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18トリプルチェック

宜しくお願いします。





  「確認足らずだ。もう一回作り直しなさい」


 「はい」


 今日は侯爵であるひいひい爺様の職場見学に来ている。

 普段暮らしている本館とは違い、ここは侯爵の執務の為に作られた別館です。


 ひいひい爺様のいつもの空気と違って、ピリピリした空間が広がっていた。

 どれだけ真剣に向き合っているのかが良く分かる。


 「意見箱の仕分けをお願いする」


 「はい、分かりました」


 意見箱とは、この侯爵邸の正門に設置されているもので、匿名で意見を投書できる箱のことらしい。

 一日一回回収され、侯爵直々の目に通されるものとのこと。

 とはいえ、その前に補佐役の目が入る可能性の方が高いのだけど。


 バサッと沢山の意見書が机の上に広がった。

 ひいひい爺様をはじめ、補佐役の方々も紙を取って内容をチェックしていく。

 初めての僕も仲に入って確認していく。


 えーと、どれどれ、なんて書いてあるのかな。


 「領内にカジノなどの賭ける場所が欲しいです?賭け事か、これはどこだろ」


 「ユート、賭け事はこっちのトレイだ」


 「ありがとうございます」


 礼を言って手紙を否決と書かれたトレイに乗せた。

 賭け事はどうやら問答無用で不採用みたい。

 無くて済んでるなら、無い方が良いよね。


 お次はっと。


 「前回の嵐で堤防が壊れそうになったので修復をお願いします。場所は……。これは……」


 「公共事業はこっちだ」


 「はい」


 保留のトレイに入りました。

 この後、可決のトレイに行くか否か要チェックという感じかな。

 恐らく可決されるんだろうなとは思うけど。

 下見が必要そうな案件でもあるよね。


 それ以降は主に公共技術の必要そうな事だったり、そういう内容のものばかり。

 その中でも一番大きかったのは、橋を造ってほしいという物。


 「橋は今現在進行形で事業前の企画が進んでいる所だ。今日もその事業の草案を練ってる所だ」


 「侯爵の却下により作り直しだけどな」


 少しばかり気弱な笑みを浮かべてひい爺様が言った。


 「二重にチェックを忘れないようにすれば大丈夫だ」


 「二重も良いですけど、そういう大きな事には三重の、トリプルチェックが必要だと思います」


 「トリプルチェック?」


 ひいひい爺様の疑問の声。


 「はい。三回確認するんです。人数は一人ではなく二人で」


 「複数人でするのか。それは良い案だな。次回から採用してみようか」


 アッサリと可決された。


 「二人とするとは誰と確認するの?」


 「ユート、案はあるかね?」


 大きく頷いて思いついた案を伝えることにした。


 「一回目は補佐役の担当した人達で、二回目にはひい爺様とひい婆様、三回目にはひいひい爺様とひいひい婆様のお二人で」


 「なるほど、それは中々良さそうだな。改めて公共系の案はトリプルチェックを採用することにしよう」


 「賛成!」


 賛成多数で即可決された。

 こういうことにトリプルチェックが採用されてなかったことがビックリだった。

 一番チェックが必要となる事柄だろうに。


 「早速だが、この橋の件について確認してみようか。ユート、見てみるかい?」


 「良いんですか?」


 「ああ。ここに来なさい」


 許可が出たので、ポンポンと叩かれたひいひい爺様の膝の上に乗りました。

 橋関係の書類が雑多な感じで置かれていた。

 ちゃんとまとまってないんですね、分かります。


 その中から一枚の紙を取り上げて内容を見てみた。

 橋の構造が記されている、重要な書類でした。

 要重量百キロって少なすぎませんか。

 人も歩くんですよね、この橋の上を。

 このままじゃ崩れますよ、一瞬で、人を巻き込んで。


 「ひいひい爺様、この橋の重量制限百キロって本気ですか?」


 「ああ、そこは訂正してもらわないといけない部分だ。最低一トンにな」


 まだ軽いような気がする。

 一トン程度じゃダメだよね。


 「ですよね。安心しました。完成した暁には人が大勢群がりそうなので二十トン位は見た方が良いと思います。

 五トントラック四台でエキシビション的な運転を試した方が良いと思います。五トントラックがあればの話ですけど」


 重量を一気にアップさせた。

 ニ十トン位なら大丈夫だと思う。


 「ニ十トンか。ユート、試乗するのはタイヤがあるトラックの事だな?」


 「そうです。実際に通ることもあったりします?」


 「ないな。普通の乗用車同様にトラックも浮いているからな。それでもニ十トン必要か?」


 「タイヤがないのなら、半分以下の十トンでも良い気がします。歩行者があふれても大丈夫なように」


 人が埋め尽くしたら、それくらいになると思う。


 「そうだな。じゃあここは十トンに変更と」


 ひいひい爺様が赤ペンを出して、十Tと記載した。


 「博物館に問い合わせて五トントラックを取り寄せよう」


 「十トントラックがあるなら、そちらの方が良いかもですが」


 「問い合わせ次第だな」


