22王城にて顔合わせ
宜しくお願いします。
アピテタ王国、王都アーフェイム。
王城での顔合わせをしにこの場に転送陣でやってきた。
目の前に広がる光景に、驚きで声が出なかった。
「近くに見えて、王城は遠い。路面電車に乗るぞ」
「はい」
近場の乗り場で切符を買う。
カードのサイズとほぼ一緒の切符だった。
あまり待つことなく、路面電車が待っている駅に停車した。
先行く父様の真似をして、切符を機械に読み込ませた。
分かりやすく見せてきてくれたので、すんなりと出来た。
車内は混んでいて席は空いていなかった。
ドア付近に陣取って、手すりを持った。
父様は近くのつり革を持った。
「何駅で着くんですか?」
「四つだな。十分ちょっとで着く」
「了解です」
所でこの路面電車、普通の地球でお馴染みの路面電車と似た構造をしている。
そう、車輪がついている路面電車なの。
だからガタンゴトンといった音が聞こえてくる。
懐かしさというより新鮮さに目を閉じてしばし感慨にふけった。
浮いている乗り物ばかりじゃないんだと認識を新たにした。
該当する駅に着き、電車を降りた。
駅名はその名もそのまんまな「王城前」。
近づいてみればその壮大さが明らかになる。
とてつもなく大きい。
父様の後を素直について歩く。
どこから入るのかな。
向かって左に扉が一つあるけど、そこかな。
思ってた扉を通り過ぎ、正面からは死角になっていた場所から入るみたい。
ピシッと制服を身にまとった衛兵さんが扉を開けて通してくれた。
扉を通って、ひたすらに進む。
建物の前に広がっている広場が広大。
建物に着くまで十分くらい歩いた気がする。
ようやく建物の中に入り、中で案内を受ける。
スーツをビシッと着こなした執事さんかな、に案内されて後をついて行く。
「若きイールはこちらへ」
もしかしなくても私のことだよね。
「はい」
返事をしてから指示されたドアを開けに行った。
父様はどこに行くのかな。
ここから別行動ってことでいいのかな。
ここから一人だとして、不安がたっぷりです。
どう行動したらいいのか分からないから。
三回ノックしてからノブを回して扉を開けた。
中には五人の子供がいた。
皆同じくらいの年頃なのかな。
「こんにちは。エアル領から来ましたユートレイクス・エアルです。宜しくお願いします」
すでに済んでるだろうけど、新入りの一人として挨拶をした。
こんな感じで良いのかな。
「アピテタ王国第二子王女カイリーン・アピテタよ」
薄い金髪の少女が一歩前に進み出て、自己紹介をした。
いきなり王女様の登場とはとビックリした。
「エルイーノ領、第一子ヴァンジェン・エルイーノだ」
「ヴェント領、第一子ジェフィティル・ヴェントです」
茶髪と水色の髪の毛の正体は公爵領のお二人だった。
エアル領みたいに一子長男が跡継ぎみたいだね。
残りは女子二人。
「ヴァイス領、第一子エピアンヌ・ヴァイスです」
「アウイン領、第二子シスカーリ・アウインです」
こっちは女子が跡継ぎな領みたい。
アピテタ全土の領の跡継ぎが必要なら後二つ領が足りない。
「縁爵の兄様とアルクサイト領がまだね。エアル、こちらに来て座りなさい」
「あ、はい」
小走りで王女様の隣に向かう。
ポンポンとソファの隣に座るように示されたので、
「失礼します」
と一言断りを入れてから、何も考えずに隣に座った。
「次遅れたら潰すわよ」
「え」
耳に直接言われた言葉に一瞬時が止まった。
「父について来ただけなので集合時間とか把握してませんでした、すみません!」
謝るしか道はなかった。
「あら、そう」
「アルクサイト領、潰すんですか?」
まだ到着していない領のことをきくと、
「次はないわね。そう多く集合する機会はないから安心なさい」
とストレートにそう言った。
この王女様ヤバイ。
遅刻しただけで潰す宣言してくるとか半端ない。
今日作ることを決定した要注意人物のリストのトップに置かせてもらおう。
他の人たちは一見普通に見えるけど、一応気を付けなくちゃ。
