第1章〜第9章
第1章 僕たちの日常
こんにちは。森川卓です。普通の学生です。ちょっと違うかな。ちょっと、オタク気質なところがある学生です。うん、これか。
そして、もう一人いる。僕の友達で親友の久保歩果。僕たちは仲がいいんだ。まぁ、恋愛的な感情はあるかはさておき。
さて、この物語は僕たちの日常を書いていく話だよ。もちろん、毎日じゃない。連日なこともあれば、点々なこともあるからね。
じゃあ、この物語を楽しんで。
以上、紹介終わり!
第2章 甘いもの論争
「だからぁ。ドーナツだと思うんだよ」
「いやいや。ケーキじゃないの?」
僕はそう言って、眉をひそめる。
僕と久保さんは一緒に帰りながら、“甘いもので、どっちが美味しいか”を争っていた。久保さんはドーナツ派。僕はケーキ派だ。
ちなみに、いろいろな点で争っている。もはや、戦争だ。
まずは、味。
久保さんいわく、「ドーナツはチョコやイチゴと色々な種類があるから、ドーナツが美味しい」と。
僕も反逆心で、「ケーキは甘くて、クリームとかイチゴとかのフルーツがあるよ」と言った。なんだか、違う気がする。
次に、食べやすさ。
久保さんは、誇らしげに「ドーナツは片手で食べられるから、本を読みながらとか、スマホで動画を見ながらで、手軽に食べられる。ケーキは食器を出したりめんどくさい」と、“そう言えば”なもっともなものだった。
結局僕は何も言えなくなって、今に至る。
僕は試行錯誤している。
なんだろうか。味は……言ったな。うーーん。
「あ!」
僕は大きな声をあげて思いついた。
「お、卓くん。何かあった?ドーナツに勝てるものはあるかな?」
ニヤニヤしながら、言う。
「えー、言っていいのー?久保さーん」
僕も彼女を見てニヤニヤする。
「どうぞどうぞ」
僕は間を空けて言った。
「特別感は?」
久保さんは口を開ける。言わなくてもわかる。
「なるほど!」
そう、それだ。まさに、今久保さんが言った言葉そのままだ。ケーキは誕生日やお祝い事限定の食べ物だ。ドーナツはショッピングモールにあるドーナツ屋さんで「ドーナツ食べる?」「うん」の軽いノリで食べられるが、ケーキはどうだ。そんな軽いノリでは食べれないはずだ。なにせ、みんなの頭にはケーキ=特別な日に食べるものという認識があるからだ。
さあさあ、久保さん。これでどうかな。負けちゃうかな。手をゆらゆらさせていると、久保さんは喋り出した。
「食べれる量は?」
「あ……」
ケーキは甘くて、胃が大きなダメージを負うが、ドーナツは片手で持てるくらいの大きさで手軽に食べられる。一度に、一個や二個。もっと食べれるなら三個は食べれて、たくさんの味を楽しめる。つまり、食べている時の次の食べ物のワクワク感が出るのだ。
「あれれ。出ないのかなー?」
久保さんは笑みを浮かべながら僕を見る。
「いやー、うーん」
「ほれほれ。出してみなさいよ」
「いやー、ちょっと……」
「あ、じゃあねー」
久保さんは、曲がり角を曲がる。その曲がり角を曲がってまっすぐ進めば、彼女の自宅があるのだ。
「あ、ちょっと」
久保さんはその声を無視し、家まで小走りで向かってた。これは、一本取られたかな。
第3章 最後の二つ
ある休日の昼下がり――
僕は久保さんの部屋で、トランプをやっている。きっかけは単純。久保さんから「机の引き出しの奥にトランプがあったから、やらない?」との電話をもらい、僕は行くことにした。それから、部屋に入ってトランプをしている。でも、二人だけ。
山ほどあった手札はいつの間にか、あと三枚になった。久保さんはあと一枚で、僕は二枚だった。もちろん、僕の片方の手札にはジョーカーがある。そして、久保さんはあと一枚。つまり、僕が持っている片方のカードを取れば、久保さんか僕は、上がれるのだ。
