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24お正月

宜しくお願いします。



 

  本日は新年最初の日、お正月です。

 夏の日みたいに親族で集まり、歓談が行われる。

 とはいえ、全親族が出席しているわけではない。


 父方の姉、ロイヤール家は謹慎をされているので、出席していない。

 ロイヤール家は従兄弟であるエシェーザさんの家だ。

 私が帰国するまでイールを担っていた。

 とても特殊な措置だったらしい。


 なお、エシェーザさんはイールであることをいいことに好き勝手していたそうだ。

 その地位にふさわしい様に、補佐役に対して召使のように横暴に扱っていたとか。

 実際はそんな権限などないにもかかわらず、そう接していたとのこと。


 その扱いに素直に従っていたのは、メイドの二人のみだったらしい。

 イールとはそうあるべきだと信じていたそうだ。


 本来のイールは、謙虚に真っすぐあるべきとされていた。

 今現在の私らしいものだと言われて、盛大に照れました。

 まったくもって意識してなかったんだけどな。


 「今日こそやろうぜ」


 「ガーガット君」


 「君付けだぁ?じゃあ、対戦しましょう」


 敬語になってしまった。


 「ため口でいいよ」


 「俺も君付けなしの呼び捨てで構わない」


 「了解、ガーガット。じゃ、場所変えようか」


 「おう。今日は邪魔する奴はいないから良いよな」


 前回はエシェーザさんに邪魔されて対戦できなかった経緯があった。

 今回は出席を見合わせているから、邪魔される心配はない。


 歩いて自室を横切り、庭に出た。


 「ここでどう?」


 「ああ、良い感じだな」


 草が生い茂っている庭の一角に陣取った。


 「じゃあ、始めよう」


 「了解」


 ガーガットが構えたのに倣って私も構えた。

 しばらくどっちも動かずジリジリと時間だけが過ぎて行った。


 隙を探していた私に対してガーガットは一気に距離を詰めてタックルしてきた。

 防ぐことが出来ずにもろに食らってしまった。

 捕まった私はどうすることもできず、組まれた状態になった。


 オリンピックで見たレスリングみたいな体勢から後ろを取られ、グルっと一回転させられた。

 これがレスリングだったら、ポイントが入っていただろう。


 組まれている腕を離そうと努力するけど、ガッチリと組んでいたので離せなかった。

 これ以上にこの態勢で進むのかな。


 「次は組んだところから始めようか」


 なんとか言葉を絞り出した。


 「おう、いいぜ」


 頷いて同意してくれた。


 これはもうレスリングと同じだよね。

 もしくは相撲や柔道かな。


 足を使って相手の足を蹴るけど、有効打にはならなかった。

 逆に足を蹴られ、地面に付した。


 案の定だけど、やっぱり弱いな自分。

 もっと先生と体術戦を繰り広げて、実践の回数を増やさなきゃ。

 次に何するか問われたら体術と答えよう。


 「ありがとうございました」


 「ありがとうございました」


 互いに礼をして体術戦が終わった。


 「弱くて参考にならなかったでしょ。ごめんね」


 「いや、そんな。帰って来たばっかで実践積み重ねてないだけだろって」


 「うん、まあそんな感じ。次までには体術戦でいい勝負が出来るように頑張るよ」


