3-1帰国後初日2
宜しくお願いします。
「こちらの成人年齢っていくつなんですか?」
交際手帳に関して考えていて、思いついた疑問がこれだった。
「学校卒業後、翌年の三十一歳だ。また正成人は三十六歳で、旧成人が四十一歳だな」
「正成人ってなんですか?後、旧成人も」
成人が複数あるって珍しい仕組みだなと思った。
「正成人はアルコール摂取や賭け事が出来るようになる年齢のことだ。
旧成人は子供を授かれるようになる年齢のことだな」
なんかとんでもないことを聞いた気がするんですが。
「普通の成人とは違うんですね。ああ、じゃあ、選挙で投票とかできるのが正成人ですか?」
「そうだ」
「年齢は違いますけど、日本と似てますね。こちらの旧成人はあたる年齢はなかったですけど」
十八歳で投票権を得、二十歳でアルコール摂取や賭け事、ギャンブルが可能になるから。
二段階で認証されるところが似ている点。
旧成人というシステムはなかった。
身体が対応できさえすれば、何歳からでも子供が出来るようになっていた。
こっちではまったく違うみたいだけど。
「日本では何歳で成人だったんだ?」
「十八で投票権、二十歳でアルコールと賭け事です。旧成人はありませんでした」
「中級生だな。しかし旧成人がないとはどういうことだ?」
「地球では婚姻前でも子供ができます」
交際手帳という義務があるわけではないので、そのあたりは自由だ。
「そんな。こちらでは考え付かないな」
父様の驚きの声に頷いて答えた。
「一番早くて女性が十六歳、男性が十八歳で婚姻が可能でした。
日本で一番若い子供を授かれる年齢は十三歳くらいでした」
「コーヒーや紅茶もまだだというのに」
「コーヒーや紅茶も年齢制限されているんですか?」
「ああ。コーヒーは上級一年生からだ。二十一歳からだな。紅茶は中級一年、十七歳からだ」
カフェインが入っているからかなと考えるが、だとしたら紅茶もあるはずという風に思い至った。
「ただし紅茶は一日一杯までだな。制限が取っ払われるのはコーヒーが解禁される年だ」
「カフェインの量が問題なんですか?」
「そう言われているな」
厳しく取り締まれているみたい。
「色々と制限がありそうで難しいですね」
「学校で習うはずのことだ」
「なるほど、そうなんですね」
摂取できる量と理由を一緒に授業で習う、凄く合理的。
科目はなんだろうか。
家庭科か、なければ保健体育かな。
「中級までの校内自動販売機は紅茶も入ってないわよ」
「何が入ってるんですか?」
「サイダーをはじめとした炭酸飲料、イチゴ牛乳、ココアなどの牛乳系、フルーツのジュース、
スポーツドリンク、乳酸菌飲料、麦茶などが主なところね。後、お水もあったわね」
思ってたより数えてみれば色々とあった。
「結構入ってるんですね。不自由な感じがしなさそうです」
「そうね。意外でしょう?」
「はい。直ぐには飽きがこなさそうですね。しかしサイダーと乳酸菌飲料があるとは驚きです」
小説とかで別世界に行く物を読むと必ずといっていいほど、先にあげた物が不足していることが多い。
「それは確か創始者発のレシピだったはずだ」
「創始者?どなたですか?」
「この星を発見し、祖先をこの地へと導いた日本人のお二人だ。料理のレシピなど、
地球にあったものをこちらにもたらしてくださっている。明日以降の食事で分かると思う」
「導入してくださったお二人には感謝しかありません」
豊かな食生活を提供してくれて感謝しかない。
と、なると気になるのが元の食生活。
どんなものを食べていたのかな。
「元のご先祖様の食べていたメニューってどんなだったか分かりますか?」
「さぁな。シンプルに塩コショウと砂糖を組み合わせて食べていたんじゃないか?
