16家庭教師の先生
宜しくお願いします。
退院して二日目、週末水曜日の午後になりました。
今日は家庭教師の先生となる人との顔合わせが予定されている。
部屋にまだ机が無い状態だけど、どこで勉強するのかな。
と思っていたら、ローテブルだけ運び込まれました。
セットのソファがまだないけどね。
一応勉強できる環境が整ったと思う。
「ユート、先生が来たぞ」
「はい、父様」
「紹介しよう、アビゲイン・クレメントとシースリー・クレメントだ」
男性の方は父様より少しだけ身長が低く、黒髪に茶色の瞳、日本人風な人だなと思った。
でも顔の造形は西洋人風で鼻が高く、ほりが深い、そんな容姿をしていた。
女性の方は母様と同じくらいの身長で、赤髪で緑の瞳をしている美人さんだった。
どう考えても夫婦だよね、このお二人。
そして二人とも補佐役が着ているのと同じ格好、黒ベストに黒パンツを着用していた。
「アビゲインがユートの担当でシースリーはアイリーゼの担当となる」
なるほど、納得しました。
道理で今ここにアイリーゼがいるわけだ。
しかし学校に入る前から何を習うんだろう。
平仮名とカタカナ、数字とかかな。
「「よろしくお願いします!」」
アイリーゼと揃って仲良く挨拶をした。
「では、ユート様、こちらの問題を解いていただけますか?」
「あ、はい。分かりました」
先生から用紙を受取り、ローテーブルに向かった。
「あ。書く物がありません」
「こちらをお使いください」
アビゲイン先生からシャーペンを受取り、問題に取り掛かった。
問題用紙は二枚あり、一方が計算問題でもう一方は書き取り問題らしかった。
どう考えても算数と国語だった。
算数から取り掛かることにして、問題を読む。
簡単な足し算引き算から九九、割り算、そして分数の計算もあった。
足し算と引き算、九九や割り算はともかくとして分数の計算はどうやるんだか完全に忘れていた。
分数の割り算は逆さにするんだっけ?
どうもうろ覚えではっきりしない。
対して国語は読みと書きが混ざっていて、やる気にさせられた。
書きはともかくとして、読みはパーフェクトを目指している。
小学校での勉強は途中で海外へ転勤した親について行ったから、正直微妙な線。
そう、実はあの人は帰国子女だった。
表と裏、両方の教科でなんとか空白を埋めて書ききった。
最後に名前の所に、アルファベットでReiと略名を記入した。
「終わりました。シャーペンありがとうございました」
立ち上がって二枚の用紙を先生に渡して、シャーペンも返した。
一応見直しもしたから大丈夫なはず。
ケアレスミスだけはしたくないもんね。
それにしても、書く物がないとは致命的じゃないかな。
文房具をそろえなければならない。
少なくとも鉛筆と消しゴムが必要。
もしくはシャーペンと芯。
その次に必要なのは定規やハサミかな。
アイリーゼとシースリー先生はいつの間にか姿を消していた。
隣にある部屋に移動したのかもしれない。
「それでは採点しますね」
アビゲイン先生が赤い鉛筆を持ち、採点に入った。
内心ビビりつつ、ドキドキしながら待つ。
どれくらい点が取れているのかな。
両方とも半数の五十点以上は確実だと思うんだけど、どうなのかな。
自己評価が低いのはどうしようもない。
だけど、埋められるマスは全て埋めたから零点ということはないと思う。
バツが沢山ついたらダメだけどね。
そういえば正解はマルで不正解はバツかな。
私が経験した海外だと正解はレ点、不正解はバツといった感じだったから、どっちかと思う。
日本の影響を大きく受けてるこちらなら、正解はマルで合ってそうだけど。
「算数は満点、国語は九十点ですね」
やっぱり国語の書きは苦手意識があるからこうなると思った。
しょうがないけど、まあまあの出来では。
算数は解き方がうろ覚えな感じだったけど、満点取れたなら良かった、万々歳だね。
「ありがとうございます」
「国語の書きが少し不安定に見えますが、許容範囲内でしょう。初級レベルはほぼ問題なしですね」
「そうか。じゃあ、アビゲインはその二つの教科以外を重点的に教える感じになるかな?」
父様の言葉に一つ頷き。
「はい、そうなると思います。特に地理に重きを置いてと思いますが」
確かに一般常識で地理は重要だと思う。
どこの国のどの地域に住んでるかとか、何が産業なんだかなど。
隣は何県とかも重要だと思う。
そもそも県なのか、州なのかも分かっていない。
「よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
手を差し出されたので握手をして応えた。
「今日は実力テストを実施したので、次回から通常の授業を開始したいと思います。それまでに筆記用具、用意してくださいね」
「はい!」
筆箱にシャーペンと芯、消しゴムに定規、後黒赤青緑の四色ペンもあると良いかもしれない。
必要な物があっという間に浮かびました。
「父様、調達に行きたいです」
「ああ、この後行こうな。アイリーゼの方も必要だろうから一緒に行こう」
