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15章〜19章

   第15章 お小遣い


 久保さんは財布を開いて「げ!」と声をあげた。

「どうしたの?」

「いやー。お金がなくて」

 久保さんは苦笑いを浮かべる。

「なんか買おうか?ジュースくらいなら買えるよ」

「うーん。じゃあ、お願いしようかな」

 自動販売機に向かいながら話す。

「珍しいね。久保さんが金欠なんて」

「うん。グミとかお菓子を買いすぎた」

「あらら」

 こういう時、自分は無欲な人間で良かったと痛感する。

 久保さんが飲みたいジュースを買い、教室に戻る。

「いやー。参ったよ」

 罪悪感からなのか、久保さんはおもむろに語り出す。

「いやーね。色々買いすぎてさー。まさかの誤算だったよ」

「ふーん」

「まぁ、次のお小遣いで返すよ」

「うん」


   第16章 セミ


 夏にはうっとうしい生物がいる。その者の名はセミ。そう、夏恒例の行事、夏休み、夏祭りその他諸々に入るだろう。朝からミンミン、ジージー鳴いているのだ。勘弁してほしい。

 極め付けは、死んだふりだ。

 道端にコロリと転がっているセミに、かわいそうの情をもってはいけない。ヤツらは、ジジジ!と強烈な音を立てて飛んでいくのだ。勘弁してほしい。


          *


 ミーンミーンと軽快な音を立ててセミが鳴いている。

「あー、来たよー。セミシーズンがー」

 久保さんは「ハハハ」と笑いながらいう。

「そんな嫌かい?セミ」

「やだよ。うっとうしく鳴くし、死んだふりするし」

「まぁ、そうだよね」

 そういえば、久保さんは虫が平気だった。正直、虫が平気な人の心の中がわからない。いや、そっちも同じか。「強いものは弱いものの立場になれない」ってね。なんかの本で読んだ。

「セミなんて夏らしいじゃん」

 久保さんが夏のような爽やかな笑顔を向ける。

 半袖と相まって、なんか、目にいい。

「でもさー」

 久保さんが鳴いているセミを見ているのか、窓の景色を見る。その目は悲しそうだ。

「一週間しか生きられないんだよ」

「…………」

 僕はため息をつく。

「セミはね。幼虫、成虫ってなるの。これを不完全変態っていうけど、セミはその期間を含めれば二年以上は生きてるってさ」

「えー、そうなの?やっぱりすごい卓くん。セミにも希望があるんだね。でも、セミの幼虫なんて見たことがないよ。抜け殻しか見てないよ」

 僕はさらに説明を続ける。

「それはね、セミは土から出て脱皮して成虫になるけど、脱皮中は無防備になるんだ。だから、鳥に食べられる危険があるんだ。だから、鳥が寝てる夜に脱皮をして羽を乾燥させるんだ。この羽の乾燥は、カブトムシとかもやってるね。で、夜が明けるまでには、完全に飛べる羽を持って鳥に逃げられるようにするんだってさ」

「へぇ、賢いね」

「まぁ、生きるために身につけた知恵ってヤツだね。そう言えば、素数ゼミもいるけど、聞く?」

「いや、いいや。お腹いっぱい」

 話しすぎたかな?いや、素数だから諦めたのかな?久保さん数学苦手だからなー。



   第17章 ぬいぐるみ


  中間テスト前。僕は久保さんの家で勉強している。別に、なんらやらしことはない。それが本命ではない。僕は数学がまぁまぁできるから、教えているところだ。

「で、ここを移項して……って、聞いてる?」

「ヨクワカラナイ」

 ダメだこりゃ。頭がパンクしかけてる。

「じゃあ、ちょっと休憩しようか」

 “休憩”と聞いて久保さんはベッドに飛び込む。単純な人。

「……ん」

 僕の横には、無造作に置いてあるクマのぬいぐるみがある。久保さんの部屋には、ぬいぐるみが三体くらいいる。

 ベッドにいる二体。で、僕の目の前に転がっている一体。僕はそのぬいぐるみを手に取る。

「やい、く……歩果よ」

 久保さんはその声に気付き、僕の方を見る。

「あんた、テストで何点を取る気かね。僕は安心できないよ」

 手を動かしたり、地味にかわいい裏声を出してぬいぐるみに声をあてた。

 久保さんもノリがいいのかそばにいたシマエナガのぬいぐるみに声をあてる。

「歩果はな、せめて赤点を取らなきゃいいってよ」

 このシマエナガのぬいぐるみはオスなのか、だいぶ太い声を出す。普段の高い声はいずこへ。

「それじゃ、両親がかわいそうだよ」

 僕も負けじと対抗する。

「歩果の両親は、赤点さえなければいいってよ。そういえば、歩果の友達はどれくらい取る気なんだろうね」

 つぎはこっちか。

「得意な教科を伸ばしたいってよ。ハハハ。歩果より偉いね」

 久保さんは少しムッとしたような表情をする。

「なら、苦手な教科はどうなのかな?」

「いや、うーん」

 ぬいぐるみの首をかたむける。

「苦手を克服しようっていう点では、歩果が偉いぞ」

 ガーンという音が鳴り響いた。

「って。なにこれ」

 シマエナガのぬいぐるみをベッドに置き、元のやさしい声に戻った久保さんが笑みを浮かべながら言った。



   第18章 私物


 心なしか、僕の持ち物は白と青が多い気がする。

 筆箱、中に入っているシャーペン二本、水筒が青。 休日に着る私服、家にいるぬいぐるみは白。いや、ぬいぐるみの目の色は青。

 なんでこうなっているのかは知らない。

 自然に買ったもの、選んだものが白か青なのだろうか。

 まぁ、両方の色が好きだからいいけど。


   第19章 一円玉論争

 

 例えば、一円玉を落としたとしよう。果たして、一円玉を拾うか、それとも拾わないか。

 ある本では、「一円玉を拾うには、それ以上のことをしてしまうから赤字」だと。

 その本を見て、僕は久保さんと話している。

 僕は拾わない派。久保さんは拾う派。

 さぁ、まずは僕の意見を聞いてもらおう。

「一円を拾うのは、やっぱり、一円以上の労力がいるからね。仮に、百円とか五百円を落としたなら拾うよ。ジュースを買えるからね。でも、一円はね」

 続いて、久保さんの意見。

「一円……数字の一って、重要じゃない?時速十キロと時速十一キロじゃ、一キロも違うじゃん。だから、一円でも、見過ごすことはできない」

 なるほど。我ながら、両者の意見は確かにと思う。

「でも、一円だよ?」

 この言葉は両者の間では正反対の意味だろう。

「じゃあね。卓くん」

「ん?」

「テストが七十九点なのと、八十点。どっちが見栄えがいい?」

「……それは、八十点の方でしょ」

「ね。一の差って結構違うんだよ。一点違うだけで、褒められる言葉が違うんだよ」

 確かに。

 数字の一。侮れないものである。煙突にするようなものではないのかもしれない。

 こんちくわんこそば。小早川です。

 かなり描けたと思います。でも、まだまだかもしれないです。

 さて、16章。セミって、本当にあれですよね。鳴く分にはいいんですけど、人間の前に現れないでくれよと思います。

 次に17章。僕もよく、ぬいぐるみに声をあてていました。そのせいで、声変わりが来ていないような気がします。まぁ、カラオケで高音を出せるからいいですけど。

 そして、18章。これ、本当に謎です、この話、僕の率直な疑問なんですよ。持ってるものはたいてい、白か青なんですよ。

 さて、尽きつつあるネタ。これからもっと絞り出すかも。中身がほとんどない歯磨き粉みたいに

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