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護衛決定

巴と成明の試合は、互いに一歩も譲らない激しい打ち合いになった。最終的に、敗者復活戦で多く戦っていた成明が先に疲れを見せ、巴がその隙をついて勝利を収めた。

続く決勝でも巴は勝利し、まさかの他国の当主が和倉の姫の護衛決定だ。


「しーちゃん!やっぱり護衛になってくれたね!ありがと……いてっ!?」

抱きつこうとする拓馬に木刀を投げつける。拓馬はそれを受け止め損ねて額をぶつけた。

「仕方なくだ。目立ちたくないのに……まあ、厩より金が貰えそうなのはいいが」

「しーちゃんって、本当にがめついよね」

「生活がかかっているからな」

あの後、優勝者の巴に加え、次点の常光、準決勝まで残った成明と白猫が護衛になることで決定した。奉公人仲間はもちろん城下の者は、厩の少年の大躍進に湧いた。ああ、もう完全に目立たず行動するのが難しくなった。頑張るけれども。

「……で、どんな人がいた?」

拓馬の問いに、白猫は黙って文を押し付けた。拓馬はそれを受けとると、すぐに懐へしまう。

「さすが、仕事が早いね」

「どうも。そろそろ俺は行くぞ」

「八重様とご対面?いってらっしゃーい!」


四人の護衛は八重姫との対面のため、和倉当主・利春の元へ集められた。

利春は他国でも評判の穏和な人物で、和倉が攻めいられることがないのは彼の人柄にもよると言われている。

「此度は見事な剣の腕を見せてくれた上、娘の護衛に付いてくれること、礼を言う」

利春は一人一人の顔を見て、穏やかに微笑む。

「聞いているとは思うが、娘の輿入れをよく思わない輩が、儂や娘を襲ってくる恐れがある。そなた達には娘に付いて、しっかり守ってもらいたい」

「はっ!」

「お任せください」

元々の家臣である常光と成明は返事をして頭を垂れる。白猫は黙って頭を下げるが、ちらりと横に座った人物に目をやる。本来ここにいてはいけないだろう、朝倉巴雅こと旭川巴。彼女はじっと利春を見つめている。それに気づいた利春は、笑みを崩さぬまま見つめ返す。

他国の当主同士が……まずい状況ではないのだろうか?

不穏な空気を感じた白猫は、内心肝を冷やすが、二人が見つめあっていたのは一瞬で、すぐに襖の向こうから声がかけられた。

「失礼いたします。八重です」

「……入れ」

やって来た八重は父の傍に座ると、護衛となる四人に目を向けた。

「世話になります。和倉利春の娘、八重です」

八重は一人一人に声をかける。

「常光殿、昔から知るあなたが護衛になってくれれば安心です。頼みますね」

「はい」

「成明殿、不慣れなことが多い中、苦労をかけます」

「とんでもございません」

続く巴を見た瞬間、八重ははっと驚き、言葉を詰まらせる。……まさか、ばれたのだろうか?

「どうされました、美しい姫君?」

対する巴は余裕の表情だ。というか、なんで軟派な感じなんだ。

姫は表情を戻し、笑みを浮かべる。

「……いえ。朝倉様、でしたね?」

「様なんておそれ多い!それに、これから親密にお付きあいさせていただくのですから、気軽に巴雅とお呼びください」

……あんた、本当に何がしたいんだ?

白猫は溜め息をぐっと堪えた。雇われの忍びでこれなのだから、旭川の家臣は大変だな。

「巴雅殿、とてもお強いのですね。そのお力をお貸しください」

「姫のためなら、喜んで」

続いて八重は白猫に目を向け、立ち上がってこちらへ向かってきた。白猫の前に膝をついた八重は、その手を握る。

「太助!まさかあなたが護衛になるとは思ってもみませんでした!」

さすが評判の美人なだけあって、間近で見る笑顔が眩しい。隣の人がニヤニヤとしているが、無視だ。

「運だけはいいみたいです」

「いいえ。成明殿からあなたの強さは聞いています」

成明め、余計なことを……。

「よろしくお願いしますね」と言う姫に頷きながら、白猫は先程から感じる視線の元にちらりと目をやる。成明は目が合うと、ふっと笑って、視線を外した。


巴や成明、利春。まったく、今回の任務はよくもくせ者が揃ったものだ。

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