23霜降り肉に光を
宜しくお願いします。
今日は社会見学を兼ねて牧場に来ています。
付き添いは父様、母様とアイリーゼ。
勉強目的だけど先生は付いてきていません。
定番のエサやりや、乳搾りを体験させてもらいました。
乳牛はお馴染みの白と黒のぶちになっている牛で、その他の黒や茶色、白っぽい色の牛は食肉用らしいです。
どれが霜降り牛の元なのか、気になりました。
「わ、霜降り肉だ!美味しそう~」
一通り回って、直販の店に入った所で霜降り肉を見つけた。
こちらでは初のご対面です。
ステーキや焼肉は普通の赤みが多い肉を使用している。
こちらでは霜降りがないのかもなんて思ったけど、ちゃんと存在してた。
「霜降りは邪道扱いだが、ユートは食べたことがあるんだな?」
「はい、憑依中に。物凄く高額だったので、こちらのこの値段は破格だと思います」
百グラム五十円とか書いてあるよ、マジですか。
「もしかして食べたことないんですか?」
「ああ、ないな。いつも大体普通の赤みの肉を食している」
「勿体ない。霜降り、凄く美味しいんですよ。元の身体に戻ってから食べたことは無いんですけど。
焼肉とかステーキとか他の肉料理でも絶品のはずです。というか、こんな安売りないですよ。
父様、購入禁止とかではないなら買ってください」
「そんなに力説するほどか。分かった、買おう。どの部位が良いんだ?」
「ステーキならサーロインですかね。他焼肉とかはカルビやタン、ロースも良いですね。食べたい部位が沢山あって決めきれません」
「そうか。じゃあ、とりあえずこの特売のサーロインとロースを二キロずつ。ええい、カルビとタンも二キロずつ!」
途中で自棄になったのか、父様が声を荒げて注文した。
一体どうしたんだろうか。
「父様?大丈夫ですか?」
「美味しい物を知らなかった俺個人への怒りがな」
拳をグッと握って怒りを抑えているように見えた。
「今日知れるんだから良いじゃないですか?」
対して僕は軽めに応じた。
「そうだな。今日の晩御飯、楽しみだな」
「はい!」
今晩の調理の担当は僕らだ。
焼肉風に出来ればいいんだけど。
「焼肉用に炭と七輪ってありましたっけ?なければカセットコンロとフライパンで代用できますが」
「カセットコンロとフライパンの代用案を採用だな」
「分かりました。じゃあ、後は何かサラダとご飯だけですね」
「汁物も加えよう。シンプルに味噌汁な」
父様の案に大きく頷いて答えた。
「いいですね」
「後はソフトクリームね」
母様がオヤツの案を出してきた。
「大賛成!」
「わーい!」
アイリーゼからも歓声が上がった。
「後、ソフトクリーム四つで」
「かしこまりました」
計四キロの肉とソフトクリームを貰って店を後にした。
「ここの肉、ブランドなんですか?」
「評価は高くないがエアル牛という名で流通してる」
ソフトクリームを受取りながら喋る。
一口食べて、その美味さに何回も頷いてしまった。
まだ食べていないけど、肉だけじゃなくてソフトクリームも凄く美味しかった。
「ここにある霜降りと同じなんですか?」
「ああ。赤み肉の方が評価が高いから、物凄く低評価だが」
地球の海外と同じ感じかな。
霜降りが高評価な日本とは違うみたい。
「絶やしちゃダメですよ、霜降り。これから脚光を浴びせないとです!」
「分かるが、どうやるんだ?」
父様の疑問に少し考える。
「温泉旅館の晩御飯メニューに取り入れるのはどうですか?目玉になるはずです」
こんなに安いんだから、一泊食二食の事付きの中に入れれば大きいと思った。
朝はシンプルにビュッフェ形式にして、晩御飯の肉料理は個室で提供すれば良いんじゃないかな。
「他は懇意にしている焼肉屋などに卸す方法はどうでしょう?」
そういう店があれば、だけど。
「なるほど、いいな。早速帰ったら上に提案してみよう」
「父様、思い出しました。ハラミも二キロお願いします」
「ハラミか、分かった」
直営店に戻り、オーダーする。
「ハラミを二キロお願いします」
「かしこまりました。沢山ご購入いただき、ありがとうございます」
お礼を言われてしまった。
それだけ霜降り肉は評判が良くないということなのかな。
店で提供されたら絶対高評価もらえると思うんだけど。
霜降り肉が日の目を見る日が楽しみになって来た。
肉を手に直営店を後にした。
早く肉を冷蔵庫に入れなくちゃね。
牧場から家まで約三十分。
肉を大きな冷蔵用のバッグに入れてもらったので、少しはマシかもしれない。
「豚肉だけじゃなくて牛肉もちゃんとありましたね」
「ああ、エアル豚が有名過ぎるんだろうな」
確かに。
普通にスーパーでも売られているみたいだし。
直営店に行かなきゃ売っていない霜降り肉と凄い違いですね。
本当はエアル豚の見学もしたかったけど、そっちは一般には受け入れられてないらしく、ダメだった。
豚の方が牛より繊細なのかもしれない。
この牧場は牛専門らしく、一般見学も自由だった。
他に鶏もいるかなと思ったけど、いなかった。
