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英雄の孫は今日も最強  作者: まーびん


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22/26

第22話  アロニア王国へ出発

毎週金曜更新の予定……です……多分。

 王弟との話が終わり、王弟は何とか気分を持ち直して帰って行った。

 俺が同盟国会議に向かうことが決定し、父上もルードルフ祖父ちゃんも、後から話を聞いた母上やマリアンヌ祖母ちゃんまで、呆れたようにため息をつく。


「ロイだけを行かせるわけにはいきませんから、誰がついて行くか検討しましょう」

「ではワシが……」

「ルードルフ。貴方は北の前線に行くようにと厳命されたでしょう?」


 祖母ちゃんは首を横に振り、祖父ちゃんはうむむ、と腕を組む。


「帝国には勇者がいますからね。父上とガストールお義父様が前線に詰めていた方が安心でしょう。少なくとも、ロイがいない間は」


 まぁ、確かに、今すぐ勇者が攻めてきた場合、対抗できそうなのは、俺と祖父ちゃんたち二人ぐらいだ。

 ただ、俺が魔法を教えたこともあって、魔法師団たちは実力を伸ばしているらしいし、前ほどの不安はないと思うのだが。


「まったく、貴方が付いていながら、どうしてこんなことになったのですか!」


 母上は、父上をプンプン怒りながら睨みつける。


「帰って来たばかりだというのに、ロイがまた外国に行くなんて!」

「面目ない……」


 父上はしょんぼりと肩を落とし、反論もせずに母上に叱られている。

 ごめん、父上。


「それにしても、ロイはまたダンジョンに行くのですね?」


 祖母ちゃんの言葉に、俺は小さく頷く。

 だって、それが王弟が出してきた交換条件だったし。

 俺が責任を取って(?)同盟国会議について行く代わりに、ダンジョンへの入場許可を取ってくれるという。


「ダンジョンはいけません!」


 母上がキッと厳しく俺を睨むので、俺はもごもごと言い訳をする。


「でも、もうていとにはてんいしないし。ちゃんとかえってくるし、だいじょうぶだもん」


 もし賢者の転移罠があったとして、日本語を読み上げなければ発動しないと思うんだ。

 多分。

 それに、聞いた話では、800年前にはアロニアダンジョンはまだなかったらしいから、転移罠自体ないはずだ。


「ロイ。そもそも、ダンジョンは危険な場所なのですよ! まだ幼いロイが行くこと自体、問題です!」


 今回は、祖父ちゃんたちが二人ともついてこられない。

 そんな中、俺をダンジョンに行かせることに母上は反対のようだ。

 でも、俺は恐る恐る、正論を言ってみる。


「でもおれ、じいじたちよりつよいよ……?」


 それなのに、ダンジョン禁止なんて酷くないだろうか。


「そう言う問題ではありません!」


 母上は俺の言葉をピシャリと却下し怒るが、祖母ちゃんは困ったように頬に手を当てる。

 

「そうは言っても、今回はもう遅いのですよ。これは王命ですからね」

「そうですね、ある種の強制力があると見た方がいいと思います」


 父上も頷いているが、俺は首を傾げる。

 王弟と話を付けただけで、王命になるんだろうか?

 まぁ、最終的に王様がGOサインを出したのであれば、王命なのかな。


「じゃあ、だんじょんにいくしかないね!」


 俺が思わず笑みを浮かべると、母上が鋭い視線を向けて来たので、俺はそっと隣の祖父ちゃんに身を寄せる。


「まぁまぁ、エマ。そうロイを睨むでない」


 祖父ちゃんは俺を庇うように俺の肩に手を回して、提案した。


「そんなにロイが心配なら、冒険者ギルドに依頼して、ダンジョンに詳しい現地の冒険者を雇ってはどうだ? どうせ、パーティを組まねば、ロイは一人でアロニアのダンジョンに入れぬのだしな」

「そうだった……!」


 基本的にダンジョンの管理は国がするのだが、アロニアのダンジョンは安全対策が他より厳しいらしいのだ。

 ダンジョンに入れるのは、Eランクから。

 しかも、下層に入る許可は、Bランク以上じゃないと出ないとか。

 俺はFランク冒険者だから、一人では入る事すら許されない……!

 なんて厄介な安全対策だ!


