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 ブラックサンタが夢奈の額に手を伸ばそうとした時、俺は金縛りの体を無我夢中で動かそうとした。

 今まで動かなかった体が途端に動けるようになり、俺はブラックサンタに向かって思いっきり掴みかかった。それと同時に、マスターもブラックサンタを抑え込もうとする。


「お、お前ら!何をする!」

「サンタさんは子供に夢を与える方です。それなのに、奪うなんてどういうことですか!」

 ブラックサンタは俺とマスターを吹き飛ばすと、店の外へと走って行く。

 外に出ると、サンタがブラックサンタに対して、何か呟いている。

「サンタ同士で争って何になる?そこを開けろサンタ」

「何を言うかブラックサンタよ。わしは使命を果たすために、お前を止めに来たのじゃ」

 サンタとブラックサンタというややこしい二人が、世界の命運を賭けている。こんなおかしな構図を、俺と夢奈は固唾を飲んで見守っていた。

「サンタよ。お前はまだわかっていないようだな」

「何がじゃ?」

「俺は子供達が大嫌いなんだよ。だから、夢も希望も消してやる」

「そんなことはさせん!」

 サンタがブラックサンタへと赤と白の飴の棒を突き付けた。魔法を唱えるべく詠唱を始めた。

「よし、これで事件はめでたく終了しますね」

「あぁ、そうだな……」

 俺と夢奈はただの釣りで、マスターは場所の提供。結局ラストはサンタがあっさりブラックサンタを捕まえてしまう。あぁ、俺達の精神的な苦労はなんだったのか……。

 と、思っていた矢先。サンタに対してトナカイが追突し、サンタを雪だるまのようにごろごろと転がした。


 一同全員目が点になり、数秒の沈黙が訪れる。いち早く立ち直ったのはブラックサンタであった。

 その場から逃げようと、ブラックサンタ用の黒いトナカイを口笛で呼び寄せる。

「逃がしはしませんよ!!」

 マスターがブラックサンタの服の裾を掴み、思いっきり自分の方へと引き寄せる。ブラックサンタがマスターの顔面を殴りかかろうとするが、マスターはあっさりと攻撃をしゃがんで回避する。

 顔面を殴ろうとしてきた右腕を掴み、一瞬とも呼べるようなスピードで背負い投げをブラックサンタへと決める。

「うげぇ!」と雪の上に叩きつけられたブラックサンタは、一発で気絶。おかしいだろこの速さ……。


 日付が25日へと変わり、世間はクリスマスを無事向かえた。

 子供達の夢が食べられることもなかった。楽しい夢を今は見ているに違いない。

 世界の運命を揺るがせたブラックサンタはというと、俺の左隣でマスターが淹れた温かいミルクティーを飲んでいた。


「素晴らしい!こんなに美味しいミルクティーを飲めるだなんて!」

「当店自慢の商品でございます」

 当店自慢も何も、これと柿ピーしか置いてないじゃないか……。


「それにしても、どうして子ども達から夢を奪おうとしたんじゃ?」と、右隣で額に氷の入ったビニール袋を当てているサンタが言った。こいつは結局何しに来たんだか……。


「俺はな、子供達が大嫌いなんだよ。親からもらったプレゼントを、平気で捨てたりする。それが俺は許せない。どうしてクリスマスという大切な日に貰ったものを平然と捨てたりできる!?玩具ってのはな、遊ぶだけのためじゃない。思い出も詰っているんだよ。なのに、ゲームばっかり新しいものを貰っては、それもすぐに飽きてやらなくなり、売ったりする。俺は、そんな子供が許せないのさ」


 そう言われた時、俺は胸が少し痛んだ。ブラックサンタが言っていることは悪いわけではない。確かに、親から貰った大切なものを粗末にする子供は居る。でも、全員が全員、粗末にしようとしていたり、感謝の心もなく捨てようとしているわけではないと思う。俺も、年末の大掃除の時に、幼稚園の時に買ってもらったゴジラの人形をもう要らないからと捨てた。勿論、その当時は嬉しがっていたし、今でもその時の感情ははっきりと覚えている。

 決して、プレゼントを蔑ろにしようとしているわけではない。


 俺が胸中で悶々としていると、マスターが優しくブラックサンタに語り始めた。

「クリスマスは豪華な料理、そして子供達が喜ぶプレゼントがあって、とても華やかですよね。子供のころは、確かにプレゼントに目が眩みますし、時が経てば貰った時の嬉しさは薄れてしまうかもしれません。ですが、思い出としてその時のクリスマスの記憶は残るでしょう?ゲームや玩具などは関係ありません。その時のクリスマスを、心で楽しめればそれで良いのです」

「心で、楽しむ?」

「そうでございます。玩具や料理などは、思い出の一片です。それがメインディっシュというわけではありません。家族や友人、恋人と楽しく過ごすことこそ、クリスマスの本当の素晴らしいところではありませんか」

 マスターが語っている間、ブラックサンタは涙を流しながら聞いていた。同じく聞いていたサンタも、瞳に涙を浮かべていた。

 クリスマスについて深く考えていたことはなかったが、確かにマスターの言うことは正しいと思う。

「すまないサンタ。俺が悪かった」

「いいんじゃよ。わしも、お主のことをよくわかってやれずにすまなかった」

 間に挟まれた俺は、目のやり場に困っていた。目の前に置かれていた温かいミルクティーを口に含んだ時に思い出したのだが、夢奈はまだ寝ているんだろうか。

 後から聞いた話だと、俺と夢奈が急激に眠くなったのは、ブラックサンタの魔法によるものらしい。なるほど、サンタが夢を子供たちに配る時に見られてはマズいよな。


「悠一。今日はもう遅いから泊って行きなさい。起きたら、とびっきりのプレゼントを差し上げますよ」

「期待しないで待ってるよ。つーか、もともとあそこで寝かせられる予定だったろう……」

 俺は重い腰を上げ、布団のあるマスターの私室へと向かった。


「それではマスター、悠一君。私達サンタクロースは失礼するよ」

「これから夜が明ける前に、子供達に夢を配らねばならん」

 マスターがとびっきりの笑顔で二人を見送る。

「お二方、お気をつけて」

「ありがとうマスター。元気でな悠一君。メリークリスマス」

「ありがとう悠一君、マスター。メリークリスマス」

「トナカイのこと、しっかり世話してやれよな」

「メリークリスマスです。今度は屋根に落ちないように気を付けてくださいね」

 二人のサンタは、外で降りしきる雪の中へ、溶ける様に消えて行った。

 さて、俺はこれから叶えたい夢を願いながら、ゆっくり寝るとしよう。


 俺が布団にもぐろうとした時、夢奈が寝言を言い始めた。だが、はっきりと口にしていたため、それが寝言だったのか定かではない。


「メリークリスマス」

 その寝言に、俺もそっと言葉を返す。

「メリークリスマス、夢奈」


 布団にもぐり、俺は外で綺麗に輝く粉雪を見て瞳をゆっくり閉じる。

 瞳をゆっくり閉じようとしている間に、窓からトナカイに飛ばされるサンタが見えてしまった。

 今年の夢は、自分で叶えるしかなさそうだ。


これにて「ホワイトクリスマス編」は終了です。 

クリスマスイブに完成させたものなので、急ぎ足になった感は否めませんw


今後も「ライフイズユアセルフ」シリーズとお付き合い頂けると嬉しいです。


質問、意見、要望、感想など大歓迎です。



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