 「ああ。待っとく」


 良い返事をくれて助かった。


 「戻ろうか」


 「おう」


 また部屋を横切り、広間へと戻る。

 そこでは珍しく書初めをしていた。

 お正月ならではな感じ。


 「なんて書く?」


 「書いてからのお楽しみに」


 「分かった」


 筆をとって、少しの間考える。


 「よし、出来た。そっちは?」


 「おう、この通り」


 「闘志」と書かれた書が。

 対して私のは「初心」。


 「まだ習ってない漢字じゃない?」


 志はともかく、闘は絶対まだだよね。


 「うん、両方とも習ってない。父さんに教わったばかり」


 「なるほどね。カッコイイな」


 体術関係然りって所かな。


 「ユートレイクスのもカッコいいぞ」


 「ありがとう。あ、ユートでいいよ」


 「了解、ユート」


 遅ればせながら愛称呼びを教えた。


 「後で部屋に貼っておこう」


 「ああ、俺も持って帰って部屋に貼る」


 机の前の壁に丁度良く書を貼れるだろう。


 そういえば父様や母様は何と書いたんだろう。

 アイリーゼも何と書いたんだか気になった。

 漢字、まだ習ってないよねと。

 それ以前に平仮名やカタカナもまだのはず。


 「平穏無事」と書かれた書を持った父様に遭遇した。

 「健体康心」と書かれた書も持った母様が隣に。


 「初心か、良いな」


 「忘れたら大変なことになるので書きました」


 「ええ、良いと思うわ」


 アイリーゼがいないな。

 どうしたんだろう。


 「アイリーゼはどこに?」


 見回しても近くにはいなかった。


 「今書いてるんじゃないかな」


 父様の返答にビックリした。


 「書けるんですね」


 「見本を見せて、書き順を教えたわ」


 と、母様。

 じゃあ書けるよねと一人納得した。


 「なるほど」


 「隣に俺の妹がいる」


 「今書いてるんだね。見に行こう」


 「おう」


 書初めは二か所で行われていて、今僕らがいる所でやってるのと、反対側で実施されている所があった。

 アイリーゼとガーガットの妹は反対側で書初めをしていた。

 なんて書いているんだろうか。


 アイリーゼが「日進」、ガーガットの妹が「健康」だった。


 「まだ習ってない字だろ」


 「兄さん。父さんに教わりました」


 ガーガットが妹さんに問いかけると、そう答えが返って来た。


 「そういうことか」


 納得したらしいガーガット。


 「アイリーゼも良く難しい字書けたね」


 頭を撫でて褒めました。


 「兄様。母様に教わりました」


 教わって書くのがトレンドみたい。


 「所で自己紹介。僕はユートレイクス・エアル。ユートでいいよ。以後お見知りおきを」


 「ユート兄様の妹、アイリーゼ・エアルです。宜しくお願いします」


 「従兄弟のガーガット・エアルだ、宜しく」


 「同じく従兄弟でガーガット兄さんの下、妹のオルフィ・エアルです。宜しくお願いします」


 オルフィさんは金髪碧眼の可愛らしい少女だった。

 ガーガットとは目元と口元が良く似ている感じかな。

 流石兄妹といった感じだろうか。


 そう言えば僕はどこがアイリーゼと似てるのかな。

 よく考えたことが無かったから分からない。

 まぁ、兄弟なんだからどこかしらが似ているはずだと思った。

 