「じいじ、ぱーてぃくめば、おれもぼすまでいけるよね⁉」


 俺が必死に祖父ちゃんに確認すると、祖父ちゃんは重々しく頷く。


「上位冒険者を雇えば、行けるであろう」

「よし!」


 俺がガッツポーズをするのを、母上は不服そうに見つめている。


「……止めても無駄なようですね」


 母上は、やがて肩を落とし、額を押さえた。

 そして、俺の方に身を乗り出すと、怖い顔で確認する。


「もう反対はしません。ですが、ロイ。分かっていますね?」


 俺はハッとし、キリッと表情を引き締めて宣誓する。


「だいじょうぶだよ! おれ、ぜったいぶじにかえってくる! やくそくする!」

「……約束ですよ」


 母上は困ったように微笑み、俺を抱きしめる。

 俺は、こうして母上に心配されるのも悪くないものだな、と思いつつも、必ず無事に帰って来ようと心に誓った。



 俺は、10日後の出発に向け、色々と準備をした。

 といっても、荷物やなんかは母上が準備してくれるらしいし、持っていくものをそろえる必要はない。

 俺が準備をしたのは、セクトたちに自主練のメニューを作る事と、オーフェンに事情を説明しておくこと等だ。


 俺はターセル子爵家の裏庭の誰もいない所で、通信の魔道具を耳にかけて起動する。

 通信はすぐに繋がり、俺は全ての経緯をオーフェンに話して聞かせた。

 冒険者ギルドのグランドマスターって、実は暇なのかもしれない。


『同盟国会議でお披露目ねぇ』


 オーフェンは、通信の魔道具越しに感心したように呟いた。


『ア―スドラゴンの討伐もそうだけど、ロイ君はどんどん有名になるねぇ』

「おれ、べつにゆうめいになりたくないのに」


 俺が文句を言うと、オーフェンはおかしそうに笑った。


『有名になりたくないっていう行動じゃないんだよなぁ、ロイ君の場合。まぁ、今回は諦めて行ってくるといいよ』


 だけどね、と、オーフェンは声を落とす。


『できればロイ君には、あくまで ❝ 冒険者 ❞ という立場を貫いてもらいたい。モルグーネ王国のために、戦争に参加したくはないんだろう?』

「ひつようがないならね」


 さすがに、国の滅亡とかになるなら、見過ごせないけど。


『うん。だったら、今後、ロイ君への依頼は冒険者ギルドを通すように言っておくといいよ。ギルドを介しての依頼なら、僕が盾になれるし、依頼の選別もしよう。もちろん、依頼達成のためのバックアップもできるからね』

「せんべつ、って、おーふぇんにつごうよく、えらぶつもりじゃないの?」

『いやいや、面倒な王侯貴族からの依頼を選別してあげる、ってことだよ。大体、ロイ君を一番中立に保っておきたいのは僕だよ? どこか一つに肩入れされて、世界地図が描き換わるようなことにはなって欲しくないからねぇ』


 まぁ、それは分かるけど。


『とにかく、ロイ君を取り込もうとする動きは、モルグーネ王国だけに留まらなくなる。だから、冒険者ギルドを後ろ盾に利用してほしい。いいね?』

「わかった」


 俺は通信を切り、屋敷に戻ろうと振り返る。

 そして、しばらくぶりにヘレス師団長を見かけた。


「やぁ、ロイ君。久しぶりだね」


 ヘレス師団長は、相変わらずの笑みを浮かべて、俺の方に歩み寄ってくる。

 いつも通り、くたびれた中間管理職感が拭えない人だ。


「ヘレスしだんちょう、ひさしぶり」


 俺は、すかさず背中の卵を前に回し、自慢する。


「まだみてないよね! これ、シェリばあばにもらった、おれのりゅう!」

「竜騎の卵か……とんでもなく高価なものを貰ってるねぇ……」


 ヘレス師団長は苦笑いを浮かべ、俺の耳にちらりと目をやる。


「そっちは通信の魔道具かい? それもえらく高価なものだねぇ」

「うん。もらったの」

「へぇ~。誰にだい?」

「ちょっとね」


 俺は答えずにはぐらかし、ポケットに魔道具をしまう。


「それで、きょうはなんのよう?」

「あぁ、毎月の定例報告にね。でも、ロイ君が帝国から帰ってきてから会ってないし、挨拶しとこうと思ってね」

「じゃあ、こんにちわ」

「はい、こんにちわ」


 俺がちょこんと頭を下げると、ヘレス師団長もつられて頭を下げた。


「そうそう、今度またアロニア王国まで行かなきゃいけないんだって?」

「うん。でも、だんじょんにいけるから」


 俺的には、面倒臭さとワクワクでプラマイゼロ……いや、ちょっとプラスかな。

 ヘレス師団長は、そんな俺の表情に苦笑して、頭をかく。


「ロイ君はタフだねぇ。自分なんて、駆けずり回ってヘトヘトだよ」


 ヘレス師団長によると、ここ最近食料が値上がりしていて、兵料の確保のためにあちこち出向かなくてはいけなかったらしく、冒険者活動をするカテリーナの護衛にもろくについて行けなかったそうだ。

