表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/48

11-1退院に向けて

宜しくお願いします。




  「午後はちょっと外に出てみない?」


 「良いですね。出てみたいです」


 これまで何回か病院近辺の所を歩いたりしている。

 全てが新鮮で、外に出るのをすっかり気に入ってしまった。

 地球と違う所を見つけては目を丸くしてしまったり。

 また、魔法の存在を直に感じることが出来たりして。


 「それより母様、お昼は食べないんですか?」


 「さっき電話を掛けに行った時に、ついでに食べてきたわ」


 「そうでしたか、良かった」


 「心配してくれて、ありがとうね」


 母様が満面の笑顔で頭を撫でてくれた。


 「じゃあ、行きましょうか」


 「そうね。行きましょう」


 エレベーターを使わず階段を下る。

 上りと違って下りはそこまで負担がかからなかったため、一階まで降りることが出来た。

 帰りはまた階段で上がれるところまで上ろうと決意した。


 「良い天気ですね」


 太陽が中天にあり、気候はポカポカしている。

 意識を取り戻して少しした水無月は晴れが多い。

 雨期は皐月だったのかもしれない。


 「今の月、文月はどういう漢字を書くんですか?」


 「文の月と書いて文月よ。夏真っ盛りといった感じね」


 月の書き方は日本と同じっぽいことを確認した。

 今度全部の書き方を一応教えてもらおうかな。


 「プールや海に入る季節ですね。日焼け止めとかしてくるべきでしたか」


 海に入る時は日焼け止めが必須だったのを思い出した。


 「帰りに病院内のコンビニで買いましょう。帽子もあれば買いましょうね」


 入院患者用の下着などはありそうだけど、帽子はどうなんだろう。

 麦わら帽子が店内にあるのが想像できないんだけど、私だけかな。

 他のキャップとかなら、ありそうな気がするんだけど。


 ベンチに座って一息つく。

 突然救急車が来ることもなく平和だ。

 母様が隣に座った。


 「ビタミンDでしたっけ?太陽から吸収できるビタミンがあるので、それを直接取り込んでいきましょう」


 「良いわね。それにしても色々とよく知っているのね」


 「大学卒業済みの成人女性でしたから。一般常識程度ならば分かってたんじゃないでしょうか」


 「そうなのね。それで、彼氏もいたんでしょう?」


 「はい。実際会えるのならば、再考を提案するような相手でしたけど」


 タバコを吸うやらギャンブルをするやら、辞めてほしいことをやっていた。


 「あら、イマイチだったのね?」


 「はい。こちらにあるかわかりませんが、タバコという趣向品を嗜んでいたんです。煙が有害だから、その……」


 「なるほどね。確かにこちらにタバコというものはないわね。有害なら、なくて良かったわ」


 受動喫煙というものになっていたから、こちらではなくてよかったと本気で思った。


 「他になくて良い物が思い浮かんだんですが。麻薬ってありますか?」


 「マヤク?きいたことはないわね。どういった物なの?」


 「薬の一種のようなもので、吸収すると気分が高揚したりするんですけど、服用しすぎると幻影を見たりするものなんです」


 「それは怖いわね。今知る限りではないわね」


 「良かったです。ちゃんと導入しなくていい物は導入されてませんね」


 麻薬、タバコは導入してはいけない物だと思う。

 ギャンブルもなければよかったけど、こればかりはどうしようもない。


 「他に何か導入されてなくて良かった物ってあるのかしら?」


 「まだそこまで知りませんので分かりません。でも、賭け事の一部とかそうですかね」


 「ギャンブルということね?色々とあるから数えきれないわね」


 「パチンコ、スロット、競馬、競輪、競艇、カジノとか」


 「全部あるわね。どれも正成人から解禁されるわね」


 正成人ということは三十六歳で解禁だったっけ。

 その頃には社会勉強も多少は受け、中毒にならないようになるかな。

 どちらにしろ、のめり込む人はどうしてもいそうだけど。


 「良い大人の年齢からだから、しょうがないですね。分別がつくと良いですが」


 「そうね。賭け事は一回の当たりが大きいからそう思うわよね」


 「母様は経験がおありですか?」


 「どれも無いわね。容疑者から経験談を聞いたことだけはあるけれど」


 容疑者ときた。

