33王都で顔合わせ2
宜しくお願いします
神無月初旬。
今いる場所は王都の王城。
去年同様、顔合わせに来ています。
「聞いて、好きな科目が変わったわ!音楽じゃなくて魔法に変更よ!」
カイリーンの宣言になるほど、と納得した。
今年から授業に魔法が追加されたんだ、と。
ここは王城、去年同様今年も顔合わせの時期が来ました。
去年と同じメンツが集まって話をしている。
そんな中でカイリーンが大きく主張した。
「どんなことを習ったんですか?」
好奇心いっぱいで聞いてみると、手のひらを上に自身の前に持って行き。
ボッと拳大の炎の球がカイリーンの掌の上に浮かんだ。
「それは三年の課題だぞ、カイリーン」
「あら、そうだったのね。エアル君、出来る?」
「いや、僕はこれが精いっぱい」
そう言って、指先に小さな炎を灯した。
最初はオレンジ、赤、黄色、そして青い炎へと。
「うん、それが正しい二年の課題だ」
「他はこんなことが出来るけど、何年生で習うのかは分からない」
炎を消して今度は光の球を宙に浮かばせ、八の字を描いた。
「おっと、それは今の僕の世代の課題だな。良くできたな」
「今年の初めにカルトゥズに行って修行して来たんだ」
もうだいぶ前の話みたいだけど、今年の初めの話なんだよね。
懐かしいな。
「なるほど」
ショルアンが頷きながら腑に落ちたようだった。
「それまでは念話も出来ない落ちこぼれ状態だったから」
受信だけは無意識で出来てたみたいだけど。
「努力したのね」
カイリーンが僕の頭を軽くポンと叩いた。
「今出してるこれを全属性で実施するのが卒業課題だった」
「うん、初級修了くらいの課題だね。よく頑張った」
「ありがとう」
初級修了程度の事まで習っていたとは脱帽。
師匠、やっぱりかなりの凄腕だったんだと納得した。
「授業、他にこれ以降に追加されるのってあるの?」
ジェフィティルが問いかけた。
「二年で魔法と体術、三年で家庭科と武器術で以上かな」
と、ショルアンが答えた。
結構あるんだな。
武器は三年からなんだ。
身体の成長と関係あるのかな。
「家庭科はかなり楽しみにしてるわ。魔法を楽に上回りそうよ」
「料理と裁縫かな?」
直ぐに思い至った所を言うと。
「他は整理整頓とか、金銭の利用法とか」
ヴァンジェンが追加してくれた。
「ふーん、思ったより学習面が大きいのね」
数回頷きながらカイリーンが。
「いや、調理面が多いよ。この間、味噌汁を作った」
「こっちも味噌汁作った。同じ速度で進行してるんだな」
とザクラクスがヴァンジェンに同意した。
「同じ学年だけあるということね」
エピアンヌがそう締めた。
「お茶が来てるわよ」
とシスカーリが言い、皆でテーブルの席へと向かった。
今年はチョコレートケーキが配膳されていた。
ショルアンかカイリーンがリクエストでもしたのかな。
「去年はカイリーンの好みのショートケーキだったけど、今年は俺の好みのチョコケーキだ。召し上がれ」
「いただきます」
やっぱりリクエストされた物だったっぽい。
外側がアイシングでカバーされ、スポンジが隠れているシンプルな形だ。
フォークを入れて、先っぽの部分を食べる。
現れたのは間にチョコクリームが挟まって三段になっているスポンジケーキだった。
「美味しい」
「それは良かった」
僕の感想を聞いたショルアンが安堵の笑みを浮かべていた。
何か不安要素でもあったのかな。
他の皆も美味しいだの美味いだの言いながら食べてるけど。
「去年のカイリーンが選んだショートケーキと比べるとどう?」
「同じくらい美味しい」
ケーキの味を思い出しながら素直に答えた。
どう考えても引き分けだなと。
「同じく、同じくらい美味しかったよ」
ジェフィティルも僕に続いて感想を言ったので、うんうんと頷いて同意した。
「私も」
女子二人も同時に同意した。
「僕も、同じくらいかな」
「俺もだな」
残る二人も同意して決着した。
「そっか、同点引き分けだね。負けなくて良かった」
「あら兄様、勝ちたかったの?」
複雑な表情をしたカイリーンが問うと。
「まぁね。負けたくなかったから同点で納得」
