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2-2帰国後自覚初日

宜しくお願いします。



  「そういえば苗字は何ですか?」


 改めて自分自身のことを考えたら、自然と聞いてないことに気づいた。

 名前なんて最重要じゃないかと。


 「エアルよ。綴りはEalle(イーエーエルエルイー)ね。

 ちなみにユートレイクスはYuht(ワイユーエイチティー)reixよ(アールイーエックス)


 どうもアルファベットも地球のと共通らしい。

 日本風に漢字じゃないんだな、と思った。


 「エアル。この島と同じ名前なんですね」


 「ええ。まぁ、正式にエアル島はエアル侯爵領で、そのマルトの侯爵なんだから同じでも

 おかしくないでしょ?」


 驚きの事実に呆然とする。

 貴族なのかと。


 「マルトってなんですか?後コウシャクなんですか……。じゃあ父様が?」


 「いや、ユートレイクスのひいひいお爺様が現在の侯爵だ。近々、お見舞いに来るそうだぞ。

 マルトは公じゃない方の侯爵という意味を持つ。古語だな」


 古語があるということは、学校の授業で習うことになるのかな。

 漢文とは違いそうだけど、どうなんだろう。


 「私、いつか侯爵にならなきゃいけないんですか?」


 「そうね。ネルの次代になるわ。数年後の話ではなく、百五十年後以上のことになるから気長に

 構えていいと思うわよ」


 「百五十年……。気が遠くなりそうな年数ですね」


 一年が五百四十七日なのを加えると地球計算で約二百年超えのこととなる。

 今日明日の話ではなくてホッと一息つく。


 「学校行ったり仕事したりしていれば、あっという間のことだろう」


 「父様と母様の仕事は何を?侯爵の補佐とかですか?」


 「いずれ補佐をすることになるが、今は連合軍の軍人だ。イグズで警邏隊の一員として従事している」


 「私もネルと一緒に連合軍の同じ部署に就いてるわ。ただ、今は産育休暇中ね」


 軍人で警邏隊とは警察と同等と思われる。

 責任感がある部署に努めているんだなと感心した。


 「産育休暇って育休、育児休暇と同じ感じですかね?私の?」


 「ええ。元々アイリーゼの産育休暇中だったのが、ユートレイクスの分が追加になった感じね」


 「俺も産育休暇中だ。だからこうして病院にお見舞いで来れている」


 どのくらいか分からないけど、育児休暇、産育休暇として数年休めるみたい。

 妹がいくつか分からないけど、その際に貰った分と追加で私の分と。


 「そうなんですか。妹の名前はアイリーゼというんですね」


 「ああ。次か、そのまた次の見舞いの時に連れてこようと思っている」


 「私、見た目がかなり衰弱してますけど、大丈夫でしょうか?」


 鏡で見たけど骨と皮に近い外見になっている。

 見た目でショックとか受けないか心配なんだけど。


 「大丈夫よ。気にするだけ損よ?」


 「分かりました。そういえばなんですが、学校に通う前に、こちらの常識含めて初級の勉学を

 見てくれる家庭教師が必要だと思うんですが」


 今の両親にしている以上に質問攻めにしてもいい人。

 そしてこちらでの小学校である初級のいろはを教えてくださる方を。


 「そうね。どう思う、ネル?」


 「補佐役の中から選べばいいだろう。確か教員志望だったこともある者がいたはずだ」


 「ええ、それが良いわ。彼は確か中央勤務だったかしら?」


 「そうだな。エアル島勤務に変更すればいい。イグズの方は希望者を募ればいるはずだ。

 トレードをすれば良い」


 補佐役というのは恐らく侯爵の補佐役ということ。

 どうも豊富に人材がいるみたいだ。

 その多くいる中からすぐに一人の人物に行きつくのは凄い。


 「あの、頼んどいてあれなんですが、領民の税で家庭教師を雇うのですか?だとしたら、

 なくてもいいかなって……」


 「我が家に関係する色々は、全部俺達の稼ぎから出しているから大丈夫だ。この病院で入院して

 いるのも、ティと俺の稼ぎから引いているから問題ない」


 「そうですか」


 父様の言葉に安心した。

 地球で一般的に考えられる貴族像とかなり違うみたいだ。


 「領民の税を使用するのは侯爵になってからだな」


 「そうなんですね。しっかりと線引きしているみたいで良かったです」


 両親の稼ぎなら遠慮なく甘えさせてもらおう。


 「他に何か必要なものはあるか?」


 「特に思いつきません。今の私は必要な情報が沢山ありますが、それがなんなのかはサッパリです」


 一般常識や何から何まで色々とありすぎて分からない状態だ。

 話をしているだけで浮き上がってくることもあるだろうなと。


 「そういえばイグズはどこにあるんですか?そこで勤務しているというのは……」


 「飛行機で約三時間の場所、ここから南にある島だ。正式名称はイグズ共和国だな。

 通勤は転送陣で転送すれば一瞬で飛べるからな。

 佐官になると転送陣の許可が出るからそれを利用している。ティと俺は個々人で飛ぶことが

 出来るから、それを活用している」


 一瞬で飛べる転送陣とは凄い。

 そして、また魔法要素が出てきた。


 「共和国ということは、代表は大統領ですか?」


 「ああ。国民の投票で決まる。対してここ、アピテタ王国は王が代表で、その下の貴族が各地を

 おさめている」


 そして現侯爵はひいひい爺様らしいが、ここエアル領全体をおさめていると。

 更に下に居る貴族階級の人達を纏めているんだろうか。

 貴族って華族と同じ階級であっているのかな。


 「貴族って一番上が王で、次が公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順であってますか?」