また機会があれば今度は鶏を飼育している牧場に行ってみたいな。
新鮮な卵を是非直販価格で購入したいと思った次第。
それにしても、百グラム五十円は安い。
それでも儲けが出てるんだろうから、あの価格なんだよね。
一キロ買っても五百円とか、地球じゃあり得ない。
「こっちでも肉の等級ってあるんですか?」
「等級?特上とかそういう話か?」
「地球だと牛の最高等級はA五ランクでした」
最高級で値段もお高めだったはず。
恐らく百グラム当たり千円以上はしたと思う。
「こちらでは一番上は特上だ。初級、下級、中級、上級、特上級となっている」
「学校みたいなんですね。それで、その肉のランクって分かりますか?」
初めて購入した霜降り肉のランクは果たして。
「特上級みたいだ。意外とお得だったな」
特上と書かれたシールが貼られていたのを確認した。
「最高級を百グラム五十円は安すぎると思います!」
せめて百円以上にした方がという思いが強い。
「そうしないと売れないんだろう。赤み肉の方が食べられるから高い」
赤み肉の方はそっちのけだったから、百グラムいくらかは見てなかった。
もっとちゃんと見とけばよかったな。
「いつも購入しているスーパーの赤み肉はいくらするんですか?」
「いや、肉は直接家に売りに来ているから高い。百グラム千円越えだ」
「マジですか。相当な贅沢をしていたということになりますね」
「そうなるのかな。調理法は主にステーキだからそうかもしれないな」
家族全員分と考えると軽く一万円は超えてると思われる。
今回購入した霜降り肉とスイッチできればいいけど。
そう上手くいくかが問題です。
「ユート、霜降り肉ってそんなに美味しいの?」
「噛むと脂身が肉汁とともにジュワっと溶けて、柔らかくて美味しいですよ。食べれば分かります」
考えるだけで涎が出そうになる。
焼肉にして食べるのが物凄く楽しみだ。
こっちの霜降りはどんな味がするのかな。
「そうなの。それは楽しみね」
「はい!」
あ、牛脂を貰うのを忘れてた、どうしよう。
「父様、袋の中に牛脂はありますか?」
「牛脂?この白いので合ってるか?」
父様が手に取り見せてくれた。
見事に小袋に入った牛脂だった。
「あ、ありましたか、良かった」
「五つで足りるか?」
「丁度いい感じです」
ひとまず、ほっと一安心。
普通のサラダ油で焼くのと、牛脂で焼くのじゃ全然違うだろうから。
食べる時の楽しみが増した。
七輪の網の上で焼くのが一番だけど、ないからカセットコンロを使用したフライパンでも大丈夫。
ちゃんと人数分あるのか疑問だけど、きっと大丈夫だと思われる。
二人で一つのフライパンの計算で良さそう。
そうして迎えた晩御飯の時間。
タンは塩をまぶしており、ロース、カルビとハラミは焼肉のたれに漬け込んである。
これで肉の準備は完了。
後は添え物の野菜をカットすればいいだけ。
玉ねぎ、ナス、カボチャ、ピーマンなどなど。
まずは肉だけど、その後から食べる野菜もまずまずだよね。
いただきますの号令の後、牛脂をフライパンに乗せて溶かす。
そして一番目はタンから焼いていく。
ちゃんとタン用にレモン汁も用意した。
うん、さっぱりした感じで美味しい。
タンは霜降りかどうか判別が難しい。
とにかく美味しかったので問題なしです。
お次はロース。
レア位の焼き具合で、焼肉のたれに付けて食べる。
うん、ジュワッと肉汁が溢れてきて美味しい!
端の方に野菜も載せてじっくりと焼く。
肉ばかりじゃバランスが偏るからね。
さぁ、お待ちかねのカルビです。
ジュージューと焼けるいい音がする。
焼肉のたれの下味も良い感じのにおいを醸し出している。
これもレア位で食べちゃおう。
うん、うん!
これだよ、これ!
自分の身体に戻ってから食べる焼肉は絶品でした。
カルビの次に食べたハラミも最高に美味しかった。
焦げる前に焼き野菜も食べて、一息ついた。
焼肉屋に行ったみたいな美味しさを提供されました。
おうち焼肉万歳!
食べるのに夢中になりすぎて、他の家族の反応を見るのを忘れてた。
僕と同じようにちゃんと味わって食べられたかな。
遅ればせながら皆の表情を見ると、まったりしていた。
つまりどういうこと?
「父様、霜降り肉どうでした?」
「今まで食べてこなかったのが不思議なくらい美味かった」
満足そうな表情で言われたのでホッと一息。
気に入っていただけたようで何よりです。
他の家族もそうかな。
それとも脂が多いのは年配者にとってはきつかったかな。
「ひいひい爺様、どうでした?」
「ネルトールと同じ感想になるな。これから焼肉といったらこの霜降り肉を採用しよう。とっても美味しかった」
「良かったです」
危惧していた問題はなかったみたいで一安心。
これからもこの肉質を選んで食べられるみたいで良かった。
以後、我がエアル家では焼肉とステーキでは霜降りが採用されるようになりました。
やったね。
お読みいただきありがとうございました。