コンコンと扉が叩かれる音がして、次いで扉が開かれた。
「アピテタ王国第一子ショルアン・アピテタ。遅れたゴメン」
「同じく遅れて申し訳ありません、アルクサイト領第一子ザクラクスです」
縁爵である王子と、アルクサイト領のイールが到着した。
これで全員だよね。
それとも伯爵以下も出席予定なのかな。
「全員揃ったわね。顔合わせの始まりよ。もう一回自己紹介からやり直しね」
どこどこの何子の誰という言い方で王女を筆頭に自己紹介が始まった。
全員し終わった所で、飲み物が運ばれてきた。
少し離れた所にテーブルがあり、そこに移動することになった。
「三時のおやつの時間ね」
カートでショートケーキが運ばれてきていた。
「甘い物苦手な人はいる?」
王女様から男女問わずな質問だ。
手を挙げたのはゼロ人。
全員甘党かな。
「良かったわ。全員に配ってくれる?」
「はい」
一緒に飲む飲み物はオレンジジュースだった。
紅茶が解禁されてない年齢の人もいるだろうし、しょうがない。
そう言えば自己紹介では年齢を言ってなかった。
みんな同じくらいの年齢だとは思うんだけど。
「いただきます」
配られ終えたケーキを食べる。
イチゴがたっぷりつまったショートケーキだ。
イチゴとクリーム、スポンジが三位一体になって非常に美味しかった。
「皆さん何歳なんですか?僕は今年十歳になりました」
気になったのでどストレートに聞いてみた。
すると、
「私も今年十歳になったわ。同い年なのね」
と王女様が答えた。
「僕は二つ上の十二歳だ。僕が一番上かな?」
と今度は王子が答えると、
「一つ上の十一歳です。恐らく王子が一番上かと」
アルクサイトさんがそう答えていた。
そうして年齢のカミングアウトが始まった結果。
一番上が王子の十二歳で、次いでアルクサイトの十一歳。
エルイーノも同じく十一歳で、ヴァイスとアウインは九歳、ヴェントが八歳と締めくくった。
「学校はどこに?僕はイグズ中央校」
今回の話題振りは王子。
「同じくイグズ中央校よ」
王女が同じところを答えた。
私も中級に上がったら中央校に通う予定。
王女と同じクラスになる可能性があるということ。
大丈夫か、少し不安が過った。
「同じくイグズ中央校です」
ヴェントもそう答えた。
中央校生が多いかな。
「イグズ北の女子校です」
「イグズ西の女子校です」
女子二人は女子校と。
「イグズ南の男子校です」
「イグズ東の男子校です」
残る男子は男子校だった。
全員イグズの学校に通っていることが判明した。
「僕は特殊な事情により家で家庭教師の教育を受けていて、学校は中級から編入予定です。イグズ中央校です」
「特殊な事情というのは?言えるのかな?」
「今年の夏に地球から戻って来たので、こちらの常識がまったく無いんです」
やや大雑把に事情を説明した。
「今の所、特に問題はなさそうだけど?」
「家庭教師の先生の教えが良いからだと思います。アピテタの地名は真っ先に教わってますし」
そう素直に答えた。
事実、全員の領名を教えられているので、地図上の場所も分かっている。
ただ他国はまだ教えられている最中だから、全て把握できてるわけじゃない。
「なるほど、そういうことか。じゃあ、他国の領はこれから?」
「はい、学ぶことになると思います」
「初級でも各国の領から学んでるわ。同じスピードで会得しているんじゃないかしら」
「そうかもしれませんね。早く全国の領名を覚えたいと思ってます」
「社会が好きなの?」
そういえばまだ地理、歴史、公民に分かれる前だったね。
地球的な分別をすればだけど。
「嫌いじゃないですね。凄く好きというわけでもないですけど」
日本の四十七都道府県と比べると、世界で十三か国と少ない。
でも各国の領の区分で考えると多くなる。
早く全領や、その特産などを覚えたいと思う。
「カイリーン様は何か好きな科目があるんですか?」
「様?様付けは禁止よ。呼び捨てにしなさい」
「え、でも……」