 どんな犯罪に手を染めた人なんだか。


 「のめり込み過ぎた例ですか?」


 「ええ。所持金が、残金がなくなって逮捕となったのよね。カジノよ」


 「なるほど、イグズにはカジノがあるんですね」


 「ええ、ここエアル島にはないわね。そういえば賭け事の全部がないわね」


 「中毒者の治療に最適な環境ですね」


 どれもないとは考え付かなかった。

 とても平和な環境なんだなと思った。


 「この病院で治療している人がいるわよ」


 「居ましたか」


 島内に賭け事を行う場所がないなら、我慢するしかない。

 ないならないで、それに対応していかなければならない。

 疑似マシンを使ったりしているのだろうか。


 「中毒者の治療の最先端を行っているわ。賭け事を商業化していない唯一の例かもしれないわね」


 「凄く良いことだと思います。となるとお金を直接やり取りする何かはないんですね」


 「いいえ、あるわ」


 「え、何ですか?」


 「宝くじよ」


 「あー……そう来ましたか」


 確かに宝くじは現金でのやり取りをする。

 当たると大きい所も同じ。

 賭け事と同様と言われてしまえば、それまでだけど。

 だけど、賭け事などと比べると健全だと思う。

 勝率がめちゃくちゃ低いのは良くない点。


 「買ったことがあったのね?」


 「はい。パチンコもしたことありました。数万当たりましたね」


 「それは凄いわね」


 「だからこそ宝くじ以外のない、この場が好きになりました」


 無自覚で賭け事の中毒者になっているだろうから、一切そういった機械がなさそうなこの場所に感謝しなければ。

 治療方法はとにかく機械に触れないこと。

 もし機械に触れることがあっても、一銭の金にもならないことを身体に教え込む。

 日本にいた頃そうやって興奮した脳を治すんだとテレビで放送されていた。


 「そちら方面の知識もあるのかしら?」


 「当たっても出玉がでない機械を使って、身体を治療してましたね。興奮状態を抑えるのだとか」


 「それ、ここの先生に教えられたら良いんじゃないかしら」


 「今度、雑談する時にそれとなく言ってみます」


 まさか医療関係で私の知識が役に立つとは思わないけど。

 きっと既に治療に使用されている方法じゃないのかな。


 「そろそろ戻りましょうか」


 「そうですね」


 座っていたベンチから立ち上がり、病院の入り口を目指す。

 患者用の入り口から入り、階段を探す。


 「そういえばコンビニに行くんでしたっけ?」


 「ええ。確かこちらの方に……」


 コンビニを求めて母様が歩き出したので、後をついて歩く。

 割とすぐに見つかった。

 店内に入り、今度は商品を探す。

 日焼け止めと帽子だったはず。

 日焼け止めは直ぐに見つかったが、帽子はなかった。


 「帽子は外で買うことにしましょう。今回はこれだけということで」


 会計をしている母様を店外で待つ。

 混んでいる時間帯ではなかったのか、直ぐに会計を終えた母様と合流出来た。


 さて、次は階段探しだと気合を入れた所で、すんなりと階段が見つかった。

 喋ること以外ほぼ何もしていなかったからか、今回は三階まで上がることが出来た。

 三階からエレベータで五階まで上がった。


 部屋に戻り、ベッドの上に座った。


 「はい、これ日焼け止めね。次、外に出る時は塗ってから出ましょうね」


 「はい、ありがとうございます」


 SPF五十+、PA++++と書いてある。

 この辺りも日本の常識の導入を感じた。

 いや、これに関してはインターナショナルな導入というべきかもしれない。

 地球内の常識だろう。


 「それじゃあ、私はそろそろ帰るわね。ネルと交代するわ」


 「はい。気を付けて帰ってくださいね」


 「ええ。それじゃあ、またね」


 父様は母様との交代でお見舞いに来てくれるとのこと。

 毎日来てくれてて、とてもありがたい。


 早く退院したいし、気が逸る。

 一体いつ退院できるんだろうか。

 普通を普通にこなせるようになってきているから、そろそろだと思うんだけど。


 スポンジ製のボールを握り、潰す。

 このボールを小さいサイズまで持てるようになったら退院かな。

 グッと力いっぱいに握ると、半分ちょっと潰れた。

 しばらくこのボールでトレーニングしながら時期を待とうと思った。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