25-1カルトゥズへ
宜しくお願いします。
「ユート様、留学をしていただこうと思います」
本日の家庭教師の場で先生が早速とばかりに口を開いた。
「留学ですか?」
「はい。魔法関連のことは私の能力を超えております。今現在のユート様では念話も使用できずに終わってしまいます」
確かにチート系小説ならイメージで習得可能だけど、ここでの魔法は感知が重要とされている。
それを出来ていない私じゃ、この先魔法を会得出来ないで終わるよね。
先生との魔法の授業ではその辺りはさっぱりだった。
なんの進展もなく終わっていたので、使えるようになる為に留学するのは納得できる。
「魔法と言う事は、本場のカルトゥズへですか?」
「はい。そこで次の次の侯爵の知人の方に魔法を教えてもらってください」
「いつから行けばいいんですか?」
年明け最初の授業でこの話だから直ぐかな。
ASAPってヤツっぽいよね。
「週末には着くようにと言われています。祖父様が直々にお連れになるそうです」
週末ということは、明後日から。
「了解です。この後早速準備に入ります。場所は北のカルトゥズですか?それとも南の?」
カルトゥズは赤道を超えて国土が広がっている。
その為、季節がどっちなのか知る必要がある。
ちなみに北半球のこちらは、真冬です。
「ほぼ赤道直下なので、温暖な気温らしいです。Tシャツ一枚で過ごせるそうですよ」
毎日がほぼ夏の気温ってことかな。
「分かりました、真夏の恰好で着替えを揃えますね」
「そうするといいでしょう」
「それで、今日の勉強は何をするんですか?」
来て早々、留学の話だったから今日の授業はまだ始まっていない。
「カルトゥズの復習を少ししたら、体育にしましょうか。ここ最近してなかったので」
「はい!」
体育って何をするのかなと思っていたら、バスケのワン・オン・ワンをすることになった。
フープがないと思ってたら、組み立て式のフープがあったらしく、それを取り付けて準備完了となった。
ボールも正式な物があり、それを使用することになった。
最初にボールを渡され、攻撃することになったけど、あっという間にボールをスティールされてしまった。
代わって防御の方だけど、ボールにかすりもしない。
シュートコースも背の高さで防げず、ブロックも出来なかった。
チビだからしょうがないけど、これはどうしようもなかった。
「リーチの差があり過ぎましたかね。サッカーに変更しましょうか」
確かにサッカーならバスケより小回りが利きそうで、いいかもしれない。
「変更お願いします!」
倉庫からコーンが出てきて、それがゴールの範囲を示す役割となった。
バスケのポストと違って、さすがにゴールはないよね。
ドリブルで細かになんちゃってなフェイントを入れながら進む。
また抜きシュートを決め、やっと点が入った。
「お見事です」
「ありがとうございます!」
サッカーなら身長差はあまり関係ないのかもしれない。
とはいえ、二回目からは先生も足を延ばしてきたので、油断大敵だけどね。
でも、憑依していた頃には出来なかった技を出来るようになっていて興奮した。
当時より動けているような気がする。
やっぱり自分の身体で動いているってことが一番の理由かな。
足のつま先で軽くボールを浮かせてから、先生の足をジャンプで越える。
漫画で見たことのあった技です。
着地と同時にシュートをし、上手い具合に決まった。
サッカー、楽しいな。
あ、でもゴールの大きさからしてフットサルの方がふさわしいかも。
使用しているボールのサイズから考えるとサッカーだと思うけど。
そんな調子でしばらくサッカーでのワン・オン・ワンが続いた。
点数は特に数えてなかった。
実力的には互角に近かったんじゃないかと感じたけど、どうなのかな。
「今日はここまでにしましょう」
「ありがとうございました!」
やっぱり体育は良い。
身体を目いっぱい動かすことが出来て楽しかった。
クールダウンのストレッチをして終わった。
ゴールに使用していたコーンを回収し、倉庫にしまう。
バスケのフープは先生が取り外して解体してくれた。
家庭教師の次は晩御飯。
今晩のメニューは何かな。
彩野菜のサラダとコンソメスープとステーキだった。
担当したのは爺様達。
霜降りではなく、赤みが多いステーキだった。
赤みステーキの在庫を減らすためだとか。
それ以降は霜降り肉を使ったステーキがエアル家の常になりました。
そうして来ました、留学当日。
気になる付き添いは、予告通り爺様でした。
お会いする魔法の先生が爺様の学校からの友達らしい。
パスポートは既に爺様が所持してくれてる。
チケットカウンターにて手続きをし、出国ゲートへと向かう。
ゲートを越えた先ではお土産を買う。
「アイツは甘党だから、お土産はお菓子が良いだろうな」
「そうなんですか。というか、爺様も甘党ですよね」
「ははっ、そうだな。そこも通じ合った所だな」
私も甘党だから、シンパシーを感じました。
先生はどんな人なのかな。
とういうか先生と師匠、どっちで呼べばいいのかな。
カルトゥズまで飛行時間は約五時間。
なんと機内でお昼ご飯が提供されるらしい。
機内のご飯は初めてだから物凄く楽しみにしている。
座席は普通に三等席が確保されている。
子供だから席の大きさとか、あまり気にならないんだよね。
爺様も普通の体形に見えるから、ほとんど関係なさそう。
速度はこちらの飛行機の方が速そう。
前ポケットに入ってる無料の雑誌によると速度はマッハ一点五らしい。
地球ではマッハを越えてなかった気がするから、速度はこちらの勝ちだよね。
乗る飛行機は九時発、十四時着予定。
昼食の提供は十二時頃。
機内食はビーフとチキン、どっちが人気なんだろう。
それともポークとフィッシュかな。
というか、日本でも英語でビーフかチキンて言うんだっけ?