久保さんはジョーカーを取る。内心、「しめしめ」とニヤニヤする。久保さんはムッと不服な顔をする。
次は僕の番だ。スッと手を伸ばす。すると、彼女はカードを持っている手を後ろに回し、回すような手つきでトランプをシャッフルする。なるほど。数字のカードを取らせない気か。
そして、シャッフルが終わると再度手を伸ばす。右のカードを取って見ると、ジョーカーだった。思わず、ため息がこぼれる。ダメだ。
僕も久保さんと同じく、両手を後ろに回してシャッフルする。でも、僕の方が一枚上手だ。シャッフルすると見せかけて実はシャッフルをしていない。完璧な作戦だ。ちなみに、カードは右にある。
笑いを押し殺していると、久保さんは手を伸ばす。だが、取ったのはーー左と見せかけて右だった。
「え……ちょ」
久保さんはパサりと数字のカードを山のように積もっている捨てたカードに重ねる。
「やったー!」
まるで、子供のように歓喜している。
「えー、ちょっとー」
無気力に言って、トホホとする。
そして、僕は指を一本立てる。
「ねぇ、もう一回やらない?」
第4章 嫌いなもの・久保さん編
僕と久保さんは友達だ。だから、お弁当も一緒に食べる。まぁ、周りの目を気にしてたらどうしようもないから気にしないけど。
久保さんがお弁当をあげた瞬間、「えー」と言った。
「どうしたの?」
まぁ、予想はつく。彼女はランチボックスの中を指差す。胸を見ないように覗き込むと、彼女の嫌いなミニトマトがあった。
「あーあ」
「ねー。どうもねぇ、なんかあの、プチッと、果汁?が弾けるのが嫌なんだよねー。目がうるっと来ちゃう」
「大きい方のトマトはたべれるのにね」
なんだか、不思議な気がした。別に、大きなトマトと小さいトマトの差はそう変わらない気がする。でも、「一口で食べれる」のと「一口で食べれない」の好き嫌いの違いはなんだろうか。味は同じなのに。
「ねー、卓く〜ん」
久保さんは猫撫で声からのニコニコ顔で僕の名前を呼ぶ。犬なら、甘えた声を出すだろう。
「このミニトマト、食べてくれる〜?」
そこまでして食べたくないか。
「ダーメ。我慢しなさい久保さん」
「お願いだよ。ほらほら。人を助けるつもりでさー」
嫌いな食べ物を代わりに食べるのを、人助けと言うのだろうか。はなはだ疑問だ。
「えー、タックーー」
謎のあだ名をつけられた僕はため息をつく。
「わかったよ。じゃ、食べるからちょうだい」
「わーい」
箸でミニトマトをつかんで僕の弁当箱に入れる。
「ありがとね。タック」
「その名前やめて」
なんか、僕までミニトマトが嫌いになりそうだった。
第5章 案の定
多分、多くの学生が経験したであろう受難に僕は陥っている。
そう、お昼の後の五時間目だ。一部の人は“修行”とも呼んでいただろう。まさに、僕は今それにおかされている。眠気は強烈だ。真面目を意識しても眠気は襲ってくる。そういえば、こうなる原因を本で読んだことがある。たしか、こういうのは自然の欲求なのだという。「自然なら大目に見てくれよ先生」と思う。でも、そう言うわけにはいかない。先生は教えるのが仕事だ。仕事の縛りを無くせば、先生は気楽なのだろうか。
いやいや。そう考えている暇はない。今は眠気と戦わなければ。
ハッと意識を戻して、黒板に向き合う。たくさんの数字が書かれている。数学の時間なのだ。慌てて、プリントに答えを書いていく。ひと段落つくと、首が力なく倒れ始める。
慌てて意識を戻す。危ない危ない。油断大敵だ。漫画の効果音、キリッを意識し、黒板に向き合う。ちなみに、隣に親しい友、久保さんはいない。彼女は僕の一個左斜めの人の前の席だ。将棋の駒で言うなら桂馬だ。
