21別荘にて
宜しくお願いします。
突然だけど、旅行が決まった。
明日から二泊三日らしい。
二泊三日の旅行が多いな。
母様の帰郷のウシムグ旅行以来の旅行です。
「国内の旅行だから、そう身構えなくて大丈夫だ」
「了解です」
「別荘に行きたいと言っていただろう?」
「はい!別荘の温泉、楽しみです!」
行先を聞いてハイになった。
紅葉狩りも出来そうな雰囲気だったよね。
うわ、凄く楽しみだ。
すっかりおなじみになったリュックに着替えを入れる。
長袖のシャツとボタン付きのYシャツでいいよね。
ズボンも長ズボンにして、と。
ジーンズを持って行こう、そうしよう。
長袖シャツにピッタリじゃないかな。
夏じゃないから日焼け止めのクリームはいらないかな。
着る服も露出が少なくなるから、ぬるとしたら顔と首だけだよね。
一応持って行こうかな。
念の為にね。
そうして来ました旅行当日。
お馴染みのアイリーゼのチャイルドシートと僕の補助シート。
アイリーゼのシートベルトを締めて、自分のも締める。
これで準備オッケー。
「それじゃ、出発!」
父様の声に頷いてから、
「「出発!」」
と言ったら、アイリーゼも一緒に言っていた。
気が合うね。
「どれくらいで着くんですか?」
「ニ、三時間てところかな。外の紅葉を楽しんでたら直ぐ着くさ」
そう父様に言われたので外の景色を眺めることにした。
紅葉が始まっていて、車道がカラフルです。
こちらでも同じように赤と黄色のコントラストが綺麗です。
主な木はイチョウと楓かな。
銀杏が潰れないで道路に転がっていた。
車が浮いてるからそうなるんだろうね。
誰か取って食べたりしているのかな。
それとも掃除されてゴミ箱行きなのかな。
銀杏の処理のされ方がちょっと気になった。
「銀杏、こちらでも食べますよね?」
「ああ。天ぷらにすると美味いよな」
「茶碗蒸しにも入ってるわね」
オーソドックスな調理法が返って来た。
「道路に落ちてるのはどうなるのかなと気になりまして」
「ああ、そうだな。肥料と食用として使われるのが主かな」
父様の言葉にビックリした。
肥料として使えるんだと。
「肥料として使えるんですね。初めて聞きました」
「ああ、主に畑で使用されてるな。意外か?」
「はい。驚きました。地球じゃ潰れて異臭を放ってたので、こちらでも同じかと思ってましたけど」
タイヤがないから潰されないというケースを全く考えてなかった。
「うん、潰されないでほぼ全てが回収されるな。その後に食用か肥料か処理されるんだ。ほら、あそことか回収作業をしているだろ」
父様に言われて目を向けると、作業着を着た作業員が掃除機みたいに吸い込む機械を使用しているのが見えた。
凄いな、処分しないで活用できるのならそれが第一だよね。
「銀杏の話をしていたので、ちょっと食べたくなりました」
「そうか。もしかしたら晩御飯で出るかもしれないぞ」
あれ、いつもと方式が違うのかな。
「ご飯、家族で作るんじゃないんですね」
「ああ。別荘では補佐役が作ってくれるんだ」
いつか食べたいと思ってた補佐役が調理するご飯。
実現するらしく期待でドキドキして来ました。
「食べてみたかったので楽しみです」
「それは良かった。期待して損はしないと思うぞ」
「はい!」
何が出てくるのか否が応でも期待してしまう。
ドキドキに加えてワクワクもしてきました。
「そういえば補佐役の人達は別行動で別荘に向かってるんですね」
「いや、シーズンの週末だけ向こうの別宅に住み込んでいるんだ。別荘の隣にあるんだ」
きっと補佐役の人達にとっても別荘なんだろうね。
「補佐役にも別荘があるのと同義ですかね」
「ほとんどそうだな。補佐役も順番に休みを取って宿泊しているからな。今回は長二人が担当らしい」
初めて会って以来の面会になる。
凝った料理を作ってくれそうなイメージが勝手にあるけど、どうなのかな。
「あのお二人の料理は間違いがないから安心よ」
今まで口を閉ざしていた母様が口を開いた。
「もう勝手に期待しちゃってます」
