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英雄の孫は今日も最強  作者: まーびん


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25/26

第25話  後見人

毎週金曜更新の予定……です……多分。

 スタンピードボスを倒し、俺は宿に帰った後、もう一度ダンジョンに潜り込もうと画策してみたのだが、父上に見破られて謹慎処分を言い渡された。

 つまり、宿屋で絶賛ふてくされ中だ。


「せっかくだんじょんがあるくににいるのに」


 ダンジョンボスのフェンリルの魔石、欲しかったなぁ。

 しかし、行けないのなら仕方ないので、俺はカテリーナと宿を探索したり、宿の従業員たちと仲良くなっておやつを貰ったりしていた。

 あと、一連の出来事をオーフェンに報告したりもした。


 俺はカテリーナがいない時を見計らい、通信の魔道具を耳にかけて起動する。

 オーフェンはいつものようにすぐに通話に出て、俺の説明を聞いた。


『ロイ君の行く先では、どうしてこうも問題が起こるのかな? そんなスタンピードボスの話は、僕ですら聞いたことがないんだけど』


 オーフェンは、ため息混じりに苦笑する。


『それで、アロニア王国側はなんて言ってるんだい?』

「しらない。おうていとちちうえしかよばれてないし」

『ふぅん。まぁ、大体予想はつくけどねぇ』


 オーフェンはしばらく思案するように沈黙し、やがて決めた、と声を上げる。


『僕もそっちに行くよ。その会議とやらに出ようじゃないか』

「かいぎはもうあしただよ? まにあうの?」

『転移を使うから大丈夫だよ』


 出たよ、チート魔法。


「おーふぇんばっかりずるい! おれもてんいしたいのに!」

『いやいや、普通は個人で使う魔法じゃないからね? 僕だって、このギルド本部の力がないとできないんだからさ』

「けんじゃのまほうでしょ? まほうじんあれば、おれでもつかえる?」

『え? う~ん、どうだい……?』


 オーフェンは、何故か誰かに聞くみたいに沈黙して、そしてしばらくしてから答えた。


『あ~、ロイ君の魔力量なら多分可能だね。だけど、僕は専門じゃないし教えられないよ? 転移魔法陣は一つのミスで悲惨な事故につながることも多いから、実験は慎重にすることだね。ダメって言ってもやるんだろうし』

「わかった!」


 やるな、と言われても聞かないけど、慎重にやれと言うのなら、ご忠告には従おう。

 本当に気を付けるんだよ、と俺にくぎを刺し、オーフェンはそろそろ通信を切る。


 といっても、話が終わったわけじゃない。


「やあ。さっきぶりだね」


 オーフェンは早速転移魔法を使い、ものの10分の内にアロニア王国のこの宿へとやってきたのだった。



 オーフェンは王弟と父上が帰るのを待ち、明日の会議のための打ち合わせをする。

 王弟も父上も、オーフェンが帰りを待っていたことに驚いたみたいだった。

 俺は明日の出席者でもある事だし、3人が話し合うのに同席させてもらう。


「はじめまして、オレリアス王弟殿下、ターセル子爵。僕は冒険者ギルドのグランドマスターを務めるオーフェンと申します」

「あぁ、貴方の話は聞いている。確か、竜人族の方とか」

「りゅうじん⁉」


 王弟の言葉に、俺は驚いてオーフェンを見上げ、目を丸くする。

 何だ、その面白そうな話は!

 俺は何も聞いてないぞ!


「確か、200歳を超えていると聞きましたが」


 父上も同意して頷いている。

 知らなかったのは俺だけか!


