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25-2カルトゥズへ

宜しくお願いします。



 「師匠、戻りました!」


 「おお、おかえりシストゥーリ。丁度いい所だ。早すぎる例の俺のハトコだ」


 つまりここに両極端の例が集合したという事ですね。


 「シストゥーリ・カルトゥズです。宜しくお願いします」


 「ユートレイクス・エアルです。気軽にユートと呼んで下さい。以後お見知りおきを」


 このシストゥーリ君も国名が苗字なんて凄いな。

 まあ私も領名が苗字なんで、そう珍しいことではないかもしれない。

 でも、もしかするとこの国を納める王族の可能性もあるんだけどね。

 二人も一緒にいるから、その可能性は高い。


 「シストゥーリ、ユートの手と重ねてごらん」


 「はい」


 今度はシストゥーリ君の番ですか。

 早すぎる例って言ってたけど、どの程度なのかな。


 バチィッ。


 弾かれました。

 どういうこと?


 もう一回めげずに手を重ねると、カーレースを見ているような速度で巡っているのが感じ取れた。

 早っ。

 どんだけ。


 「魔力は感知できたようだね。第一歩を踏み出せたようで何より」


 これをコントロールするって凄いことだと思うんです。


 「シストゥーリ君はどんな修行を?」


 「主に瞑想だね。今日からの滝行、一緒にするかい?」


 「やってみたいです!」


 元気よくシストゥーリ君が答えた。


 「よし、じゃあ準備しよう。パンツ一丁で裏に集合!タオルを忘れないように」


 「「はい!」」


 トレーラーの中のキャリーバッグからタオルを取り出してから、服を脱いでベッドの上に畳んでおいた。

 シストゥーリ君も上で用意しているみたい。

 先にトレーラーから降りて、師匠の所へ。

 少し遅れてシストゥーリ君も降りて来た。


 「じゃあ、行こう。直ぐだから驚くと思う」


 洞窟を出て、左へしばらく真っすぐ進む。

 すると聞こえてきました、滝だと思われる音。

 真っすぐと右に曲がるのと両方出た際には、右に曲がる方を選択。


 目指していた滝が見えました。


 「じゃあ、少し体を水に慣らしてから入ってごらん。そこから滝の下に立ちなさい」


 「はい」


 タオルを安全そうな場所に置いてから、水場へと向かう。

 水を手で掬って、肩にかけた。

 冷たいけど、そこまでじゃないかな。


 足を入れ、一歩ずつゆっくりと滝の方へと向かう。


 「何か唱えることとかあるんですか?」


 ふと思い出して聞いてみるけど、反応は思わしくない感じで。


 「特にない。集中してできることをしなさい」


 「はい」


 お経でも唱えようかな。

 南無阿弥陀仏しか知らないけど。


 滝の真下まで来ました。

 ちょっと痛いかもしれない。

 水の落下速度が速いせいかな。


 しばらく無心で滝に打たれる。

 隣にシストゥーリ君の気配がしたので、閉じていた目を開けて様子を伺った。

 僕に気づき、会釈してきたので、そのまま頷いて返した。

 彼はどうやって過ごすのかな。


 「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十……!」


 数を数え始めた。

 確かにそれはいい方法かもしれないけど。

 僕も一緒に倣って数えようかな。


 「一、二、三……!」


 十まで数えて、また一に戻る。

 何回繰り返して数えるんだろうと思う。

 十回やったら百達成だよ。

 そう思っていたら、簡単に百まで到達して数えられたらしい。


 百を過ぎてから少々、そろそろ上がるかと移動を開始した。

 タオルを置いた場所まで行って、身体を拭いながら乾かした。


 「お疲れ。今日はこんなもんで良いが、明日からは少し長めに実施しような」


 「はい、分かりました」


 今日は十分くらいかな。

 明日は倍以上することにしよう。

 腕時計が水耐性のあるもので良かったと胸をなでおろした。

 結局、何分滝行していたのか分からなかった。

 明日からは何時に開始したのか測ることにしよう。


 この後は晩御飯だよね。

 こんな洞窟に住んでいると、どんなご飯が出てくるのか少し怖い。

 トレーラーに既に入っているのかな。


 「ちょっと早いが晩御飯にしようか」


 「はい。手伝います」


 「おう、ありがとう。こっちだ」


 何をどう手伝うのか微妙だけどね。

 これからお世話になるんだから、ちょっとだけでも助けになると良いな。


 そうして終わった晩御飯の後は、また魔力を測る時間。


 「うん、微かに動き始めたみたいだな。滝行が効いたかな」


 マジですか。

 自分では違いがハッキリとは分からないんだけど。

 流石師匠、半端ない観察力です。


 「シストゥーリはどうかな?」


 そう言ってシストゥーリ君の様子を調べる師匠。

 あの素早い魔力の動きが滝行でゆっくりになるのかな。


 「気持ち、ゆっくりになったかな?」


 「滝行が効きましたか」


 「ああ。ほんの気持ちだがな。感じるか、シストゥーリ?」


 師匠の問いに大きく頷いたシストゥーリ君。


 「はい、ほんのちょっと効果があったみたいです」


 「明日からも滝行、追加だな」


 「はい!」


 問題を抱えている二人とも効果があって良かった。

 片手を上げて、シストゥーリ君とハイタッチした。


 「所でシストゥーリさんはいつから修行しているんですか?」