大きく頷きながら、
「はい!」
と元気よく返事をした。
「先生の授業はいつから始まるんですか?」
具体的なスケジュールを聞いてないなと思った次第。
「毎日午前中、九時から始めようかと。お昼を挟んで二時からも実施しようと思います。冥水と木曜の午後はお休みにしますね」
「分かりました。それまでに筆記用具、揃えないとですね」
父様の隣に行き、手を取った。
「アイリーゼの方、一段落したか見に行きましょう?」
「そうだな、行くか」
アビゲイン先生も一緒に隣のアイリーゼの部屋に移動した。
「終わったかな?」
父様の問いには。
「はい、丁度一息ついた所です。ただ一つ問題が」
「何かな?」
「筆記用具がありません」
「うん、それはこれから買いに行く予定だ。アイリーゼ、行こうか」
「はい!」
いつでも元気よく「はい」の返事をするな。
まだ「いいえ」を聞いたことがない気がする。
「じゃあ、早速文房具を買いに行こうか。ティも良いか?」
「ええ、行きましょう。肝心の物がないと実行できないものね」
母様の言う通りだ。
「線が引いてあるノートも出来ればお願いします」
アビゲイン先生から要望が。
「了解だ。アイリーゼも必要か?」
「そうですね、自由帳があればお願いします」
自由帳ってどんなノートだっけ。
「線が入っていないものだったか?」
「はい、そうです」
「二点了解。じゃあ、行こう」
ガレージに向かい、車に乗る。
アイリーゼのチャイルドシートの装着を手伝う。
「ありがとう、兄様」
「どういたしまして」
自分も少年用のシートに座り、シートベルトを締めた。
「出発」
父様がそう言い、車が浮いて動き出した。
行先は多分、先日カレンダーを買いに行った書店。
文房具も売っていた気がする。
そうして着いた先は予想通りの書店だった。
レジ近くに文具が置いてあるのを発見し、そこへ向かった。
書きやすいシャーペンと消しゴムを探す。
試し書きのコーナーがあったので、そこでシャーペンとペンを使用してみる。
良い感じの物を見つけたのでそれを確保する。
消しゴムは地球でお馴染みのモ〇にデザインが似ている物があったので、それを採用することにした。
次にシンプルなデザインの筆箱というかペンケースを見つけ、それを買うことにした。
この間の家具店といい、ここといい、買ってもらってばかりで申し訳ない気になる。
実の親だからといい訳めいたことを思いながら、文具を選んでいった。
いつか大きくして返したいなと思いながら。
最後にノートと自由帳を買い、これで完璧のはず。
定規と修正液も忘れずに買ったし、良いんじゃないかな。
あれ、色鉛筆とかクレヨンはいいのかな。
「父様、色鉛筆とかも買った方が良いですかね?」
「そうだな。ユートよりアイリーゼが使うかもしれないな」
「はい、そんな気がします。クレヨンだかクレパスだかですよね」
「分からないからクレヨン、クレパス、色鉛筆三種買おう」
「はい!共有できますもんね。アイリーゼ、決まった?」
「はい!兄様は?」
「うん、決まったよ。後はお会計だけ」
色鉛筆なども籠に入っている。
そして次の行先はレジに。
「一緒に行きましょう」
「そうだね」
二人で仲良く、父様と母様に連れられながらレジに向かった。
スムーズにレジでのお会計が済み、車へと戻る。
「僕は幼年学級から初級までの学業を学ぶのは分かるんですが、アイリーゼはまだ始まってませんよね。何を学ぶんですか?」
「幼年学級で習うようなお絵かきね。他にはかくれんぼの時に数を数えるでしょう?三十までは習うから」
色鉛筆、クレヨン、クレパスの三種を購入した物をお絵かきで使うだろうから吉のはず。
「なるほど、そうなんですね」
心の中で頷いて納得した。
数字か、なんなら百まで教えても良いかもしれない。
パターンが決まってるから覚えやすいはず。
「帰ったらお昼だな。今日は父さんたちの当番だから何が出てくるか楽しみだな」
ワクワクしているようなトーンで父様が言った。
確かに献立が何になるのかは楽しみだね。
爺様達は何を作ってくれてるのかな。
父様のワクワクが見事にこちらにも伝染した。
「先生達も一緒に食べるんですか?」
「いや、彼らは隣に別で準備しているから、一緒には食べない」
「なるほど、そうなんですね」
あくまで僕ら家族だけが一緒に食べるということ。
特別に当番の個々人が作っているし、ある意味当然かもしれない。
でもいつか隣のご飯というのも食べてみたいなと思うのでした。
「隣のご飯は食べたことあるんですか?」
気になったので問いかけてみた。
「無いな。食べてみたいのか?」
「少しそう思っただけです」
こちらみたいに当番制なのか、専用のシェフ的存在がいるのか否か。
「たまにこちらで作ってくれるぞ。その時に味わえばいい」
「そうなんですか。分かりました」
その時を心待ちにしておくことにした。
きっとシェフ的な技術の持ち主なんだろうなと勝手に高評価をした。
お読みいただきありがとうございました。