「ええ、裏切られないと思うわ」
「はい!」
期待値が凄い勢いで上がって行った。
どんな料理なんだか想像つかなくなった。
普段家族で作っているような料理なのかな。
それともレストランのようなコース料理なのかな。
期待値のゲージの限界を超えてオーバーしていますよ。
綺麗な赤と黄色の街路樹の通りを進む。
タイヤがないから摩擦音がなく、非常に静かな道程だ。
「そろそろ着くぞ」
父様の声に、外の景色を眺める。
山道に入っているみたいです。
紅葉が真っ盛りで、カラフル。
車の中から紅葉狩りが出来るくらいには。
押し花ならずの押し葉にして、保存したいかも。
どうやってやるんだっけ。
残念なことに、やり方忘れたみたい。
後で母様に作り方を知らないか聞いてみよう。
左に折れ曲がって、少し行くと。
「着いたぞ」
おおー、と息をはいた。
立派な木造っぽい二階建ての一軒家がそこにはあった。
別荘らしい別荘だった。
「一階に一部屋、二階に三部屋ある。好きな所に泊まりなさい」
「はい!」
家の中に入り、中を探検する。
一階の一部屋は畳に布団の部屋だった。
対して二階の三部屋はベッドでフローリングの洋室でした。
一階の部屋は二人用の布団が敷かれていた。
二階の部屋はキングサイズのベッドが一部屋、セミダブルのベッドが二つのツインの部屋、そしてセミダブルの部屋一つの計三部屋。
セミダブルのツインでアイリーゼと一緒にしようかな、どうしようかな。
とりあえず提案してみることにしてアイリーゼに問いかけた。
「アイリーゼ、同じ部屋でも良いかな?」
「一緒が良いです!」
元気いっぱいの返事が返って来た。
「決まりだね。父様、二階のセミダブルのツインの部屋にします」
「分かった。こちらはキングの部屋にするな」
目論見通り。
「了解です」
「一端一階のダイニングに集まってくれ」
「「はい!」」
そこには、ラッピングされた箱が置いてあった。
「ユート、誕生日おめでとう。プレゼントだ」
父様から箱を渡された。
「ありがとうございます!開けて良いですか?」
「もちろんだ」
ラッピングに気を付けながら、箱を取り出した。
箱を開けて見ると、そこには。
「腕時計!欲しかったんです」
黒のデジタルの腕時計が入っていた。
「だろうと思った。気に入ったか?」
「はい!長期間使えそうで良いですね」
子供っぽくなく、普通の成人男性が持っていてもおかしくないようなデザインだった。
色々と機能が付いているみたいだから後で説明書をよく読まなくちゃ。
アラーム機能とかありそう。
後はストップウォッチとかかな。
早速腕時計を左腕に装着した。
うん、似合ってそうな気がする。
「今日から毎日付けますね!」
お気に入り第一号決定です。
腕に付けた腕時計を見ながら、納得したように頷いた。
「センスいいですね、父様」
「ティの案だ」
「母様のセンスでしたか。とても良いです」
「あら、良かったわ」
頭を撫でられて少し照れた。
このお二人が両親で良かったと改めて心から思った。
「晩御飯まで時間がある。どうする?早速温泉に入ってみるか?」
「はい!温泉に入りたいです」
待ちに待ったアレです。
「お湯が入ってるか確認するから、ちょっと待ちなさい」
「はい。僕も見たいです」
「付いておいで」
頷いてから父様の後をついて歩く。
ダイニングを出て右に回り、廊下を進み、右に入った所にあった。
スライド式のドアを開けて、中に入る。
浴槽に温泉は入っており準備万端状態だった。
「入れますね」
「ああ、きっと長二人が入れておいてくれたんだろうな」
合鍵を持ってるってことだよね。
「なるほど」
「晩御飯の時に礼を言おうな」
「はい!入りましょう」
「一緒に入るか」
「はい!」
順番に、父様と僕、次に母様とアイリーゼという順で入ることになった。
温泉、お湯だけじゃなく浴槽も檜造りで良い香りを匂わせていた。
身体を洗ってから浴槽に浸かる。
「温泉の効能は何ですか?」
「単純温泉で、疲労回復、神経痛、筋肉痛、肩こりに効くらしい」