 帝国との戦争が、食料品の価格に影響しているのだろう。

 そんなようなことを王弟が言っていたし。


「しかも、ルードルフ様もロイ君も、ターセル子爵領から出て行っちゃうだろう? その間の備えで、てんてこ舞いだったよ」

「そっか……」


 うん、恨むなら王弟を恨んでくれ。

 俺は別に同盟国会議になんか行きたくなかったし。


「ま、兵料調達の目処もついたし、カテリーナ様の護衛もしばらくはお休みできるから、これからはちょっと気が楽だなぁ」

「? なんでカティのごえいしないの?」

「あれ? 聞いてないのかい?」


 ヘレス師団長は首を傾げ、顎に手をやる。


「カテリーナ様も、王弟殿下について同盟国会議に行くって言ってたけど?」



 10日後、俺は馬車に揺られ、アロニア王国に向かっていた。

 俺の隣には父上が座っている。


 祖父ちゃんが来られないので、結局父上が俺の付き添いをすることになったのだ。

 領主の仕事は、王家から紹介された代官に一時任せているらしい。

 しかし、父上と遠出することなんて初めてなので、その点は、俺としてはちょっと楽しみでもある。


 そして、俺の前に座るのが、カテリーナと侍女。

 王弟は馬上の人となって、護衛たちと一緒に警護に当たっているらしい。

 軍部の人間なので、そう言った役回りを申し出たのだろう。

 それとも、もしかしたら、馬車が窮屈で馬に乗りたいとかそういう下心があるのだろうか?

 俺も馬車より馬の方が良かったな。


 そんな俺の考えも知らず、向かいの席のカテリーナは、ワクワクした目で俺を見つめていた。


「ロイ、それって竜の卵よね!」

「うん、おれのりゅうだよ。さわっちゃだめだからね」


 俺は、膝の上に大事に抱えた竜騎の卵を見せる。

 暇さえあればずっと魔力を注いで大事に育てている卵だ。

 あと1カ月程度で孵るらしい。


「竜が孵ったら、私を最初に後ろに乗せてよね!」


 後ろと言うのは、竜騎の助手席的な所だから、俺が操縦して、カテリーナが一緒に乗るという事か。


「カテリーナ様、竜と言っても、雛はまだ小さいですから、すぐには乗れませんよ?」


 父上は苦笑し、カテリーナの侍女は小さく頷く。


「じゃあ、大きくなったら最初に後ろに乗せて! それならいいでしょ?」

「んー、まぁ、いいけど」


 俺は頷く。

 別に、減るもんでもないし。 


 俺たちは、同盟国会議の事を脇に置いて、卵の話や魔法の話などをしながら、平和に旅をした。

 そして、王族がいる旅なので、当然夜は宿を取って泊まる。

 思った以上に快適で、俺としてはちょっとつまらない旅だ。

 もっと冒険とかしたいのだが。


 俺は、道端の広場に昼休憩のテントを広げ、優雅にお茶を飲む同行者たちを横目で見ながら、ぶつぶつと呟く。


「とうぞくとか、まものとかでるとおもったのに」

「ここは街道よ? 商人たちも通るのに、そんなの出たら大変でしょ?」


 カテリーナの正論に、俺は小さくため息をついた。

 カテリーナは、周りに誰もないのをきょろきょろと確かめ、小声で俺に尋ねる。


「そう言えば、ロイは帝国に行ってきたのよね?」

「うん」

「どんな所だった?」


 カテリーナは好奇心に満ちた目を向ける。

 モルグーネ王室の姫であるカテリーナからしたら、敵国のネヴィルディア帝国は、恐ろしくも興味深い場所なのだろう。

 しかし、こんな話をしていたら、大人たちに窘められてしまうものなのかもしれない。


 俺はカテリーナにしか聞こえないよう小声で、暇に飽かせて帝都での出来事を語った。

 そして、話がリーヴァスの所に差し掛かると、カテリーナが目を輝かせる。


「私たちの時代っていいわね! 私とロイの時代ってことでしょ!」

「う、うん。リーバスもいるけど」


 俺は小声で付け加える。

 カテリーナは、あまり聞いていない様子で、ふふんと満足そうに鼻を鳴らす。


「大人たちは、あれもダメ、これもダメって言うじゃない? でも、私たちがルールを決めていいなら、何だって好きなことができるわね!」

「そうだよ!」


 冒険とか、冒険とか、冒険とか。

 あとおやつ食べ放題。

 でも、それと同じぐらい大事なこともある。


「リーバス、せんそうなくしたいっていってたから、おれもきょうりょくするんだよ」


 俺が何よりリーヴァスを評価している部分がそこだ。


「じゃあ、私も協力してあげる!」


 カテリーナは自分の胸を押さえて、二ッと笑う。

 これは、結構頼もしいかもしれないな。


 カテリーナはモルグーネ王国の第一王女だ。

 最近弟が生まれたらしいから、王位は継がないかもしれないが、いずれは有力貴族か王族に嫁ぐだろう。

 その時、戦争を無くす活動に協力してくれれば、強力な味方になるのでは。


 いっそ、次の世代を担う俺たち子ども皆が団結すれば、戦争してばかりのこの世界を本当に変えられるんじゃないか?


 もちろん、そう簡単に全てのしがらみを断ち切れない事なんて分かっている。

 だが、最初から諦めて理想を持たないというのでは、何とも意気地がない。


「カティ。おれたちのじだいがきたら、いっしょにせんそうなくそうね」

「俺たちの時代……! もちろんよ、ロイ!」


 カテリーナは何だかテレテレしているが、多分前向きに考えてくれているのだろう。



 そうして、退屈な中にも有意義な、半月に渡る馬車の旅を終え、俺たちは同盟国会議が行われるアロニア王国へと足を踏み入れたのだった。

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