 「王の次に縁戚の縁の字をとって縁爵という階級がある。その下はユートレイクスが言ったとおりだ。   

 良く知ってたな」


 ネットサーフィンなどしてかき集めた知識である。


 「地球の私が間接的に居た日本は違いましたけど、他国でまだ貴族階級というのが存在しているのを

 知っていたんです。

 男爵の下に更に準男爵と騎士爵という階級がありましたけど」


 「準男爵はないな。騎士爵は恐らく栄爵にあたるだろうな。一般人から徐爵されてなれる階級が

 栄爵だ」


 「それなら、ほぼ同じですね」


 英国の貴族制に似ている。

 縁爵というのはなかったはずだけれど。


 「百五十年後って仰ってましたよね。さっき仰ってましたが、平均寿命は約二百四十年

 なんですよね?」


 「ああ、二百四十歳だな。ちなみに年金が始まるのはアピテタでは二百二十五歳からだ」


 「ちなみに、侯爵になるのは正確に言えば百七十歳後半よ。今年十歳のユートレイクスにとっては

 百六十七年後ね」


 「いつって断言できるんですね」


 「年数がだいたいこれくらいというのが決まっているからよ。例えばネルが侯爵位を継ぐのは

 三千百年、百七十五歳の年ね。

 ユートレイクス、貴方は三千百五十年、百七十七歳のことよ。後、侯爵位に就く前に補佐役として

 数年従事しなくてはならないのよ。

 でも、その年がくるまでは自分がしたいことをしていいわ」


 「じゃあ、父様と母様はその時がくるまでは連合軍の任務に?」


 「そうだな。やりたいと思っていた仕事に就いているから、このまま連合軍で階級を上げていく」


 軍の階級か。

 大将とか大佐とかそういうものだろうか。


 「今現在は何の階級に就いているんですか?」


 「俺は中佐で、ティは少佐だ。階級に興味が?」


 これもネットサーフィンで得た知識だ。

 階級に関しては小説やアニメで知って調べた。


 「はい。一種のロマンですね。一番上は大将ですか?」


 「総司令だな。将官の一番上は上級大将だが。階級はいっぱいあってややこしいぞ。兵に昇級する

 研修の試験に出てくるくらいだ」


 「兵階級の上が曹階級で、そのまた上は尉官で、更にその上が父様と母様の階級がある佐官で

 あってますか?」


 「正解だ。良く知ってたな」


 「軍隊の階級を調べたことがありまして。一番下は二等兵でしたけど、同じですか?」


 「いや、五等兵だな。能力の程度が低いと五等兵から入隊することになる。普通にしていると

 三等兵入隊だ。

 俺とティは一等兵採用だったが」


 「五等まであるんですか。随分規模が大きそうな軍隊ですね」


 「来るもの拒まずの精神で入隊試験はないからな。希望者全員採用だ」


 「それは凄いですね」


 試験なしで入隊できるとは、想像したことがなかった。

 道理で五等兵とかいう階級がある訳だ。

 三等兵はともかく一等兵採用というのは、どれだけ優秀なんだろうか。


 「とはいえ、正式採用より前に依頼を受けてランクを上げる必要があるから、大変だぞ」


 「ランクを上げるとは?」


 「依頼を受けてG級からS級までランクを上げる必要がある。S級を卒業した翌年から正式採用で

 兵階級の位に就くことになる。

 そして新兵になり、その研修中の試験で就く階級が決まる」


 つまり何か、ファンタジー小説のように依頼を受けて報酬を得てランクを上げていく必要があると。


 「六年じゃ足りないんじゃないですか?」


 特級六年じゃあG級からS級まで足りなくないか。

 GFEDCBASと一年ごとに上がっていくならの話だけど。


 「全て一年ずつかけて依頼をこなす必要はない。担当と相談しながら上げていくんだが、

 最短でひと月ちょっとで次のランクに上がることが出来る。

 とはいえ、ユートレイクスが言う通り六年じゃ足りない学生の方が多いな。

 卒業と共に正式入隊出来るのは約三十三パーセントだ」


 約三分の一しか上がれないということか。


 「随分と厳しいんですね」


 「伊達に無試験採用やってないということだな」


 「将来の就職先候補の一つに入れとこうと思います」


 将来の職に関して聞けて、非常に有意義な時間を過ごせた。


 「大歓迎だ。ここ最近は連合軍従事者が多いから喜ばれるぞ」


 「そうなんですか?」


 「ああ、父さんは准将だし、母さんは少佐だ。補佐役になったが、ひい祖父さんは元大将で、

 ひい祖母さんは上級大佐だった。

 現侯爵夫妻も確か准将と大佐だった」


 将官や佐官ばかりとは、物凄く優秀なんだなと感心した。

 母方の方が佐官が多いのは多分育休、産育休暇のせいだろう。


 「将官経験者がそんなにもなんて、凄いですね」


 「俺も上級大将を目指しているぞ」


 「父様ならなれますよ。そんな予感がします。母様も将官を目指してるんですか?」


 「そうね。中将ならいける気がしているけれど、どうでしょうね」


 両親がいくつだか知らないけど、後百年以上あるなら結構余裕で昇級できるのでは。


 「大丈夫ですよ。きっと到達できます。だって最短の年数で昇級してるんですよね?」


 「ええ。ユートレイクスに言われると実際に達成できそうな気がしてきたわ」


 そうして笑った母様に笑い返した。

 実際問題、最短コースである一等兵採用されているから可能だと思ったんだ。

 直観だが、私の両親は美男美女なだけじゃなく、頭も良い秀才だと感じた。

 じゃなきゃ何度も思うが、一等兵で採用されないだろうという話だ。


 自衛隊で言う所の防大卒の幹部採用と同等なんじゃなかろうか。

 自衛隊みたいに分かりやすく曹長からの採用ではないみたいだけど。

お読みいただきありがとうございました。

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