ならばと対策をと、今回の授業の公式を利用して問題を作ってみるが、自分で作るから、答えがわかってしまう。ダメだこりゃ。いや、諦めてはいけない。途中式だ。それさえ書けば少しは防げるはずだ。ガンガン途中式を書いていく。なるほどなるほど。ふむふむ。少しわからなかったところが、分かるようになってきたぞ。授業中の暇つぶしはこうした方が頭が良くなるのかもしれない。解き終わったら達成感に包まれたが、また襲ってくる眠気。授業が終わるまであと二十分。五十分授業め。あと十分は短くしてほしい。また襲ってくるから、手のひらにボールペンの芯でも刺そうかとも思ったが、勇気がなくてやめた。あれ、痛いんだよね。
*
気づくと、チャイムが鳴っていた。授業が終わったようだ。でも、記憶がない。そこで、思い出す。寝てしまったのだ。後悔先に立たず。たしか、数学のプリントは中間テストで集めるって言ってた。机の中に数学のファイルがあった。ため息をついてプリントを閉じる。半分埋まっていなかった。久保さんに見せてもらおう。
僕は立ち上がって久保さんに声をかけた。
第6章 嫌いなもの・卓編
僕は下駄箱で久保さんを待っていた。彼女が飲み物を買ってくると言って、走って行ったのを見届けて二分。
久保さんは行く時と同じではなく、歩きながら僕の元に戻ってきた。
「おまたせ」
肩を上下させている。かっこ悪いのか、荒い息はしていない。あまり、気にしないんだけどな。
久保さんが持っている飲み物に、僕は少し不思議に思った。
「コーラか」
「え、うん。まさか、苦手?炭酸」
「うん。どうもね」
「あー、じゃあ私はミニトマトが嫌いで、卓くんは炭酸が嫌いなんだね」
「まぁ、そうだね」
なるほど。久保さんが走って来なかったのは、炭酸が溢れるのを防ぐためか。
彼女はプシュッと軽快な音を立てて、ペットボトルのキャップを開けた。それを少し飲んで息を吐く。
「ふー」
「帰ろうか」
「はいはい」
下駄箱を出て校門を出ると、久保さんは話し始める。
「ねぇねぇ、私がミニトマト嫌いな理由言ったからさ、卓くんも言ってよ。炭酸が嫌いな理由」
「えぇ、うん」
なんだか、嫌いな理由を言うのは罪の意識のようなものを感じる。
「なんかね、シュワシュワした感じがあって舌がピリピリしたり、あと、胃がシュワーって来るんだよね」
「ふーん。うーん」
久保さんは何かを考えながらまたコーラを一口飲む。
「でも、私は好きかなー。炭酸」
「……ん?」
「私も、少し苦手だよ。でも、買って飲むとさ、これがおいしいんだよ。甘さが勉強で疲れた頭を癒してくれるんだー。ハハ。好きって言ったのにねー」
「う、うん」
唐突な矛盾発言。まぁ、そういうもんだよね。
「じゃあ、卓くん」
「ん?」
「なんか、好きなジュースある?」
「んーー。そう聞かれるとねぇ。あ、カルピスかな。でも、ソーダの方は飲めないかな」
「あー、いいね。カルピスー。私も好きーあ、いる?」
久保さんはコーラを僕に差し出す。
「大丈夫」
「アハハ。やっぱり」
久保さんはいたずらな笑みを浮かべながら僕を見る。なんか、笑う顔がかわいいような気がした。
第7章 お菓子の好み
久保さんは授業の休み時間にたまにお菓子を食べている時がある。グミな時もあれば、菓子パンの時もある。他にも色々食べているが、結局どれが一番好きなのかが気になった。
「ねぇ、久保さん」
「ん?」
今日はグミを食べている。
「たまにさ、お菓子食べてるけどさ、何が一番好きなの?」
「えー。決められないなー。グミも好きだし、菓子パンも好きだなー。あ、菓子パンならクリームパンかなー」
今日はホワホワしている感じがする久保さん。
「ふーん」
「卓くんは?」
「お菓子か。あんまり食べないねー」
