29仔馬到着と
宜しくお願いします。
「スゴイ!ここに住むんですね?」
トンテンカンと二日かけて出来上がった厩舎を見ながら言った。
これから来る冬も難なく越せそうな作りをしている。
頭上に既にヒーター設備も完備されていた。
藁がタップリ敷き積まれていて、温かく過ごせそうな予感。
「もう間もなく到着されるそうですから、ご覧になって行けばよろしいのでは?」
「はい、そのつもりです!」
仔馬たちの到着を今か今かと待っていますよ。
今日から厩舎の担当をされる補佐役のエルディッツさんと一緒に。
なぜ彼女が担当に選ばれたのか分からないけど、適役だって父様も言ってたから間違いないと思う。
何かしら理由がありそうだけど、何故だかは教えてくれていない。
ちょっと気になるけど、頭を振り払って我慢した。
そんなことをしていると、トレーラーが後ろ向きに庭に入って来た。
仔馬を乗せたトレーラーだと思われる。
「行きましょうか」
「はい!」
この時点でアイリーゼも合流して、仔馬の到着を待っていた。
「兄様?」
「うん。来たみたいだよ」
「はい!」
期待たっぷりの返事をしたアイリーゼに笑いかけた。
厩舎の近くでトレーラーが停まり、運転していた人が降りて来た。
「お待たせしましたな。そちらの厩舎で?」
「はい、お願いします」
先に降りて来たのは栗毛の仔馬。
二頭とももう離乳しているという話だった。
「小型でラッカス」
エルディッツさんの声に応えるように、直ぐそこに仔馬が現れた。
え、どういう仕組みですか。
「案内するのに必要かと思いまして」
「ああ、それは便利ですなぁ」
後で一息ついたら、何が何だか根掘り葉掘り聞くつもりです。
仔馬より濃い茶色の毛をしたエルディッツさんがラッカスと呼んだ仔馬が栗毛の仔馬を案内しているように見えた。
厩舎の外側のスペースに入って落ち着いたみたい、水が入っていた桶から早速水を飲んでいた。
二番目に降りて来たのは漆黒な黒毛の仔馬。
馬独特の毛色の表現が分からないから黒毛の仔馬と暫定的に呼んでおく。
そう言えば茶色も栗毛で合ってるのかな。
栗毛の隣のスペースに黒毛の仔馬が入って、こちらも落ち着いたみたいで、こっちも水を飲んでいた。
こうして譲渡された二頭の仔馬は無事、厩舎に入りました。
「ラッカス、何か不自由はないか聞いてくれる?」
「ヒヒン」
呼ばれたラッカスという仔馬が二頭の仔馬と目を合わせて会話をしているみたい。
「食べたいって?分かったわ。仔馬のエサはありますか?」
「ええ、こちらに」
トレーラーの中からエサが入っていると思われる袋を運ぶのを手伝った。
エサを桶に入れるのはアイリーゼも手伝った。
「これで良いかしらね。このエサ、どのくらい持つんですか?」
「約一週間ですね。また時期が来たら運んできますんで」
「宜しくお願いします」
早速設置した桶に入ったエサを元気よくモグモグと食べ始めた二頭。
移動におけるラグも特になく、大丈夫そうで良かった。
「あ、エサはそこの器を軽く山盛りで一回を目安にしてください」
おじさんが近くに置いてあった深皿の器を指さしながら言った。
「了解しました」
「では、特に変化も見受けられませんし、これで譲渡完了とします」
「はい、確かに。ありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
アイリーゼと二人でエルディッツさんに続いて礼を言った。
「では、一週間後にまた。失礼しますね」
そう言って届けたおじさんは去って行った。
随分とアッサリ済んだ気がする。
誘導も速やかに行われたし、これ以上にない安定した譲渡だった。
二頭はそんな心配も他所にエサをモグモグ食べている。
仔馬を撫でたいけど、次回にお預けかな。
そういえば聞きたいことがあったんだよ。
「エルディッツさん、ラッカスさんとはどういうご関係で?」
こっちの仔馬はエサを食べていないので撫でるチャンスがある気がし、問いかけた。
「ああ、ラッカスは私の使い魔です。特異級なので話すことが可能なんですよ」
「撫でても良いですか?」
「はい、もちろん。ラッカス」
「ヒヒーン」
エルディッツさんの隣に陣取っているラッカスに手を伸ばして撫でた。
「兄様、私も」
「うん、もちろん」
アイリーゼに場を譲ると、腹の横を撫でるようにしていた。
前や後ろは蹴られる可能性があるから、良いポジショニングだと感心した。
使い魔だから人を蹴ることはしないかもしれないけど。
「使い魔っていつからですか?」
「中級二年生になると旅行が組まれるんです。その時に」
「なるほど!」
「これ以上の詳しいことは担当の家庭教師に聞いてください」
流石に範囲外ですか、了解です。
「分かりました!仔馬は食べるのに夢中みたいなので、今日はもう戻りますね」
変わらずモグモグタイムですね。
「はい。次回は触れるように訓練しておきますね」
「はい、お願いします。アイリーゼも行く?」
「はい、兄様と一緒が良いです」
