根本的に間違ってるぞそれ」
「ふっふっふ、あたしがさっちゃんを渡さないってことは、さっちゃんにサワちゃんが渡ることも無いんだぜっ!」
「……………あー」
「照れなくても良いよーん」
「微妙に呆れた」
「何故っ!?」
「しかしその“りっちー”だって、俺の立場知ってるんだろ? 俺と嘉納さんが仲良くなったことで変化なんか起きるか?」
「よくわかんないけど、男にとって好きな子も自分のナワバリみたいなもんなんじゃない?」
「…………なるほど、他の野郎がどんな奴で誰であろうと、踏み荒らされたくないわけだ」
「しかもさっちゃん、大人しくて人見知りだから、ぶっちゃけた話、今までりっちー以外の男の子の友達って居ないわけよ」
「で、試しに俺を近づけてみようと?」
「だってサワちゃんならまかり間違ってもさっちゃんには惚れないじゃん?」
「………………自信過剰な」
「否定してみるかい?」
「それは彼女と仲良くなってみにゃ分からんな」
「よっしゃ、だから愛してるぜ!」
「愛があるなら金をくれ」
「慰謝料にはまだ早い!」
「確かにな」
「んじゃまあ、今日もこの辺で、ぐっばい!」
「おう、じゃな。…………………これでいいのか?」