 というか、両親のどこかが似ているということだよね。

 兄妹で似てなくても、親のどこかしらが似ていればそれでいいはず。


 例えば分かりやすく、僕の髪の毛は父様譲りで、瞳の色は母様譲り。

 アイリーゼは逆で、髪の毛が母様、瞳の色は父様といった感じだ。


 似ている似てないでごちゃごちゃと考え、気にし過ぎだと思った。

 似てなくても血筋は同じだもんね。

 リンクスがあるだけで血縁だと、その関係性が分かるから。


 アイリーゼは僕のこの世でたった一人の可愛い妹だ。

 そして僕自身もアイリーゼのこの世で一人だけの兄だ。


 しかも憑依経験者という珍しい体験をしたことがある。

 だからか、女性風の喋り方をする男になってしまった。

 未だに一人でいる時の一人称は私だし。


 いつか僕に定着しないとと思いつつ、周りの自由にして良いという意見に乗っかっている。

 そのうち近くにアイリーゼがいる時の僕が一人称になるはずだと思うけど、何かしら切欠がなければできなさそう。


 女性だと思ってた時と比べて、現在の身体は動きやすい。

 これが自分の身体というものかと実感している。

 思う以前に動けているのが凄い。

 理性と本能の違いだというふうに思う。


 ガーガットと対戦した時、顕著にそれを感じた。

 本能で動けた時ほどうまく動けていたような気がする。

 理性で考えている時は一拍置いて思考していた。

 その一拍が命取りになる可能性がある。


 今回の事で、考えなくても動けるくらい鍛えないと駄目だなと感じた。

 次回先生とやる時は、本能のみでぶつかって行こうと考えた。


 「ガーガット、上級は体術関係に進学するの?」


 「ああ、体術科に進む予定だ。ユートは?」


 「まだ決まってない。体術科じゃないのは確かだけど」


 同様に総合科や学術科でもないのは判明している。


 「そうか。意外と魔法科とかか?」


 「ううん、それはない。未だに魔法を感知出来てないから」


 「なるほど、それはヤバいな。となると武器科か」


 「一応可能性はあるけど、武器科を選択したとして何の武器にすればいいのか……」


 「王道の槍で良いんじゃないか?競争率高そうだが」


 首を横に振って答えた。


 「剣類にしようと思う。少なそうだけど」


 剣というよりは刀にしたいなと漠然と感じた。

 単に憧れているから、そうしたいなと思っただけ。


 こちらでは刀の認知度は低いのかな。

 槍が王道か、地球で読んだとある小説の世界みたい。

 その小説で主人公が刀を扱っていたのも一緒だから今の自分は設定をパクったみたいだと思ってしまった。

 フィクションだからと、実際はそんなに気にしてないけどね。


 「授かったのか?剣を」


 「え、どういうこと?」


 一体何のことだろう。


 「エアル家の本家の長男は武器を授かれるんだ。知らなかったのか」


 「初耳。魔法が関係あるっぽいから、今の僕じゃ無理なんじゃないかな」


 顕現したり送還するのに魔力が必要なのでは。

 魔力はあっても魔法として扱えないのは致命的なのでは。


 「魔法使えないのか?」


 「うん。指先に火を灯して人間ライターになるのも無理」


 「こういうことか?」


 ガーガットが人差し指の先に炎を灯した。


 「そう。凄いよ」


 難なくやって見せたガーガットを素直に尊敬した。


 「中級転入だよな。これ、初級の一年目で習うと言われているから、通わなくて良かったな」


 「そうなんだ。通わない内にマスターできれば万歳だね」


 「頑張れ。武器授かったら、何を得たか教えてくれ」


 つまり自分の意志に反した物も顕現できるということだよね。


 「了解。ランダムなんだね?」


 「ああ。ネルトール様は短槍でデルグランツ様は棒だと聞いてる」


 「長物が続いてるね。何になるのかドキドキするね」


 それで刀が来れば万々歳なんだけどな。

 そう簡単には行かない可能性大。

 自分に合ってる物が来るはずだよね。

 何になるのかな。


 「武器は十二の誕生日と決まっている。後、出来れば何を得たかは内緒にして欲しいんだが」


 「ネルトール様。父さんがネルトール様は短槍だと教えてくれました」


 「アイツめ。言いふらしたりしない約束だったんだが?」


 「後、デルグランツ様が棒なのも教えてくれました」


 「そっちもか。ガーガット、内緒にしなさい」


 「はい」


 「決して言いふらさないように。エアル家だけ何故?となるからな」


 だよね、そう思ったよ。

 絶対他家に知られないようにしなきゃだよね。

 エアル家全体の秘密みたいなもんなんだろうね。


 「本家は代々防御の要だからと聞いてますが……」


 「それも聞いてたか。エアル領全土の防御の為だな。その為の武器だ」


 そう言いながら、父様が槍を召喚した。


 「それが短槍ですか」


 「ああ。普通の槍より若干短い」


 「そう見えますね」


 普通の槍の長さを知らないから断言はできないけど、短く見えたから是と答えた。


 「ユート、召喚出来たら教えるか教えないか自分で考えなさい」


 「はい、分かりました」


 僕一人の判断が任された。

 責任重大だ。


 召喚出来たら、しばらくは口を塞いでおこうと考えた。

 落ち着いたら教えてもいいかもしれない。


 ガーガットだけだから多分大丈夫だと思うけど、どうなのかな。

 そこから広まっていく可能性もあるってことだよね。


 取り急ぎ十二の誕生日までワクワクしておこう。

 何が授かれるんだか楽しみだ。

お読みいただきありがとうございました。

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