最後に飛行機に乗ったのは十年以上前だから、どうだったか覚えてない。
爺様はチキンを選び、私はビーフを選びました。
チキンはテリヤキチキンで、ビーフはローストビーフでした。
爺様と一口ずつ交換して食べました。
とても美味しかったです。
機内食は微妙な印象が払拭されました。
その後、もう一回飲み物が提供されてから、着陸となりました。
やっぱり着陸して停止してから、タイヤを出して移動しているぽい。
摩擦音が微妙に聞こえる気がしたから。
飛行機から降りて入国ゲートを通ってから、荷物を指定のレーンに引き取りに行く。
留学がどれくらい居るのかが分からなかったので、服などの荷物が多くなった。
キャリーバッグの持つ部分を伸ばしてから引っ張って移動する。
間違いなく自分の荷物だということを確認してから先を急いだ。
そういえば爺様は泊まらないで日帰りするそうです。
結構強行的なスケジュールじゃないでしょうか。
帰りの便に無事間に合うと良いけど。
滞在時間何分の旅なんだろう。
特級電車に乗り換えて、終点まで。
そこからタクシーで人影のない辺鄙な場所へと。
麓みたいに見える所で車を降りた。
「ここからしばらく行った所にある洞窟を拠点としているそうだ」
「人っ子一人いなさそうですね」
辺りを見回して出た素直な感想。
こんな所に拠点を構えているとは。
「魔法に集中するための環境だそうだ」
「なるほど、そういうことですか」
それならなんとなく納得できる。
文字通り、とても集中しやすそうな所だったので。
「おーい。来たぞー」
洞窟が見えたあたりで爺様が声を上げた。
「おう、よく来たな」
「ほら、好きそうな土産だ」
お土産で買ったスイーツを渡す爺様。
その数、三箱。
「分かってるじゃないか」
相手はニヤリとした表情を見せながら受け取った。
「ほら、孫のユートだ。宜しく頼む」
「ユートレイクス・エアルです。以後お見知りおきを」
「ああ、確かに。俺はダンクリム・カルトゥズだ。宜しくな」
握手をして挨拶をし合った。
中肉中背気味の爺様と比べると、やややせ型な人だった。
後苗字がカルトゥズって、王族の身内の方なのだろうか。
「それじゃあ、俺はもう帰るな。帰国の目途が立ったら連絡してくれ」
「分かった。バス停はこの下直ぐにあるから、それを使え。丁度いい時間だ」
「了解、感謝する。ユート、頑張りなさい」
「はい、頑張ります!」
爺様と別れて、私達は洞窟へと入って行った。
とそこには、キャンピングトレーラーとテントが合体したようなものが陣取っていた。
とにかく見た目がデカイとしか言えなかった。
「中案内するよ。荷物も持って」
「はい、お願いします」
靴を脱いでキャンピングトレーラーの方に入った。
すぐ入った所にキッチンとダイニングがあった。
右にはクイーンサイズ以上のベッドが。
左奥には二段ベッドが設置されていた。
ダイニングの左隣にはなんとシャワールームとトイレが。
このキャンピングトレーラーだけで、立派なホテルになり得る。
テントの方はソファとテーブルがあり、簡易ダイニングになりそう。
器具を持ち込めばキッチンにもなりそうかも。
「二段ベッドの下、ユートレイクスの部屋な」
「ありがとうございます。ユートで良いですよ」
「分かった、ユート。荷物はここに収納があるから」
と、真ん中と下にあった場所を開けてくれたので、そこにキャリーケースを入れた。
「上の使用者はダンクリムさんですか?」
「いや、違う。ハトコが使ってる。今幼年学級に通ってるから、後で紹介するな。もうすぐ帰ってくる
はずだ」
「はい」
幼年学級と言う事は五歳以上、七歳未満。
年下の兄だか姉弟子がいるということになる。
どんな子かな、ワクワクドキドキしてきました。
「早速だがどんな感じなんだか見させてもらう」
「はい、宜しくお願いします」
ダンクリムさんが両手を出してきたので、私も両手を出した。
重ねられた指先が微かに暖かく感じた。
これが魔力かな?
それとも魔法そのものかな。
「これはまた極端だな」
「どういうことですか?」
「ユートの身体を巡っているはずの魔力が停滞している。ある程度の速度を持って巡るはずのものなんだ」
私の魔力が停滞しているせいで、魔力が上手く扱えていないという事かな。
「その場合は何が悪いんですか?」
「魔法が正しく機能しなくなる。遅すぎても早すぎても駄目なんだ」
自然に巡るはずのものが機能していないということだよね。
どうすれば解決するのかな。
「どうすればいいんですか?」
「巡らせるために修業が必要となるな」
「修行ですか。何をすればいいんでしょう?」
パッと思い浮かんだのは滝行や走り込み。
他には何があるかな。
「この洞窟の裏に滝があるから、そこで滝行だね。まずは一つずつから始めよう」
「はい!」
本当に滝行することになるなんて。
温暖な気温だから冷えることはないとは思うけど、大丈夫かな。
どれくらいの強さなのかな。
心配と楽しみが半々。
お読みいただきありがとうございました。




