第40章〜第41章
第40章 変化②
冷え込んできたある日、教室に入ると久保さんが早く座っていた。
「おはよ。久保さん」
「あ、おはよー。タックー」
「それ……って」
僕はあることに気がついた。まさか、この前の宣言通り、今度はデレを発動させた?いやいや。
「今日さ、タイツ履いてるんだ。こういうの、好きでしょ」
あ、これだ。ダメだ。完全にデレだ。確定した。
「久保さん、そんなこと言うっけ?」
一応、確認のために言う。
「やっとね、デレになる気分ができたんだー。どう?今日の私」
「うん、そうだね。違うね」
「そういうわけだから、よろしくね。タックー」
そのあだ名に、一日付き合うのかと思い、ため息をついた。
*
「タックー。ご飯食べよー」
お弁当を持って、久保さんは近づいている。いつも通り、机をくっつける。
「ねぇ、ミニトマト食べてくれない?」
「自分で食べなさい」
「じゃあ、卵焼きは?」
「いる」
「引っ掛かんなかったか」
箸で僕のお弁当箱に卵焼きをのせる。
「そういえば久保さん」
「……ん?」
「なんか、いつも通りに戻ってない?」
「あ、ほんとだ」
第41章 冬将軍
冬将軍という言葉がある。これは、とても寒いことを表す言葉だ。ちなみに、どうして将軍かというと、フランス皇帝ナポレオンを震え上がらせたほどの寒さが由来らしい。
「さむいよーーー!」
久保さんは大きなため息をついた。
「なんでだろうね。晴れてるとあったかいのに、曇ってると寒い」
今日の彼女は重装備だ。ブレザーの上にコート。首にはマフラー。手には手袋。耳には耳当てを。スカートの下にタイツを履き、こっそりモコモコ系の靴下まで履いている始末。寒がりを超えた寒がりだ。
「電気毛布も導入したのに、まだ寒いよ〜。卓くんはよく寒くないよね」
かくいう僕も、手袋はしてるんだけど。あいにく、マフラーはしていない。なぜなら、首がむず痒くなっちゃうから。
冬になればの楽しみが、僕にはあるのだ。
なにかって?お風呂だよ。お風呂は冬場の救世主と言える。全身を温まるあの感覚がたまらないのだ。
そんなわけで、僕は久保さんと反対で、密かに冬を楽しみにしているのだ。