詳しいことは分からない」
「そりゃそうですよね。すみません、好奇心旺盛で」
「いや。言われてみればと気になる点だ。お会い出来たらきいておく」
「お会いできるんですか?過去の方じゃなく、現在もいらっしゃるんですか?」
「ああ。たまにいらっしゃる。ユートレイクスのことで助言をもらったりな」
マジでか。
となると自分たちの意思でタイムトラベルが出来る方々なんだなと思った。
「私もお会いしてみたいです」
「会えるかもしれないが、何とも言えないな。気まぐれな方々だから。だが、会えると良いな」
「はい!」
まず、どの年代生まれの方々なのか気になった。
私がいた日本と同じ年代の方々なのかな。
それとももっと昔の方々なのか、はたまた未来なのか。
気になって気になって仕方がなかった。
「ところでどうやってその方々だと分かるんですか?分かりやすい恰好とかしているんですか?」
「まとっている空気が違うから、直感で分かる感じだ。恰好は普通のカップルのような……」
「男性は黒髪で黒のジャケットにジーンズ。女性が私より濃い茶髪で、灰色のカーディガンに
ジーンズのスカートね」
母様が詳細を教えてくれた。
本当に普通のカップルが着てそうな服装だった。
父様が口ごもったのも無理ないかな。
髪色も日本人がしてる一般的な感じだし。
とはいえ、茶髪の女性の方は染めている可能性が高いけど。
今の所髪色が特徴的なこちらに比べてみれば、黒髪も茶髪も立派に特徴となる。
とにかく、いつかお会い出来ればなと思った。
その時の為によく覚えていよう。
「ジーンズのペアルックですね、分かりました。覚えておきます」
「言われてみれば、そうだな。ペアルックだった」
「普通のカップルのような、で合ってるわよ」
「それもそうだな」
父様の言動に母様のフォローが入った。
仲良しな夫婦だなと思った。
「そうだ、離婚したら交際手帳はどうなるんですか?」
「離婚?離縁のことか?役所で届を提出すると自動的に生成され、手渡されるらしい」
「滅多に届が認められることがないから、事例は少ないわ」
「なるほど、そうなんですね」
地球と比べると離婚率は低そうだ。
「子宝に恵まれない場合は婚姻から二十五年は認められないが、家庭内暴力は割と直ぐに
認められるそうだ」
「両方同時というのが多そうですね」
子供が出来なくて家庭内暴力に発展するとか。
うん、十二分にありそうだ。
「過去に散財して離縁のいうのが、我が侯爵家にもあった。その時の経験を踏まえて補佐役就任は
二十年になったんだ。他領の任期は五年だ」
「そんなことが……どれだけひどかったのか想像できません」
少なくとも領民からもらった税を、全て使用するくらいのことをしたのかもしれない。
「税を装飾類に使ったそうだ。半分以上と聞いている」
「それは凄いですね。どれだけ高価なものを購入したんだか」
「今は全部売り払ったのでないが、大振りのダイヤモンドや各種宝石、
貴金属を何個も持っていたらしい。普段から日替わりで身に着けていたそうだ」
聞いてるだけで、どれだけヤバイのかが分かってくる。
考えられるだけで首、両耳、両手、両足と着飾ることが出来る部位をパッと思いつける。
半分以上で作られた物が、どれだけの物なのか。
想像するだけでとにかくヤバイとしか例えようがない。
「次代の方が早めに交代して侯爵として就いたから、考え得る最小限の被害で済んだそうよ。
その方が補佐役二十年任期で就いていたそうで、だからそこから補佐役は二十年と決まったそうなの」
「ユートレイクスの就く年に五年に戻る予定なんだが」
「戻さなくていいですよ。私も二十年で良いと思います。五年よりかは二十年の方が色々と
マシな気がします」
「戻して二十年もありだと思うが」
ナイスアイディア、それです。
「ああ、それならありですね。補佐役として父様に就いて色々学ぶことが多いと思いますし。
でも、正直二十年でも少ないような気がするんですが?」
「そこまでは社会経験として修業していることになる。今現在の俺達みたいなもんだ」
なるほどと一つ深く頷いた。
よく出来てるシステムだなと思った。
社会経験が前提にないと、