若干苦笑したような顔でショルアンがそう答えた。
「勝負をしていたわけではないんだ?」
問いかけてみると。
「ただの自己満足だよ」
といった答えが返って来た。
「そっか」
「好きな物が負けなくて本当に良かったよ」
ホッと一息といった感じだろうか。
「じゃあ、勝負をしましょう」
カイリーンの言葉で皆がハッとした。
「何で勝負するの?」
ジェフィティルの問いにカイリーンは。
「カードゲーム、トランプよ」
なんと既に右手にはトランプが握られていた。
いつの間に用意したんだろう、全然気づかなかったよ。
カードをシャッフルしたカイリーンはカードを配り始めた。
「何をゲーム?」
「王道にババ抜きよ」
人が多いからすぐ終わりそうな気がした。
ペアを場に捨てながらカードを確認していくと、なんとジョーカーが入っていた。
いきなりピンチに立たされた。
ポーカーフェイスを維持しなければ。
召喚前の人は苦手だったけど、僕はどうかな。
ジョーカーはジェフィティルが引いてくれた。
そしてそのジョーカーをカイリーンが引いたらしい。
それ以降のジョーカーの行方は不明。
まだカイリーンが持ってるんだろうか、謎だ。
「あがり!」
一番に上がれました。
次は残り一枚のジェフィティルかな。
「二番!」
ジェフィティルがカイリーンにカードを引き抜かれ、二番手であがった。
カイリーンは残り二枚。
ジョーカーはまだあるのかな。
カイリーンの後ろに回って背後から残りのカードを見た。
意外なことにジョーカーは無かった。
単純にペアが合ってなかっただけらしい。
大人数だとこういうことがあるから気が抜けない。
席に戻ってお茶を飲む。
背後を見るとバレることもあるから、それはダメだと思って席に戻りました。
そういえば、このお茶って何だろう。
紅茶は中級からのはずだから違うよね。
「このお茶、何?麦茶じゃないよね」
「ええ、麦茶じゃないわ。ねぇ、これ何茶なのかしら?」
「ルイボスティーにございます」
給仕を担当していた女性の方がカイリーンに答えた。
麦茶同様のノンカフェインだと思われる。
「美味しいです。ありがとうございます」
「追加いたしましょうか?」
「僕は大丈夫です」
「僕も」
まだ半分残っていたので、そう答えた。
ジェフィティルも同様らしい。
「あがりよ!」
カイリーンが抜けたらしい。
残りは四人です。
「あがり!」
ショルアンが上がって残り三人。
「あー、もー」
シスカーリがそう唸るということは、ジョーカーが来てるか、ペアが合わないかだよね。
「その気持ち、良く分かる」
ザクラクスがカードを引きながらそう言った。
「うーん、またか。合わないな」
ペアが揃わなかったらしい。
なかなか上手くいかないもんだね。
「やっと!」
ペアが出来て、手札を場に捨て、残りの一枚はエピアンヌが引いた。
「ここに来て……」
どうやらジョーカーが回って来たらしい。
「上と下、どちら?」
「下」
ザクラクスが答えて、カードを取ると。
「やられた。うーん。じゃ、上と下どっち?」
数回シャッフルしたカードを見せる。
「上」
「どうぞ」
「やったー!」
ペアが見事に揃ったらしい。
最後の一枚はザクラクスの手の中に。
「あー、負けたー」
残念そうに言う彼の肩を叩いた。
「ドンマイ」
「おう、ありがとう、一抜け」
軽く照れました。
「最初、ババは僕の所にあったんだ。それを直ぐジェフィティルが抜いてくれて」
経緯を説明すると。
「僕の所に来たババはカイリーンが直ぐ引いてくれたんだ」
ジェフィティルに繋がり。
「私の所のババはしばらく抜かれなかったけれど、少ししたところで兄様が引き抜いてくれて」
カイリーンに続き。
「僕の所に来たババは割と直ぐシスカーリが取ってくれた」
ショルアンへと。
そして。
「そのジョーカーは直ぐにヴァンジェンが取ってくれたわ」
とはシスカーリ談。
「俺のも割と直ぐにエピアンヌが取ってくれた」
さっくりと答えたヴァンジェンには。
「そこで残り二枚になって上下選択式に切り替えたの」
カードを引く方式まで説明したエピアンヌだった。