「言葉も私に対しては敬語を使わないように。潰されたいの?」
まさかここでも引っかかるとは。
「い、いえ!わ、分かったから潰さないで!」
私のせいで家がとり潰しになったら、どうしよう。
「カイリーン、なんてことを!そんな権限ないだろう!」
「兄様、でも……」
「でもじゃない。エアルに謝りなさい。そして普通に接するようにお願いするんだ」
王子がピシャリと王女の言い分を言わせないで断言した。
「ごめんなさい、エアル君。許してちょうだい。敬語で喋られるのが嫌いなのよ」
「あ、いえ、そんな。大丈夫だから。同い年だし、普通に喋るね」
「ありがとう」
ニッコリと良い笑顔を見せてくれた。
「それで好きな科目だったかしら?特にないわね」
「そうなんだ。国語、算数、理科、社会、体育、図画工作、音楽、家庭科、道徳と僕が考えられる全部あげてみたけど」
「ああ、忘れていたわ、音楽があったわね。音楽が好きよ」
「そっか。思い出せて何より。僕が言ってない科目はある?地球の学校にある科目しか言ってないから」
「道理で。魔法や体術がなかったわけだ」
王子が二つ科目を加えてくれた。
確かに魔法は魔力がないから、そもそも地球にはないよね。
体術も体育の一環として高学年で含まれるかもしれないけど、低学年ではないはず。
「僕は算数が好きです。まだ足し算しかできないけど」
ヴェント君が声を上げてくれた。
話題をキープしてくれて感謝する。
「俺も算数が好きだ。ヴェント君、来年から引き算が加わるよ。頑張って」
「はい!」
「ああ、俺もカイリーン同様に敬語は好きじゃないから普通に喋ってほしい」
王子がそう言ったので、内心で頷きながら、
「了解」
と答えた。
すると、
「分かった」
と、他の声も複数あがった。
どうやらこの集まりで敬語は不要っぽい。
かしこまらなくていいから楽だけど。
「僕は体育かな。同じく敬語不要で大丈夫」
「俺は国語。敬語不要で了解」
二番目に年上の十一歳の二人が同意した。
これで敬語不要は決まりだね。
「私も音楽かしら」
「私は図画工作ね」
見事にばらけた。
一位は二票の算数と音楽かな。
「言い出しっぺのエアル君は?」
「体育かな。身体を動かすのが楽しいから」
リハビリとして、という若干義務的なのもあるけど。
これで体育も二票で一位タイになった。
「そう」
「音楽って何を学んでるの?家庭教師の先生から音楽はまだ何も習ってないから分からないんだけど」
「ドレミを学んだり、きらきら星とかチューリップなどの楽曲を習ったりするわ。知ってる?」
「間接的地球経験から知ってるよ。そっか、僕が知ってるのも学ぶんだね」
どのあたりまで習うんだろう。
流石に日本の国歌は習わないんだろうなと思いつつ。
他にも地名とか、こちらにいない生き物とかの歌とかはきっと習わないよね。
その辺の区別とかどうなってるんだろう。
こっちは国歌とか校歌はあるのかな。
「話が進んでる中申し訳ないけど、そろそろ解散の時間だよ。今回の顔合わせはここまでだ」
王子が腕時計を示しながらそう言った。
腕時計を確認してなかったから時間が分からなかったけど、もうそんなに時間がたってたんだ。
「次会う時まで元気でね」
「そっちもね」
挨拶を交わし、解散となった。
部屋を出た所で父様達が待っていた。
「どうだった?」
「少しだけお互いのことを知れたと思います」
簡単なプロフィールと好きな科目だけだけど。
「それは良かったな。さ、帰るか」
「はい!」
来た時と同じように父様について歩く。
途中にヴェント君とすれ違った。
「またね」
「うん、またね」
軽い挨拶を交わして別れた。
次はいつ会えるのだか分からないけどね。
「仲良くなったか」
「うん、多分。少しだけ」
今度の機会にはもっと話せると良いなと思いつつ。
同世代の仲間と過ごす時間にワクワクした。
決して一人じゃないという実感があった。
また会って話したいな。
お読みいただきありがとうございました。