 「さん付け無しのタメ語でいいよ。僕は去年から修行してるよ。あまり成果をあげられてなかったけど」


 「じゃあ、今日の滝行で速度が少しゆっくりできたのは大きかった?」


 「うん、大きな成果だよ。少し使えるようになったかも」


 そう言ってシストゥーリは指先に火を灯した。


 「凄い!」


 「初級編だけど、出来るようになったから。あの子との約束に一歩近づいた」


 「あの子?大事な約束なんだね」


 「うん。僕に初めて魔法を見せてくれた女の子なんだ」


 遠くを見つめながらシストゥーリが言った。

 夢見る乙女じゃなく、夢を見ているような男子だった。

 もしかして初恋だったりするのかな。


 「へぇ、そうなんだ。それで魔法の修業を始めたの?」


 「そう。当時未解決の問題があったから王宮魔法士の師匠に依頼して修業を開始したんだ」


 王宮魔法士とは、エリート中のエリートではないでしょうか。

 そんなすごい人が師匠になってくれてるんだ。


 「それで問題は魔力が巡るのが早すぎたと判明したんだね」


 お互いうんと一つ深く頷いて納得した。


 「そういうこと。これから時間をかけてやってけば通常の速度になるはずだと感じたよ」


 「一緒に頑張ろう!」


 手を出しながら言った。


 「うん、頑張ろう!」


 ガシッと手を合わせてお互いの今後の健闘をたたえた。



 「感じたっ!」


 初めて自分の魔力をきちんと感じました。

 ゆっくりだけど、着実に巡りながら動いている。

 留学に来てから二か月が過ぎていた。


 毎日の修業が実を結んだみたい。

 午前と午後の滝行に加えて走り込みに瞑想。

 少しずつ体内の魔力が流れに乗って巡り始めた。

 どれくらいが通常の速さだかは知らないけど、着実に速度を上げて来た。

 感じ的に後ちょっとって所かな。


 病院で退院にかかったまでの期間と同じくらいかな。

 約三か月というのは、なんだかんだで縁がある期間な気がする。


 「師匠、見てみて下さい!」


 「ああ、分かった。手を出しなさい」


 師匠の手に手を重ねて様子を見る。


 「これくらいで感じるようになったか。なるほど。ならば、そろそろ形に出来るかな」


 師匠の指先が光った。

 魔法で作った人工的な光。


 疑問に思ったんだけど、どうやって魔法を使えば良いのか分からない。

 良く転生物で扱われていたようにイメージするだけで顕現できるのかな。

 それとも指同士を合わせると使えるようになるのかな。


 目をつぶって光をイメージしてみる。

 暗闇にまばゆい光が現れる様子を。


 「光を感じないと、表現できない。俺の光を感じてごらん」


 指を合わせて、光を感じようとするけど。


 「感じてるはずなんですけど、上手くいきません」


 「何を感じる?」


 「温度は特に感じません。ただ指先が発光してます」


 「温度を感じていなのか。指先は発光しているだけじゃないぞ」


 そう言うということは、ある程度の温度が発生しているという事。

 繊細な微調整が必要になってくると思われる。


 指先を吹いてから、師匠の指に合わせると、今度は微かに温度も感じた。

 自分の中で一旦リセットしたのが良かったのかもしれない。


 同じ温度で、光っているのをイメージするけど、やっぱり光らない。

 何が足りないのか、さっぱり分からない。


 指先に集中的に力を込めてみるけど、これもやっぱり上手くいかない。

 迷走している気がしてならない。

 どうすれば出来るのかな。


 身体を巡っている魔力を指先に集中するように頑張る。

 微かに温かく発光している光を感じようとする。

 魔力が少しだけ指先からはみ出している感覚がいいかもしれない。


 微かに光ったかなと思った途端に気を失った。


 「ユート、ユート大丈夫か!?」


 師匠に起こされて気が付いた。


 「すみません、私……」


 「大丈夫そうだな。良かった。魔力が一瞬で枯渇したみたいだ。光ったのは確認したか?」


 「はい、微かに光ったような気がします。私、魔力が極端に少ないんですか?」


 私の問いに師匠が首を横に振って否定してくれた。


 「いや、それなりにあるから大丈夫だ。少ないのと多いのどっちかと聞かれたら中間と答える」


 「そうですか。良かったです」


 魔力量は成長と一緒に増えればいいなと思った。


 「第一段階の発光がクリアできたなら、次はお楽しみの念話だな」


 「念話!楽しみです」


 憧れてました。

 使えるようになった日を考えてワクワクする。


 「今日は一応安静にしなさい」


 「はい。気を付けときます。今晩の晩御飯、何ですか?」


 まだちょっと時間的に早いかなと思ったけど。


 「ステーキだ。後で付け合わせに使う野菜を洗ってくれるか?」


 師匠の答えに口角が上がった。


 「はい!」


 そういえばまだシストゥーリ君が幼年学級から帰ってきてない時間帯。

 三時を過ぎた所だからそろそろ帰ってくると思われます。


 帰ってきたら滝行に行き、身体を拭いてから晩御飯の準備をするというルーティン。


 「ただいま戻りました」


 考えてたら帰ってきました。


 「おかえりなさい」


 「おう、おかえり」


 師匠と二人、仲良くお迎えしました。





お読みいただきありがとうございました。

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