「そういえば連合軍というのは、どこの国との連合なんですか?」
「正式名称、王国立)世界連合軍だ。全王国が出資してイグズに本拠を置いている軍だな」
「王国っていくつあるんですか?」
「ここアピテタ王国の他に九か国あって、計十か国だな。王国以外だとイグズ共和国と浮島、
トレントン島があるが、イグズ以外は極小規模な国だな」
地球と比べると全十三国と随分と国の数が少ない。
「転送陣で全部の国に飛べるんですか?」
「いや、飛ぶ先は限られている。各国の許可が下りれば飛べるようになるが、
実際は侯爵になってからだろうな」
「貴族特権というものでね。軍の許可がなくても飛べるのよ」
「貴族なら飛べるんですか?」
「ええ。でも行先は限られているのだけどね。私たちの場合はエアル中央空港からイグズ共和国の
中央空港とウシムグの中央空港、そしてアピテタの王都空港ね」
結構いろんなところに行けるみたい。
「ウシムグというのは?」
「私の出身地よ。いつでも帰郷出来るように登録されているのよ。退院したら一回は行きましょうね。
私方の両親とお爺様とお婆様が心待ちにしてるのよ」
寿命が二百四十年だから余裕で存命している気がする。
会えるのが今から楽しみ。
「はい、是非!」
「後、王都も行く必要があるな。呼び出しがあるだろうから」
「何があるんですか?」
「顔合わせをするらしい。将来に向けてという話だった」
他の侯爵候補や公爵候補、縁爵候補と王候補と会うということか。
聞いただけで、今から緊張してしまいそう。
「父様も顔合わせをしたことが?」
「ああ、ある。今回もユートレイクスを連れて行くの際に、何十年かぶりに会うことになるだろうな。
お互い親になって初めての顔合わせになる」
「最後に会ったのはいつなんですか?」
「結婚式後に互いの伴侶を紹介したのが最後だ。個人的な付き合いは特にないからな。
かなり久しぶりになってしまった」
結婚式が最後となると、私が十歳だから、約十年以上ぶりということになる。
「そう言えば結婚って、いくつになったらできるんですか?」
「最速で三十三歳よ。私達も最速コースだったわ」
やっぱり晩婚からが適齢期だった。
学生結婚は認められてないのかな。
「最速で三十三歳ですか。って、そもそも私の恋愛対象どっちだか分からないんだった」
女性に憑依していたから、相手が男性になってもおかしくないかもしれない。
「あら、男の子だからお相手は女の子じゃないの」
「こっちは同性愛とかないんですか?」
地球じゃ大きな問題となっている話題なんだけど。
「ある、が、真実の泉に入って、水に浸かりながら飲めば本来の性になるからな。実質ないに等しい」
「つまり、女性で男性じゃなく女性が好きだったら、男性に変わるってことですか?」
女性が男性に、男性が女性にという風に変わるということ。
「そうだ。それが自然な形としてなっている。学校で健康診断があり、そこで判明するから、
そうしたら最寄りの真実の泉に入水するんだ」
「卒業後というのはないんですか?」
「交際手帳が緑色になるから直ぐに分かる。通常は男子が青で、女子が赤の表紙だからな」
リトマス紙みたいだ。
でもそっか、それなら直ぐに分かって問題にもならないんだろうね。
「私は青だってことですよね?」
「そうよ。だからお相手は女の子だと思うのだけど、何も焦る必要はないわ。
じっくりと好きな子が出来るまで待ちなさい」
「助かります。現在の自分の好意の対象が良く分かってないので……しばらく時間をかけて
考えたいと思います」
男女どちらに好意を持つのかとか。
「そうね。別に最速を目指す必要はないわ。気づいたらそうなっていたという風になればいいわ」
「とにかく現時点でユートレイクスは、元の憑依していた女性の彼氏が好きではないというのが
大きいな」
確かに元カレといっていいのか分からないけど、その人が好きだと思う気持ちは微塵もない。
むしろどうして彼を選んだんだと思う気持ちが大きい。
この体のまま会えるのならば考え直した方が良いかもしれない、と間違いなく助言するはず。
本当、なんで彼だったのかな。
お読みいただきありがとうございました。