20-1ウシムグ旅行
宜しくお願いします。
夏季下旬、二泊三日の旅行が決まった。
行先はウシムグ、母様の故郷だ。
「ウシムグ中央空港までは転送陣を使用するが、それ以降は自力になる。
飛行機の国内線を利用して、その後レンタカーを借りることになる」
「母様の故郷は遠そうですね」
「ええ。西の端の町よ。たった一件しかないホテルに泊まることになるわ」
聞いただけじゃ分からないことばかり。
観光で栄えているわけでもなく、ホテルが一件だけというのも若干気になるポイントだ。
砂で覆われているビーチじゃなくて、岩場があるような感じなのかな。
「海岸に砂浜はあるんですか?」
「いいえ、断崖絶壁な感じね。海岸が砂浜だったらもっと栄えているかもしれないわね、隣町みたいに」
オーストラリアのグレート〇ーシャンロードの一部みたいな感じかな。
崖に波が打ち付けられてる様子が想像できた。
どんな感じなのだか行って実際に見てみたい。
今回の旅行で行くだろうから、楽しみにしておこうと思う。
「兄さん達が勢ぞろいするそうだから、いとことの初対面になると思うわ」
達ってことは二人以上だよね。
自分にとっては伯父さん達ってこと。
いとこは何人いるのかな。
「何人いるんだか聞きましたか?」
「皆一人っ子だそうだから三人かしらね」
お兄さんの数は三人ってことだよね。
会う日を想像してドキドキした。
どんな人達で何歳なのかなと。
「年齢とか聞いてますか?」
「全員特級生らしいわ。私と兄さん達は年が離れているから」
「母様は末っ子なんですね」
新事実発覚。
末っ子に見えなかったから驚いた。
「そうよ。三男の兄さんとは十四歳差あるわ。ずっと女の子が欲しかったらしくてね。期間を置いて試したらしいわ」
一種の産み分けということかな。
「見事に成功したという事ですね」
「そうね、そうなるわ」
待望の女子という訳か。
滅茶苦茶可愛がられたんだろうなと思考した。
「結婚が早かったの、惜しまれました?」
「良く分かったわね。皆ネルの事を疑ってね、大変だったわ」
「待望の女の子が男を連れて来ればそうなりますよ。想像に難くありませんね」
体術戦で対戦したとかあり得そう。
「三人供対戦を申し込んでね。三人供あっという間に地に付していたわ。ネルの圧勝よ」
実際にあったらしい。
父様、体術戦も強いんだ、凄いな。
「皆さん直線的で向かって来てくれたので、技をかけやすかっただけだよ」
父様が丁度合流して話が盛り上がって来た。
「空手とか柔道とか合気道とかですか?」
「いや、特に流派があるわけではない。学校の体術の授業で習った程度さ」
学校で習っただけで実践に使用するなんて。
それともそういう専攻だったのかな。
「学校で体術を専攻してたんですか?」
「いや、上級では総合科、どの授業も平均的に習う学科を専攻していた。その中に体術の授業もあったんだ」
「なるほど、そうだったんですね」
上級からの専攻する授業は多岐にわたる。
もちろん平均的に中級から上がって上級もそれらの授業を受けることも出来る。
それが総合科ってことなんだろうね。
「それでウシムグ、いつ行くんですか?」
「明後日だ。荷造りを今の内にしてくれ。二泊三日だから下着は二つな」
「はい、分かりました」
明後日ということは、海曜日からの三日間ということかな。
丁度週末が絡んでくる。
時期的に夏休みのシーズンらしいから、関係ないかもしれないけど。
自室に戻り、お馴染みのリュックを取り出し、下着と着替えを入れていく。
ウシムグは同じ北半球だから服装は半袖で、そう変わらない感じで大丈夫かな。
それともフォーマルな感じで揃えた方が良いのかな。
考えてるだけではどうしようもないので聞きに行くことを決めた。
「父様、服装は正装みたいな感じの方が良いですか?」