「え、嫌い?」
「いや、買わないんだよね。あ、アイスなら買うかな?」
「あ、じゃあさ」
久保さんは何かを思い付いたかのように言う。
「コンビニ寄ろうよ」
「初めてだね。そういえば」
*
帰り道。
いつもは下をくぐる歩道橋を渡って、まっすぐ行くと、コンビニが立っていた。
店内に入ると、僕たちはお菓子コーナーに直行した。
そこには、久保さんが食べるグミがあった。あと、このグミ。味が多い。
「どれにする?」
「えー。多すぎない?」
「そうかなー?」
久保さんは迷いなくいつも食べるコーラ味からグレープ味を手にとる。
「なんか、すごいなー」
「え?どこが?」
僕はお菓子が並んでいる棚を一望する。
「こう、なんか、こんな目の前にいっぱいあるのに、迷いなく選べるところ」
「えー。そうかなー。まぁ、いつも選んでれば『これ』ってのがあるからね。言えば、それに目がくらむみたいなものかな」
僕は慌てて、久保さんが選んだグミのメロンソーダ味を選ぶ。
「あ、いいの?卓くん。そのグミ硬いよ」
「え……」
「じゃあ、これかな」
久保さんは迷うことなく、別のグミに手を伸ばし、僕に差し出す。
右上の端には、硬さのレベルがあった。レベルは二だった。
「じゃあ、これにしようかな」
メロンソーダ味のグミを棚に戻し、久保さんがおすすめしたそのグミを手にとる。
「あ、まとめて買うよ」
「じゃあ」
僕はお金を出そうとする。
「あぁ、いいよいいよ」
久保さんがそれを拒否する。
「え、でも……」
「次に、私の分も払ってね」
「……はいはい」
わかったと思う。彼女の好みのお菓子はグミかもしれない。
*
コンビニを出て、すぐ近くの公園で、そのお菓子を食べることにした。
よく見ると、僕が買ってもらったグミの味は久保さんと同じグレープだった。ちょっと嬉しかった。
多分、これがきっかけでグミが好きになったんだと思う。
第8章 低気圧
「はぁ〜〜」
珍しく久保さんはため息をついていた。
「……どうしたの?」
なんか、声をかけられるような雰囲気じゃなさそうだからためらったが、聞いてみる。
「今日低気圧だからさー」
確かに。今日は曇っている。意外と彼女は天気の影響を受けやすいかもしれない。無神経な発言をしなくて良かった。
「頭がいたいんだよ〜〜!」
頭をおさえている手は、僕の肩を揺さぶる手に変化する。
どうやら体調が悪くても、行動は変わらないらしい。低気圧の体調の変化の普通は知らないけど。
「酷いなら保健室いけば?」
「なんかやだ」
なにかを誤魔化しているように見える。
*
お昼時になると、ますます久保さんは体調が悪くなっていた。幸い、体育は無かったから体育を休むことはなかったけど、でも、授業が終わるごとにグッタリとしている彼女を見るととてもじゃ無いが見ていられなかった。
お昼を一緒に食べるタイミングで、僕は帰宅を促すことにした。
「ねぇ、久保さん」
「……ん?」
半分もお弁当を口につけていない久保さん。多分、僕に視線を向けるのもやっとだろう。
「酷いなら、帰ったほうがいいんじゃないの?」
「まぁ、そうだね。今、頭痛と怠さがある。でも、あと二時間でしょ?それさえ耐えれば……」
「久保さん。善は急げって言うでしょ。帰れなくなる前に帰ったほうがいいと思うけど」
これじゃ、説得だ。
すると、久保さんはお弁当を片付け始める。
「じゃあ、ちょっと保健室行ってくる」
そう言って、久保さんはトボトボと保健室に向かって行った。こんな時に動けない自分が惨めだった。
結局、彼女は早退した。
*
家に帰ってくつろいでいると、久保さんから電話が来た。ちょっと怖かったけど、電話に出る。
「……もしもし」
『あぁ、卓くん。ごめんね。急に。お礼が言いたくて』