 唖然とする俺を尻目に、オーフェンは早速本題に入る。


「時間がないので、単刀直入に言いましょう」


 全員が椅子に座るのを待ち、オーフェンは宣言した。


「今後、ロイ君の所属組織はモルグーネ王国ではなく、冒険者ギルド、と言うことにしてもらいます。ロイ君を動かしたい時は、モルグーネ王国と言えども、常に冒険者ギルドを介してもらうこととなります」


 突然の言葉に、王弟も父上もしばし硬直している。

 しかし、王弟は顔を顰めると、オーフェンを睨んだ。


「随分一方的だな。ロイ君は我がモルグーネ王国の貴族に連なる者であり、まだ未成年だ。いくらロイ君が冒険者登録をしているとはいえ、それは無理な要求だろう」


 オーフェンはその反応を予測していたように、わずかに笑みを深める。


「当のロイ君が、それを認めているとしてもですか?」

「! ロイ君、本当かな?」


 王弟が俺を見るので、俺はひとつ頷いた。


「うん」

「ロイ、私は聞いていないぞ。……ちゃんと意味が分かっているのか?」


 父上は、隣に座っている俺の両肩を押さえ、顔をのぞき込んでくる。


「べつに、ひっこしたりするわけじゃないよ?」

「それはそうかもしれないが……しかしだな……」


 父上も、実際にどういうことになるかよく判断できず、言葉を探しあぐねているようだ。

 オーフェンは、それぞれの反応を見た上で、さらに言葉を続ける。


「まず、事実として、ロイ君の実力はすでに一国に収まるものではありません」

「……」


 王弟も否定はしないが、頷きもしない。


「ロイ君は例の勇者より強い。その気になれば、一国を更地にすることも容易い。今現在そうなっていないのは、ロイ君の自制心に拠るところですね」


 オーフェンの説明は続く。


「ロイ君自身は、戦場に出ることを望んでいない。しかし、国に所属していれば、いずれはそう言う事態に巻き込まれるでしょう」

「自国を守るためには、必要なことだろう?」


 軍人でもある王弟は目をすがめる。

 しかし、オーフェンは薄く笑い、緩く首を横に振った。


「過ぎた力は身を滅ぼす。ロイ君の力は、この世界の在り方を破壊しかねない。『この世界にあってはいけない力』なのですよ」


 オーフェンは俺を何だと思っているのか。

 ちょっと失礼じゃないか?

 俺は口を尖らせるが、父上たちは何か心当たりがあるような顔をしている。


「そして、同じく、『この世界にあってはいけない力』がもう一つ在る。ロイ君には、それへの抑止力として働いてもらいたいと考えています」

「まさか……」


 父上は目を見開き、立ち上がる。


「勇者とロイを戦わせるつもりか⁉」

「勇者が事を起こせばです」

「絶対にダメだ! 危険すぎる!」


 父上は身を乗り出し、オーフェンに食って掛かる。


「ロイはまだ子供だぞ⁉ 一度退けたからと言って、次も勝てるかは分からないというのに!」

「では聞きますが、ロイ君以外の誰が、一度でも勇者に勝てるのです?」


 オーフェンは冷たい笑顔で父上を眺め、父上は歯噛みする。


「だからと言って、ロイを戦わせる理由にはならない! それは我々大人の仕事であって、子供にさせる事じゃないだろう!」

「なるほど……。ロイ君は良い家族に恵まれたね」


 オーフェンはちらりと俺を見て、口角を上げる。

 しかし、すぐに父上に視線を戻すと、挑戦的な笑みを浮かべた。


「しかし、勇者を放置すれば、この世界に甚大な被害が出る。最大の国力を誇る帝国が勇者を取り込んだ以上、同盟国も弱い部分から切り崩されていくのは間違いないでしょうね」

「……そこでロイ君の力を利用するというのは、結局同じことなのでは?」


 王弟がオーフェンを睨むと、オーフェンは首を横に振る。


「ロイ君には、あくまで勇者との戦いだけを要請するつもりです。それ以上の戦闘は極力避けてもらうつもりですよ。『あってはいけない力』は、この世界の人々に向けて振るわれるべきではない」

「その言い方ではまるで、ロイ君がこの世界の人間ではない……ような…………」


 王弟は、徐々に目を見開き、俺とオーフェンを凝視する。

 オーフェンの奴、ここで俺の正体をバラすつもりなのか?