アイリーゼの手を取り、厩舎を後にした。
「部屋まで?」
「はい。先生が待ってるかもしれません」
「もうそんな時間?あ、本当だ。僕も行かなきゃ」
腕時計を確認すると午後の家庭教師の時間の三時が迫って来ていた。
若干の早歩きで部屋に向かった。
アイリーゼの部屋の前で別れ、僕の部屋に戻った。
戻った所で丁度先生が来ていたのを確認した。
「おや、外出の帰りですか?」
頷いてから。
「庭で仔馬の譲渡に立ち会ってきました」
と答えた。
「なるほど、今日でしたか。どうでしたか?」
「触れ合いは今日以降になりそうです」
撫でたりスキンシップをとったりするのは明日からかな。
エルディッツさんの飼育次第といった所かもしれない。
何にしても話せるのは強いよね。
「あ、先生。使い魔に関して教えて下さい!」
今一番ホットな話題はこれ以外にないだろう。
「じゃあ、今日の勉強は使い魔に関してからにしましょうか」
「お願いします!」
部屋の中に移動し、二人で窓際にある机に備え付けられている椅子に座った。
「使い魔に関してどれくらいご存じですか?」
「中級二年に旅行があるとしか聞いてません」
さっき聞いたばかりの情報を開示した。
「そうですね。三泊四日の使い魔旅行が実施されます。時期は順番に行っているので、五十音順の早い順にですね」
「A零一あ校が一番最初に旅行に行くってことですか?」
「そうなります。一年かけて一学年が旅行を実施します」
「凄い大移動ですね」
「そうですね。結構ギリギリのスケジュールらしいですよ。所で使い魔旅行の何がお知りになりたいですか?」
「どんな種類の何がいるのかや、特異級はどんなのだとか、小型で召喚ってどういうことなのかとかですかね」
うんうん頷いて先生が持参していたバッグから本を取り出した。
「これに使い魔が生息しているトレントン島の生き物の絵が描かれています。お貸しするので、見てみて下さい」
賞状を受取るみたいに受け取った。
「ありがとうございます。お借りしますね」
「特異級というのは使い魔のランクのことです。一番下から通常級、大型級、特異級、天上級、伝説級となっています」
「ランクなんてあるんですね。何が違うんですか?」
「分かりやすい面で言うと、会話が出来る年齢が違います。例えば、伝説級は最初から会話ができます」
「それは凄いですね。他は何歳からなんですか?」
「三十六歳で天上級と特異級が解禁され、四十一歳で大型級と通常級が解禁されます」
お酒が飲めるようになる年齢だったり、子供が授かれる年齢だったり、ちょっと似てるんだな。
特異級だからと言ってたから、エルディッツさんの年齢は三十六歳以上、四十一歳未満てことかな。
「小型は何ですか?」
「小型で召喚というのは最初に会った時の大きさでの召喚となります。簡単に言えば幼体での召喚です」
「ということは初めて会う時は大きくなくて小さい状態で?」
「ええ。トレントン島に生息している使い魔は皆幼体ですから。離乳は済んでいますが」
「なるほど、そうなんですね」
確かに離乳が済んでないと世話が大変になりそう。
四六時中気にしてないといけないとか無理だもんね。
「この本には成体になった姿も描かれているんですか?」
「いえ、幼体だけです。成体は学校に通われるようになった際に、図書室にある図鑑を参照してください」
「分かりました、忘れないようにします」
中級二年生になったら、だよね。
アッサリと忘れそうな気がするけど大丈夫かな、少し不安だ。
まあ忘れても、その時はその時。
特に大きな問題はないような気がする。
幼体を知っているだけでも成体をある程度想像できるかもしれないし。
脱皮とかして全然違う姿になるとかなら別だけど。
どんなのが生息しているのか気になり、チラッと本を開いて見てみると。
「ドラゴン!?」
羽の生えている動物に似たような生物がいて思わず言葉にして出ていた。
「はい、いますね。小型が成体の小竜から大型の飛竜になる幼体まで生息してますよ」
「凄いです!レアっぽそうですけど」
単なる想像に過ぎないけど。
「確かにレアですが、ほとんどが伝説級ではないので普通に会える可能性がありますよ」
「ドラゴンでも伝説級じゃないんですか。では、何が伝説級なんですか?」
「いえ、ドラゴンですと神龍と呼ばれる種類が伝説級として存在してますよ」
「なるほど、一種はいるってことですか」
滅茶苦茶レアっぽい。
出会えたら奇跡といった感じかもしれない。
「図鑑に分布図が載ってないのが伝説級です」
「直接会って契約するんですね」
「はい、名前を付けて魔力を渡すことで契約となります。生息地は図鑑に載ってるので調べて下さい」
「分かりました。中級二年になったら調べます」
図鑑が鍵みたい。
まずます忘れてはいけなさそう。
気を付けないと。
早くその時期が来ないかな。
中級二年生が楽しみになってきました。
まだ五年以上もある遠い未来の話だけどね。
お読みいただきありがとうございました。