「いや、気にする必要はない。普通にTシャツと半ズボンとかで大丈夫だ」
「分かりました」
Tシャツとポロシャツにしようとコーディネートを頭の中で繰り広げた。
初日だけ一応、少しフォーマル寄りのシャツに長ズボンにしようと決めた。
「服装、決まったか?」
「はい、大体は。初日はシャツに長ズボンにしようと思います」
「そうか。それも良いかもな。俺もそうしようかな」
父様も初日は同じようなコーディネートを考えてるみたい。
親子そろって良さそうな気がする。
「じゃあ私もシャツとスカートにするわね。アイリーゼも似たような感じで揃えるわ」
私が考えたコーディネートがお二人の頭の中を侵食したのかな。
アイリーゼの服装まで決まったしね。
「後は歯ブラシとかパジャマですかね?」
「いや、それらはホテルで完備しているから大丈夫だ。子供連れと連絡してあるからパジャマも大丈夫なはずだ」
「そうですか。部屋割りはどうなってるんですか?」
ダブルの二部屋とかかな。
「ツインの部屋が二つでティとアイリーゼ、ユートと俺となっている」
シングル二つでした。
「なるほど、分かりました。父様と同じ部屋で寝るのは初めてですね」
アイリーゼとは何回か寝ているけど、父様だけとは初めて。
「そうだな。楽しみにしてる」
「はい、私もワクワクしてます」
教科書を見てウシムグの情報を得ようと思う位には。
まだ侯爵領以上の場所の勉強してないからね。
「荷造り終わりました。後は行くだけです」
「おう、偉いな。じゃあ、後はこちらでの勉強のみか」
「はい」
行く前に実施する必要がある。
地理でウシムグのことを習えればいいんだけど。
「そろそろ時間なんで行きますね」
「ああ、沢山学べよ」
「はい!」
午後からの授業は二時からだったのが四時に変更された。
丁度眠たくなる時間を回避しての事らしい。
「先生」
「ああ、行こうか」
「はい!」
自室に入って勉強机に向かった。
「じゃあ、今日も頑張って行こう。地理だけど、どこを学びたいとかあるかな?」
「ウシムグをお願いします。明後日から行くんです」
「なるほど、じゃあウシムグにしよう。侯爵領以上は言えるかな?」
教科書で予習復習しているから大丈夫なはず。
「ウシムグ縁爵領、ジプサムがデュグ、ユリタルシオンもデュグ、ポアニールもデュグ、
ギガンティオはマルト、ピアニスもマルト、ウルドもマルトです」
「うん、よく勉強できてるね。じゃあ、それらの産業と伯爵家以降を学ぼうか」
「はい」
母様の西の端の町はどこの爵位を得てる場所なんだろう。
「ウシムグは医療関係が強みの国だ。ウシムグ内の医療施設に運び込まれたらまず間違いないと言われている。
ユート様も一歳から五歳まではウシムグの国立病院におられたんですよ」
「初耳です」
まさかそんな縁があるとは思わなかった。
「五歳で容体が安定したので、このエアル中央病院に転院されたんです」
「そうだったんですね。知りませんでした」
飛行機で移送されたということだよね。
「今回の召喚魔法が効かなかったらまたウシムグの国立病院に転院予定でした」
「危なかったと聞きましたけど、そういうことですか」
容体が安定してなかったら、実施されていたという事。
「ええ。魔法が上手くいって良かったですね。カルトゥズの助力に感謝です」
おっと、ここでまた違う国が出てきました。
「カルトゥズ、魔法が一番発展している国でしたよね」
魔法王国と呼ばれていると教科書に書いてあった。
「はい。そこの王宮魔法士の力を借りて召喚したんですよ」
「なるほど。よくご存じですね」
その当時は先生はイグズ内の別邸にて勤務されていたはず。
「この程度の噂、イグズにいても入ってきます。事実ですから。エアル家の一大事でしたからね」