「そして最後は取られなかった僕が残ったと」
そうザクラクスが締めた。
「そういうことだね」
ショルアンが納得したように頷きながら言った。
「もう一回する?」
「いや、もうそろそろ時間が迫ってるから軽く雑談にしないか?」
カイリーンの問いにショルアンが別の案を出した。
「了解よ、兄様」
「うん、で、何について喋る?」
少しの間、間が無言でつつまれ、静寂が生まれた。
「趣味とか?」
苦し紛れに提案してみた。
「言い出しっぺのエアル君は?」
「ああ、そういえば僕家族向けの愛称でユートってあるから、皆ユートって呼んでほしい」
「了解、ユート」
「趣味だけど、今のところは勉強と運動かな。勉強は家庭教師の先生が毎回新しい課題を持ってきてくれるから。
運動は元々リハビリの延長線だったんだけど、良い感じにハマったんだよね」
今ではどっちも好きな分類になるから、趣味として数えて良いかなと思った。
「僕はサイクリング。家の周りをぐるっと何度も回るのが好きなんだ」
ジェフィティルが目を輝かせながらそう言った。
相当好きなんだね。
「外にはいかないの?」
「初級に上がったら徐々に出てみようって言われてる」
「なるほど。それは楽しみだね」
「うん!」
ジェフィティルの目がキラキラ輝いているように見えた。
多分、目の錯覚だと思うけど。
「俺は『竜と洞窟』っていうカードゲーム。休み時間にやってるんだ。追加のカードは玩具屋とコンビニで買える」
タイトルが地球にあったカードゲームに似てる気がする。
単なる偶然かもしれないけど。
「僕はスポーツ、特にサッカー。休み時間の度に校庭に出てミニゲームをやってるよ」
ちょっと以上に分かるかも。
先生と対戦するサッカーのワンonワンが楽しいから。
白熱した試合が出来るのが魅力。
「私は今日みたいなトランプで遊ぶのが趣味かしら。ババ抜きもよくやるわね」
と、シスカーリ。
今日のババ抜きは趣味と合ってエンジョイしたのかな。
「私は寄り道をすることかな。帰り道にいろんな店に入ってみたりするの。たまたま通学路に入れる店が多くてね」
エピアンヌがどこか上機嫌で言った。
それは確かに楽しそう。
僕も中級に上がったらやってみることにしよう。
考えてみれば今からワクワクしてる。
「ショルアンとカイリーンは?」
「僕はラジコン。寮の庭に障害物を設置してコースを作って遊ぶんだ。楽しいよ」
ラジコンって、地球のラジコンと同じ認識で合ってるかな。
というか、浮いてるこっちの車みたいにラジコンの車も浮いてるんじゃ。
ラジコンっていうよりドローンの方が正しいような気が。
「ラジコンって車?浮いてるの?」
気になったので正直に聞いてみた。
「いや、博物館にある車みたいに四輪だよ。車みたいには浮いてない」
「そうなんだ。なら楽しそう」
ついショルアンに同意してしまった。
残るはカイリーンだけど。
「私は料理ね。部活動が始まったら料理部に入部するつもりよ」
意外なところがきました。
「何が得意?」
定番の質問を投げかけてみると。
「簡単な間食程度かしら」
求めていた答えじゃなかった。
「例えば」
追及すると。
「フライドポテトとか」
「簡単そうに聞こえるけど、包丁の技術が必要だし、油の温度管理とか結構難しそうだね」
「そうね、ユートの言う通りだわ。意外と難しいのよね。あがったと思ったら半生だったり」
失敗談を語って下さった。
「よし、そろそろいい時間だ。解散しようか」
「では、また」
「またね」
「また来年」
「うん、また」
「じゃあね」
「それじゃあ」
思い思いに別れの挨拶をし、その場で解散となった。
ドアを開けて出ると、去年のように父様が待っていた。
「ユート、終わったか」
「はい。帰りましょう」
「そうだな」
同じようにドアから出て来た他のメンツに手を振って挨拶をした。
また来年同じように集まって仲良く過ごせると良いけど。
二回目の今回も和気あいあいと過ごせたし、御の字だよね。
来年の会合までワクワクドキドキをカウントダウンしておこう。
お読みいただきありがとうございます