 オーフェンの意味ありげな鋭い笑みに、王弟はグッと息を呑みこんだ。


 しかし、怒りに気を取られ気づいていない父上は、まだオーフェンの言葉に納得していないようで、オーフェンを睨みつつも俺の肩を引き寄せる。


「私は反対だ! そちらが何の思惑を抱えているかも分からないまま、息子を差し出すような真似はできない!」

「こちらの思惑など、単純なことですよ」


 オーフェンは足を組み、殺していた威圧感を少しだけ開放する。

 すると、瞳孔が縦に細長くなり、皮膚のところどころに濃い色の鱗が浮いて来る。

 うわ、竜人ってこんなことになるのか!

 思わず目を奪われる俺に構わず、オーフェンは続ける。


「勇者にも、そしてロイ君にも、この世界を破壊させない事です」

「……!」

「正直に言えば、一国二国が滅びるだけで済むのなら、大したことではないと考えていますよ。もしロイ君が本気で世界を滅ぼそうとしたなら、半数以上の国が消滅するでしょう。これはそう言う規模の話です」


 オーフェンの姿と強者の気配に圧されつつも、父上は口を引き結びオーフェンを睨み続ける。


「いずれの国であれ、ロイ君ほどの戦力を手に入れたならば、必ずそれを振りかざしたくなる連中が出る。そうなれば、その力を他国も求めるのは想像に難くない。そうなってしまわないように、ロイ君には力を利用しようとする連中と距離を取っていて欲しいのですよ」

「まるで、自分はロイの力を利用しないかのように言うのだな」


 父上はすっかりオーフェンを警戒して、承諾しない構えだ。

 しかし、オーフェンは動じない。


「僕はロイ君にどこにも肩入れせず中立でいて欲しいのですよ。もちろん、冒険者ギルドに対してもね。何からも中立ならば、何かを傷つける必要もない。ただ適切な距離を取ってこの世界と付き合って行って欲しいだけです。しかし、もしそれが叶わないのなら……」


 オーフェンは一旦言葉を切り、俺を見つめる。


「僕は、ロイ君と敵対しなければならなくなる」

「! 敵対だと……!」


 父上は俺の肩を押さえた手に力を込めるが、俺はすでにオーフェンのスタンスを知っているので、特に反応しない。

 王弟は、オーフェンと俺の反応を交互に観察し、聞き役に徹している。


「冒険者ギルドは、ロイ君にとって盾であり鎖でもあります。ロイ君が冒険者ギルドに籍を置くのならば、冒険者ギルドはロイ君の後ろ盾となり、全面的に協力を惜しまない事を約束します。しかし同時に、もしロイ君が世界に牙を剥くというのなら、冒険者ギルドの総力を持って、ロイ君に対抗します」