「そうですか。知らない内に多数の他国の助力を得ていたんですね。感謝しなきゃ」
自力で何かしら出来ないだろうか。
大きくなってからなら出来るかもしれないけど、どうなのかな。
「正成人されたら王宮で面会が予定されているはずです。それまでは成長をしっかりとお願いします」
「分かりました。頑張ります!」
正成人ということは、三十六歳だよね。
まだまだ時間がたっぷりあるから大丈夫。
発した言葉通り頑張ろう。
「ウシムグの国立病院は王領にあるんですか?」
「ええ。小型のチャーター機でご帰国なされました」
「小型といえ、それは凄いですね。大金持ちが個人で所有している飛行機みたいですね」
「王宮の指示でしたので、無料です」
出ました、王宮。
王宮同士のやり取りだから無料になったのかな。
「ウシムグの病院ってどこの専門とかあるんですか?」
「ありますね。国立病院は全部位可能ですが、他の領では専門と分けられていたりします。
教科書を参照してください」
「はい」
ウシムグのページを開くと、そこには人体図、そしてそれをカバーしている領が記されていた。
内科はどこ、外科はどこといった感じだ。
全身をくまなく担当しているのは王領と縁爵領の各病院で、他は首都にあるらしい。
他の地域は各部位によって専門医が別れているらしい。
ジプサムは耳鼻咽喉科、ユリタルシオンは眼科、ポアニールは整形外科といった具合。
特にユリタルシオンの眼科が有名で、視力完全回復が可能だとか。
こっちに帰国してからメガネの人を見かけないなと思っていたけど、そういうことかと腑に落ちた。
教科書を参照にしながら、先生が持ってきてくれたプリントの空白を埋めていく。
「合ってますね。次回は教科書無しで空白を埋めてもらいます」
「了解です」
プリントに丸が付けられて返された。
ウシムグの伯爵領までの領名と公爵領までの領名。
公爵までの領ならばもう空白を埋められるけど、伯爵領はまだダメだ。
領名の暗記を頑張らないと。
「各領の専門の部門の記載もしてもらいますから」
「はい、覚えます」
侯爵領は皮膚科のギガンティオ、泌尿器科のピアニス、精神科のウルドと覚えていく。
伯爵以降も専門がギッシリである。
救急科、リハビリテーション科、産婦人科などなど。
まだまだこれだけじゃないよね。
全国で身体全体を網羅する形だ。
「今日はここまでにしましょう」
「はい、ありがとうございました」
時刻は六時。
二時間ほどの勉強時間だった。
「それでは、失礼しますね」
「はい。お気をつけて」
「はい、ありがとうございました」
先生が部屋から出て行った。
その間、私は教科書を見ながら復習を行う。
晩御飯までの時間を全部復習の為に使う。
ちょっとやそっとでは頭に入らないからね。
集中して暗記しなきゃいけない。
ノートに書いて反復練習しなきゃかな。
「母様の故郷って、ウーラン子爵領内ですか?」
「あら良く分かったわね。勉強したの?」
「はい。丁度地理でウシムグを習いまして」
西の端というヒントでよく分かった。
地図を見るととんがっている場所がそこだった。
実に分かりやすい地形だった。
専門にしている医療は小児科。
国内で三番目に小児科が多い領らしい。
「私の故郷はウーラン子爵領内のウレッタという町よ。隣の港町のウグレグが領都ね」
「へぇ、そうなんですね。町ごとに領があるんだと思ってました」
少なくともここ、エアル領はそういう作りになっている。
「確かに普通はそうね。私達の町があまりにも小さいから合併したんだと思うわ」
「なるほど」
それなら納得です。
男爵や栄爵の領にするにしても小さかったってことだよね。
一日で観光は終わりそうな雰囲気がする。
多分メインは親族の対面だよね。
どんな人たちなんだかドキドキしている。
お読みいただきありがとうございます。