「……お礼?」
身に覚えがなかった。今日を振り返ると、反省が多いのに。無理やり帰したみたいな雰囲気にしたこと。保健室まで付き添わなかったこと。
『今日、低気圧で、頭痛とかしてたじゃん?』
「う、うん」
衣擦れのような音が聞こえる。ベッドに転がっているのだろうか。
『それがさー。保健室の先生が熱測ったら、三十七度八分。見事に風邪だったよ』
「え、大丈夫なの?電話してるけど」
『あぁ、風邪薬飲んだら治ってきたから大丈夫だよ。多分、明日になれば学校に行けるくらいは回復してるから』
「……うん」
『じゃ、また』
「待って……」
人が何かを言いかけている時に、遮ったのは初めてだった。
『……ん?』
「…………ごめん。あの時、付き添ってあげられなくて。あと、無理矢理みたいな……こといって」
すると、久保さんの笑い声が聞こえる。
『だぁいじょうぶだよ。それに、私を心配してくれたんだから。怒っててもそれでトントン。それに、あのまま授業聞いてたら先に頭がパンクするか、頭が痛すぎて叫ぶかもしれなかったからね』
いつもの、冗談混じりのセリフ。
「…………」
『それじゃ、もう切るよ』
「うん……」
『じゃあね……いや、おやすみかな』
「そうだね。おやすみ。ゆっくり休んでね」
『はいはい』
その瞬間、電話が切れた。
全てがスッキリしたわけじゃ無いけど、後ろめたさがなくなった。
第9章 服装
夏服は見慣れている。久保さんの二の腕とか白い肌なんて何回も見ているから慣れている。
でも、想定外が起きた。僕みたいに、模範的に第一ボタンまでしっかり閉めている人は多数。でも、久保さん。グレタのかは知らないが、第一ボタンを開けてくる日がある。どうしても、アレである。
これは僕の問題になる。いつ変態になってもおかしくはない。
ひとつ、クレーム(言えるはずないけど)を言うことにした。
「ねぇ、久保さん」
「ん?」
僕の心とはつゆ知らず、グミを食べている。
「いやー。熱いのはわかるんだけどさ。ちょっと慎まないかな?」
彼女は僕の言いたいことを察したのか、口をとがらせてこう言った。
「この国が暑いんだから仕方がないよ」
「そう言ってもねー」
男子が座っている彼女を見る目は増えている気がする。
「これじゃ、卓くんがケダモノになっちゃうって?」
「う……」
久保さんは僕の額に人差し指を当てる。
「まぁ、二人きりならなってもいいけどね」
「ん?」
「いいや」
一瞬だけ顔を逸らした。
「でも、安心しなよ。他の連中が来ようものなら」
僕の顔に長く伸びている爪を見せる。
「これで引っ掻くからさ」
「ネコかな?」
「でも、なんでかね。これだけで男を引き寄せられるなんてね。私は便利だねー」
「あのねぇ……」
ズレてるといえばズレてる。久保さんだけじゃなく、全部の女子に共通することだと思うけど。
「そういえば、なんで女子だけ“これ”なんだろうね」
自分の胸を指差す久保さん。
「僕に聞かないで。それ」
「ねぇ、なんで?」
僕はため息をつく。
「そうなってるのはね、女性が異性を引き寄せるためのものなんだってよ」
後ろを向いてそういった。
「あー。やっぱり。卓くんなら知ってると思ってた。雑学好きだもんね」
後ろを向いたまま、ため息をつく。
もうダメだ。どうなっても知らん。
こんちくわんこそば。小早川黒豆(作者)です。
この「こんちくわんこそば」は独自な挨拶です。
さて、このお話は主人公、森川卓が友人、久保歩果と共に過ごす日常(たまに卓一人)のお話です。たまに、僕の実体験を投影したものもあります。描写が詳しかったりしたら、まさにそれです。
まだ始まったばかりの二人の物語を、僕が書き終えるまでお楽しみください。