 まぁ、そんな事起こらないでしょうけどね、と、オーフェンはいつもの姿に戻り、重くなった空気を払うように肩をすくめる。


「何より、ロイ君自身がそんな未来を望んでいないはずですから」


 ねぇ、と話を振られ、俺はオーフェンを半目で睨む。

 そんな重い話を急に投げないでもらいたいんだが。


 しかし、俺は父上に向き直り、オーフェンの言葉が俺の意志でもあることを話す。


「ちちうえ、おれね、せんそうしたくない」

「ロイ……!」


 俺が父上を見上げると、父上は俺から手を放し、視線を低くして俺と目を合わせた。


「おれ、ていとでしりあいいっぱいできた。だから、ていこくのひともころしたくないんだよ」

「……!」


 俺の言葉に、父上は瞠目して息をつめる。


「でもね、ゆうしゃをとめないと、ひとがいっぱいしぬでしょ? だから、ゆうしゃはおれがとめる。そのために、おーふぇんときょうりょくするんだよ」


 冒険者ギルドには、国同士のしがらみなどない。

 そして、情報収集に長けている。

 勇者が出現すれば真っ先に気付くだろうし、国の束縛とは無縁にいつでも討伐に赴けるだろう。

 元々、そのために創られた組織なのだから。


「ロイ……こんなに幼いうちから、責任など抱えなくていいんだぞ……!」


 父上は苦悶の表情を浮かべるが、王弟は俺の様子をじっと観察していて、冷静に口を開いた。


「ロイ君は、自分なら勇者を止められると思うんだね? 何故だい?」


 王弟は、何か決定的な言葉を引き出そうというように、俺を見つめる。

 いや、腹の中では答えは出てるんだろう。


「もうわかってるでしょ?」


 俺が少し首を傾げて問い返すと、王弟は表情を硬くし、信じられないものを見るような不審な目で俺を凝視した。

 まぁ、幼児だと思っていた相手が、実は勇者でした、と理解して驚くのは無理もない。


 オーフェンは、王弟に目配せし、それは後で、と釘を刺す。


「とにかく、モルグーネ王国にロイ君を任せてはおけないのです。なので、僕が責任を持ってロイ君の後見を務めます。その方がロイ君にとっても面倒がない。冒険者ギルドの長と言えば、そこらの小国の王にも権力で引けは取らないつもりですよ」

「だからといって、信用できるかどうかは……」


 父上は、まだ硬い表情でオーフェンを見つめている。

 俺は後押しするように、父上の手をポンポンと叩いた。


「ちちうえ。おれ、おーふぇんがいやなこといっても、いうこときかないよ? あくようされたりしないから、だいじょうぶだよ」

「あはは、そうだろうねぇ。冒険者ギルドは、冒険者に要請を出すことはできても、何かを強要することはできない。法的機関でも何でもないからね。せいぜいが、評価を下げるぐらいしかできないよ」


 オーフェンは笑い、頭をかく。

 もちろん、冒険者がよほど悪質な行為をはたらけば、当然捕縛されて国に引き渡されるが、ギルドの要請を断ったぐらいでは、実力行使に出る大義名分は与えられないらしい。

 まぁ、オーフェンの事だから、裏で何か手を回したりはするのかもしれないけど。


 とにかく。


「おれもね、おーふぇんをりようするんだよ。あのゆうしゃが、またじいじたちをこうげきしないように」


 やられる前にやらないと、帝国はモルグーネ王国の事も狙っているんだからな。


「……結果的には、ロイ君はモルグーネ王国を守る意思がある、と思っていいんだね?」


 王弟の問いに、俺は当然頷く。


「うん。くにがなくなったら、ちちうえもははうえも、じいじたちもこまるし」

「……そうか。であれば、今の所、私に反対する理由はない」

「王弟殿下!」


 父上は思わず王弟を見返すが、王弟は腕を組んで難しい顔だ。


「モルグーネ王国の貴族たちだって、一枚岩ではない。ルードルフ様のことすら疎んでいる連中もいる。その連中が、これだけ異質なロイ君にどういう対応をするか、正直私でも予想がつかない。であれば、国と言う組織から切り離すのも、一つの手段だと私は考える」


 もちろん、新たな後見人が信用できる相手であるならばだが、と、王弟はちらりとオーフェンを見る。


「ロイ君は、モルグーネ王国であろうと、他国であろうと、勇者の被害を止めたいのだろう? であれば、国同士のしがらみで派遣が遅れるより、勇者が現れ次第対抗してもらうのが、同盟国の国々にとってはいいはずだ。もちろん、後見人として相応しくない行動が見つかれば、その時は後見を切ればいい」


 王弟は、どうやら条件次第ではオーフェンに後見を譲ってもいいと考えているらしい。


「……では、もし後見を受け入れたとして、ロイの生活に何か変化は?」


 一方、まだ受け入れきれない父上は、オーフェンを見て慎重に尋ねる。


「勇者が現れた時に、自分の意志で戦闘に参加してもらう事。そして、モルグーネ王国内外の政治的な話にロイ君を巻き込まない事。これ以外には、特に何の変化もないですよ。心配なら、魔法契約を交わしましょう。もちろん、魔導士はそちらが用意していただいて結構です」