「じんわりと効いてる感じがします」
特に疲れてなかったけど、あっという間に感じてなかった疲労が回復した。
「ああ、運転の疲れが取れた」
父様は分かりやすくお疲れだったもんね。
回復して何よりです。
首までしっかり入って、百まで数を数えてから浴槽から出た。
「お先です」
「ああ。俺もそろそろ」
二人で出て、脱衣所で服を着なおした。
パジャマもありかなと思ったけど、外にちょっと出たかったのもあり着なおした。
そして軽く押し葉用の葉っぱを取りに出た。
綺麗な紅葉とイチョウの葉っぱをとって、家に戻った。
これを後で押し葉にする予定。
今日の残されたイベントは晩御飯だけ。
長二人による料理はどんなものになるんだかドキドキだ。
そして待ちに待った晩御飯の時間前。
長二人が家の中の台所に入った。
「時間までお待ちください」
「了解」
晩御飯の準備に入りました。
お二人が何を作るのか興味津々です。
調理を見学しようと思ったんだけど。
「申し訳ありません、見学はご遠慮ください」
と言われてしまい、断念した。
出来上がるまでの辛抱です。
そうして出来上がった料理は。
「カレー」
テーブルの上にはカレーとサラダが乗せられた。
「期待を裏切りましたかね?」
「いいえ、そうじゃなくて……意外だっただけです。作っていただき、ありがとうございます!」
具沢山に見えるカレーを見ながらそう言った。
「父様と母様、アイリーゼを呼んできますね」
自室にいるだろうからと、部屋がある二階へと移動した。
まずはアイリーゼを呼びに行った。
「ご飯の時間だよ。準備はいい?」
「はい!」
彼女の手を取り、両親の部屋へ。
ノックをしてから部屋のドアを開こうとして停止した。
なんだか空気がいつもと違う感じがしたんです。
もしかして夜の営みが始まっているのでしょうか。
とりあえずドア越しに晩御飯が出来上がったことだけ伝え、下で待つことにした。
「兄様、先に下で食べててって母様が」
「念話?了解」
「はい」
良いな、念話が使えて。
僕はいつか使えるようになるのかな。
魔法の授業で進展があれば、出来るようになるよね。
今の所、突っかかっているので出来ないだけで。
洗面所で手を洗ってから、ダイニングへ向かう。
「父様と母様は後で来るそうです」
「分かりました。では、お二人がお先に」
「はい」
アイリーゼはチャイルドシートへ、そして僕も段がある補助付きのシートへ。
「「いただきます」」
二人仲良く声を上げてから晩御飯を食べ始めた。
カレーの辛さは甘口と思われる。
アイリーゼでも楽々食べられる辛さだった。
サラダはゴマドレっぽいものがかけられていた。
少し甘味を感じるお味だった。
中身はレタス、キャベツ、パプリカ、にんじん、玉ねぎ。
非常に美味しかったです。
カレーも期待を裏切らない美味しさでした。
多分チキンカレーだと思う。
具沢山で野菜がたっぷりと入ってました。
基本のジャガイモ、ニンジン、玉ねぎに加えてピーマンも。
好き嫌いがあってもすんなりと食べられそうな味付けでした。
もしかしてスパイスから作ってるのかな。
だとしたら物凄く手の込んでる料理になる。
普通に市販のルーを使ってる可能性もあるけどね。
「「ご馳走様でした」」
食べ終わって、手を合わせた。
「美味しかったです」
「それは良かったです」
長のお二人とも、どこかホッとした表情をしてらっしゃった。
「ルーは手作りですか、市販のですか?」
「市販のものに少々手を加えてます」
「なるほど。甘すぎず辛すぎず、いい塩梅でした」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
本当に美味しかったからね、褒めるのは当然でしょ。
二日目も残ったカレーで良いくらいです。
流石にそれはないかもしれないけど。
明日のご飯も期待しちゃうくらいの内容でした。
何が出てくるのか非常に楽しみです。
お読みいただきありがとうございました。