 橋はちゃんと十トンの重さに耐えられるように建設してもらえば問題はないはず。

 無人のトラックで試乗すればギリギリ十トンでも耐えられると思う。

 遠隔操作が出来るように改造すれば大丈夫なんじゃないかな。

 万が一落ちた時用に下に網を設置するなども考えなきゃだよね。


 「橋を作るこの企業、大丈夫なんですか?」


 重量制限百キロで最初考えてたってことだもんね。

 安易に考えすぎてないかな。


 「一応、橋建設を正式に落札した一流の企業なんだが」


 「過去に橋の建設経験はあるんですか?それであの重量制限だったら、どうしようかと」


 談合があったか疑いそうなほどですよ。


 「歩行者のことを全く考えてなかったのだろうな」


 「ケアレスミスにも過ぎますよ。私だったら企業を変更する事態です」


 企業で一端通ってから、ひいひい爺様の元に来た設計図だろうから。


 「そんなにか。とはいえ、確かにこの案で通すことは到底できないがな」


 「はい。止めて下さりありがとうございます」


 大きく頷いて、心から感謝した。


 「ではメールで先方に送るな。制限重量十トン以上でと記載しておく。民である歩行者のことを忘れないようにとな」


 「はい。後、先方でもトリプルチェックをしたものをと記せばいいんじゃないでしょうか」


 「それは良いアイディアだ。追記しよう」


 険しい表情をしていたひいひい爺様だけど、案を追記するにあたって柔和で穏やかな表情になった。

 ひいひい爺様がすぐ横に置いてあったノート型のパソコンを起動した。

 早速メールを送るんだと思う。


 「降りますね」


 「ああ、悪いな」


 膝の上にいた状態から速やかに降りた。


 そういえば意見箱の投書の確認はもう終わったのかな。


 「父様、終わったんですか?」


 「ああ、残り後少しといった所だな。戻るか?」


 「はい」


 手紙を一通手にして開封する。

 と、そこには。


 「山間にホテルが少ないので、建設してくれませんか?これ難しいですね。山間に売りはあるんですか?例えば温泉とか」


 「それだっ!」


 「はい?」


 父様の食いつきが凄かったけど、どうしたのかな。


 「温泉を売りにホテルを作れば良いんじゃないかと!山間にある別荘では温泉に入れるからな」


 「なるほど、そういうことでしたか」


 「良い案だな。可決しよう」


 ひい爺様が保留のトレーに手紙を乗せていた。


 「温泉が干上がらないか要確認後に、現地に赴いてホテルに最適な場所の検分をすべきだな」


 「父様、温泉に入りたいです」


 是非とも売りに出来るほどの温泉に入ってみたいです。


 「そうだな、近々行こうな。紅葉が最高に綺麗な秋にでも行こうか。ユートの誕生日にとか」


 「最高な案です。実行お願いします。別荘に行くことがプレゼントになると思います」


 「無欲だな。了解」


 私の頭をゴシゴシと撫で、愛情を伝えて来た。


 「しかし、ワシらで考えても思いつかなかった出来事をこうもポンポンと案を出せるとは凄いな、ユート」


 「地球で読んでた本のお陰だと思います。内政チートと言うんですよ」


 オンライン小説で定番のアレでございます。

 例えば料理でいえばマヨネーズが大活躍する。

 チート的には残念ながら、こちらでは和食が復旧しているから問題なしですが。

 それに、まさか私が内政チートをすることになるなんて。


 「そういえば、こちらでは卵かけご飯とかありますか?」


 「ああ、ある。専門の醤油まであるぞ」


 父様の言葉に素直に驚いた。

 まさか醤油まで特別のがあるだなんて。


 「料理のレベルは向こうと変わらなさそうですね。料理学校もあるんでしょうね?」


 「いや、ない。総合科で受けているのと同じだ。地球は料理専門の学校があるんだな?」


 「はい。専門の学校がいくつもありました。こちらの上級からでした」


 ないのか、意外だな。


 「そうか。こちらでも新たに学科を作る必要がありそうだな」


 「そうですね。個々の力関係が明らかになると思います」


 「料理科創設決定だな」


 私の一言でまた決まってしまった。

 別に悪いことじゃないからいいけど。


 「他にも総合科から独立して創設の必要な学科があるんじゃないですか?」


 私には思い当たらないけど、あるかもしれないのでそう問いかけてみると、


 「開発かな。まったく違う教科を習っているようなものだからな」


 はっきりとした声でひいひい爺様が言った。

 確かに開発科なら作成する部分がまったくないと言える。

 小学校の科目のように図画工作があれば別だけど。

 それ以外は新たにちゃんと授業用に科目を作成する必要があると思う。


 「他に思いつくのは音楽科とかですかね。あります?」


 「音楽科はあるな。各楽器で専門のコースとなっている」


 「そうですか」


 音楽科があって料理科がない理由が分からない。

 同じベクトルに思えるんだけど、違うのかな。

 早く総合科から切り離して別の専門のコースに出来るように願った。

お読みいただきありがとうございました。

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