「……ロイ、本当にいいのか?」


 父上は、念を押すように俺に尋ねる。


「だいじょうぶだよ、ちちうえ。おれ、もともとぼうけんしゃだから」


 オーフェンからの話がなくたって、勇者討伐のクエストがあれば、すぐに参加しただろうし。

 といった事を俺が言うと、父上は苦い顔をする。


「本当にやりかねないのが、何とも言えないな……」


 王弟までため息をついている。

 オーフェンは、決断を促すように、父上を見た。


「明日の会議の場で、ロイ君の後見人として旗幟を明らかにしたいと考えています。そうすれば、他国からの勧誘の防壁にもなれるでしょう」

「ターセル子爵。ロイ君は放っておいても勇者と戦う気だ。それならば、オーフェン殿に後見についていただき、支援をしてもらう方が安心ではないか?」

「……一晩だけ、考える時間をください」


 父上は、どうしてもこの場では決め切れず、話し合いはお開きになった。

 俺が持ってきていた郵便の魔道具で、今晩母上たちと連絡を取るのだろう。

 明日の朝一番に、父上は返答をするようだ。

 まぁ、俺は言いたいことは言ったし、後は父上に任せておこう。



【王弟オレリアス】


 冒険者グランドマスター、オーフェンからもたらされた情報は衝撃的なものだった。

 しかし、それならば、今までの不可解だったことに合点がいく。

 ロイ君の異常なまでの戦闘能力の高さにも、年齢に見合わない理解力にも。


 ターセル子爵とロイ君が部屋に戻った後、私は密かにオーフェンと話をした。


「オーフェン殿。先ほどの話は……」

「聞きたいことは分かっていますよ」


 オーフェンは悠々とソファに座り、私に席を勧める。

 これではどっちが王族か分からないな。


「ロイ君の正体でしょう?」

「あぁ」


 私は勧められるままソファに座り、オーフェンを見つめた。


「ロイ君は勇者なのだな?」

「はい。帝国も、その事実は掴んでいるようですねぇ」

「帝国も……。例の勇者繋がりだろうか」

「そのようですね」


 オーフェンは気負いなく頷き、私はオーフェンを油断なく見る。


「ロイ君と冒険者ギルドはどのような繋がりなのだ」

「詳しくは話せません。が、一つだけ申し上げるなら、冒険者ギルドは勇者を監視、排除するために設立されたものであるという事です」

「しかし、ロイ君とは協力すると……」


 私が眉を顰めると、オーフェンはふふ、と笑いを零す。


「今の所、ロイ君を排除するつもりはありません。彼は正真正銘この世界で生まれ、勇者の中でも特別なのですよ」

「……?」

「ロイ君は、まごうことなきターセル子爵家の子息です。その魂は、異世界からやってきたものであったとしてもね」

「そう……か……」


 私が意味をつかみかねていると、オーフェンは首を横に振る。


「詳しいことは知らなくていいのです。ただ、ロイ君も私も、勇者と言う異物に対抗するという点で利害が一致しています」


 ですから、と、オーフェンは私を見据える。


「我々の邪魔はしないでもらいたい。ロイ君の正体についても、冒険者ギルドについても他言は無用です。ロイ君と違って、僕は裏工作にも忌避はありませんよ?」


 先ほどまでの飄々とした態度とは違い、瞳孔が細くなったオーフェンの目は、ひやりとするほど怜悧だ。


「……肝に銘じておく。ロイ君だけでも厄介なのに、竜人のグランドマスターを敵に回したくはないからな」

「それが賢明ですねぇ」


 オーフェンは立ち上がり、軽く伸びをする。


「ターセル子爵家の方々にも、いずれロイ君が自ら話をするでしょう。余計なことは言わない方がいい」

「そうだな……」


 今まで子供と思って接してきたが、ロイ君が年齢に反して異常なまでに優秀だったのも頷ける。

 前世を自覚している時点で、それはただの子供とは言えないだろう。

 そして、勇者に対し、あのロイ君があそこまで注視し続けることにも、何かロイ君なりの考えがあるのだろう。


 触らぬ神に祟りなしと言うし、ロイ君や勇者の情報だけ集めて、まだ静観を続けた方がいいだろう。


 オーフェンと別れ、兄王にはどう報告するべきか、と、私は頭を悩ませながら部屋へと戻るのだった。


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